ビジネスシーンにおいてよく使われる「拝見」という言葉。二重敬語で使っている人が多く、二重敬語は間違った表現方法であることを知っておく必要があります。「拝見」の使い方と似ている表現もあわせて徹底解説します。
「拝見」の意味とは
「拝見」は「はいけん」と読み、動詞「見る」の謙譲語です。謙譲語とは敬語表現である「尊敬語」「丁寧語」「謙譲語」のうちのひとつで、自分の動作をへりくだらせることにより、相手への敬意を表現する言葉です。
参照:Weblio辞書「拝見」
「拝見」の由来と語源
「拝見」の漢字の由来と語源を解説します。
「拝」は音読みで「ハイ」訓読みで「おが(む)」と読み、「敬意をこめてお辞儀をする/官位をさずける・さずかる/たずねる・おめにかかる」の意味があり、自分がへりくだった表現をするときに使う言葉です。
「見」は音読みで「ケン/ゲン」音読みで「み(える)/み(せる)/み(る)/あらわ(す)/あらわ(れる)/まみ(える)」と読み、「目で見る/目に入る/会う/外に出る/現在」を意味します。
それぞれの漢字「拝」と「見」の文字を組み合わせることにより、「見る」動作のへりくだった表現である謙譲語になります。
「拝見」の類義語や言い換え表現
「拝見」にはどのような類語や言い換えがあるでしょうか。
「拝見」の類語・言い換えには「拝観」「拝閲」があります。
「拝」は音読みで「ハイ」訓読みで「おが(む)」と読み、「敬意をこめてお辞儀をする/官位をさずける・さずかる/たずねる・おめにかかる」意味があり、自分がへりくだった表現をするときに使う言葉です。
「観」は音読みで「カン」訓読みで「み(る)/み(せる)/しめ(す)」と読み、「注意して見る/広く見渡す/人々に見せる/様子/見晴台/道教の寺院」を意味します。
「閲」は音読みで「エツ」訓読みで「けみ(する)/へ(る)」と読み、「確かめる/経験する」意味があります。
へりくだりを表現する「拝」に「観」や「閲」を組み合わせることで、見たり確かめたりする動作の謙譲表現になります。
「拝見」の対義語
「拝見」の対義語とはどんな言葉でしょうか。
「拝見」の場合には、何をもって対義語とするのかが難しいのですが、謙譲語における対義語だと尊敬語にあたり、「拝見」の対義語は「ご覧になる(「見る」の尊敬語)」となります。
「拝見」は謙譲語で「(自分が)見る」。
「ご覧になる」は尊敬語で「(相手が)見る」。
「拝見」と似ている表現のまとめ
「拝」は音読みで「ハイ」訓読みで「おが(む)」と読み、「敬意をこめてお辞儀をする/官位をさずける・さずかる/たずねる・おめにかかる」意味があり、自分がへりくだった表現をするときに使う言葉・漢字であることは先に説明しました。ある漢字と「拝」を組み合わせることによって、さまざまな動作の謙譲表現ができます。ここでは使用頻度の高い「拝読」「拝聴」「拝受」「拝覧」「拝謁」を解説します。
「拝見」と似ている表現1「拝読」は「読む」の謙譲語
「拝見」と似ている表現の1つ目は、「拝読」。「拝読」は「はいどく」と読み、「読む」の謙譲語にあたります。
例文を見ていきましょう。
- 先日いただいた書面を拝読しました。
- お便りをくださりありがとうございます。さっそく拝読します。
- ご提案のメールを拝読しましたが、私も賛成いたします。
「拝見」と似ている表現2「拝聴」は「聴く」の謙譲語
「拝見」と似ている表現の2つ目は、「拝聴」。「拝聴」は「はいちょう」と読み、「聴く」の謙譲語にあたります。
例文を見ていきましょう。
- 社長のご意見を拝聴したく存じます。
- 部長の奥様の奏でるバイオリンを拝聴しましたが、プロバイオリニストのようでした。
- 教授の講義を拝聴し、大変勉強になりました。
「拝見」と似ている表現3「拝受」は「受ける」の謙譲語
「拝見」と似ている表現の3つ目は、「拝受」。「拝受」は「はいじゅ」と読み、「受ける」の謙譲語にあたります。
例文を見ていきましょう。
- 確かに山田様より契約書を拝受しました。
- お客様より拝受したメールには、私へのお褒めの言葉があったので大変嬉しい。
- ピアノのコンクールで最優秀賞を拝受しました。
「拝見」と似ている表現4「拝覧」は「見る」の謙譲語
「拝見」と似ている表現の4つ目は、「拝覧」。「拝覧」は「はいらん」と読み、「覧(み)る」の謙譲語にあたります。「覧る」には、「広く見渡す」の意味があります。
例文を見ていきましょう。
- 御社の新社屋を拝覧しました。有名デザイナーによる設計とのことで、とてもおしゃれな建築ですね。
- 奈良県を旅行し、秘仏を拝覧しました。
- 京都旅行では、金閣寺を拝覧する機会がありました。
「拝見」と似ている表現5「拝謁」は「会う」の謙譲語
「拝見」と似ている表現の5つ目は、「拝謁」。「謁(えつ)」には「身分の高い人に会う/申し上げる/頼む・求める/名札」の意味があり、「拝」と組み合わせ「拝謁」は「はいえつ」と読み、「身分や位の高い人に会う」意味の謙譲語になります。
例文を見ていきましょう。
- 女王に拝謁する機会を賜り、大変緊張しています。
- 天皇皇后両陛下に拝謁しました。
「拝謁」は王族などの身分・位の高い人に会う意味の謙譲語です。自分の上司や先生などは当てはまりません。
「拝見」の敬語表現
「拝見」は敬語の中の「謙譲語」、自らの動作をへりくだる表現です。敬語には相手を敬う「尊敬語」がありますが、「拝見」の尊敬語は「ご覧になる」。「拝見」は尊敬する相手の動作にはあてはならない言葉です。
- 「山田教授、新しく上映中の映画を拝見しましたか?」
- 「山田教授、新しく上映中の映画をご覧になりましたか?」
「拝見いたします」「拝見させていただきます」は二重敬語で間違い
「拝見いたします」や「拝見させていただきます」を使っていませんか?これらは二重敬語で間違った使い方です。
「拝見いたします」は、「見る」の謙譲語「拝見」に「する」の謙譲語「いたします」と二重敬語。シンプルに「拝見します」とするのが正しい表現です。
「拝見させていただきます」にいたっては、「見る」の謙譲語「拝見」に「する」の謙譲語「させる・させて」に「もらう」の謙譲語「いただく」と二重どころか三重敬語。使い方が間違えているだけでなく回りくどい表現です。実際のところはよく見聞きする表現ですが、くれぐれも使わないように注意しましょう。
「拝見」の英語表現
「拝見する」の英語表現は、文語体・口語体ともに「I will see something.」です。
例文を見ていきましょう。
I will see this photo you had taken last year. This is really good.
(去年撮った写真を拝見します。とても素晴らしい写真です。)
「I will see」のあとに続くsomethingには、見るものに置きかえて表現します。
「拝見」の使い方と例文集
「拝見」の使い方と使うときの注意点、「拝見」を使った例文を紹介します。
「拝見」の使い方
「拝見」の使い方で重要なポイントは「謙譲語であること」。
基本的には、相手に対して自分の動作をへりくだる表現です。
「拝見」を使用するときの注意点
「拝見」を使う時の注意点は、「相手に対しては使わない言葉」であること。謙譲語なので、目上の人の行動・動作を表現する場合にはそぐわない言葉です。
「拝見」を使った例文
「拝見」を使った例文を見ていきましょう。
- 先生からいただいた資料を拝見しました。
- (子どもに向かって)先生からいただいたプリント、拝見した?
- 社長が撮影されたお写真を拝見しました、とてもすばらしく臨場感あふれる作品でした。
- 貴社の求人情報を拝見し、応募いたします。
- メールを拝見いたしました。退職されるとのことで、大変驚きました。
このように、「拝見」はさまざまな場面で使える「見る」の謙譲語です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は拝見について解説しました。
「拝見」は自分の動作をへりくだる謙譲語。相手をたてる尊敬語ではありません。そして、「拝見いたします」「拝見させていただきます」は何重にも謙譲語が重なり、表現としては不適切。ところが、この間違った表現方法が、間違えとも知らずに大変多く使われています。「拝見いたします」「拝見させていただきます」といった表現を避けるだけでも、ほかの人より一歩先行くビジネスパーソンであると言っても過言ではありません。
最後に「拝見」のまとめです。
- 「拝見」は「はいけん」と読み、動詞「見る」の謙譲語です。
- 「拝見」の類語・言い換えには「拝観」「拝閲」があります。
- 謙譲語における対義語だと尊敬語にあたり、「拝見」の対義語は「ご覧になる(「見る」の尊敬語)」となります。
- 「拝見いたします」や「拝見させていただきます」を使っていませんか?これらは二重敬語で間違った使い方です。
- 「拝見する」の英語表現は、文語体・口語体ともに「I will see something.」です。
- 「拝見」を使う時の注意点は、「相手に対しては使わない言葉」であることです。