特別インタビュー第17弾 100点満点より100%の努力を「継続力」で自分のポジションを確立せよ〜マネックスベンチャーズ代表取締役 和田誠一郎さん〜

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明日、今日より少し成長できる。現場で使えるノウハウを先輩から教えてもらう特別企画、第17弾!

本日お話を伺ったのは、マネックスベンチャーズ代表取締役、和田誠一郎さんです。和田さんのキャリア、マネックスベンチャーズの活動や、和田さんが最近注目している投資先の特徴、素敵な起業家に共通する○○力について伺ってきました!

和田 誠一郎
大学卒業後、新卒採用特化のベンチャー企業、株式会社ゲームズアリーナ(現在は株式会社ドワンゴへ吸収合併)を経て、2010年マネックスグループへ入社。2014年5月マネックスベンチャーズの立ち上げ、2018年6月代表取締役に就任。

反骨心のかたまりだった私が仕事の楽しさに出会うまで。

ー まずは和田さん自身について、社会人のキャリアを教えてください。

大学卒業後に、新卒採用に特化したスタートアップに入社しました。大学時代に学生団体の代表をしていたこともあり、漠然と人に関わる仕事がしたくて志望しました。昔から人と同じことをしたくない!世の中の常識に抗いたいという気持ちが強かったことも影響しています。

仕事としてはクライアントの採用代行で、全国を飛び回り学生の母集団を集めることがメインです。学生時代から人前で話すことに慣れていたので、そういう度胸が買われての採用だったのかなと思います。ここで2年半ほど働いた後、株式会社ドワンゴの子会社だった株式会社ゲームズアリーナ(現在は株式会社ドワンゴへ吸収合併)へ転職しました。

ー 転職活動もスムーズでしたか?

全然だめでした。私は職務経歴書上では2年半ぐらい仕事してすぐ辞めている人間です。反骨心あふれる人間です、学生団体の代表やってましたと言っても評価はあくまで書類のテキストでしか判断されない。半年間、全く仕事が決まりませんでした。

そんなとき、「絶対挑戦したい」と初めて思った求人に出会いました。ある会社の上場準備に携わる人材の募集でしたが、転職エージェントさんにはものすごく反対されまして。

「和田さん無理です。日本の上場企業は3000社強しかありません。その中で上場準備に携われる人材はごく一握りです。年間に数十社(当時)しか上場しないんです。未経験者は絶対に無理です」と。でも、とにかく出して!と強引にエントリーしてもらいました。

結果、色々とミラクルが重なり、無事に入社が決まりました。それがゲームズアリーナです。

ー スーパーミラクルですね!

やっと掴んだチャンスをいただいた恩に報いるため、まず入社後3ヶ月間、必死に頑張りました。特に心がけていたのは、依頼を受けたことに対して言われた通りやるのではなく、プラスアルファのエッセンスを加えてアウトプットすることです。

とにかくやれと言われたらなんでもやるし、仕事のアウトプットの質にはこだわるということをひたすら積み重ねた4年半でした。

ー 成果は十分お返しできましたね!

結果として上場を実現させられなかったので返せたかは分かりませんが、本当に充実した4年間でした。

少し具体的にお話しすると、私の仕事はまずゲームズアリーナという会社を理解するところから始まりました。当時、ゲームズアリーナには2社のグループ会社がありました。この3社を徹底的に理解するために、わからないことがあれば積極的に各社の担当部門の部長にアポ取ってヒアリングしに行きました。

スタートアップにいて組織とはなんぞやもわからなかった私が、会社とはこういうものなんだと理解できるのが楽しくてね。

担当した業務のアウトプットの質にこだわった結果、感謝されたり、褒められたり。やればやるほど、どんどん任せてもらえて、こういう小さな成功体験の積み上げが自分の中で一番大きな出来事ですね。あとから振り返れば、自分なりの物事の捉え方や聞き方の工夫一つとっても自分らしさを突き詰めていくことの大切さにも気づけました。

最近の注目キーワードは、エンタメコンテンツと地方都市

ー 現職のマネックスベンチャーズについて、まずは入社経緯を教えてください。

2010年11月にマネックスグループに入社、2014年5月にマネックスベンチャーズの立ち上げメンバーとしてスタートアップ投資に携わるようになりました。その後2018年6月に代表に就任しました。

マネックスへ転職した経緯としては、ゲームズアリーナのときに支援してくれたエージェントさんの紹介がきっかけでした。私は2社目の転職活動で苦労したことから、定期的に自分の市場価値について振り返りをお願いしていました。ゲームズアリーナを退職するタイミングで、マネックスグループの紹介をされました。

実は、他にやろうと思っていたことがあったので断ったのですが、「とにかく会ってみて!」と、今度はゴリ押しされて根負けして面接に行きました。そしたら、面接の担当者と色々と縁がありまして、話が盛り上がり入社することに(笑)。

好き勝手生きてる私がこうやって仕事をできているのも、人に恵まれる運がとても強いからだと思っています。人との縁に支えられている実感はすごくあって、とても大切にしています。

マネックスベンチャーズ株式会社
マネックスグループのCVC。人々のライフスタイルをより良くする起業家やサービスに投資支援を行う。

ー マネックスベンチャーズのお仕事とやりがいについて教えてください。

マネックスベンチャーズとは、ベンチャーキャピタルとして資金をお預かりし、主にシード/アーリーステージの国内外のスタートアップ企業へ投資をしています。

ベンチャーキャピタルは投資案件を発掘し実行、その後企業価値の向上のために様々な支援をし、企業が成長したのち、投資資金を回収することで、収益を得るといった事業を展開しています。

私たちが投資するシード・アーリー(会社立ち上げ、初期段階のこと)ステージの会社というのは事業も、財務状態も組織も、何もかもが脆弱で投資後が大切で、事業の立ち上げから拡大させ上場を一つのゴールと設定し、起業家と二人三脚でともに歩んでいきます。

あくまでも主役は事業を興す起業家であって、投資家である我々は黒子として様々な支援を実行します。投資をしてから投資した資金を回収するサイクルとしてはうまくいくケースでも6、7年かかるため、「一つの仕事を完遂する」までのサイクルはとても長く、いろいろなことを乗り越えていく必要があるため、とても大変な一方で、やりがいのある仕事です。

特に仕事のやりがいを感じるのは、起業家が描いた世界が実現されて、自分が普通に生きていたら関わることのできない人たち、多くの人たちに何かしらの形で幸せにするさまをみられるのはものすごいダイナミズムですよね。

結果、社会がより良くなり豊かになり、次の世代がより幸せな生活を送れるような大きな循環を生み出せる、やりがいの大きい仕事です。

ー 反対に苦労している点はどういうところでしょうか。

投資家と言うと投資をすることが仕事、というイメージがあると思います。でも、それはごく一部で、実は投資を断る仕事がメインです。極論、1件の投資をするために99件断っています。人生かけて事業アイデアを出して出資を希望される方に対して、「ごめんなさい」を99回繰り返します

これに向き合えるかどうかが投資家を続けられるキモとなりますが、これが本当にしんどいです。なるべく次につながるような気付きを得てもらえるように心がけています。

ー 最近注目されている投資領域があれば教えてください。

2つありまして、1つ目はエンタメコンテンツ関連、2つ目は地方に事業ドメインをおいている会社、また地方都市に本社がある会社です。

まずエンタメコンテンツについては、「Content is King」といわれるように、たくさんのプラットフォームの出現の結果、行き着く先はそこで消費されるコンテンツが覇権を握る、主役になると考えており、中でもゲームに注目をしています。いち早くエッジのきいたコンテンツを作れるプレイヤーを探したいですね。

また、ゲームコンテンツ産業は、あまり理解されにくいのですが、技術革新へポジティブなフィードバックを返せる要素も強く、時間消費をより豊かにするのと同時に、表現方法の多様化に合わせて、それを実現させる技術の進化の最前線にある産業だと信じています。

そのような観点からも大きく社会を前進させる中心的役割を担えると考えており、投資テーマとして置いています。

2つ目は、コロナによる人材の流動性が高まったことをきっかけとして、地方での産業の立ち上がりに注目しています。ここで意味する流動性とは、転職市場の盛り上がりということではなく、働くところと住むところが分離していく、と言う意味です。

地方に住む人が増えれば、地方がもっと便利になるといい、良くなるといい、という思いに繋がりますよね。これが加速すれば、色々な産業が動き始めるでしょう。

リモートワークが前提となった現在、2拠点生活も夢ではない現実的な選択肢の一つとなっているでしょうし、大都市圏からの人口流出は緩やかに進むと思っています。人材の獲得が大きな経営イシューだった地方においては逆にチャンスが広がりつつあると思っています。

もう一つの理由は、メタバースです。インターネットやスマホが普及し、リアルとバーチャルの主従関係が変わりつつあります。特に首都圏においてリアルは非効率の極みであり、必要性が失われています。極端に言うと、首都圏はどんどんバーチャルにシフトしていき、リアルのお店が消える未来もありえると思っています。

一方で地方は、一定の非効率を許容しているように感じています。だから効率性を重視する動きにシフトしていかない。いい意味で首都圏と地方がどんどん乖離していき、首都圏のバーチャル化が加速すればするほど、地方の相対的な価値は高まるのでは?と考えています。

この2つの理由により、地方の本社もしくは地方に事業ドメインをおいてる会社には、コロナによる流動化で人材を確保しやすくなることと、メタバースの流れからリアルを大切にする必要性が高まっていくと言う仮説のもと、注目をしています。

自分のポジションを取ることを意識すべき

ー 最近の投資先で面白い会社や起業家の方がいたらぜひ教えてください。

JOINS株式会社(ジョインズ)です。長野県白馬に本社があり、創業からフルリモートで全員業務委託で運営しています。

事業内容は首都圏のプロ人材とリモートワークベースかつ地方求人に特化したマッチングサービスを提供して、自社で副業人材をうまく活用できる方法を体現しながら地方に伝播させていこうとしています。

投資テーマにも合っていて、事業も伸びており、働き方もユニークであることから投資を決めました。

ー JOINS代表の猪尾さんはどのような方でしょうか?

代表の猪尾さんは博報堂出身の方で、JOINS創業前には某スタートアップのCOOとして地方の活性化に心血を注がれていました。投資家の視点で猪尾さんを見ると、一度0→1(ゼロイチ)を経験されていること、経験の豊富さ、地方の現状をよくご理解されていることは、非常にポジティブです。

JOINS本社のある白馬はスキー場で有名ですが、経営上の課題として夏場の閑散期が挙げられます。ご自身がそこにグランピング事業を立ち上げて経営の安定化にチャレンジをされるなど、自らが積極的に地方企業の課題に関与し、強いコミットメントをもって行動するところが、私個人としてはとても魅力的でしたね。

ー 猪尾さんと知り合ったきっかけは?

知人の紹介です。紹介と言っても、色々な積み重ねによるご縁なので黙って待っていても勝手に来る訳ではありません。

機会を得るために何が大切かというと、ポジションを取ることだと思っています。自分のやりたいことを自らの口でアウトプットしていくこと、ここに自分がいくんだ!と旗を立てにいくことの大切さはゲームズアリーナで学ばせてもらいました。

特に今の時代は、自己主張しないと埋もれてしまう。ポジションが正しいか正しくないかはどちらでもよくて、自分の考えや思いを色々なところで発信していくことは非常に重要です。

ー 思いを持ち発信していくことで、世界が動いていくということですね。

そうですね。JOINSへの投資もそうですが、投資したいテーマによってその領域に長けているひとがいます。そういう人から意見を聞いたり、自分の考えをぶつけ合って議論することも大切です。

そうすることで、お互い新しい発見が生まれたり、和田さんがそういう考えを持っているならこういう投資先がいいんじゃないかということにつながることもあります。

次のトークテーマかもしれませんが、自分の考えを深めて、具体的にアウトプットして、人にぶつけていくことは、これからの社会を背負う学生や若手ビジネスパーソンの方には特に意識して欲しいと思います。

ー ポジションを取ることが大切ということですが、具体的にどう始めたら良いのでしょうか?

ポジションを取るって、一番のハードルは恐怖心だと思います。間違ってたらどうしようって怖くなる。まずはこの恐怖心に打ち勝つところからスタートです。

間違えたら何が起こる?をしっかり想像してみましょう。何が起きるか想像しておくことで心構えができ、恐怖心に打ち勝つ力につながります。もし間違えてたら仕事を辞めなくてはならないというリスクがあったとしても、「辞めたら本当に困るのか?いく場所はないのか?自分の市場価値はどうか?」と問いかけてみてください。

もしここで、いく場所が無いとしたら、ポジションを取る前にポジションを取れるだけのスキルを身につけるべきなので、仕事で成果を出すことから始めるべきでしょう。

ー 間違った時の対策を事前に練ることと、そもそもスキルが足りないなら自覚することで次のアクションに移せるということですね。

はい。あとは、成果の考え方です。みんなすごいものを出さなくてはいけないって思い込みがあると思います。より大きなものを出そうとするのではなく、やれと任されたことをやりきる、またはやれと言われたことに+5%いいものを出す、この積み重ねが本当は大切です。

ー たしかに成果と言われると完璧を求めてしまいがちです。でもそうではないということですね。

100点満点より100%の努力を続けることが大きな差になります。100%努力すれば絶対にいいアウトプットができるはず。ここで成果が出せたあと、気を緩めずこの100%の努力を続けられることこそ人と差がつくポイントです。

1年間毎日0.1%の改善を続けるだけで1年後には今の約144%の差になり、反対に努力を積み重ねない人は1年後も1のままなんですよね。最初の1、2ヶ月は大差が見えず気持ちが折れそうになりますが、そこを粘れるか粘れないかがキモです。ほとんどの人が短期的な結果を求めがちです。

ー 100%の努力を積み重ねる力、つまり「継続力」が大切ということですね。

すごく難しく感じますが、肩の力を抜いて欲しいのが100%の定義は自由だということです。誰かに定義されるものでもなくて、自分で決めていい。そして、これをやり続けるぞ、これが100%だっていうものをあまり大袈裟にしないことが継続のコツです。

ー そう言われるとすごく気持ちが楽になりますね。

勉強もそうですが、教科書一冊を1日でやるとしんどいし、続かないですよね。でも、半ページでいいからやろうとか毎日やると言えることができるかどうかで考えてみたらいいんです。

自分に過度に期待して首を締めないこと。自分はこれくらいの人間だからこれだけやろうって決めて始めてみれば意外にできるようになる。こうやって気持ちの整理をつけていくことも非常に大切ですよね。

取材/文:BizLog編集長 大久保佳美

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