「結構です」には文脈の中で、肯定的な意味と否定的な意味の全く正反対の意味合いで使われるとても興味深い言葉です。ビジネスにおける会話やメールなどにおいてもよく使われますので、使い方や類義語に加え英語での言い方まで解説していきます。
「結構です」の意味
「結構です」の意味と敬語表現を解説します。
「結構です」とは
「結構です」には正反対の2種類の使い方があります。1つ目は話の流れの中で、説明された内容を容認する意味で使う場合です。「明朝は7時に出発しましょう。」に対して「結構です」は「承知しました。」という容認や合意の意思表示を表します。2つ目は説明された内容を拒否する意味で使う場合です。「この栄養剤は健康に効果的なので購入しませんか。」との提案に対して「結構です」は「要りません。」「不要です。」という拒否の意思表示に使います。
このように「結構です」は「容認する」「拒否する」という正反対の意味を表す2種類の意味を持つため、会話の中で誤解を生むことがあります。従って、容認の場合は「7時に集合で結構です。」「7時に集合で承知しました。」のように誤解を招かないように返答すべきです。否認の例の場合は「栄養剤は既に持っていますので結構です。」「栄養剤は既に持っているので不要です。」と返答します。
「結構です」の敬語表現
「結構です」の敬語表現は「遠慮いたします」「問題ございません」です。
「遠慮いたします」の「遠慮」は「行動を控える」「行動を慎む」「行動を辞退する」の意味で「結構です」を否定に使う敬語表現です。「辞退いたします」もほぼ同様ですが、「遠慮いたします」と比べより直接的な表現です。使用例を示します。
「問題ございません」は「問題にするほど重要なことではございません」という意味で「結構です」を肯定表現に使う場合の敬語表現です。
- 明日の新製品発表会への参加は遠慮いたします。
- 昨日の対策会議への出席は辞退させていただきました。
- 本日の社内会議を欠席しても問題ございません。
「結構です」の使い方
肯定および否定の意味で使う「結構です」の使用例を夫々あげてみましょう。
肯定の意味で使う
「結構です」を肯定の意味で使う例文です。
- 今週は定時で上がってもらって結構です。
業務の終了時間に関して「定時で終了することを許可もしくは許容」の意味で返答する表現です。 - 開始時間までにまだ余裕があるのでゆっくり出発していただいて結構です。
社外会議への出席のための出発時間に関して「ゆっくり出発することを許容もしくは容認」の意味で返答する表現です。 - 重要な説明だけで結構ですのでお願いします。
製品説明会における説明範囲の分担に関して「重要な部分の説明のみでもお願いしたい」の意味で返答する表現です。
否定の意味で使う
「結構です」を否定の意味で使う例文です。
- 明日の会議への参加は結構ですので早めに退社ください。
明日の会議に関して「参加しなくてもよい」の意味で返答する表現です。 - 参加者全員の合意までは結構です。
例えばルール決めなどに関して「参加者全員が合意することまでは求めていない、不要である」の意味で返答する表現です。例えば「過半数の参加者が合意すればよい」という意味です。 - 先日の会議の資料をご提供させていただきましょうか。結構です。
会議資料提示の提案に対して「必要ありません、不要です。」の意味で返答する表現です。
「結構です」を使う場合の注意点
「結構です」を使う場合の注意点を解説しましょう。
「結構です」は上司や目上の人には使わない
「結構です」は基本的に同僚や部下などに対して使う言葉で上司や目上の人には使うべきではありません。 もともと目上の人が下の人に対して許可を与える場合に使っていた言葉です。このため「結構です」という言い方が上から見下ろしたような印象を与えます。
例えば上司に対して「明日の会議に出席いただかなくても結構です。」は違和感があります。「明日の会議は私が対応いたします。部長へは後日、結果を報告いたします。」により間接的に「出席不要」とするのが正しい対応です。部下に対して使用することは問題ありません。「他の業務が忙しければ、明日の会議に出席しなくても結構だから。」という言い方になります。
「結構です」は冷たい印象を与える
「結構です」は一見すると丁寧な表現のようにも聞こえますが使い方によっては必ずしもそうとは限りません。 「次回のプレゼンはAさん、チャレンジしてみませんか」といわれ、断りたい場合に単に「結構です。」という表現を使うと冷たく突き放した印象を与えてしまいかねません。「まだまだ力不足と思いますので結構です。もう少し経験を積んでからとさせてください。」「まだまだ力不足ですので、また次回にチャレンジさせていただきたいと思います。」のように客観的に納得できる理由を含めて説明した上で断ることが必要です。
「結構です」の類義語・言い換え
肯定および否定の意味で使う「結構です」の類義語を夫々あげて解説します。
「結構です」の肯定の意味の類義語
「大丈夫です」「構いません」「問題ありません」などが肯定の意味で使われる類義語です。
- Aさんの提案で大丈夫です。
「(Aさんの提案はしっかりと考えられていると思いますので)Aさん案をクライアントに提案しましょう。」という提案内容を肯定し、合意する表現です。 - 明日の出張にBさんが同行しなくても構いません。
「明日の出張にBさんに同行してもらわずとも大丈夫です。(私1人で出張し顧客対応可能です。)」という意味で使っています。 - 来週の会議でプレゼンを行うことは問題ありません。
「来週の会議でプレゼンしてくれませんか」の問いかけが、この例文の前にあり「来週の会議でプレゼンができます。問題ありませんよ。」という意味で使っています。
「結構です」の否定の意味の類義語
「お気遣いなく」「遠慮いたします」「十分です」などが否定の意味で使われる類義語です。
- 既に昼食は済ませてしまいましたのでお気遣いなく。
先輩や同僚から昼食の誘いを受けた際に、既に済ませていて誘いを断る場合に使います。 - 明日の会議への出席は遠慮いたします。
上司から会議への出席の要請があった場合に「明日の会議へは出席できません。」と直接的な言い方をすると不快に思われる場合があります。このような場合に「遠慮いたします」とすることで少しでも和らげて断れます。 - お願いした以上の値引きをいただきましたので、この金額で十分です。
物品購入前の価格交渉において、販売元から十分な値引きの提示があり、「提示いただいた価格で十分に満足していますのでこれ以上の値引きまでは不要です。」と断る場合の表現です。
「結構です」の英語表現
肯定および否定の意味で使う「結構です」と同様の意味の英語表現をいくつか紹介していきます。
肯定する表現「I’m good.」
「大丈夫です」の意味として使われます。 相手の提案や申し入れなどに対して、カジュアルに冷たく感じることなく柔らかく断る場合によく使われます。
肯定する表現「I’m fine.」
「I’m good.」とほぼ同様の意味ですが、比較すると 若干フォーマルな意味合いがあります。
否定する表現「No, thank you.」
「結構です。」「もう要りません。」の意味として使われます。レストランなどで、「もうこれでおなか一杯なので結構です。」という場合に使いますが、ちょっと冷たく聞こえる表現なので、「No, thank you.」よりも「I’m good.」や「I’m fine.」を使った方が優しく聞こえます。
否定する表現「No, thanks.」
「No,thank you.」と同様の意味で使いますが 「No, thanks.」はカジュアルな表現です。
まとめ
「結構です」は肯定的な意味で使う場合と否定的な意味で使い場合があり、話や文章の流れの中で解釈して判断し、それに応対しなければなりません。 また目上の人や上司に対して使うことは避けなければなりません。以上の基本的なポイントを理解した上で使いこなしていきましょう。