「聞きました」は「聞いた」の敬語表現。自分が聞いたのか相手が聞いたのかで「聞いた」の表現方法が違います。ビジネスにおいては手紙やメールなどは違った表現方法があります。尊敬語、謙譲語、丁寧語、美化語など、正しく失礼のない使い方をしましょう。
「聞いた」の正しい敬語表現とは?
ビジネスでは上司や取引先と尊敬語を使うことが多くあるでしょう。「敬語」には、尊敬語・謙譲語・丁寧語・美化語などがあります。「聞いた」という言葉は、自分と相手により使い方が違います。尊敬語と謙譲語を混ぜて使ってしまうことがありますので、社会人として間違った使い方をして相手に不快な印象をあたえないようにしましょう。「聞いた」の正しい使い方をその場の場面にそって紹介します。
「聞いた」の尊敬語
「尊敬語」は相手に敬意を示し、相手を高める表現方法です。「聞いた」の尊敬語は「お聞きになりました」や「聞かれました」そして「お耳に入った」です。上司に対して「聞いた」の尊敬語表現を用いた例文を紹介します。
- 会議の内容をお聞きになりましたか?
- 本日の会議の内容はもう聞かれましたか?
- 昨日の結果は、もうお耳に入りましたでしょうか?
「聞いた」の謙譲語
「謙譲語」は自分をヘくだ下し相手を高め尊敬する表現方法です。「聞いた」の謙譲語は「伺った」「拝聴した」です。上司に対して「聞いた」の謙譲語を用いた例文を紹介します。
- 課長から直接お話を伺いました。
- 私から課長へお話を伺いましょうか?
- 先日、先生の講演を拝聴いたしました。
ここで、間違った例を紹介します。よく耳にする言葉です。
・「お名前を頂戴してもよろしいでしょうか?」や「お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」は、正しい言い方は「お名前をお聞きしてよろしいでしょうか?」です。名前を頂戴するのは自分なので、相手の動作に対して、丁寧な言葉で表現します。
・「受け付けに伺ってください。」は、受け付けに行くのは相手なので「受け付けにお聞きしていただけますか?」と相手の行動に対して、丁寧な表現に変えます。
・「もう拝聴されましたか?」は、相手の行動を第三者にへりくだっている表現になります。謙譲語は使わず「もうお聞きになりましたでしょうか?」と尊敬語を使いましょう。
「聞いた」の丁寧語
「丁寧語」は丁寧な言い方に変えた表現方法です。自分をヘリくだしたり相手を高めたりするのではなく、やわらかい言葉に変えます。「聞いた」の丁寧語は「聞きました」を用いた例文です。
- 職場で大変活躍していると聞きました。
- もう会議は終わったと聞きましたが、本当ですか?
- もうお帰りになったと聞いています。
「聞いた」の美化語
「美化語」とは敬語のひとつです。名詞のまえに「お」や「ご」をつけて上品さを表現します。「聞いた」を美化語にすると「お聞きになった」となります。「美化語」には和語には「お」、漢語には「ご」をつけるという決まりがあります。和語は漢語が伝わる前から日本にあった語、訓読みの語です。漢語は中国から伝わって日本語となった語、音読みの語です。例外もいくつかあり「お掃除」や「お電話」は漢語。「ごゆっくり」や「ごもっとも」は訓語です。
社内やビジネスでの「聞きました」の使い方
ビジネスシーンで使われる「聞きました」を自分が聞いた場合と、相手が聞いた場合に分けて例文を紹介します。聞いたことを話す相手が誰かによって、全体の文章の表現が変わります。相手から内容を聞きたいときには「伺う」を使います。「伺ってもよろしいでしょうか?」、相手から許可を取りたいときは「お聞きしてもよろしいでしょうか?」です。
社内で自分が聞いた場合
社内で自分が「聞いた」場合の例文です。
(上司)次の会議は、君が司会することになっているけど、もう聞いた?(自分)はい、先ほど聞きました。(はい、先ほど伺いました。)
「聞いた」を「聞きました」と丁寧な表現にしています。
社内で相手が聞いた場合
社内で相手が「聞いた」場合の例文です。
(相手)この件については、このような解釈でいいですか?(自分)はい、何でもご不明なことは、お聞きください。(お尋ねください。)
「聞いた」のは相手、自分は答える側なので自分をへりくだるのではなく、相手を高める言い方の尊敬語の表現にします。
身内から聞いたことを相手に伝える場合
社内や身内から「聞いた」ことを相手に伝える例文です。
- 妻から聞いたのですが、課長と出身地が同じなそうです。(「妻から伺う」は使わない)
- 父からそう聞いております。(「父から伺っております」は使わない)
- 課内のものがそのように申しておりました(「~そのように伺っております」とは使わない)
社内や身内のものが話したことを第三者に伝えるときは、敬語を使いませんので注意しましょう。
手紙やメールで「聞きました」を使うとき
ビジネスシーンにおいては、手紙やメールは受け取る相手が一人だけではなく多数の場合や、取り引き先の場合、目上の人のこともあります。ビジネスでの手紙やメールに「聞いた」を使うときは「拝聴いたしました」「拝聞いたしました」を用いるといいでしょう。例文を使って解説します。
「拝聴」「拝聞」の使い方
「拝聴」や「拝聞」は最も敬意を表していますので、日常で使うには少し堅苦しいイメージになります。「拝聴」や「拝聞」が耳から入ってくると重く感じますが、文章など目から入ると、「聞いた」が「しっかり聞いてくれたんだな」と解釈され、良い印象をあたえるでしょう。「拝聴」は文章でお礼を伝えるとき使います。
手紙やメールでの例文
「聞いた」を「拝聴」や「拝聞」の例文を紹介します。
- 妻から聞いたのですが、課長と出身地が同じなそうです。(「妻から伺う」は使わない)
- 父からそう聞いております。(「父から伺っております」は使わない)
- 課内のものがそのように申しておりました(「~そのように伺っております」とは使わない)
「聞きました」の言い換え表現
「聞きました」を「伺いました」や「尋ねました」でも表現できます。自分が聞いたことを話すときと、相手が聞いてきたときとでは表現方法が違いますので例文を参考にしましょう。
自分が聞いたときの別の表現法
自分が聞いたときの別の表現方法です。
- (上司に対して)私から伺いましょうか?(私から尋ねましょうか?)
- 私が訪問先を伺ってきます。
- 調査結果をお尋ねしたい(お伺いしたい)のですが、いかがでしょうか?
相手が聞いたときの別の表現法
相手が聞いたときの別の表現方法です。
何でもお伺いください。(何でもお尋ねください。)
「聞きました」の英語表現
英語では「~聞きました」は「 I heard froom~」や「~told me」などの表現方法があります。ほかにも、「asked」を用いた表現もあります。
英訳
「 I heard froom~」を用いた例文を紹介します。
- I heard froom her the other day.(つい先日彼女から連絡がきた。)
- I have not froom her in while.(最近彼女から連絡がこない。)
この使い方は、うわさを聞いた、真実かどうか曖昧というニュアンスが強く「連絡がきた」と解釈します。
英訳
「聞いた」は「~told me」を用いたほうがニュアンスが近くなります。使い方は「名詞」+「told me that」+「内容・情報」になります。「~told me」を用いた例文を紹介します。
- She told me themeeting got cancelled.(彼女からミーティングが中止になったことを聞きました。)
- She told me you were late to the meeting yesterday.(彼女からあなたが昨日ミーティングに遅れてきたと聞きました。)
「told」は直訳すると「言った」になり違和感がありますが、アメリカでは「~told me」の使い方が一般的です。
まとめ
「聞いた」の敬語の使い分けのポイントは、自分が誰から聞いて誰に話すのか、どの立場にいるのかいうことです。「聞いた」は上司や取引先には「尊敬語」を、手紙やメールでは「拝聴」や「拝聞」を、目下の自分の動作を表現するのには「伺う」「拝聴する」といった謙譲語を使います。就活などでの面接時には、自分をへりくだった言い方「謙譲語」を上手に使いましょう。ビジネスシーンで丁寧な会話、きちんとした敬語表現は信頼性を高めるでしょう。美化語表現も覚えておくと役立ちそうです。敬語表現は日本古来のもの、上手に使い分けましょう。