「粛々と進めていきます。」という表現を職場で使ったことはありますか。「粛々と」を「淡々と」にした場合、相手に与える印象は変わるのでしょうか?今回は「粛々と」の意味や使い方、類語・英語表現に加え、「淡々と」との違いについても解説します。
「粛々と」の意味とは?
「粛々と」の意味は「厳粛であり、ひっそりと静かにしているさま」を表す言葉です。「粛」という漢字には「心や体を引き締める」という意味があり、場の空気が引き締まっている状態を表す言葉になります。ビジネスシーンで使われる「粛々と」という表現は、「物事に緊張感を持ちながらも、気持ちを乱すことなく前進している様子」を表しています。
参照:Weblio辞書「粛々」
「粛々と」の読み方
「粛々と」は「しゅくしゅくと」と読みます。「心を引き締めて緊張感を持っている様子」という意味の「粛」が2つ重なって成り立っている言葉でビジネスシーンにおいては「粛々と作業を進めていきます。」のように使われています。使用頻度はある程度高いと言葉になります。
「粛々と」の類義語・言い替え
「粛々と」の類義語や言い換え表現について紹介します。今回紹介する言葉は「密やか」と「厳粛」の2つの言葉です。似た意味の言葉を把握し、日本語の語彙を増やしていきましょう。
「密やか」
「密やか」は「ひそやか」と読みます。「密」は「人に見せない」という意味があります。つまり、「人に知られないようにひっそりと行うさま」を表しています。元々の意味は、「ひっそり物静かな様」という意味で「粛々と」とは「しずかに」という面ではニュアンスは一致しています。 異なるポイントは、「人様にバレないように行う」という点にあります。「 粛々と」という言葉に「人の目につかないように」というニュアンスはない点に注意が必要です。
「静粛」
「静粛」という言葉には「静かに慎むこと」、「 ひっそりと静まり返ること」という意味があります。 会議などが紛糾した時に、「静粛にお願いします」という表現を聞いたことはあるのではないでしょうか。この表現は、「物理的に音を出さないで欲しい」というメッセージを持ちます。「粛々に」という言葉は、「心を乱さず他事を考えずに 集中して物事を着実に進めていく」というニュアンスがあります。つまり物理的な静かさは「静粛」という言葉で表現され、「精神的な静かさ」は「粛々」という言葉で表現されています。
「粛々と」の対義語
「粛々と」の対義語について紹介します。ここで紹介する言葉は「賑やか」と「軽々しい」の2語です。反対の意味の言葉を理解することで、言葉のニュアンスが相対的に把握できます。それぞれのニュアンスについて詳しく見ていきましょう。
「賑やか」
「賑やか」は「にぎやか」と読みます。「人がたくさん集まって活気付いている様子」を表現する言葉です。人の声や物音に溢れかえっている様子がイメージできるでしょう。一般的には、お祭りや宴会などの状況を「賑やか」という言葉で表現します。「 粛々と」という言葉は「静」のイメージがありますが、「賑やか」という言葉には「動」というイメージがあります。そのイメージの対称性が、言葉の意味の対称性となって表れています。
「軽々しい」
「軽々しい」という言葉は「物事をよく考えずに行動する様」を表します。「軽い」という言葉は「物理的なものの重たさ」を表現することもありますが、「物事の考え方」や「行動の仕方」なども表現できます。あまり深く考えずに、思いついたことをすぐ行動する様を「 軽々しい」という言葉で表されます。使い方の例としては「彼はいつも軽々しく安請け合いするので、あまりあてにしないほうがいい。」というように使われ、マイナスのニュアンスを持つ言葉になります。
「粛々と」と「淡々と」の違い
ここでは「粛々と」と「淡々と」の違いについて紹介します。一見似た意味の言葉ですが、ニュアンスの違いにより使い分けるべき場面が出てきます。正しく使い分けられるよう、「粛々と」と「淡々と」の違いについて詳しく説明します。
「淡々と」は「気持ちを入れずにあっさり済ます様子」
「淡々と」という言葉は、「物事に気持ちを入れずにサクサクと進めていく」という意味を持つ言葉です。「粛々と」も「淡々と」も外面から見ると物事をスムーズに進めているように見えます。「 粛々と」には「強い気持ちを持って物事に取り組んでいるニュアンス」が含まれています。一方「淡々と」という言葉は、やっつけ仕事のようなイメージを与えかねません。そのため、ビジネスシーンで使う際は注意が必要な言葉であるといえます。
参照:Weblio辞書「淡々」
「粛々と」と「淡々と」の使い分け注意
「淡々と」という言葉を使う場合、仕事を適当に済ましているイメージを持たれてしまう可能性があるので、ビジネスシーンにおいては頻繁に使わない方が無難でしょう。 例えば、「お任せ頂いたプロジェクトを粛々と進めております。」と表現するのと「 お任せ頂いたプロジェクトを淡々と進めております。」と表現するのでは相手に与えるイメージに雲泥の差があります。「淡々と仕事を進める人」に次も仕事をお願いしようとは思われない可能性があるので、「粛々と」を用いる方が無難でしょう。
「粛々と」が使われる場面3選
「粛々と」と表現するのにふさわしい場面を3つ紹介します。それは「卒業式」と「結婚式」と「お葬式」です。そのような式典は気持ちを1つにして厳粛に行われる性質があるため、「粛々と」と非常に相性がよい場面になります。それぞれの場面について詳しく見ていきましょう。
「卒業式」
卒業式は、今まで通っていた学校を旅立ち新天地に向かうという人生の区切りを表す重大な式典です。そういった重要な場面であり、皆が緊張感をもって参加するため「粛々とした雰囲気」になります。「粛々と」という言葉には、「物事がスムーズに進行する」という意味合いもさることながら「心を乱さない」や「緊張感を持つ」というニュアンスもあります。つまり卒業式の緊張感は「粛々と」という言葉で表現されるものになります。
「結婚式」
結婚式も人生において非常に重要な区切りとなる式の1つです。華やかな一面がありながらも当人たちの幸せを願うために皆が一致団結して祝う重要な催し物です。主役である新郎新婦に加えて、親族や友人、初めて顔を合わせるもの同士も心をひとつにして緊張感をもって参加することで式は完成します。その状況は「粛々と式が進められている」という表現を用いるのに適しています。
「お葬式」
お葬式は人生を締めくくる最後のセレモニーになります。今までにゆかりのあった人たちが故人を偲ぶことでお葬式は執り行われます。しめやかに進められるお葬式の様は、まさに「粛々と」行われていると表現されるものです。結婚式や卒業式のように、お祝いの雰囲気ではありませんが、皆が緊張感をもって参加しているという面においては同じであるといえます。
「粛々と」を英語でいうと?
「粛々と」の英語表現を紹介します。英語での表現を知っておくことで、海外に行った時に役に立つことがあるかもしれません。さっそく見ていきましょう。
「solemnly」
「solemnly」には「厳かに」という意味があります。例えば、「command solemnly」で「厳かに命令を出す」という意味の表現になります。「粛々」という言葉には「厳か」という意味合いも含まれていることがわかります。
「silently」
「silently」には「静かに」という意味があります。例文として「They went out of the room very silently.」が挙げられます。日本語訳は「彼らは非常に静かに部屋を出た。」となります。
「粛々と」の使い方と例文集
最後に「粛々と」の使い方と注意点、例文について紹介します。使い方を正確に把握することで、ビジネスシーンにおいても自信を持ってコミュニケーションがとれるようになります。
「粛々と」の使い方
「粛々と」という言葉は、緊張感を持って物事に取り組んでいるという意味があります。 つまり、冠婚葬祭といったセレモニーにおいても、ビジネスシーンにおいてもよく使われる言葉になります。緊張感をもって、 着実に執り行わなければならない場面で用いられます。思いもよらないアクシデントが発生したり、予定を覆すような出来事が起こったりしても、心を乱すことなく物事を進める様子を表す言葉です。
「粛々と」を使用するときの注意点
「粛々と」という言葉を使う上での注意点は、「上から目線」というニュアンスは持っていないという点です。政治家などが批判を押し切る場面で使われることがあるため、 このようなイメージがついてしまっているといえます。「自分の気持ちを乱さずに仕事を進めている」というニュアンスが「周りの意見を聞かない」というイメージに繋がってしまった結果、誤った認識が広がったのでしょう。
「粛々と」の例文
「粛々と」という表現を用いた例文を紹介します。
- 彼はいつも気持ちを乱さず粛々と仕事を行う。
- あの大物政治家の葬儀は粛々と執り行われた。
まとめ
「粛々と」という言葉は 「厳粛に、ひっそりと静かにしているさま」を表現しています。 ビジネスシーンにおいては淡々とという言葉との使い分けに注意が必要です。言葉の使い方を正確に理解し、正しく日本語を操っていきましょう。