普段の会話で「野暮な人だな」「野暮用で」などで使われることが多い「野暮」という言葉。意味などわからずに、何となく使っている人が多いでしょう。この記事では「野暮」の意味や言い換え表現、敬語、例文などを詳しく解説していきます。
「野暮」の読み方
「野暮」の読み方ですが、そのまま「やぼ」と読みます。下記の語源でも解説しますが、詳しい語源は不詳で当て字であると考えられています。
「野暮」の意味とは
「野暮」を調べてみると2つの意味があります。1つずつ解説していきます。
「融通がきかない」ことを意味する
1つ目の意味ですが、「人情の機微に通じないこと。わからず屋で融通がきかないこと」と辞書に記載されています。「人情の機微」という表現は難しいですがかんたんに説明すると、表情などの表面的な部分からはわからない人の微妙な気持ちという意味となります。現代的にいえば「空気が読めない」という表現が当てはまります。
また「融通がきかない」とは、そもそも「融通」ですがこの言葉は「臨機応変に対応する」という意味を持っていますので、「融通がきかない」とは「考えや態度が一辺倒で細かい所まで気がつかない」という意味になります。
つまり「野暮」の意味として「融通がきかない」とは、「空気が読めず、考えや態度が一辺倒で細かいところまで気が付かない」という意味になります。
「言動や趣味が洗練されていない」ことを意味する
2つ目の意味としては「言動や趣味が洗練されていない」ことです。やはり1つ目の意味と同じで難しい表現ですが、一言で言うと「ダサイ」という意味になります。
そもそも洗練とは「洗ってよりよいものにする」という意味を持ちます。この意味での「野暮」とは、服装に無頓着、行儀がよくない、言動が粗野、センスがない、融通がきかない、といった表現が当てはまりますので、洗練とは真逆なことを意味しています。
参照:Weblio辞書「野暮」
「野暮」の2つの語源
「野暮」の語源は確かな説はないのですが、有力と考えられている2つの説が存在しますので、ここでは2つ解説していきます。
1つ目は田舎者を意味する「野夫(やふ)」という言葉が転じて「野暮」となった説です。野夫とは田舎に住む男という意味と自分を謙遜する意味をあわせ持っています。昔の田舎者は「世の中の事情に疎い人」という認識でした。そこから転じて「野暮」になったのではないかと考えられています。
2つ目として「人情がわからない」という意味から生まれたとされている説です。日本の重要無形文化財にして古典音楽の一つである「雅楽」では「笙(しょう)」という楽器が使われていました。この笙は17本の細い竹菅が円形状に配置されそれぞれに穴が空いており、その穴を押さえることで音を奏でる楽器です。ただ不思議なことに押さえても音が出ない穴が2つ存在し、それが「也(や)」と「凢(ぼう)」です。「なぜあるのかわからないもの」というものが転じて「人情がわからない」つまり「野暮」である、という言葉が生まれた説です。
どちらも有力と思われている説ではありますが、もともと「野暮」は当て字であるので、それぞれの漢字に意味はありません。
「野暮」の類義語や言い換え表現
「野暮」には多くの類義語や言い換え表現がありますが、「融通がきかない」と「言動や趣味が洗練されていない」という2つの意味と照し合せた表現をそれぞれ紹介します。
「野暮」の類義語
「融通がきかない」という意味での「野暮」の類義語は、「無骨」や「無粋」などの類義語が挙げられます。どちらの言葉も「粋ではない」や「無作法」などの意味を持っており、「野暮」と似た言葉とされています。
「言動や趣味が洗練されていない」という意味での「野暮」の類義語は、「不躾」や「田舎者」という言葉です。こちらの意味での「野暮」の類義語は、「洗練さがない」という意味を持っており、その意味をあわせ持つ言葉を類義語として挙げられます。
「野暮」の言い換え表現
「融通がきかない」という意味での「野暮」の言い換え表現としては、類義語でも紹介した「無粋」や「無骨」などで、日常的によく使われている表現としては「冴えない感じ」や「パッとしない」といった表現に言い換えができます。「野暮」ではなく言い換えの表現を使うなら、「良いところがないが悪すぎない程度」の表現が妥当です。
「言動や趣味が洗練されていない」という意味での「野暮」の言い換え表現としては、「ダサい」「地味」「かっこ悪い」などの表現が日常的によく使われています。総じて華やかさがない、という意味で使われる表現が多いです。
「野暮」の対義語と間違えやすい言葉
マイナスの意味が多い上に華やかさがない意味である「野暮」の対義語としては、「粋である」「垢ぬけている」「通である」という言葉が挙げられます。類義語で「ダサイ」や「無粋」など紹介しましたが、そういった言葉の意味の対義語や反対語を考えれば、ほとんどが「野暮」の対義語として該当することになります。
「粋」は「色気があり人情の機微を理解している」という意味を持ち、「垢ぬけている」は「スマートで洗練されている」という意味であり、「通である」は「ある領域の趣味や道楽について精通している」という意味があります。したがって「野暮」の対義語を考える際は、「粋」「洗練されている」「スマート」などの意味から考えるといいかもしれません。
では「野暮」には間違えやすい言葉があるのでしょうか。「野暮」の意味や類義語・言い換え表現からもわかる通り、人を褒めるときに使う表現ではなく、どちらかといえば人を貶したり馬鹿にしたりするときに使われる表現です。その視点から考えると「野暮」という意味を持っている言葉は実に多くあり、間違えようがない表現だといえます。よって間違えやすい言葉はありません。
「野暮」の使い方と例文集
ここでは実際に使う場合での正しい使い方や注意点、日常やビジネスシーンでの例文などを紹介していきます。
「野暮」の正しい使い方
「野暮」の意味は「融通がきかず、言動や趣味が洗練されていない」です。この意味は人を褒める時にはあまり使われません。人や人から貶められたり馬鹿にしたりする時に使われる意味です。「野暮」に良い意味はありません。しかし表現的にはソフトです。「ダサい」や「無粋」などの表現はストレートに相手を傷つけてしまう恐れがありますが、「野暮」だとストレートに伝わらず言い回しのような表現となります。
「野暮」を使う時の注意点
正しい使い方でも解説しましたが、「野暮」は人を褒めるときに使われる表現ではありません。また表現としてはソフトな感じでもあるので、軽いアドバイスのように「野暮だ」と使われることが多いのですが、人によっては「馬鹿にされた」と感じてしまう可能性もありますので多用は控えてください。また「野暮」を使用する際は「野暮」の前後の言葉や表現に気を付けましょう。
「野暮」を使った例文
「野暮」を使った例文として、日常生活での例文と、ビジネスシーンでの例文の2つを紹介します。
日常生活での例文
日常生活でよく使われるのは「野暮ったい」という言葉でしょう。「野暮ったい」は「ダサい」という意味で使われることが多く例文として、「野暮ったい恰好をしているね。もう少しオシャレをしてみてはどうかな。」などの例文が考えられます。
ビジネスシーンでの例文
ビジネスシーンでよく使われるのは「野暮用」です。上司からのお酒の誘いやあまり好ましくない人からの誘いを「野暮用で」と断る人も多くいます。「野暮用」には実に多くの「用事」が含まれますが、一般的には「野望用の用事とは、どうでもいい用事」です。あまりストレートに断りを入れると関係が不仲になる場合もありますので、「野暮用」という表現でオブラートに包む人が多いです。
「野暮」を英語表現すると
「野暮」には決まった英語表現がありません。状況に応じた意味を持つ英語表現が使われることが多いです。ここでは「洗練されていない」「野暮な」「気の利かない」という意味にフォーカスした英語表現を紹介します。
「洗練されていない」unrefined
「unrefined」は「洗練されていない」や「上品ではない」という意味を持つ英単語です。例えば「to do things in an unrefined way」では「洗練されず、野暮ったい言動をする」という意味になります。
「野暮な」boorish
「野暮な」という意味で「boorish」の英単語が使われますが、この単語で言うところの「野暮」とは「無骨」や「がさつ」といった意味で使われます。例えば「being boorish」の表現では「無骨である」という意味になります。「野暮」という意味から考えると、この「boorish」が一番合っている表現です。
「気の利かない」stuffy
「stuffy」は「気の利かない」や「退屈」という意味を持つ英単語です。「stuffy atmosphere」では「息苦しい雰囲気」という意味で使われます。
まとめ
「野暮」は「融通がきかず、洗練さがない」という意味であり、人を褒めるときに使われる表現ではありません。軽い気持ちで「野暮」だと伝えると、人によっては「馬鹿にされた」や「貶された」と受け取る人もいますので、使う際には注意が必要です。しかし「野暮ったい」や「野暮用」など日常生活からビジネスシーンまで使われる場面が多いのもまた事実なので、状況を見極めながら臨機応変に使い分けていくことが重要になります。