「元も子もない」の意味は「全てを失う」です。 「 全てを失う」という意味からわかるように、この言葉はネガティブな場面で使われます。よく似た意味をもつ「身も蓋もない」との使い分けも難しいところです。この記事では、「元も子もない」と「身も蓋もない」の違いや、意味、読み方、由来、類義語・言い換え、ことわざ、英語訳について解説します。
「元も子もない」の意味とは?
ここでは「元も子もない」の意味を説明します。「元も子もない」には、他にもよく似た意味の言葉がたくさんあります。それらの言葉との違いを理解するためにも、まず「元も子もない」という言葉の意味やニュアンスをしっかり掴んでおきましょう。
「元も子もない」は「すべてを失う」こと
「元も子もない」の意味を端的に表現すると「全てを失う」ことに尽きます。「当初目的にしていたことが失われるだけでなく、予期せずに今まで大切にしていたものまで思いもよらず失われてしまうこと」を指します。
全てを失うという意味からわかるように、この言葉はネガティブな意味で使われます。日常生活においても、ビジネスシーンにおいてもよく使われる言葉であるため、是非使い方を覚えておきましょう。
「元も子もない」の由来
ここでは「元も子もない」の由来について解説します。「元」や「子」にはそれぞれ対応する意味があります。これらの意味を知っていることで、この言葉のもつニュアンスを深く理解できます。
「元本」と「利子」両方なくなること
「元も子もない」の「元」とは元本のこと、子とは「利子」のことを指します。投資をするときに最初に投入する資産のことを「元本」と呼び、元本の額に対応して手に入る利益を「利子」と呼びます。 つまりこの言葉は投資をして利益を得るつもりが、元本ごと失ってしまった状態を表します。当初の目的は「利子を受け取り、利益を上げること」、予期せず失ってしまったものは「投入した元本」のことを指します。
つまりこの言葉は、投資やビジネスといったチャレンジに負けてしまった状態から生まれた言葉です。実際に日常生活に使われるときは、本当に元も子もなくなってしまった状態に使うことよりも、「このままでは元も子もなくなってしまう。」のように将来を予期して使われることが多いです。
「元も子もない」の読み方
「元も子もない」は「もともこもない」と読みます。「元」という漢字が「本」と置き換わって「本も子もない」と表記してある場合もありますが、本来正しいのは「元本」を意味する「元」を用いた「元も子もない」になります。音が同じであるため紛らわしいですが、使い方に注意しましょう。また、しばしば「本」が使われていることもありますが、「元も子もない」と同じ意味ととらえて問題ありません。
「元も子もない」と「身も蓋もない」の違い
ここでは「元も子もない」と「身も蓋もない」の言葉の違いについて紹介します。それぞれの言葉の由来をたどると、その本質が見えてきます。どういったタイミングで使われるかを気にしながら見ていきましょう。
「元も子もない」は「すべてがなくなってしまうこと」
「元も子もない」の由来にもあった通り、この言葉は元本も利子も失ってしまった状態を表しています。すなわち、目論見では得るはずだったものを失うことばかりか、今まで手元にあったものまで失ってしまった状態です。全てを失ってしまった絶望的な状態を表すときに使います。「~も~もない」という表現は日本語で多数存在します。これらの言葉は似たような意味を持つパターンが多いです。こういった言葉の由来を一つずつ知ることで言葉の意味とニュアンスを理解でき、正しい使い分けができるようになるでしょう。
「身も蓋もない」は「表現がストレートすぎること」
「身も蓋もない」とは「ストレートすぎる表現のせいで味わいがない状態」を表します。周囲の人が遠慮して言えないようなことを、ずけずけと表現してしまう様を表す言葉です。「身」とは「容器」のことを指し、容器も蓋も付いていなくて中身がむき出しになっているさまからこの言葉が成り立っています。このように「オブラートに包まれていない表現」を「身も蓋もない」と表現するようになりました。
似たような言葉として「歯に衣着せぬ」という言葉があります。この言葉は「周りが言いにくいことをきっぱり言ってくれる」といった肯定的なニュアンスがあります。それに対し、「身も蓋もない」は「そんな言い方しなくてもいいのに…」というように否定的なニュアンスを持ちます。同じ状況を表現していても周囲の評価によって使う言葉が変わるので注意しましょう。「元も子もない」とは発音の構造はよく似ていますが、そのニュアンスが大きく異なります。使うタイミングを間違えると誤解を招く危険性があるので、それぞれの言葉の意味をしっかり理解して使い分けるようにしましょう。
「元も子もない」の類義語・言い替え
「元も子もない」の類義語や言い換え表現について解説します。それぞれの言葉の実は元も子もないとほぼ同じですが、注目しているポイントや持っているニュアンスが若干異なります。そういった点まで意識してこれらの言葉を使えると、より正確な日本語を操れるようになるでしょう。
「無に帰する」
「無に帰する」には「再び何もない状態になる」という意味があります。「帰する」という言葉は、「もともと何もないところからひとつずつ積み上げてきたものが、何かをきっかけに再び何もない状態に戻ってしまう」といった状態を指し示しています。つまり、何もない状態になるという点においては「元も子もない」と同じ意味に捉えてよいでしょう。その由来においては若干の相違はありますが、「全てを失う」 という意味において「無に帰する」と「元も子もない」は共通しているため、同じタイミングで使って問題ありません。
「無駄になる」
「無駄になる」は、「目的としていた効果が最後まで発揮できなかった」という意味の言葉です。「元も子もない」は「最後まで期待していた利益を出せなかった状態」を意味するため、 この2つの言葉は類語であると言えます。ただ、「元も子もない」には、「今まで積み上げてきた元本まで失ってしまう」という意味が含まれるのに対し、「無駄になる」にはそういった意味がありません。つまり、「元も子もない」の方が「無駄になる」よりも深刻な状態を表しています。とはいえ、ニュアンスはおおむね同じであると考えて問題ありません。
「台無し」
「台無し」は「ここまで積み上げてきたものが全てなくなる」といった意味で使われます。「元も子もない」も今まで積み上げたものを失うという意味があるため、これら2つの言葉を同じ意味であると言えます。「台無し」は「今まで積み上げてきたものがなくなる」という点にフォーカスしているのに対し、「元も子もない」は「今まで積み上げたことを失う」ことに加え、「この先の利益も失う」というニュアンスも兼ね備えています。つまり、「台無し」と「元も子もない」はほぼ同じ意味と捉えても問題ありませんが、「元も子もない」の方がこの先の利益に対する執着心を表現できていると言えます。
「元も子もない」の使い方と例文集
「元も子もない」の使い方や例文を紹介します。どういったタイミングで「元も子もない」という言葉が使われるか見ていきましょう。
「元も子もない」の使い方
「元も子もない」という言葉はその絶望的な状態から、本当に元も子もない状態になってしまったときに用いられることは少ないです。 よく使われるのは忠告するタイミングです。「このままでは元も子もなくなってしまう。」という予想が立ったときに、相手に対して「元も子もない」という表現を使うことがあります。多くの場合相手のためを思ったアドバイスで使われるため、この言葉で忠告を受けた場合は一度自分の行動を振り返るのがよさそうです。
「元も子もない」の例文
「元も子もない」を使った例文を紹介します。
- 君は少し休んだ方がいい。このまま無理をして勉強を続けて、試験当日に体調崩してしまっては元も子もない。
- この計画は無理に実行すれば、元も子もなくなる可能性が高い。
- 家庭のために仕事に没頭しても、家庭を顧みる余裕をなくしてしまっては元も子もない。
- 仕事を沢山してお金を稼いでも、体を壊してしまっては元も子もないから無理は禁物だ。
- 元も子もないことをしている自分にうんざりして、嫌気がさす。
「元も子もない」に関連することわざを紹介!
「元も子もない」に関連することわざを紹介します。ここでは特に「元も子もない」と反対の意味をもつことわざを2つほど例にあげます。これら2つのことわざの意味や由来も同時におさえておきましょう。
「濡れ手で粟」
「濡れ手で粟」は「やすやすと手に入れること」を表現したことわざです。「粟」は穀物の一種で昔の貧しい農民が主食としていました。濡れた手で粟に触れると、触れることなく手の表面に粟が付着することからこのことわざが生まれました。「全てを失ってしまう」という意味の「元も子もない」とは、全く逆の意味であると言えます。
「漁夫の利」
「漁夫の利」は「苦労することなく利益を手に入れること」を表現することわざです。その由来は、「シギ」という鳥とハマグリが争っているところに横から第三者の漁夫が現れて、両方とも捕まえてしまうという話から来ています。この言葉も「元も子もない」とは反対の意味のことわざです。
「元も子もない」の英語訳
「元も子もない」を英語で表現すると、「losing everything」や「coming to nothing」という表現になります。この表現からは「全てを失う」という意味が伝わってくると思います。また、「Then that means I lost everything.」というような使われ方をし、これは「それじゃあ、元も子もないじゃないか。」という日本語訳になります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は、「元も子もない」の意味や使い方、由来、「身も蓋もない」との違い、類義語・言い換え、対義語、「元も子もない」に関することわざ、英語訳について解説しました。
最後に「元も子もない」のまとめです。
- 「元も子もない」の意味は、「すべてを失うこと」です。
- 「元も子もない」の由来、「元」とは元本のこと、子とは「利子」のことを指します。投資をするときに最初に投入する資産のことを「元本」と呼び、元本の額に対応して手に入る利益を「利子」と呼びます。つまりこの言葉は投資をして利益を得るつもりが、元本ごと失ってしまった状態を表します。
- 「元も子もない」は「もともこもない」と読みます。
- 「元も子もない」と「身も蓋もない」の違いは、「元も子もない」は「全てがなくなってしまうこと」、「身も蓋もない」は、「表現がストレートすぎること」を言います。ほかにも似たような言葉として、「歯に衣着せぬ」という言葉もあります。意味は「周りが言いにくいことをきっぱり言ってくれる」です。
- 「元も子もない」の類義語・言い換えは、「無に帰する」「無駄になる」「台無し」があります。
- 「元も子もない」に関することわざは、「濡れ手で栗」「漁夫の利」です。
- 「元も子もない」の英語訳は、「losing everything」や「comig to nothing」という表現になります。