明日、今日より少し成長できる。現場で使えるノウハウを先輩から教えてもらう特別企画、第5弾!
本日お話を伺ったのは、セキュリティSaaSサービスを提供する株式会社JSecurityの代表取締役、今村誉一さんです。自営業の父をみて育った幼少期から、証券マンがSaaSベンダーの社長になった経緯、これからの時代を見据えて今村さんが考える必要な○○力とは、などお話を伺ってきました!
今村 誉一
京都大学大学院を卒業し、大手金融系証券会社に入社。新規上場及び市場変更を目指す企業を支援する業務に一貫して従事。株式会社JSecurityに取締役CFOとして合流し、その後代表取締役社長に就任。
「サラリーマンよりかっこよかった」父の背中
ー 今村さんの社会人経験について教えてください。
わたしは大学院卒で少し遅めの社会人スタートです。大学4年間では社会に出るにはスキル不足だと感じ、京都大学経営管理大学院でMBAを取得した後、27歳で大手日系証券会社に入社しました。
最初は公開引受部という部署で5年、法人営業部で5年経験を積んだ後、知人の紹介でJSecurityにCFOとして入社し、2020年に代表取締役社長に就任しました。
株式会社JSecurity
全世界50,000社以上で利用されているセキュリティソリューションを開発販売しているJiran(ジラン)グループの日本法人。迷惑メール対策、メール誤送信対策、情報漏洩対策、モバイルセキュリティ、オフィスセキュリティ、テレワークセキュリティ等の様々なセキュリティソリューションの開発・販売を行う。
ー 証券会社ではどのようなお仕事をされていたのですか?
まず「公開引受部」とは、IPOしたいという会社の内部管理体制の構築のためのアドバイスをする部署になります。配属されて最初の一年は想像していたような仕事は出来ず、関係者との打ち合わせ調整、資料作成、会議用のコピー…、それでも夜遅くて朝早いしで当時は慣れない中で相当大変でした。
本当は企業を調査する「株式調査部」に入りたかったという思いもあり、悩むこともありました。
ー なぜ「株式調査部」を希望されていたのですか?
私の父親は事業経営をやっているのですが、自分の努力だけでは何ともならないような困難もあり、苦労をしている父親を見ながら、本当に大変そうだなとか、全然うまくいってないんじゃないかなとか、子供ながらに心配していました。面と向かっては言いませんが。笑。
それでも今でも会社を存続させている。苦しくても社員や会社を守るために、逞しく強く生きる父親の姿は、「サラリーマンより、ずっとかっこいい」と、小さい頃から思っていました。
そういう父親の姿を見ていたので、事業経営に興味を持ち、大学院で事業価値評価の研究をするまでに至りました。研究のストーリーからすると、最も学んだことが活かせるのは株式調査部かなと思って希望をしていました。
とはいえ、証券会社に入社したのは、希望部署がどうこうより、内定をもらった企業の中で一番年収が高かったからです。まずは生活費を稼ごうと年収優先でした(笑)
この証券会社での経験のおかげで今の自分があると思います。
転機1、入社3年目でIPO実現を牽引!
ー 証券マンからSaaSベンダーの社長になるまでですがどのような転機があったのでしょうか?
大きく2つありました。1つ目は公開引受部3年目で、ある企業をIPOの支援をさせた頂いたこと、
2つ目は法人営業部でぶち当たった壁ですね。
ー では、1つ目から教えてください。
1年目で、上司とある商談に行ったことが1つ目の転機です。その打ち合わせでは私がメインで説明をし上司にフォローをしてもらう流れでしたが、商談中相手は一度も私を見ることはありませんでした。
質問も会話も上司しか見ない。「こいつに聞いても無駄」と思われてることがよく分かりました。お相手が時間や価値に対して非常に厳しい方であったこともありますが、このとき「能力を持たないと1人の人間としてまともに扱ってもらえない」という危機感が急速に芽生えました。とにかくすごく悔しかった。
ー その出来事で危機感を持てたのはすごいですね。
苦労した父の背中を見ていたことが大きかったと思います。誰にも頼らず、1人で生き抜く力を持たないといけないというプレッシャーは、幼い頃からありました。
そのときから、与えられる仕事だけではなく自分から仕事を作ろうとしないだめだと、色々なことにチャレンジしました。幸いにも環境に恵まれ、若手を育てるムードもあったことも良かったと思います。
その結果、入社3年目で、ある企業の担当を任せてもらい、短い期間でIPOまで導くことができました。その時は、この機会を逃したら、もう自分にはチャンスは無いと思って、すべての事象を自分自身で背負おうと思って行動しました。結果、初めての成功体験となりました。この経験から、働かされているという感覚から働いているという感覚になったのを覚えています。
転機2、法人営業部で直面した大企業での無力さ
ー 2つ目の転機について教えてください。
入社6年目から10年目まで所属した法人営業部ですね。法人営業部とは、IPOしたい企業向けに「主幹事」を獲得する営業部門でした。有望そうな企業にアポとって、信頼関係構築して…という営業活動をしていました。
ー 業務が変わるとご苦労されたのではないですか?
公開引受部にいた5年間で多くのIPOを見てきたことで、「さあIPOに向けて頑張ろう!」というスタートの時点で、IPOするまでの未来のストーリーが見えるし、伝えられるんですよね。経営者の方々からすごく信頼してもらえました。また、ご紹介も多くいただけたので、営業活動は順調でクライアントの成長に寄与できるし充実していました。
一方で、お客様と向き合う時間よりも、社内調整など、自分では変化を起こせないような状況に悩むこともしばしばありました。そのようなときに自分の無力さを感じることが多くなりました。
また、自分自身、IPOを支援する中で、事業会社の立場でIPOを経験したいという思いも高まっていきました。そんな中で、自らコントロールできるような仕事をしなくてはならないと、退職を決意しました。
そこで、知り合いに声をかけられて入社したのが現職のJSecurityです。
大切なのは「自責力」!成長できる環境を提供したい
ー 証券会社からSaaSビジネスはずいぶん異業種への転換ですね。どういう気持ちで入社を決められたのですか?
転職の軸は2つで「自分で意思決定できること」と「自分が必要とされる会社」でした。やるからに逆境に飛び込んでみたいなと、まだまだやりがいのある会社を選びました。笑。コロナ禍で変化が多くありましたが、おかげさまでかなり盛り返し、今では採用活動も積極的に行うほどになりました。
ー さすがの手腕ですね!キャリアの中で転機がいくつかありましたが、社会人なりたての世代が今村さんのように生き抜くためには、どんな力を身につければ良いでしょうか?
「自責力」ですね。社会人一年目でなかなかパフォーマンス出来ない時代、自分になかったのは責任の起点を自分に見出しアクションしていくこと、当事者意識とも言えます。
例えば、資料に関するミスひとつとっても誤字脱字や、両面コピーすべき書類を片面しかせずに会議に持っていった、なんて失敗をよくやりましたが「自分が説明するんだ」って場面だったら必ず確認しますよね。そういう意識ひとつで行動ががらりと変わることを実感しました。
あのときの担当者に嫌な対応をされたことで、自分が当事者であり物事の責任を持たなくてはならないということを初めて心から自覚した時だと思います。
ー 「自責力」はどうしたら培えるのでしょうか?
自分起点で考え抜く習慣をつけることが必要です。そうすることで、物事の課題や本質が見えるようになります。自責力をつけるための鍛錬が大切だと思いますが、元々、他責思考な人が急にそうしろといっても難しいので、そういう環境に身をおくこと、がやりやすいかもしれません。
自責力が磨かれるのはどういう環境か、という点では経営層と近い距離で仕事ができるポジションまたは会社で働くということも一つの方法です。経営陣とのコミュニケーションは常に自責の精神が求められますし、誰かのせいにするわけにもいきません。環境から作り上げてもらうのも最初のきっかけとしては良いと思います。
ー 自分でできないなら強制的な環境に飛び込むということですね。
そうですね。JSecurityにきて感じたことですが、スタートアップは自責力を鍛えられる環境ですね。
ー どういうことでしょうか?
SaaS型セキュリティ市場も今非常に伸びている業界のひとつであり、弊社もですがどこも優秀な人材の確保を急務としています。
具体的に弊社を例えでお話しすると、JSecurityはセキュリティソフトウェアを提供している会社ですが、IPOを見据えて、SaaS型セキュリティソフトウェアの拡販も成長中です。
今の取引の大半を占める代理店さんと強固なパートナーシップも継続しながら、より多くのお客様にセキュリティの重要性を認識してもらうためにも、JSecurityの価値をダイレクトにクライアントへ届けていく活動も行っていくべきフェーズにきたと思っています。
JSecurityの価値をゼロから自分で考えて伝えてくれる直販営業チームのメンバー第一号の採用を始めていきます。まだ生まれてない組織のため、自分で考えて行動することが求められる環境です。
IPOを目指すスタートアップで新しいチームの立ち上げをチャレンジできるため、確実に「自責力」が鍛えられる環境と言えます。
私自身もこういうチャンスを掴んで今のポジションを得られたので、社員にはたくさんチャレンジをして、1人でも生き抜ける力を得てほしいと思っています。
ー 今村さん、ありがとうございました!
取材/文:BizLog編集長 大久保佳美