ビジネスシーンでよく耳にする「トライアンドエラー」という言葉。人生ににおいて重要な考え方でもあります。実は、誤った和製英語であることをご存知でしょうか。今回は、「トライアンドエラー」の意味や使い方、正しい英語表現について紹介します。
「トライアンドエラー」の意味とは?
「トライアンドエラー」の意味について解説します。また、トライアンドエラーをより効率的なやり方に変える「PDCAサイクル」についても紹介します。
「試行錯誤すること」
「トライアンドエラー」とは何度も試行錯誤を繰り返して成功に近づいていくことを指します。
人生において、仕事や勉強などさまざまな課題にぶつかることは多いでしょう。課題を解決するために、試行錯誤を繰り返す必要があります。つまり、幾度となく挑戦して失敗を繰り返すことで、少しずつ成功に近づいていくことが可能です。
しかし、挑戦と失敗をやみくもに繰り返しても効率的に成功へと近づけません。どのようにすれば最短経路で成功への道をたどるのか、その行動様式を示したのが 「PDCA」サイクルです。
PDCAサイクルを回すとは?
PDCAサイクルとはどのような行動様式でしょうか。
P(Plan)、D(Do)、C(Check)、A(Act)の頭文字を取ったサイクル型の行動様式を PDCAサイクルと言います。Pは計画、Dは実行、Cは評価、Aは改善を意味します。計画して、実際に行ってみて、評価をして、やり方を改善していく。この四つのフェーズを順序よく何度も繰り返すことで、効率よく求めている結果に近づくことが可能です。
考え方はトライアンドエラーとよく似ていますが、トライアンドエラーは挑戦と失敗を繰り返すという意味であることに対し、PDCAサイクルは得られた結果に対して評価と改善を行っています。PDCAサイクルはトライアンドエラーの具体的な方法論として覚えておく価値のある手法です。
「トライアンドエラー」の類義語・言い換え
「トライアンドエラー」の類語表現として「プロトタイピング」と「暗中模索」の2つを紹介します。これら2つの言葉の意味を理解することで、より「トライアンドエラー」という言葉の意味が腑に落ちるでしょう。
「プロトタイピング」
「プロトタイピング」とは製品開発に関連する用語で、開発の早い段階から試作品を作成し検証することを指します。試作品を早い段階に作ることで、設計時に盛り込んでいた機能やアイデアを実際に形にすることが可能です。
それにより、想像していなかった不良や欠陥が表面化してきます。それらの課題に対して、開発初期から対策を講じることができるため 、製品の試作品を繰り返し作ることは開発において大切な進め方です。
試作品を繰り返し作りトライアンドエラーを繰り返す手法のことを「プロトタイピング」といい、「トライアンドエラー」の類語であるといえます。
「暗中模索」
「暗中模索」の意味は「手がかりのないまま、いろいろと試みること」を指します。何らかの課題の解決を試みるとき、最初は全く手がかりがないことがほとんどです。そんな中でもトライを繰り返し、少しずつ手がかりを得ていく必要があります。そういった状況を表したのが「暗中模索」という言葉です。暗い中から手探りで手がかりを模索する様を表しています。こういったニュアンスから「暗中模索」は「トライアンドエラー」と同じ意味であるといえます。
人生は「トライアンドエラー」の連続
生きているといろいろな壁にぶつかります。それを乗り越えていくためには、冷静に「トライアンドエラー」を繰り返すしかありません。
人生における壁の例として「仕事」「勉強」「恋愛」の3つをピックアップしました。 この3つ以外においても「トライアンドエラー」は人生の壁を乗り越える上で必須の考え方です。
「仕事」で成果を出すためにはどうすればよい?
仕事で成果を出すためには「トライアンドエラー」を繰り返すことが必要条件になってきます。 最初のうちはどのようにしようと進めたらよいのかもわからないため、思うようにいかなかったり失敗してしまったりすることは当然です。そこから、「成功するためにはどうしたらよいか」といった条件や方法を学びとる姿勢が大切です。
例えば研究職の場合、ある実験で失敗したとしても、失敗した実験データと設定した実験条件との間にどのような関係があるのかを分析する必要があります。そういった分析によって、次にどのような条件で実験を進めたらいいのかについて手がかりが見えてきます。このように、失敗を次に活かす姿勢が非常に大切になります。
「勉強」で自分の目標を達成したい
勉強においても「トライアンドエラー」を繰り返す必要があります。定期テストや受験といった分野は、ただ闇雲に参考書を何周もしたり勉強時間をいたずらに伸ばしたりしても報われないことが多い残酷さがあります。 このような悔しい経験をした方も多いのではないでしょうか。
勉強においてトライアンドエラーを繰り返すとは、テストでいい点をとることを最終到達地点に設定すると、自分に合った勉強方法を洗練していく作業になります。巷に出ている勉強法が、自分の性格に全く合わないことは少なくありません。つまり、自分の性格や得意にマッチした勉強法を自分で編み出していく必要があるのです。「できるだけ少ない努力と時間で最大限の成果を生み出すためにはどうしたらよいか」といった姿勢で取り組むのが成功への近道かもしれません。
「恋愛」で楽しい青春を謳歌したい
意外なことに恋愛においてもトライアンドエラーの考え方が活きてくることがあります。恋愛とは単純に考えると異性との人間関係であるといえます。つまり、考え方や価値観が根本的に異なることが多々あります。初めのうちは相手の態度が理解できないことが多くても、ある程度接していくうちに相手の考え方や価値観を理解できるようになります。
「相手の考え方や価値観を理解する」ために「トライアンドエラー」の考え方が大切になってきます。ただ感情に流されて相手の態度に反応するのではなく、コミュニケーションをとる中で相手の価値基準を推し量っていく姿勢が大切になります。
「トライアンドエラー」の英語の意味
「トライアンドエラー」の英語表現について紹介します。そもそも「トライアンドエラー」自体、英語由来の言葉ではありますが、実はこの言葉は誤りを含む和製英語という側面もあります。また、その他の少し誤っている和製英語の例もいくつか紹介します。
「トライアンドエラー」は誤用
「トライアンドエラー」は実は誤用です。「トライアルアンドエラー」が正しい使い方になります。英語で綴ると「trial and error」になります。しかし「トライアンドエラー」は、日本にかなり浸透している言葉であるため、誤用と言って切り捨てることもできないでしょう。「トライアルアンドエラー」も「トライアンドエラー」と同じく「試行錯誤すること」といった意味があります。「トライアンドエラー」は和製英語であり、しかも誤った表現でもあるため、ネイティブに通じない点も注意が必要です。
その他の少し誤っている和製英語の例
その他の誤りを含んでいたり、ネイティブには通じにくかったりする和製英語を紹介します。まず「ジャストアイデア」という言葉。「ジャストアイデア」で「ちょっとしたアイデア」といった意味表していますが、この表現はちょっとした誤りが含まれています。日本人には冠詞をつけるという概念がないため、アイデアの前に冠詞の「an」が抜けています。正しくは、「just an idea」になります。
また、「ケースバイケース」という言葉もネイティブは「It depends.」と表現します。「case by case」も英語表現としては存在しますが、ネイティブの人は「It depends.」を使うことが多いです。意味としては「状況によります」といった意味で日本では圧倒的に「ケースバイケース」で浸透しています。
「トライアンドエラー」の使い方と例文集
「トライアンドエラー」の使い方と例文を紹介します。本来の英語表現としては「トライアルアンドエラー」が正しいという点については注意が必要です。
「トライアンドエラー」の使い方
日常生活よりもビジネスシーンにおいて「トライアンドエラー」という言葉を使う機会は多いと思います。日本語の「試行錯誤」と同じようなニュアンスで使われることが多いです。実は「トライアルアンドエラー」が正しい表現ですが、「トライアンドエラー」は既に一般的に使われている表現であるため「トライアンドエラー」を用いても問題ありません。ただ、正しくは「トライアルアンドエラー」であることは覚えておいても損もありません。
「トライアンドエラー」を使用するときの注意点
トライアンドエラーはネイティブの人には通じないことに注意しましょう。ネイティブの人と話す時は、正しい英語表現の「trial and error」を使う必要があります。
「トライアンドエラー」の例文
「トライアンドエラー」を用いた例文をいくつか紹介します。
- なにも考えずにトライアンドエラーを繰り返していても意味がない。
- トライアンドエラーの末この結論にたどり着いた。
- この発見はトライアンドエラーを重ねた末に辿り着いた。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回はトライアンドエラーについて解説しました。
「トライアンドエラー」は「試行錯誤を繰り返すこと」といった意味で使われます。人生における課題をクリアしていく中で、大切な考え方であるといえます。また「トライアルアンドエラー」が正式な英語表現であることを心に留めておきましょう。
最後に「トライアンドエラー」のまとめです。
- 「トライアンドエラー」とは何度も試行錯誤を繰り返して成功に近づいていくことを指します。
- 「トライアンドエラー」の言い換え表現は「プロトタイピング」「暗中模索」です。
- 「仕事」で成果を出すためには失敗から、「成功するためにはどうしたらよいか」といった条件や方法を学びとる姿勢が大切です。
- 勉強においてトライアンドエラーを繰り返すとは、テストでいい点をとることを最終到達地点に設定すると、自分に合った勉強方法を洗練していく作業になります。
- 恋愛においても、「相手の考え方や価値観を理解する」ために「トライアンドエラー」の考え方が大切になってきます。
- 「トライアンドエラー」を英語で綴ると「trial and error」になります。