「準じる」とは基準としたものと同じように扱うこと、ある根拠にのっとることを意味します。ビジネスシーンで多く登場し、類義語や似た言葉が多くあるので、それぞれの意味やニュアンスを正しく知っておきましょう。
「準じる」の読み方
「準じる」は「じゅんじる」と読みます。「準」は音読みでは「シュン」と「ジュン」、訓読みは「なぞらえる」です。「准」も「準」とは音読みと訓読みともに同じで、「准じる」は「準じる」とは同じ意味を持っています。
「準じる」の意味とは?
「準」は「それに近いものである」、「正式なものに次ぐ」や「少し及ばない」の意味を持ちます。もともとは水平であるかを調べる道具「みずもり」のことであり、そこからめあてとなるものと、めあてに従う意味とを持つようになりました。
意味1.同じような扱いをする
「準じる」には、ある基準のものと同じような扱いをする意味があります。たとえば「準社員」とは、正社員と全く同じではないものの、それと同じように扱う社員のことです。また、あるものに応じた扱いをすることも「準じる」です。「仕事量に準じた給料」とは、仕事量に応じて給料額が決まることをいいます。
意味2.ある根拠にのっとる、従う
「準じる」にはある根拠にのっとる、従うの意味もあります。基準になるものが何であるか、数字が具体的になっている場合などに使われます。
「準じる」の類義語・言い換え
「準じる」の類義語や言い換え表現には、すでに決まっているものに従う、その通りにすることなどを意味する言葉があります。それぞれに細かい意味やニュアンスは異なるので、使い分けられるようにしましょう。
1.準拠
「準拠(じゅんきょ)」とは、よりどころや標準、またはそれらに従うことをいいます。「拠り所に準じる」を略した言葉で、すでにある基準や規格に従うことを意味しています。
- この建物は日本仕様に準拠して建造にあたっている。
- Web標準に準拠したホームページとコンテンツを作成する。
2.適用
「適用(てきよう)」とは、規則や法律などをあてはめて用いることをいいます。具体的なことがらに対し、規則や法律に従って効力を発揮させることを指します。
- 来月からは、新しいルールが適用されると通達があった。
- 組織全体に適用できるしくみでないと、実行する意味は薄いだろう。
3.踏襲
「踏襲(とうしゅう)」とは、前の人のやり方や経験したことをそのまま受け継ぐことをいいます。ビジネスシーンでは上司や先輩、前任者のやり方や考え方、方針を継続するときに「踏襲」を使います。
- 仕事に慣れるまでは、前任者の方針を踏襲した方がよいだろう。
- 我が社の成長が鈍化しているのは、前例踏襲主義が強すぎるからだと考えます。
4.倣う
「倣う(ならう)」とは、前からあるものごとをまねる、その通りにすることをいいます。「パクる」、「コピーする」というよりは、「お手本とする」の方がニュアンスが近いでしょう。「伝統に倣う」や「先人に倣う」など「〜に倣う」と使うことが多く、「〜を倣う」とはいいません。
- 私も先輩に倣って、早朝ランニングをすることにしました。
- この踊りは伝統に倣い、100年以上も続いていると聞きました。
5.則る
「則る(のっとる)」とは手本としたものに従う、あるものを規範や規準にすることをいいます。「〜に則る」とすることが多く、「スポーツマンシップに則る」や「法に則って裁く」などと使います。
- あの映画は、ストーリーが原作の小説に則っていて面白かった。
- 話し合いにより、前回までの決まりに則ってイベントを行うことになった。
「準じる」に似た言葉の違い
「準じる」と似た言葉には「応じる」と「基づく」、「沿う」と「従う」があります。それぞれの意味を知って、「準じる」の理解を深めましょう。
1.応じる
「応じる」とは、相手からの働きかけや呼びかけを受け入れ、こたえることをいいます。相手の要請や依頼を受け入れるニュアンスが強く、「準じる」にはない返答するや呼応する意味を持っている言葉です。
- Aさんの声かけに応じたのは、Bさんだけだと聞いている。
- 要望に応じたいとは思っているが、事情により今回は難しい。
2.基づく
「基づく」とは、あるものを基盤や根拠とすることをいいます。「準ずる」のようにあるものに従うニュアンスは薄く、あるものを元にする、土台として行うニュアンスの方が強いでしょう。
- これらのデータに基づく資料を作成して提出してください。
- 彼の評価は、これまでの実績に基づいていると聞いている。
3.沿う
「沿う」とは基準や方針などに従い、そこから離れないように行うことをいいます。同じ意味で、「副う」または「添う」と書くことも。「準じる」とは違い、あいまいな規準でも使える言葉です。また、「長く続くものに付き従う、離れないようにする」の意味もあり、「川の流れに沿う」などとも使います。
- ユーザーの意向に沿う商品とサービスを提供しなくてはならない。
- テーマに沿った作品を制作し、期日までに出展した。
4.従う
「従う」は「あとからついていく」や「あるものに対応する」、「他人の意向通りにする」などの多くの意味を持ちます。「準じる」はある根拠にのっとることを意味しているので、「従う」の方が広く使えます。
- 組み立てるときは設計図に従えば、ちゃんと完成できるはずだ。
- ルールに従って業務を行うのは、当たり前のことと考えている。
「準じる」と「準ずる」の違い
「準じる」と「準ずる」の意味は同じです。「準ずる」はサ行変格活用の動詞で、古い時代の文書に用いられることが多い表現です。現在一般的に多く使われているのは「準じる」ですが、「準ずる」は法律用語として用いられています。たとえば会社の就業規則には「基本給は当社規定に準ずる(基本給は当社規定にならう)」や、「有給休暇付与日数は経験年数に準ずる(経験年数に見合った有休日数を付与する)」などの表現が多く使われています。
「準じる」を英語でいうと?
「準じる」の英訳は「conform to(準拠している)」または「follow(則る)」です。「conform to the rules」や「to conform anything to the rule」は規則に準じる、「to follow a precedent」は前例に準じるの意味になります。また、「according to(〜に従って)」を使い、「according to rule(規則に準じて)」と訳すこともできます。
- These conform to the specification sheet.(これらは仕様書に準じています。)
- To follow traffic rules is important.(交通ルールに準じることが大事だ。)
- I think we should deal with this matter according to work manual.(業務マニュアルに準じて対応すべきと考えます。)
「準じる」の使い方と例文集
「準じる」の使い方を、例文とともに紹介します。なにかしらの明確な規準があり、それと同じような扱いをする、または規準に従うときに「準じる」は使われます。
「準じる」の使い方
「〜に準じて」は、「〜に応じて」と言い換えられます。「給与は経験に準じて」とは、給与額を前例によってではなく経験に応じて決めることを意味します。「〇〇に準じる成績」とは、〇〇と全く同じではないが、それに近く、同等の成績だといえます。「優秀賞に準ずる業績の者も、賞与の対象である」とは、優秀賞を取れずとも賞与をもらえる可能性があることを意味します。
「準じる」の例文
「準じる」を使った例文を紹介します。
- 企業では、前例に準じた対応を求められることが多い。
- 非常事態でもあわてず、マニュアルに準じた対応を取るように指導された。
- 今度のパーティーは、正装に準じた服装でお越しください。
- この製品は、〇〇規格に準じて製造されている。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は準じるについて解説しました。
「準じる」は、「応じる」や「従う」などと言い換えられる言葉です。文脈によって細かいニュアンスが変わるので、使い方を参考に意味を把握しておきましょう。「準ずる」は「準じる」と意味は同じで、会社の就業規則や法律では多く見られる表現です。
最後に「準じる」のまとめです。
- 「準じる」は「じゅんじる」と読みます。
- 「準」は「それに近いものである」、「正式なものに次ぐ」や「少し及ばない」の意味を持ちます。
- 「準じる」の類義語は「準拠」「適用」「踏襲」「倣う」「則る」です。
- 「準じる」と「準ずる」の意味は同じです。現在一般的に多く使われているのは「準じる」ですが、「準ずる」は法律用語として用いられています。
- 「準じる」の英訳は「conform to(準拠している)」または「follow(則る)」です。