明日、今日より少し成長できる。現場で使えるノウハウを先輩から教えてもらう特別企画、第13弾!
今回お話を伺ったのは、株式会社ランドスケイプの執行役員・吉川大基さん。事業開発グループのトップとして、同社の新規事業開発を一手に引き受けています。
そんな吉川さんに、これまでのキャリアや新入社員時代の失敗エピソードを伺いながら、成長に必要な○○力について聞いてきました!
吉川 大基
2000年4月に株式会社ランドスケイプに新卒入社、新規事業開発や広報業務などを手掛ける。2006年1月に通信事業社に転職し、パートナー企業とのアライアンス業務などを担当。2009年6月、ランドスケイプに再入社、法人・消費者DBを活用したマーケティング支援や、戦略策定・事業開発、パートナーとのビジネスモデル構築などに従事。株式会社ビックベースソリューションズ代表取締役を兼務。
多くの企業をデータベースで支援するランドスケイプ
ー 今までの社会人キャリアについて教えてください。
2000年に現在の勤務先であるランドスケイプに新卒入社し、新規事業開発をメインに営業やデータ調査業務などを担当していました。そして6年近く勤めた後、2006年に通信事業社に転職。3年半ほど法人ブロードバンド事業部でパートナー企業とのアライアンス業務を担当し、2009年にランドスケイプに戻り、現在に至ります。
ー 新卒でランドスケイプを選んだ理由をおしえてください。
就職活動をしていた当時はまだインターネット黎明期で、たくさんのネット系ベンチャーが誕生し、急成長していました。就職先としてネット系企業に注目していたのですが、ランドスケイプはデータベースマーケティングの会社として多数の通販をはじめとしたネット系企業をサポートしていて、「多くの企業をデータベースで支援する」という立ち位置に惹かれました。
入社後は、主に新規事業開発に従事。やりがいがある役割ではあったのですが、若手だったので新規事業開発に必要な知識も社内人脈も少なく、0から1を生み出すのに本当に苦労しました。そもそも「新規事業」なので、社内のナレッジも活かしにくい…という側面もありました。
どうすればより良い企画を考えられるようになるのだろう…と模索し続けた結果、「1回外に出て知見を貯めるべきだ」と考え、入社6年目のときに転職しました。
通信事業社を選んだのは、上場企業であり、M2M(Machine to Machine)というネットワークを用いて、異なる機器を結び付けて通信する事業を行っていたからです。業務内容にも興味があったし、上場企業ならではの仕事の進め方を肌で感じてみたいと入社を決めました。
担当していたのは、接続できる機器を拡充することを目的として、さまざまなパートナー企業とアライアンスしていくことでした。前職とは全く異なる業務に携わったことで、視野が広がったと思います。
その後、2009年に同業の企業に吸収合併され、業務内容や社内体制ががらっと変わりました。そこで今後のキャリアを模索していたときに、ランドスケイプから声をかけられ、戻りました。
株式会社ランドスケイプ
日本最大のデータベースを独自構築・維持してきたマーケティングノウハウを柱に、クライアント企業に対して新規顧客の発見と顧客育成を支援しています。
若手時代のアイディアが今、一つの事業として花開く
ー 再入社してから、主にどんな業務を担当されているのですか?
辞める前と同じく、新規事業開発がメインです。そして面白いことに、若手時代に手掛けた新規事業の芽が、今になって花開き始めています。
2003年ぐらいに新規事業の一環として、IPアドレスに企業名を紐づけたデータベースの作成を試みました。これにより、自社ホームページをどんな企業が見に来ているのかがわかるのですが、メディアなど社外の評価は高かったもののうまく事業化できずにいたのです。
再入社後、再びIPアドレスの事業化に着手し、サービス化。現在、さまざまな可能性を模索して、ホームページへのアクセスデータをもとに見込み顧客リストを算出するという、法人見込み度AIスコアリングエンジン「Rating2.0」も開発を進めています。
BtoB企業のマーケティングや営業を効率化できるので、クライアントからの引き合いも増えており、効果事例も増えています。若手時代に自分が考えたアイディアが時を経て形になり、日々やりがいを感じています。
ー 10年超の時を越えて自身のアイディアが世に出て支持されるのは、嬉しいことですね!1回外に出たことで、仕事の進め方やスタンスに変化は生じましたか?
はい。前職でさまざまな外部企業とのやり取りや他業種交流を行う中で、こちらから積極的にコミュニケーションを取り情報交換したりする重要性に気づきました。ただ「聞いた」、「学んだ」だけではダメで、その内容をあくまでもきっかけとして自身の視点に置き換えて視ることを重要視するようになりました。
今では、他部門や外部企業の方々とコミュニケーションを多くとり、自分の視点を増やすことを考えています。特に、コミュニケーションをとる時は、自分の視点だけで考えないようにしています。
あとは視座の高さを上げること。視座の高さは柔軟に変えることができるようになっていると感じます。積極的に社外のセミナーや交流会などに参加したり、情報収集とともに人脈を作ることにより、自分の視点だけで考えず、広い視野で全体像を把握する力につながると思います。
常にアンテナを張り巡らせることで、新規事業開発に必要な情報やナレッジを収集できるし、新たなアライアンスにもつながっています。
入社1カ月目で「前提を疑う」ことを意識
ー 悩み多き若手時代を過ごしたということですが、当時経験した失敗の中で、今も糧となっているようなものはありますか?
入社1カ月目に、ある商品を発注する業務を担当したのですが、発注数量の倍の数が届いてしまい、青ざめたことがありました。
1ロットの商品が「2セットで1つ」として売られていたため、何も考えずに「1つ」発注してしまった結果、倍量になってしまった…という単純ミスです。その商品は無事すべて売れました。簡略してお話ししましたが、入社1カ月目の私にとって、この失敗経験は深い学びになりました。
目の前の数字は果たして正しいのだろうか。自分の思い込みではないのか…といったん立ち止まり、考えるようになったのです。
この失敗経験から学んだのは、「事実は見る人によって異なる」ということ。見る人によってはプラスの事実であっても、他の人にとってはマイナスの事実だったりするので、今、自分の目に見えるものだけを事実として捉えてはならない…と常に肝に銘じています。
「前提を疑う」ことも自分に課しています。「1つは1つ」ではなく「1つは2セット」だったように、前提がズレていると、その後の行動もすべてズレてしまうからです。思い込みを排除し、多方面から見たり、高い視座で見たりする習慣をつけることで、本質が正しく見えてくるようになる。そう考えています。
「視る力」が仕事の精度を高め、モチベーションも上げる
ー では、もしも若手時代に戻れたら、どんなスキルを身につけておきたいと思われますか?
全体像を把握し、相手の立場になって物事を「視る」力です。
新人時代は、視る力がなく柔軟性に欠ける社員だったと思います。新人だから仕方ないのですが、言われたことをそのまま、何も考えずやることも多かったですね。
ただ、その際にもっと、この仕事をする目的や背景、意図などの全体像をきちんと確認しておけばよかったと思っています。そうすれば、指示をする上司の立場や思いなどを理解することができ、もっと自分の仕事に意味を感じられただろうし、視野も広がったと思うのです。
全体像を把握し、相手の立場になって物事を「視る」習慣がつけば、上司はもちろん、社長やクライアントの視点で考えることも容易になります。そうすれば、自分に求められている役割がより詳細につかめるようになり、もっと効率的な仕事の進め方もできたのではないか…と思います。
ー 若手ビジネスパーソンが「視る力」を磨きたいと思ったとき、どんなことをすればいいと思いますか?
大きく3つあると思います。
- 目的や背景(その理由)を理解し、全体像を把握して「視座」を高めること
- 読書や、他業種交流などで「視野」を広げること
- 一つの業務でも他部門、取引先、役員、顧客、同僚など多くの方とコミュニケーションを取り「視点」を増やすこと
ただ、若手ビジネスパーソンの場合、まずは「聞く」こと。仕事を任されたら、これは何のためのものなのかを確認することを習慣づけてほしいですね。
背景や目的を確認しないことには、仕事が「単なる作業」になってしまうからです。「確認できるまでは仕事に着手しない」ぐらいの気構えが重要だと思います。
そして「自己中を捨てる」ことも重要です。自分が見ている景色と、上司やクライアントなどが見ている景色は、基本的には別物だからです。素直かつ謙虚になって、相手の視点をつかみにいく、自分基準で物事を捉えない、という姿勢を大切にしてほしいですね。
これらを意識して行動すれば、徐々に視る力が磨かれ、仕事の成果も上がると思います。求められているものが何かわかるので、仕事の精度が上がり、ダメ出しされる機会もぐんと減るはずです。何より、目的が明確になるので仕事へのモチベーションも上がるでしょう。
ー すべてのビジネスパーソンに必要なスキルであり、姿勢ですね。
そうですね。スキルとは言いづらいですが、重要な姿勢だと思います。
実は、ランドスケイプは日本最大級のデータを保有しており、さまざまなクライアント企業に顧客分析や、市場における顧客開拓のサポートを行っています。そのため、クライアント企業の立場になって、市場全体を可視化することが多くあります。
日々の業務が、クライアント企業に「視る力」を提供しているとも言えます。
ランドスケイプでは、これからもさまざまな角度から「視る力」をクライアント企業にも提供できるサービスを開発し、提供したいと考えています。オフィスも面白いのでぜひご来社ください。
ー 視る力を意識して、日々の業務に臨みたいと思います。吉川さん、今日は本当にありがとうございました!
取材:伊藤理子
編集:BizLog編集長 大久保佳美