履歴事項全部証明書は、会社が融資や決算報告を行うときなどに提出を求められる書類です。法務局で取得できます。取得に必要な手数料や手続き、履歴事項全部証明書の有効期限について、本記事でわかりやすく解説します。
「履歴事項全部証明書」とは?
「履歴事項全部証明書」は法務局に登録されている証明書です。例えば会社で銀行口座を開設する際や、社会保険手続きで提出を求められる書類になります。会社情報に加え、過去の役員、商号等の変更履歴が記載されています。
「履歴事項全部証明書」は「現在事項証明書」と「代表者事項証明書」に記載される内容も含まれます。税務署や銀行などへの提出が求められる場合、履歴事項全部証明書を取得すればまず問題ないです。また、不動産登記の申請書に「代理権証明情報」や「住所証明情報」の添付が必要な場合も、履歴事項全部証明書が使用できます。
記載される事項
「履歴事項全部証明書」に記載される事項は以下の通りです。
- 会社所在地
- 会社名
- 法人番号
- 商号 / 内容変更年月日 / 登記年月日
- 本店所在地 / 移転年月日 / 登記年月日
- 公告方法
- 会社設立の目的(事業内容)
- 発行可能株式総数
- 発行済株式の総数並びに種類及び数
- 株券を発行する旨の定め
- 資本金額
- 株式の譲渡制限に関する規定
- 役員に関する事項 / 役職 / 氏名 / 重任年月日 / 登記年月日
- 取締役会設置会社に関する事項
- 監査役設置会社に関する事項
取得が必要なタイミング
履歴事項全部証明書を含む「登記事項証明書」が必要になるタイミングは以下が考えられます。
- 会社設立の届出
- オフィスの移転
- 社会保険加入手続き
- 補助金などの申請
- 社名の変更
- 銀行口座開設
- 銀行から融資を受ける
- クレジットカードの契約
- 携帯電話の契約
- 決算報告を行う
誰でも取得できる
履歴事項全部証明書は、所定の手数料を支払うことで誰でも取得できます。代表者以外でも問題なく取得可能で、書面や印鑑の押印なども不要です。例えば自らが運営する、または所属する企業以外の履歴事項全部証明書を取得することもできます。交付申請書に必要事項を記入して提出することで取得申請が行えます。
登記事項証明書の中の一つである
「履歴事項全部証明書」は「登記事項証明書」の中のひとつです。「登記事項証明書」は以下の4つの証明書で構成されます。
- 履歴事項証明書
- 現在事項証明書
- 閉鎖事項証明書
- 代表者事項証明書
これらは会社情報が記載された登記簿の写しになります。履歴事項証明書には「現在事項証明書」と「代表者事項証明書」に記載される内容が含まれます。現在の会社名、住所、会社の設立年月日、現在の代表取締役、役員およびその就任年月日、そして3年前までの履歴などが記載されます。
登記事項証明書と登記簿謄本は同じもの
「登記簿」という書類がありますが、こちらは今では電子データで管理されています。これを印刷した書類が「登記事項証明書」です。
かつては、法務局で登記簿謄本の転写(コピー)を交付してもらわなければいけませんでした。現在は電子化されたことで、「登記記録」の電子データを印刷したものが「登記事項証明書」として、登記簿謄本と同様に扱われます。
履歴事項全部証明書の取得申請方法
履歴事項全部証明書は以下の3つの方法で取得申請が行えます。
- インターネット上で取得申請
- 法務局の窓口で取得申請
- 法務局に対し郵送で取得申請
この履歴事項全部証明書は誰でも取得することが可能です。例えばその会社と何ら関わりのない人でも、申請し取得することもできます。
取得申請には手数料がかかります。
履歴事項全部証明書はインターネットからオンラインで取得申請を行えます。「登記・供託オンライン申請システム」のホームページから「かんたん証明書請求」のフォームで申請できます。
登記・供託オンライン申請システム:https://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp/whats/kantan/what_kantan.html
手続きにはまず、申請者情報を登録して請求する証明書を選択します。その後、必要事項を入力して申請書を作成します。
申請は平日8時30分から21時までになります。
オンラインで申請を行うメリットは、送付先や受取人の情報について、あらかじめ登録した情報が自動反映されるので、何度も申請書を作成する手間が省けることです。また、窓口で申請するよりも手数料が安く、取得までの待ち時間も短縮できます。オンライン請求した履歴事項全部証明書の受け取りは、郵送と最寄りの法務局窓口で受け取る2つの方法が選択できます。
法務局の窓口で取得申請
法務局の窓口へ直接出向いて取得申請を行う方法です。現在、登記情報は電子化されているので、全国どの法務局でも申請して取得が可能です。電子化以前は本店を所管している法務局まで行って申請を行う必要がありました。
法務局では、申請書を記入して請求する方法と、「証明書発行請求機」を使用して発行する2つの方法があります。申請書を記入して請求する場合は、「登記事項証明書等交付申請書」に必要事項(所在地住所、商号または法人名、本店)を記入後、1通あたり600円分の収入印紙とともに窓口に提出します。証明書発行請求機を使用する場合は、必要な情報を請求機に入力し、整理番号を入手します。整理番号が呼ばれたら、1通あたり600円分の収入印紙とともに提出します。法務局の申請受付時間は平日の午前8時30分から午後5時15分までの間です。
郵送による取得申請
履歴事項全部証明書は郵送でも取得申請が行えます。郵送で取得申請を行う場合は、以下の書類を同封して送ります。
- 登記事項証明書交付申請書(法務局ホームページで入手できます)
- 印鑑カード
- 返信用封筒(封筒に切手貼付済、返送用の住所記載)
- 500円分の収入印紙
封筒には「履歴事項全部証明書交付申請書在中」と朱書きしておきましょう。返信用封筒に貼る返信用切手代の目安は、82円(1通)から92円(2通)です。
履歴事項全部証明書の取得申請では、オンラインが非常に便利です。まず手数料が窓口交付などに比べて安くなります。オンラインでの申請の場合、郵送交付で500円、最寄りの法務局で受け取る場合は480円で、通常の発行手数料600円と比べて安いです。手数料の支払い方法も、ネットバンクやATM(Pay-easy)で簡単に支払い手続きができます。
もう一点は、取得申請から受取までの時間を短縮できることです。例えば、オンラインから取得申請を行い、翌日に窓口で受け取ればスムーズな書類の受け渡しが可能です。履歴事項全部証明書の取得申請はオンラインでの手続きが断然おすすめです。
履歴事項全部証明書取得に必要な手数料
履歴事項全部証明書の取得には手数料がかかります。法務局の窓口で申請した場合など通常は600円がかかります。
郵送で取得申請した場合の手数料
オンラインで取得申請した場合は受け取り方法によって手数料が異なります。郵送で受け取る場合は500円、窓口で受け取る場合は480円になります。オンライン申請での手数料の支払いは、インターネットバンキングやATM(Pay-easy)が利用できます。
履歴事項全部証明書の有効期限
履歴事項全部証明書自体に有効期限はありません。しかし、提出先から指定がある場合はその期間内に取得したものを使用します。そのため、必要枚数以上をまとめて取得しても無駄になってしまう場合があります。提出先の指定に合わせて、なるべく最新の書類を取得する必要があります。
提出先の指定例
提出先から「発行から〇カ月以内の履歴事項全部証明書を提出」「○カ月以内発行のものに限る」といった指定がされる場合があります。履歴事項全部証明書の提出が必要になる場合、提出先の指定に合わせた期間内に取得したものが必要になります。期間内のもの以外は無効になるので、必要なときに取得申請を行います。
一般的に3カ月が有効期限
履歴事項全部証明書に有効期限はありませんが、一般的に3カ月以内に取得したものを使用するのが有効とされます。社会保険加入や法人名義の口座開設などで、提出先が特に期間を指定していない場合も、取得から3カ月以内の履歴事項全部証明書を提出するのがよいでしょう。
まとめ
履歴事項全部証明書は誰でも取得できます。「税務署」や「銀行」への提出や、法人用クレジットの作成申請などにも使用する書類になります。
書類の交付にはオンライン申請がとても便利な方法です。事前にオンラインで交付申請をしておけば、待ち時間の短縮にもなりますし、手数料も安くできます。例えば、会社設立時などは他にも揃えなくてはならない書類も多くあり、なるべくスムーズに受け取れたほうがよいでしょう。
会社を運営するにあたり、履歴事項全部証明書が必要になる場面もあるので、効率的に申請手続きが行える方法は知っておくことをおすすめします。