明日、今日より少し成長できる。現場で使えるノウハウを先輩から教えてもらう特別企画、第15弾!
今回お話を伺ったのは、マーケティングオートメーションツール「SATORI」を開発・提供するSATORI株式会社の堀康佑さん。
営業部部長として、フィールドセールスやインサイドセールス、パ―トナー(代理店)セールス、営業企画など営業部門全体を統括されています。そんな堀さんに、これまでのキャリアの変遷や失敗エピソードなどから、成長に必要な○○力について聞いてきました!
堀 康佑
1983年生まれ。エネルギー関連会社、ダイレクトマーケティング支援会社で営業職、営業マネージャーを経験後、2017年SATORI株式会社に参画。現在、セールスチームの組織マネジメント、再現性の高いセールスプロセスの構築や、経営戦略などに携わる。2021年7月にはSATORIの男性1人目の育休取得者となり、多様な働き方を体現するロールモデルを目指している。
「ここだけは入りたくない」会社に、あえて就職
ー 今までのキャリアについて教えてください。
新卒で入社したのは、太陽光パネルなどを販売するエネルギー関連会社でした。ゴリゴリの体育会系営業会社で、とにかく仕事はハード。明け方まで働くこともザラでした。
そんな会社を就職先に選んだのは、内定をいただいた会社の中で「一番入りたくない」と思ったからです。もともと営業と体育会系の社風だけは絶対に嫌だと思って就職活動をしていました。
ですが、ふと営業の仕事も知らないし、体育会系に所属したことがないのに、自分はなぜここまで毛嫌いしているのだろう?と疑問に思ったんです。そして、「本当に嫌いか確かめてみよう」という謎のモチベーションで入社を決めました(笑)。
ー 実際に入社してみて、いかがでしたか。
嫌だと思う暇すらないほど、大変でした。法人企業に太陽光パネルなどを営業してエネルギーコストの削減を提案するのですが、とにかく「数字」が第一。悩んだり迷ったりしている時間はなく、「息をするように数字を追え」と骨の髄まで徹底的に教え込まれました。
毎日が戦いのようでしたが、厳しい環境だからこそ目標を達成したときの喜びも大きかったです。入社2年目にはマネージャーに就任、支店の立ち上げも任されるなど順調にステップアップできました。しかし5年ほど走り切ったころ、ふと自分の人生について考える出来事がありました。そこで、
“5年後、10年後、同じような働き方ができるのか”
“一つしかない営業部長の椅子を目指すのが自分のやりたいことか”
という迷いが生じ、1回立ち止まって考えてみようと退職しました。
ー 2社目はダイレクトマーケティング支援会社の営業を選ばれていますね。
退職して何がやりたいのか考えてみたのですが、明確にコレというものは浮かびませんでした。そこで、経験を活かせる会社に応募する中で、選考過程で出会った役員の人柄に惹かれ、2社目の会社へ入社を決めました。ここで、ビジネスパーソンとして必要なものは全て学ばせていただきました。
前職では、営業活動は電話と対面の商談のみで完結したため、メールや提案資料を作る必要はありませんでした。また、契約後は別の部門に引き継ぐため、営業はひたすら売るだけで、顧客と信頼関係を築く必要もありませんでした。
しかし2社目では、自分で見込み顧客を集め、育成し、受注を取る。また、受注後も担当としてサポートする必要がありました。エクセルで顧客リストや数字を管理したり、パワポで営業資料を作ったり、未経験のことばかりで最初は本当に苦労しました。でも、ここでがむしゃらに頑張った経験があったからこそ、今があると思っています。
ー 営業する商材が有形から無形に変わったことに変化はありましたか?
純粋にすごく新鮮でしたね。1社目は「商品の良さを伝え、買ってもらう」というシンプルな営業でしたが、2社目ではまず顧客である企業に入り込まないと、課題をつかみ自社のサービスがフィットするのか判断することができません。
顧客の事業内容はもちろん、収益や人成、事業の展望など、さまざまな情報を理解する必要があり、やりがいがあって面白かったです。会社の仕組みを知ることができたのは貴重な経験でしたし、マーケティングに関するノウハウも一から理解できました。
2社目には約6年在籍しましたが、信頼している社長が退任するのを機に退職を決意しました。営業プレイヤーとしてだけではなく、マネージャーとして事業全体を見る立場も経験でき、次のステップを考えたのです。そして、当時営業として担当していた現在在籍するSATORI株式会社に転職しました。
今までの経験を活かし、ゼロから営業組織を作る
ー 現職に入社したきっかけと今の仕事について教えてください。
前職を退職することになり、担当していたお客様すべてにご挨拶に伺いました。そこで、当時のSATORI社のマーケティング営業部部長だった高橋に「よかったらうちに来ない?」と誘ってもらったのがきっかけです。
当時のSATORIはまだ創業期で、営業専任者はほぼいない状況でした。まさに会社はこれからで、ゼロから自分で会社の成長をけん引できる点に魅力を感じました。
入社してから、自社サービスであるマーケティングオートメーションツール「SATORI」のフィールドセールスとして顧客開拓を担当しました。2年目でマネージャーとなり、営業・コンサルティングやインサイドセールス人材の育成、そして入社5年目の今は、営業部部長としてセールス部門全体を統括する立場にあります。
SATORI株式会社
2015年9月設立。マーケティングオートメーションツール「SATORI」を開発・提供。企業のマーケティング活動を「一歩先へ」進めるための支援を行っている。
ー セールス部門の責任者として、今感じている仕事のやりがいを教えてください。
創業期からいたからこそかもしれませんが、会社の成長を体感できることですね。導入社数も伸びていることもそうですが、お客様から「おかげで事業を伸ばすことができた」という嬉しい言葉をいただく機会が増えているのがなにより嬉しいですね。昔からいたからこそ、SATORIの認知度が上がっていることを体感できるのも個人的にはやりがいになっています。
会社も社員数が100人を超え、メンバーがそれぞれのミッションに向かって努力している姿を見られるのもマネージャーの醍醐味です。営業がほぼいない時代から、ここまで組織が大きくなったことに感慨を覚えると同時に、部長としての責任の重大さも感じています。
SATORIは企業のマーケティング活動を支援する会社ですが、マーケティングの重要性を理解していない日本の企業はまだまだ多いと感じます。もっとたくさんの企業にマーケティングの価値を理解いただき、当たり前のようにマーケティングが行われる世界をSATORIのメンバーと実現したいと思っています。
辛いことがあっても受け流す「鈍感力」が支えに
ー これまでを振り返り、今につながっているような「若手時代の失敗経験」はありますか?
1つの出来事ではありませんが、「キャリア設計をしないまま、ここまで来てしまった」ことは失敗でした。これまで在籍してきた会社や仕事内容に不満もないし、結果オーライではあるのですが、もう少し早く将来を考え、キャリア設計をしておけばもっとスピーディに成長できたのではないかと振り返ることがあります。
遠い将来までは考えられなくても、就職、転職のタイミングで「3年後、5年後どういう状態になっていたいか」をイメージし行動していれば、半分の時間で今の自分に到達できたのではないかと思います。
ー まさに「若いときに身につけておけばよかったスキル」を伺っているのですが、「目標設定力」ということでしょうか。
おっしゃる通りですね。時間軸と目標を立てることができれば、今の自分はいまどこにいるのかを客観的に見ることができます。乖離があれば、埋めるための行動を考えられるようになります。会社選びの軸も明確になるので、キャリアがぶれることもない。
若い人にはぜひ、今の時点で考えられる仮でも小さくてもいいから、目標を立てて行動することをお勧めしたいです。
もちろん立てて終わりではなく、定期的に振り返り、努力する。時期が来たら目標を見直し新たに設定する、ことを繰り返していきましょう
ー 継続ですね。「目標設定力」を身につけ、維持するにあたって、心掛けておくべきことがあれば教えてください。
まずは目標も最初から壮大なものにせず、少しずつ難易度をあげていくことが良いでしょう。自分のスキルや状況に合わせて少しずつ難易度をあげていくことが続けやすいと思います。
合わせて、継続するために必要なことは「鈍感力」です。私の場合、目標もたてず行き当たりばったりで転職先を選んできた割に、大きな失敗をせずに済んでいるのはこの「鈍感力」のおかげだと思っています。
鈍感力とは辛いこと、ストレスに感じることをうまくやり過ごすスキルのことです。辛いことがあると、人は逃げたくなりますが、自分自身からは逃げられないですよね。立てた目標も達成できないことが続けば嫌になってしまう。目標も最初はゆるくてもいいんです。
でも、新しい環境に逃げても、同じようなことがあればまた逃げることになる。つまり逃げることは、本質的に意味がありません。
だからこそ、目の前にしんどい仕事、厳しい目標があっても「仕事だから、こういうこともあるよね」とうまく受け流せたことは強かったですね。目標に向かって苦しいと思ったときこそやり過ごす。やり過ごしていいって思ってあげることでストレスは変わります。
もちろん、心身に影響を及ぼすほどのストレスを感じているのであれば逃げるべきだと思います。ただ、ビジネスパーソンとしてレベルアップするための苦しさには、いつかどこかで対峙しなければなりません。
鈍感力をうまく使いながら向き合い、どうすればクリアできるかを考えることができれば、辛い中でも一歩前に踏み出すことができると思います。
ー いくつになっても困難にぶつかることはある。若いうちに鈍感力を意識しておくと後々役に立ちそうですね。
貴重な話をお聞かせいただき、ありがとうございました!
取材:伊藤理子
編集:BizLog編集長 大久保佳美