明日、今日より少し成長できる。現場で使えるノウハウを先輩から教えてもらう特別企画、第7弾!
本日お話を伺ったのは、教育系SaaSビジネスを展開する株式会社POPER(ポパー)COOの林圭介さんです。
林さんはnoteでも「事業がつくれるベンチャーマネージャーになるためのnote」を執筆していて、ベンチャー企業の若手育成に尽力されています。そんな林さんにご自身のキャリア、失敗から得た学び、会社員デビューから7年でCOOまで躍進された秘訣などお伺いしてきました!
林 圭介
Edtechスタートアップ「POPER」のCOO
慶應大学卒業後、25歳で独立し中小企業のWeb制作およびマーケティング支援2011年株式会社Gaqoo、2013年に株式会社ウィルゲートに入社し国内トップクラスのメディア事業の立ち上げに成功。2016年同社執行役員
2018年にPOPER入社、COOに就任。
28歳会社員デビューだからこそできたスピード出世のCOO
ー 今までのキャリアについて教えてください。
私は異色のキャリアでして、大学卒業後は普通に就職することなく、デザインを学ぶために小さな個人事務所に入りました。その3年後、Web制作やマーケティングの面白さに出会い、25歳で起業しました。
どちらも全く上手くいかず、卒業してから28歳で普通に就職するまでの7年間は無収入だった期間のほうが長いですね。
ー 起業というと、どのような事業をされていたのですか?
Webマーケティングやサイト制作の支援してました。主に代理店から仕事をもらっていましたが、なかなか思うように売上をあげられず、苦しい期間が続きました。2年間必死で働きましたが、今の自分が1人でこれ以上やっても変わらないと思い、会社をたたむ決意をして、28歳で初めて就職活動をしました。
ー 1社目はどのような会社ですか?
最初に入社したのはWeb制作会社のGaqoo(ガクー)で、Webマーケティングコンサルタントして2年間とにかくがむしゃらに働きました。忙しい職場でしたが、人にも恵まれ、毎日が充実していました。しかし新事業に失敗し、私の事業部ごとベンチャー企業のウィルゲートという会社に事業を譲渡することになりました。
30歳のときです。ウィルゲートでも人に恵まれ暖かく迎えてもらい、初めてきちんと事業を作るという経験もしました。ここで培った経験で大きく成長させてもらい、今の自分があると思います。最終的にはウィルゲートに転籍して3年目、会社員になって5年目の33歳で執行役員の立場を与えてもらえるまでに至りました。
ー 5年目で執行役員!すごい流れですね。
失敗もたくさんしました。事業を作る経験も初めてだったので、トライアンドエラーを何度も繰り返しながら、最終的には、ある領域において国内トップクラスのメディアを作ることができて良かったです。何度失敗してもチャンスをくれ続けた小島社長、つねに一緒に汗をながして励まし続けてくれた吉岡専務には計り知れない感謝の気持ちがあります。
ー そんなウィルゲートを2018年に退職されて、現在のPOPER(ポパー)さんに転職されたのですね。
ポパー代表の栗原とは20代で起業していたときからの付き合いで、実は同じ時期に会社をたたんだ縁のある友人でした。共通の知人の結婚式で久しぶりに会った時に「今何やってるの?」という話になりポパーの話を聞きました。
会社にかける栗原の熱い思いと、まだ数人で運営している状況を聞いて、自分が培ってきたスキルが役立つステージだと直感したこと、何より栗原の力になりたいと思い、35歳でポパーにジョインを決意しました。
株式会社POPER
2015年設立 。”「教える」をなめらかに” をミッションに置き、学習塾やスクール(学童や習い事)の校務業務の効率化や、保護者とのコミュニケーション支援を行い、教えることに集中できる環境づくりをする。教育機関向け業務管理プラットフォーム「Comiru」を提供し、全国3300教室に導入、Comiruを利用する生徒数は20万人。
ー 初歩的な質問なのですが、COOって何をする人なのでしょうか?
企業によって色々な形があると思いますが、私の中ではCEOは会社の進むべき大きな方針を策定する人、どんな考えをもとにどこへ進むのかという指針を示す人だとしたら、COOはCEOの方針を実現させるための戦略を立案し、周りが実行できるよう仕組みを作る人、です。
そして、CEOと一緒に会社のストーリーを同じ熱量で構築するパートナーである、というのも非常に大事な役割かなと思います。
ー すごいですね。会社員5年目でCOO!成功の秘訣を教えてください。
色々な要因はありますが、振り返ってみると、成長できた背景は28歳までの失敗経験があったからチャンスを活かせたと思います。
7年間の急成長!その裏にある3つの大失敗
ー どんな大失敗をされたのでしょうか。
1つ目は、大学を卒業した時のキャリアの選択
2つ目は、ビジネスを理解してないのに起業したこと
3つ目は、現状を把握できず、さらに失敗を重ねたことです。
ー 1つ目の失敗から教えてください。
大学4年生のとき、世の中にどんな会社があってどんな仕事があるのか全くわかっていませんでした。大学の同級生たちは、外資系投資会社や一流商社などに内定をもらっていく中で、当時の自分にはそれが“特別感のない”選択なように思えてしまったんです。
大学生の頃所属していたダンスサークルが、何百人も集客するようなステージをみんなで熱くなりながら作り上げるチームだったこともあり、妙に対比してしまったところもあります。社会のことを何も知らないくせに、普通に就職したら、そんな熱い経験はもうできないものだと思い込んでいました。
「何か特別な経験をしながら、経済的にも大手企業にまけないような見返りがあって、好きな仲間と何かを作り上げることできる?!そういう会社ないの?ない?じゃあ俺がいつか会社作ろう!」と決意しました。そこで、とりあえず興味のあったデザインの仕事を勉強するために個人事務所に入りました。知識もないのに短絡的な決断をしてしまったこと、これが私の一つ目の失敗です。
ー 2つ目の失敗はどうでしょうか?
25歳のとき、ビジネスのやり方を知らないまま起業したことですね。代理店から仕事をもらってWeb制作などの支援をしていたのですが、昼夜問わず働いても年収200万を超えなかった。これが仕事の限界なんだとずっと思っていました。でもそうではなくて、単にビジネスのやり方を知らなかったから。
例えば、自分ができる範囲を超えている高単価の案件や、納期が重なってしまった案件は断っていました。そのことで、自分の働ける時間✖️時給=売り上げの上限になっていたことに気づかなかったんです。
この失敗に気づいたのはWeb制作会社のガクーに入社したとき。ガクーでは、社内にディレクション(Web制作全体の進行管理、関係メンバーへの依頼、クオリティとスケジュールをコントロールする役割)人材しかおらず、案件の内容によって適切なパートナーとプロジェクトを進めるというやり方を取っていました。
周りを巻き込む、得意な人と一緒にやる、今思えば「そんなの当たり前じゃん」ということですが、当時の私には目から鱗でした。それくらいビジネスのやり方を知らなかった。そりゃ成功しないですよね。
ー 3つ目の失敗はどんなことでしたか?
起業中に失敗を深掘りしたことですね。当時、あるご縁でつながった知人に誘われるままマッサージサロンをオープンしました。27歳でマッサージサロンのオーナーでした(笑)
新規の集客コストも抑えられ、スタートダッシュは良かったのですが、このときもビジネスのセオリーを理解していなかったことで、投資を加速させるべきタイミングで躊躇したり、必要な成功のための資金を確保できず苦労したり、結果的にやりきるコミット感ももてず、結果撤退することになりました。
ー 激動の失敗人生ですね…。
全てに共通してるのは、ビジネスのセオリーを全く理解してなかったし、学ぼうとしなかったことが原因ですね。一生懸命がむしゃらに頑張ってはいたけれど、正しいやり方で頑張らなくてはならなかった。失敗には必ず理由がある、と、会社員になってから学びました。
ビジネスを「構造的」に見ると、世界が変わる
ー では、そんな失敗を振り返ると、やはり必要なのはビジネスのセオリーを理解する力、でしょうか。
そうですね。でも、ビジネスのセオリーと言うと難易度が高い話になるので、私からおすすめしたいのはその手前、「ビジネスの構造を見極める力」です。
ー 論理的思考からイメージされる構造化とは違うのでしょうか?
おっしゃる通り「構造化」と言うと、ロジックツリーなどを活用して物事の全体像と構成される要素を整理し把握する力をイメージしますよね。でも、わたしが伝えたいことは、本質を見抜くために構造を見極める力です。
少し、背景を説明しますね。私がウィルゲートで新規事業を作ることになったときのことです。ウィルゲートに移って、実績を出せるようになった頃「新規事業の立ち上げを任せたい」と話をもらいました。「やります!」と二つ返事をしましたが、正直心の中は「新規事業っていうか、事業立ち上げ自体やったことないんだけど、どうやるの?何から考えるの?」と不安でした。
でも、やったことないからできませんは勿体ないと思い、まずは成功している会社のことを調べてみることから始めました。何に、どのように、どれくらいのお金をかけているのかなどビジネスモデルについて勉強をしていくと、成功している会社に共通点が見えるようになったのです。
もしかしてビジネスにはセオリーというか基本戦略とか方法論があるんじゃないかと仮説が自分の中に芽生え、50社くらいを調べたあたりで確信に変わりました。
事業の立ち上げは、上手くいってる会社のセオリーを実践していくことから始めました。トライアンドエラーを何度も繰り返しましたがある領域において国内トップクラスのメディアを作り上げることができ、会社にも貢献できたと思います。この経験は自分にとって、すごく大切なポイントになりました。
ー 理論を見える化するということで構造化ですね!
そうです。例えば、おもちゃの仕組みを調べようと解体する子どもいると思うのですが同じイメージです。「これはどうやってできているんだろう」と分解して、仕組みを理解して組み立て直したり、または新しいものへ改造してみたりしますよね。ビジネスも全く同じです。仕組みがわかるとわくわくするし、楽しくなる。
早いうちにやってほしい「マインドマップ」思考のススメ
ー 明日からじゃあ勉強しよう、物事を構造的に捉えよう!と言っても、具体的にどう進めるのが良いでしょうか?
私のおすすめはマインドマップツールの活用です。マインドマップツールとは、アイデアや思考を視覚化できるツールのことで、物事の要素を分解して整理したりまとめたりすることにおすすめです。私自身も、勉強したことの整理や思考をまとめたりするときに毎日使っています。
ツールを使うことで、簡単に要素を因数分解することができ、構造的に視えてきます。視えれば頭に入りやすくなるので、この作業を積み重ねていくことで物事を構造的に考える訓練ができます。
今は無料で使えるツールもたくさん出ているので、誰でも始めやすいと思いますよ。
ー 確かにすぐにできそうです!ちなみに林さんが使っているツールは何でしょうか?
私は、マインドマイスターというツールを使っています。他にもフリーツールはたくさんあるので、自分が使いやすいもの、会社で利用しているものでも大丈夫です。ただし、ビジネス要素を分解して整理するには、紙よりツールを使うことをおすすめします。
何かを勉強する時、クライアントの情報、自社の理解、自分自身の振り返り、などなんでもまずは使って慣れてください。
ー 林さん、貴重なお話ありがとうございました!
寄り道をしたからこそのスピード感ある成長と成功をされている林さん。失敗の学びをしっかりと活かし、原因を思考し、学び、チャレンジする大切さ、そして自分の学びを若手の育成にも尽力する熱い気持ちが印象的でした!
取材/文:BizLog編集長 大久保佳美