明日、今日より少し成長できる現場で使えるノウハウを先輩から教えてもらう特別企画!
社会人歴25年、読者の大先輩といえるNOCアウトソーシング&コンサルティングの津久井基喜(つくい もとき)さんにお話を伺ってきました!
津久井 基喜
1996年に宝飾業界専門商社に入社し、小売店、アパレル企業向けに営業を担当。2006年に広告制作会社でてディレクターを経験し、2008年にNOCに入社、BPOプロジェクト管理者を経て、マーケティングの責任者、営業推進を実行。自社メディアBPOブログの編集長でもある。
あまのじゃくだった若手時代。「でも僕は悪くない」
ー簡単な職歴と今のお仕事の内容を教えてください
新卒では、ダイヤモンドの専門商社で百貨店に出店しているブランド様やアパレル業界の企業様にジュエリーの営業を行っていました。お客様のご要望に合わせて、企画案を作り、石の選定、品質管理なども担当していました。
私はこだわりが強かったので、使用する石の種類を決めるだけではなく、「どういう品質の石」まで指定したくて毎日数千個の石の中からイメージにあうものを選んでいました。
そのおかげか、私の手がけたジュエリーは百貨店の販売員さんに人気で結構売れました(笑)
話をキャリアに戻すと、宝飾業界での仕事を10年続けたあと、広告代理店を経て、2008年にNOCに出会いました。NOCはアウトソーシングサービスの会社で、新規顧客獲得を目的としたマーケティング事業部の責任者をしています。
株式会社NOCアウトソーシング&コンサルティング
1988年に設立、総合的なビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)事業者としてバックオフィスサービス(経理、人事・給与、総務、IT、その他事務)などを提供。また、そのノウハウをもとに業務改善のコンサルティングも提供。業界最大規模のアウトソーシングチームを抱える。
ー新卒時代はどんな人でしたか?大失敗のエピソードもあれば教えてください。
とにかく、あまのじゃくな人間でした(笑)大失敗のエピソードなんて数えきれないほどあります。超大手アパレルメーカーの部長に怒鳴られたこともありますよ。
新卒の頃は、怒られても納得できなくて「でも」や「僕だけが悪いわけじゃない」という気持ちが表に出てしまいましたね。ある意味、とても素直な人間でした。
あと、緊張するとうすら笑いをしてしまう癖があって、火に油を注いだことも数えきれません。自分を認めて欲しかったり、自分を守りたいという気持ちが強かったと思います。
振り返ってみれば、こういう対面的な失敗はいい経験でした。
ーかなり異業種へのご転身ですが、どのようなきっかけで転職を決められたのでしょうか。
「価値」ベースで仕事をしたくなった、と言うのが一番の理由です。
具体的なきっかけとしては、ジュエリーは、魅せ方やデザイン、売り方で価値が一変したことを体感したときですね。
ジュエリーの会社は商社だったので、海外から仕入れした石を国内で販売し、その差額で儲けを出すビジネスです。なのでコスト視点で石を売ることが多かったのですが、ブランド様の「価値」に対する価格のつけ方に衝撃を受けことあります。
ユーザーが価値を感じて買う価格を適切に設定する。コストベースで考えていたら絶対に到達しない考え方です。
そのときまで、物自体の価値が全てであり、コストという観点でしかモノを見ることができなかった視野が一気に広がった気がしました。
そこで、価値を伝える仕事をしたいと思い、広告関連の仕事を志しました。まず広告代理店で一年半働いて、2008年に現職のNOCでマーケティングの世界に入りました。
ーマーケティング職は「価値を伝える」仕事ということでしょうか?
マーケティングの定義は、一言で言うと顧客のニーズを満たす価値を届ける仕組みを作ることだと考えています。
モノそのものの価値だけではなく、それを利用する顧客にとっての価値までを想像して、いかにその価値を伝えるか・届けるかまで考えられることがマーケティング職の醍醐味といえます。だから、私はマーケティングに携わることにしたのです。
「数字力」があれば、
もっと早く成長できた
学生時代から数字の勉強をとにかく避けてきました…。
ー全くの異業種への転職ということで、相当苦労されたのではないですか?
そうですね。業界も業務も違いますから、それはもう大変でした。もっとあのときこうしておけばよかった、と思ったことは何度もあります。
ーそのお話、ぜひ聞かせてください!もし社会人3年目にタイムリープできるとしたら、何をやりますか?
「数字の勉強」!!これにつきます。
ー即答でびっくりしました。なぜそう思われたのですか?
学生の頃から根っからの文系人間で、数学の勉強を避けて通ってきました。宝飾業界で営業してたときも電卓叩いて売り上げや目標管理くらいはしていましたけど、そのレベルでした。
しかし、NOCに入社し、マーケティングの仕事についたことがきっかけで数字の重要性に直面したのです。
ーマーケティングというと、確かに数字命!のイメージがあります。
そうですね。マーケティングに限らず、ビジネスをする上で「数字力」は大切です。できなくても困りませんが、数字力がある人と比べて圧倒的にパフォーマンスが変わります。極端にいえば、○年くらい成長スピードが変わるかもしれません。
数字力とは、「過去の結果を理解し、分析する力」と「仮説をたてて未来を予測する力」の2つがありますが、前者の「過去の結果を理解し、分析する力」を意味しています。
今の仕事で例えると、「Aという施策を実行したら、今までで一番リード(見込み顧客からの問い合わせ)が取れた!もっと予算を投資したらさらにリードが取れそうだ!上司にお願いしよう!」というケースがあったとします。
このときの説明としては、
・どのくらい結果がでたのか?→リード数、
・なぜ成果がよかったのか?→集客チャネルの状況、獲得効率、時期要因など
・他の施策と比較してどれくらいよかったのか?→1件あたりの獲得コストを比較
という数字による裏付けが必要になります。ビジネスで人や会社に動いてもらうには、悪い意味ではなく打算が働きます。
算を打つの言葉通り、相手にどれだけ利益を明示できるか、そしてその共通言語は数字であることが大切なのです。
ちなみに、「仮説をたてて未来を予測する力」とは、少ない情報のなかで読み解く話になり、数字分析だけではなく文系の力が必要です。文系の発想力と展開力が数字による裏付けができれば最高です。
ですので、決して理系を推奨しているわけではありません。今までの勉強は何かに必ず繋がります。
ー数字の大切さ、よくわかりました!でも何から始めるべきかわかりません。アドバイスください!
そうですね。数字といってもなんでもいいというわけでなく、四則演算ができるとか、統計や確率を勉強し直す、ということでもありません。例えば私は仕事に使わない分析手段にはあまり興味がありません(笑)。
やはり、何ごとも好きじゃないと続かないと思っています。私は業務で使うマーケティングツールやレポートとにらめっこして数字の導き方を学ぶところから始めました。
好きなものがなければ、自分の業務の中で数字と関わるものから始めれば、すぐ実利に繋がるのでわかりやすいメリットもあり、おすすめです。
私はマーケティングが好きだったので、早く仕事ができるようになりたくて、積極的に数字を活用しました。ツールやレポートから数字を導き、PDCAを回していきました。
そのおかげで、マーケティングの初心者だった私が、新規顧客獲得の肝となるマーケティング事業部の責任者のポジションに就くことができました。
ー自分の好きなものか業務に必要なものですね。それならすぐに始められそうです。
私の場合は「数字」でしたが、成長のトリガーを見つけるポイントは「違和感をほったらかしにしない」が大事だと、今では思います。数字を避けている自覚をしながら13年も放置してしまいました。
きちんと目を向けてチャレンジしていたら、今の立場に半分のスピードで行けたかもしれません。ありきたりですが、失敗も成功も経験をいくつ積めたかが財産になることをこの歳になって初めて実感します。
振り返れば、あまのじゃくだった新卒時代は、数字に関する仕事はできないからという足枷を自分でかけていた気がします。試さないし、やらない。絶対に早いうちにいろんな経験を試した方がいいと思います。
また、マーケティングに限らずビジネスの世界は周りの人たちを巻き込む力が重要です。打算ではありませんが、誰しも会社や社会に責任があります。ふわっとした理論や情では人も会社も動きません。
相手にどんな利益を返すことができるのかを数字で武装できる力があれば、巻き込む範囲は広がっていき自分の成長につながるはずです。
ぜひ、早いうちにたくさんの経験をしてください!
津久井さん、貴重なお時間をいただきありがとうございました。
取材/文:BizLog編集長 大久保佳美