特別インタビュー第11弾 雑でいいから前に飛べ。「鈍感力」で粘り勝ち!〜ディップ株式会社 進藤圭さん〜

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明日、今日より少し成長できる。現場で使えるノウハウを先輩から教えてもらう特別企画、第11弾!

本日お話を伺ったのは、ディップ株式会社の進藤圭さんです。

早稲田大学を7年かけて卒業されたのち、新卒でディップ株式会社に入社。ジャンルを問わずいくつもの新規事業を実現させている進藤さんについて、ご自身のキャリア、失敗から得た学び、成長に必要な○○力についてお話を伺ってきました!

進藤 圭
ディップ株式会社 執行役員 次世代事業準備室/dip AI.Lab室長
ディップに新卒入社。開始後3年で15億円の売上に成長した看護師人材紹介「ナースではたらこ」など、40件以上のサービス企画に携わった。直近では、「コボット」を提供するAI・RPA事業に携わり、著書「いちばんやさしいRPAの教本」、「いちばんやさしいDXの教本」も執筆。

在学中に2回の起業と失敗を経験!新卒のキャリアはどう選んだ?

ー 社会人のキャリアを教えてください。

まず、大学在学中に2回ほど起業しました。1回目は人材派遣業、2回目はドロップシッピング(ECサイト運営者が在庫を持たずに販売し、直接メーカーや卸売業者から発送される取引の種類)というビジネスモデルのECサイト運営をしました。結果的に2回とも失敗して、残ったものは借金と卒業単位だけで、7年かけて負債を返済し、卒業しました。

2006年に新卒で入社したのが現職のディップ株式会社で、もう15年になります。他社でもいくつか内定をいただき、インターンで働いて会社を理解した上で決めようと思っていました。

どこもいい会社ばかりでしたが、大手だと提案から実行までのプロセスの長さをネックに感じていた頃、ディップだけが企画を提案したその場で「いいね、やろうよ」と、その場で実行を決めてくれました。当時300人規模の会社にもかかわらずこのスピード感、そしてその企画をそのまま私が責任者として任せてもらえるという流れが肌に合い、入社を決めました。

ディップ株式会社
1997年3月設立。「バイトル/バイトルNEXT/はたらこねっと」等の国内トップクラスの求人メディアを展開し人と仕事の出会いを支援する他、AIやRPAを活用して労働力不足の解消と生産性向上に貢献する。

ー 300人規模で即決とはすごいスピード感ですね。

当時のメンバーは営業が多く、企画ができる人材が少なかったこともあるかもしれません。いいアイデアならどんどんやれよって後押ししてくれる雰囲気が強く、社名の由来にも入っている通りアイデアを大事にするのはディップの文化ですね。プランを出してくることを非常に評価してくれて、私みたいに変わった人を活かせる会社はすごいと思います。

ー ディップに入社されてからのお仕事はどのような内容でしたか?

現在は執行役員 商品開発本部次世代事業統括本部長という肩書きをいただいており、AIやRPA事業も含め40件以上のサービス開発に携わっています。入社当初は営業から始まり、営業企画、商品企画の編集部…などを経験しました。

一つ目の転機は、編集部で商品開発をしていたころです。ちょうど2008年リーマンショック(米の有力投資銀行であるリーマンブラザーズの破綻により、世界的な株価暴落、金融危機を引き起こした)が起こり、ディップの柱であった採用市場は一気に不景気に。ディップはリストラゼロを掲げてましたので、当時練っていた新規事業をやめ、100人くらいの社員を活かせる事業を検討しました。

ここで立ち上がったのが看護師の人材紹介事業である【ナースではたらこ】です。3年で売上15億円の事業に成長させることができ、100人の社員を守れたというのは非常に自分の中で大きかったですね。【ナースではたらこ】以降はずっと新規事業畑を歩んでいます。

ー 数字より社員を守れたことが印象的って素敵ですね。他にもディップさんでの大きな転機となるエピソードがあれば教えてください。

あと2つありまして、1つ目は「聖地巡礼マップ(https://seichimap.jp/)」ですね。ディップは求人の会社なのに、全く異なる領域に進出して、流行語大賞(2016年)も取れて、いまでも成長し続けているサービスを作れたのは「やった!」って思っています。

2つ目は、今手がけているDX系の事業ですね。ディップのビジネスモデルを変えられたということが大きなポイントですね。今までは人材需要に対する供給がメインでしたが、ITの労働力を供給するというモデルに変革できたというのも「やった!」ですね。

新規事業ってどうやって作るの?成功の秘訣も教えて!

ー 40以上の新規事業に携わっているということですが、そもそも新規事業ってどうやって作るのでしょうか?

まず、狙いをつけているマーケットに1週間くらい入ってみて色々な人に話を聞くところから始めます。考えている現場の人になりきるっていうのは、一番最初に必ずやります。中に入って聞いてみると、困っていることや考えきれていないこと、その市場で伸びているサービスなど色々な情報が入ってきます。

次はその情報をベースに、構想が近いサービスを提供している競合さんに「こういうことを考えてるのですが教えてください」と、アポを取ってヒアリングに行きます。

ー 競合に聞きに行くんですか?教えてくれますか?

はい、教えてくれますね。いろんな反応がありますけど、おいしい領域の場合、相手は入ってきて欲しくないからできない理由を教えてくれます。教えてもらったら次はその理由をベースに課題を考えながら組み立てていく流れですね。

ですので、新規事業の領域に対して専門知識がなくても、誰でも問題なく実行できるはずです。だって、やったこないことをやるときって、やったことある人に聞きに行きますよね。自転車に乗れないなら、乗れる人をみて真似しながら練習しますよね。無意識にやっていることを、仕事でも実行しているだけなんですよ。

例えば、聖地巡礼マップを作った時は、コミケやとらのあな、などの業界で有名なお店に一通り行きました。お店に置いてあるアプリやサービスのチラシを集めて、チラシの会社にコンタクトしてヒアリングさせてもらうなんてことをしていましたね。

ー 現場にぐっと入りこんで、ビジネスモデルを模索するということですね。

そうですね。ビジネスモデルが見えない時はそうしますし、課題解決するモデルが見えてるときは、海外の市場を調べて参入を始めることもあります。正解がないので、考えられることをとにかく試している感じですね。

ー ビジネスモデルを考えた後はどのように始めたら良いのでしょうか?

共通しているのは、小さく試してうまくいったものを大きく育てる、ということです。まずは自分一人でやってみます。一人でうまくいったらそのやり方を3人でやってみる。またうまくいったら10人、50人と横に拡大していきます。

例えば聖地巡礼マップもそのやり方で始めました。最初は日本中の聖地4000件が見れますというランディングページ1枚だけ作って興味ある人は登録してもらうボタンだけ付けました。プレスリリースをうったところ、初期で1万人が登録してくれました。これは興味がある人が多いから次に進もう、と決めました。こうやって小さな成功を積み上げて横展開していくという流れが私の中での王道ですね。

「知らない」は強みでもあり弱みでもある

ー そんな進藤さんにも若い頃の失敗エピソードがあれば教えてください。

例えば電車の中吊りに、社名がたくさん並んでいる求人サイトの広告がありますよね。その広告に記載するお客様の社名や電話番号を間違えて出稿してしまい、中吊り広告全てに訂正シールを貼りにいったことは多々あります。あと、タレントさんの画像ルールを知らずに、事務所に無断で利用しそうになり冷や汗かいたこともありましたね。

ー そんなミスをした時代もあったんですね。

そのとき、知らないってことは強みでもあるけど、弱みでもあると実感しました。弱みにならないよう補うべきところは補おうと気を引き締めるきっかけになりました。

あとは新規事業の成功話ばかりしましたけど、それ以上に失敗もたくさんしています。たとえば、めちゃくちゃと時間とお金かけて、コンサルティング会社も入れてしっかり計画作ってプレゼン資料も作って、役員会に上申して練り直して、「いいね!!」って承認されて実行したものにかぎって、よく失敗しました。

ー プロが入って時間をかけてリサーチしてプレゼンして承認を得ても失敗するのはどうしてでしょうか?

理由は3つありますね。

1つ目は練っている間にも市場や環境は変わり続けること

2つ目は計画やプレゼン資料を綺麗につくる必要がないこと

3つ目は関係者多数で、会議で決めていくスタイルに課題があるということです。

1つ目はそのままですね。2つ目は、新規事業は影響する変数が非常に多いので、綺麗に紙でまとめるには不向きです。だから計画やプレゼン資料を綺麗に作り上げる時間は、別のことに充てた方がいい。

そして3つ目はいくら机上で話してても、結局はターゲットの意見じゃないことが多い。承認を得る、意見を聞くということ自体は大切なプロセスですが、相手によって議論するべき内容とスピード感を失わずに進めていくべきだと感じました。

「鈍感力」でいこう!1本のホームランよりたくさんのヒットを

ー では、若い頃必要な○○力について教えてください。

「鈍感力」ですね。雑な力とも言えます。私の実績として、実現したものが氷山の一角として目立っていますが、その背景にはたくさんのプロジェクトを実行させてもらったからに尽きます。ひとつひとつのクオリティがホームラン級だったというより、打席でいっぱいバットを振りまくった結果、前に飛んだものがヒットになったということです。

だから、その分三振しまくってます。ここで大切なのが、多くの人が1回目の三振で心折れてしまうということ。三振なんて当たり前なんだから気にせず、前に飛べばいいやくらいの感覚でどんどん仕事にチャレンジしていくこと。失敗を敏感にとらえず、鈍感力を持って進む強さは大切な要素だと思っています。

ー 確かに失敗すると心折れて、次にチャレンジしにくくなります。

特に若い頃のほうがプライドがあって自分の出すものの品質にこだわりますよね。でも、経験もないのに品質にこだわっても、正直大した差にならなくて、結果時間をかけたのに上司にダメ出しをされることが多いでしょう。

だから、私は自分でルールを決めていて、依頼を受けたらその日のうちにラフにまとめたものを出すことにしていました。当日中だから完成度もへったくれもない。認識や方向性のすり合わせを行い、そこで意見をもらえればすぐに軌道修正ができて翌日にブラッシュアップして出し直せます。

品質にこだわるということも、誰に強制されるわけでもない、自分のルールだったりしますよね。そのルールを一度ぶち壊して、もう少し雑に考えてみることをおすすめします。

ー マイルールを作る、っていいですね。自分で課題に気づいて改善するために具体的にどうしたらいいでしょうか?

1つ目は、引き出しを作るためにそのジャンルの本を読むことを心がけています。2つ目は、そのジャンルに詳しい人のメンターを探します。この2つの材料が揃ったら、あとは考えて実行に移す、ですね。

やってみる、一次情報知ってる人に聞きにいく、二次情報でまとまってる本を読む、この3つを回していくのが私のルーティンですね。

ー ありがとうございます!最後に、進藤さんが今、力をいれてらっしゃるダンスのプロリーグについてお話をお伺いさせてください。

2021年に世界初のダンスのプロリーグ「dリーグ」が発足したことをご存じでしょうか。ディップはスポーツマーケティングの対象としてダンスに昔から注目していました。義務教育化以降、ダンス人口は急増し700万人を突破しました。これは日本で3番目に競技人口が多いスポーツになります。

また、義務教育化以降ということで年代的にも20代以下が中心であり、ディップの主事業である「バイトル」のユーザーとシンクロします。楽天さんやソフトバンクさんのようにユーザーターゲット、ファンターゲットが重なってるところで、プロリーグプロスポーツをやって、ブランド認知を高めようという狙いで始めたのが「ディップバトルズ」です。

でも、誰もダンスの世界も、プロリーグの世界も知らないじゃないですか。だから完全に新規事業だねということで私のところに回ってきました。わたしもダンスのことはよくわからないので必死で勉強しています。

ー 推進していく上で一番の課題はどんなところでしょうか?

1年目なので右も左もわからない試行錯誤っていうのが1点ありますね。もう一つはプロスポーツのチームを支える人材は市場に顕在化していないので採用は課題です。ですので、基本的にはゼロから育てるしかないのかなと思っています。

ダンサーの人たちはみなアルバイトをして生計を立てています。そういう意味でもディップの事業領域とシナジーがある。また、ダンサーの給与が高くないという課題もあります。私たちのチームから給与をあげていき、プロダンサーの地位を向上させていき、アルバイトから夢を叶えていくストーリーを一緒に作っていきたいなと思っています。

ー進藤さん、ありがとうございました!

終始にこやかな笑顔で濃厚なお話をお伺いできました。アイデアを実現できるのは終始謙虚な姿勢と粘り強く継続できる力のたまものだということがビシビシ伝わってくる取材でした!

取材/文:BizLog編集長 大久保佳美

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