「嫌気がさしてしまった」のように使う、「嫌気がさす」について解説します。意味や類語、英語表現なども紹介。例文を読めば、意味に含まれるニュアンスの違いがわかりますよ。「嫌気がさす」の「さす」の使い方など、語彙が豊かになる知識をお伝えします。
「嫌気がさす」の意味とは
「嫌気がさす(いやけがさす)」の意味を説明します。
意味
「嫌な気持ちが起こる」や「嫌になる」が「嫌気がさす」の意味です。「嫌気」は「いやき」ともいい、「嫌だと思う気持ち」または「気が進まない様子」を表します。「株式などの相場が思うように動かなかったり、悪い情報が出たりして生じる悲観的な気持ち」も、「嫌気」です。
「嫌気が起こる」ともいう
「嫌気がさす」は「嫌気が差す」とも表記し、「嫌気が起こる(いやけがおこる)」ともいいます。意味は「嫌気がさす」と同じです。また、「嫌気がする」は「嫌気がさす」の誤用。「嫌気がする」という言い回しはありません。
「けんき」と読むと別の意味
「嫌気」を「いやけ」または「いやき」と読む場合、意味は同じです。ただ「嫌気(けんき)」と読むと、生物学の用語になります。「嫌気性(けんきせい)」で「微生物がエネルギー代謝のさいに酸素を必要としない性質」を表す言葉です。「嫌気がさす」とは関連がないので、読み方に要注意です。
「嫌気がさす」に含まれるニュアンス
「嫌気がさす」に含まれるニュアンスを説明します。
嫌悪感
「憎んで嫌う」や「強い不快感をもつ」など、「嫌悪感」のニュアンスが含まれます。たとえば不誠実な態度を取る相手、不正が横行する会社などに対して「嫌気がさす」場合です。
逃避
「嫌気がさす」には、「もう終わりにしたい」や「負担から逃げたい」など「逃避」のニュアンスも含まれます。たとえば忙しい日常や損な役回り、重い責任などに対して「嫌気がさす」場合です。
飽きる
「多すぎたり、同じことが延々と続いていやになる」や「十分に味わったり経験したりして、欲しくなくなる」など、「飽きる」ニュアンスでも「嫌気がさす」を使います。たとえば毎日同じ料理を出される、ダラダラ続くスポーツの試合などに対して「嫌気がさす」場合です。
「嫌気がさす」の使い方・例文
「嫌気がさす」を使った例文を、含まれるニュアンス別に挙げます。
嫌悪感のニュアンスを含む例文
「憎んで嫌う」など、嫌悪感のニュアンスを含む「嫌気がさす」の例文は、以下の通りです。
- 長いものには巻かれろとでもいうような上司の態度には、まったく嫌気がさすよ。
- 彼女を傷つけたことにあとから気づき、自分で自分に嫌気がさしてしまった。
逃避のニュアンスを含む例文
「もうやめたい、終わりにしたい」など、「逃避」のニュアンスで「嫌気がさす」を使う場合の例文を挙げます。
- 仕事漬けの毎日に嫌気がさしてしまい、思い切って1週間の休暇をとることにした。
- 都会暮らしに嫌気がさしたわけではないが、無性に自然のなかで暮らしたくなるときがある。
飽きるニュアンスを含む例文
「もう十分だと感じる」や「同じことが続いて嫌になる」など、「飽きる」ニュアンスで「嫌気がさす」を使う場合の例文を挙げます。
- 作り置きが便利とはいえ、3日間続いたカレー生活に嫌気がさしてきた。
- かんたんな仕事だと高をくくっていたが、単純作業の繰り返しに嫌気がさした。
「嫌気がさす」の「さす」とは?
「嫌気がさす」の「さす」は「差す」とも表記しますが、どんな意味で使われているのでしょうか。「さす」の意味、「嫌気がさす」以外の「さす」の使われ方を紹介します。
ネガティブなものが入り込む意味
「さす」は、「ある種の気持ちや気分が生じてくる、きざしてくる」意味です。「ある種の気持ち」は、あまりよくないもの、ネガティブなものを指します。
「〇〇がさす」の例
「眠気がさす」は「眠気が生じる」、「魔が差す」は「出来心が生じて、判断や行動を誤る」状態を表します。あまり使わない表現ですが、「後ろめたい気持ちになる」や「気がとがめる」ことを「気がさす」といいます。いずれの「さす」も、ネガティブなニュアンスを含んでいます。
「嫌気がさす」の類義語・言い換え表現
「嫌気がさす」の類義語、言い換えられる表現を解説し、例文を挙げます。
「辟易する」
「辟易する(へきえきする)」には複数の意味があり、そのなかで「うんざりして、嫌になること」が「嫌気がさす」と共通しています。漢字「辟」は「避ける」、漢字「易」は「変える」を表し、もともと「辟易」は「相手を恐れて避け、道をあけて場所を変える」意味でした。転じて「勢いに押されてたじろぐ」や「対応のしようがなくて困る」、または「手がつけられず嫌になる」意味でも使われるようになりました。「辟易」に「ひどく迷惑する」ニュアンスが含まれるのが、「嫌気がさす」との違いです。「辟易する」を使った例文を挙げます。
- 朝から晩まで小言ばかりの部長に辟易しています。
- 新居の日当たりのよさは気に入っているが、隣人の騒音には辟易する。
「うんざりする」
「うんざりする」は「ものごとに飽き、つくづく嫌になること」、あるいは「期待はずれでがっかりする」意味です。「飽きてつくづく嫌になる」意味が、「嫌気がさす」の「飽きる」ニュアンスと共通しています。「うんざり」に含まれる「呆れて驚く」ニュアンスは、「嫌気がさす」にはありません。「うんざりする」を使った例文を挙げます。
- 接待の席とはいえ、自慢話を1時間も聞かされ続けるとうんざりしてくる。
- 今日はまだ水曜日かと思うと、うんざりする。週末の休みが待ち遠しい。
「食傷する」
「食傷する(しょくしょうする)」は、「同じ食べ物が続いて飽きること」が転じて「同じものごとが続き、飽き飽きする様子」を表します。「嫌気がさす」の「飽きる」と同じニュアンスです。飽きてくる様子を「食傷気味(しょくしょうぎみ)」ともいいます。「食傷する」を使った例文を挙げます。
- この種のバラエティ番組には、もう食傷気味だ。
- 英語力を活かした仕事がしたいと望んではいたが、山積みになった英語の資料を黙々と読み続ける日々に食傷してしまう。
「閉口する」
「閉口する(へいこうする)」は「言い負かされたり圧倒されたりして、言葉に詰まること」のたとえから、「嫌になる、困ること」あるいは「弱ること」を表します。「困って何も言いたくない、言えない状態」のニュアンスを含む言葉です。「閉口する」を使った例文を挙げます。
- 彼の強引な仕事の進め方に、チームのみなが閉口している。
- 排他的な土地柄に閉口し、近所づきあいを避けるようになってしまった。
「嫌気がさす」の英語表現
「嫌気がさす」の英語表現は、「to be sick of」です。主に「嫌な気持ち、嫌悪感が生じる」ニュアンスで使います。「sick」は直訳で「病気」ですが、「むかむかする」や「むかつく」といった気分の悪さも表す言葉です。「むかつく」は、「to be disgusted」でも表現できます。「to get fed up with」は「うんざりする」や「こりごりする」、または「飽き飽きする」意味。「嫌気がさす」の嫌悪感も飽きるニュアンスも含んでいます。「飽き飽きする」には「to be tired of」も使えます。「疲労させられるほど、飽き飽きする」意味合いです。
まとめ
「嫌気がさす」は「嫌な気持ちが生じる」意味の慣用表現で、嫌悪感や飽き飽きする、または逃避のニュアンスを含みます。「うんざりする」や「辟易する」といった類語と言い換えが可能です。「嫌気がさす」はネガティブな意味の表現なので、ビジネスシーンや目上の方にはあまり使いません。自分の気持ちや行動に対して使うのが無難です。