「法人」という言葉はよく聞きますが、「法人格」はあまり、なじみのない言葉ですよね。ですが、「法人格」には社会人と密接に関わる要素が多く含まれています。いざというときに恥ずかしい思いをしないよう学んでいきましょう。
「法人格」の意味とは?
「法人格」とは法に権利義務の主体となることを認められた人格のことです。広い意味では「自然人」と「法人」に分けられ、ビジネスの世界では狭い意味での「法人」のことを表しています。
人格と聞くと、人柄や人間性を連想しますが、この「法人格」はあくまでも私たちが日常で行使する権利と税金を納めるなどの義務を負うための資格のようなものです。
自然人は生きている人間を指す
自然人とは生きている人間のことをいいます。記事の読者も会社の同僚も学生も自然人に当てはまります。
広い意味では自然人はすべて、法人格を有します。
法人は人や財産の団体
法人とは目的をもって集まった人や財産のことを指します。簡潔に表現すると、個人と同じようなことができるように、法的に認められた団体のことです。これにより、銀行口座をいわゆる法人名義にできるようになります。
法人格否認の法理とは
法人格否認の法理とは法人格を守るために存在しているものです。もともと、法人格は団体そのものを権利義務や取引の主体とした方が国家経済にとって有用であるといった考えから生まれた人格です。
もし、法人格を悪用し脱税など、会社の信用や悪影響を及ぼす事件があったとします。このように逸脱した行為から発生した問題を解決するために「法人格否認の法理」が適用されます。
法人格否認の法理が適用されると会社ではなく、違反した個人がターゲットとなり、会社が責任を負う必要がなくなります。
「法人格」の種類
法人格は大きく分けると「公法人」と「私法人」に分けられます。
「公法人」は行政や地方自治体、NHKなど公の事務処理団体を指します。一方で「私法人」はさらに「営利法人」、「非営利法人」にわけることが可能です。
この項目では主に「私法人」の種類について解説します。
営利法人
営利法人とはビジネスで得た利益を社員や株主に分配することを目的とした法人です。営利法人の代表例といえば「株式会社」ですがもうひとつに「持分会社」があります。
株式会社
株式会社は発行された株式を、投資家たちに購入される形で調達した資金から事業を行う法人です。利益の一部を、株主に配当します。責任範囲が有限であるのが特徴です。また、経営方針の決定権は株主にあります。
設立時に必要な社員数は1名以上です。
持分会社
持分会社とは会社の所有権と経営者が一致している会社です。そのため、出資をしたとき、会社の所有権と経営権の両方が手に入ります。
持分会社は以下の3種に分けられます。
- 合同会社
- 合資会社
- 合名会社
合同会社は全員が有限責任です。合資会社は有限と無限、合名は無限責任となります。無限責任の場合、会社が倒産した場合、債権者に個人の財産を投げうってでも会社の借金を支払う必要があります。
合同会社と合名社員は設立時の社員数は1名以上ですが、合資会社は有限責任社員および無限責任社員1人(合計2人)以上必要です。
非営利法人
「非営利法人」は営利を目的にしない法人のことです。利益の分配を行わないだけで利益を全く出していないわけではありません。ただし、得た利益は必ず活動目的のために使わなければなりません。
非営利法人で代表的なのが、「NPO法人」「一般社団法人」「一般財団法人」です。
NPO法人
NPO法人は持続的な社会貢献活動を目的に作られたボランティアの集団です。設立するメリットとして設立費用と税金において営利法人より優遇されることがあげられます。
ただ、設立までに最大で3カ月と2週間かかる場合があり、設立には「社員が10人以上」、「20種類の特定非営利活動に該当する」などの要件をクリアする必要があります。
20種類の特定非営利活動は例として次のような活動があげられます。
- まちづくりの推進を図る活動
- 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
- 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
一般社団法人
一般社団法人は社員数が2名以上であれば、法務局への登記で比較的かんたんに法人格を取得できます。設立の時間も2週間ほどと、NPO法人よりかなり短いことがわかります。
事業内容もNPO法人のように、活動内容に制限がありません。
一般財団法人
一般財団法人は寄付も含む一定の財産に法人格が与えられたものです。設立の条件に事業内容や公益性は問われていません。財産の合計が3,000,000円であり、その財産を事業のために運用していくことが条件になります。また、設立には理事3人、監事1人、評議員3人以上、計7名が必要です。
一般社団法人との違いは資金面に重点が置かれていることです。
「法人格」を取得するメリット
手続きが複雑なものも含まれる中、「法人格」取得にはどのようなメリットがあるか気になりますよね。
この項目では「法人格」を得るメリットについて解説します。
社会的信用が高くなる
法人格を取得することで得られるメリットの1つは社会的な信用度が高くなることです。法人格を取得している状態は責任がどこにあるかがはっきりしているため、取引相手も信頼して取引ができます。また、会社法のように法律に基づいて運営される点も信用度の高さの理由でしょう。
こうした社会的信用度の高さから個人事業主よりも融資を受けやすくなります。また、法人としか取引しない企業とも取引が可能になります。
税制が優遇される
続く、2つ目のメリットは税制面で優遇され、節税になることです。個人事業主には所得税が課され、法人には法人税が課されます。所得税よりも法人税の方が課される税率が低く、個人事業主より、事業活動に必要な経費にできる範囲が広くなり、結果的に節税対策になります。
他にも、税制だけでなく、補助金や助成金を受けやすいのもメリットの1つです。
責任が有限
法人格を取得することで責任の所在がはっきりします。株式会社や合同会社は有限責任なので社長個人が責任をとることは基本的にありません。株主も同様です。
つまり、株式会社など有限責任の法人が第3者と契約した場合、契約したのは株式会社であって、社長個人ではないので契約の責任を負う必要がなくなります。
「法人格」の位置
「法人格」になじみのない人は、法人格の位置についてどういったものかは想像しにくいかと考えられます。法人格の位置は会社名に「株式会社」を前につけるか後ろにつけるかといったものです。
株式会社など法人格を表す文字は法律上、会社の名前に必ず含める必要があります。前につけるか後ろにつけるか気になりますよね。次は、法人格の位置について紹介します。
法人格の位置にとくに決まりはない
法人格の位置には特に決まりはありません。前につけることを前株、後ろにつけることを後株といいます。
前株と後株の多さは時代によって変化するようであり、創業が古い会社は後株が多く、比較的新しい会社は前株が多いようです。
「法人格」の略称
法人格は略称で表すこともあります。
以下に今回紹介した法人格の略称をまとめました。
- 株式会社(株)
- 合名会社(名)
- 合資会社(資)
- 合同会社(同)
- 一般社団法人(一社)
- 一般財団法人(一財)
「法人格」の英語表現
法人格は英語で「Legal personality」といいます。「Legal」は日本語で「法律上」、「法的」のを意味し、「personality」は「人格」を意味します。
例文にすると以下のようになります。
- Obtain legal personality to do business with corporations.
法人と取引するため法人格を取得する。 - The advantage of acquiring a legal personality is that it is a tax-saving measure.
法人格取得のメリットは節税対策になることです。
まとめ
法人格とは権利と義務を持つ、法的な地位を与えられた人格です。法人格をわけると自然人と法人になります。それぞれ一言で、自然人が個人、法人が集団と表せます。
法人格には営利法人と非営利法人にわけられ、営利法人には株式会社や合同会社などが該当します。非営利法人はNPO法人や一般社団法人、一般財団法人が有名ですね。
法人格取得のメリットは社会的信用の向上、節税対策などがあります。将来、会社の設立を考えている場合は、知っておきたい内容でしょう。