「アジテーター」とは大衆を政治的な意図をもって行動を起こすように促す人を指す言葉です。似ている言葉として「リーダー」が挙げられることがありますが、本記事では「アジテーター」と「リーダー」の違いを交えながら、意味や使い方を徹底解説します。
「アジテーター」の意味とは?
「アジテーター」という言葉の意味を正しく理解できているでしょうか。ここでは日本で現在使用されている意味と、英語の意味を見ていきましょう。
「アジテーター」とは大衆の扇動者
「アジテーター」とは大衆を扇動する人のことを指します。「扇動する」とは人の気持ちを煽ったり、感情を高ぶらせたりすることで特定の行動を行うように仕向けたり、意見や考えを思いのままにコントロールしようとしたりすることです。つまり、ビジネスシーンで一般的に使われる「アジテーター」は「社会の大勢の人々の感情を揺さぶることで行動や考えを変化させるように仕向ける人」を意味するといえます。
「アジテーター」に悪い意味はある?
ビジネスシーンでは「人々を煽り、刺激を与えて組織を活性化し行動を起こさせる」という意味では、ポジティブな意味としてとらえられることもあります。しかし、政治的な場面では「感情的に大衆を煽って自分の意のままにコントロールしようとする」といった独裁的なニュアンスが含まれることもあり、ネガティブな意味としてとらえられることもしばしばあります。
「アジテーター(agitator)」の英語の意味は?
「アジテーター(agitator)」の英語の意味には「扇動者、運動員、撹拌器」があります。また「アジテーション(agitation)」の英語の意味には「動揺、興奮、かきたてること、扇動、ゆり動かすこと、撹拌、かき混ぜること」という意味があります。これらのことから日本語の「アジテーター」は「扇動し、かき乱して刺激を与える人」や「撹拌するもの」という意味があることが推測できます。
「アジテーター」の語源と由来
続いて、「アジテーター」の語源と由来を紹介します。
「アジテーター」の語源
「アジテーター」はラテン語で「振動する」という意味を成す「agitare」が語源といわれています。ラテン語の「agitare」が英語で「扇動する、かき混ぜる」という意味をもつ「agitate」へと変化し、その派生語として「agitator(アジテーター)」が生まれました。
「アジテーター」の由来
日本語の「アジテーター」の由来は英単語の「agitator」からきています。「agitator(アジテーター)」の語幹「agi」は「行動する」や「駆り立てる」という意味を成しており、「agitator(アジテーター)」が「行動し駆り立てるもの」といったニュアンスを含んでいることがわかります。
「アジテーター」の類義語・言い換え
「アジテーター」は別の言葉で言い換えられるのでしょうか。類語を紹介します。
「リーダー」
「アジテーター」と混同して使われることが多い言葉が「リーダー」です。「リーダー」とは「先頭に立って組織を率いる人」を指し、ビジネスシーン以外でも、スポーツである時点で競技者のトップに立つ人や、主任弁護人・主席弁護士に対しても使われる言葉です。
「音頭とり」「立役者」他
「アジテーター」の類語として挙げられるのが「人前に立って、人に行動するよう促す人」という意味で「音頭取り」「立役者」です。「音頭取り」とは「組織の中で人の前に立って率先して何かをやる人」や「歌の音頭を取る人」を意味します。つまり、率先してその組織のペースやテンポを作っていく人のことを指しています。
「立役者」とは「物事を成し遂げる上で重要な役割を担う人」を意味します。元々は演劇用語で「芝居の中で中心となる重要な役割をもつ役者」を指す言葉で、そこから一般的にも「物事の重要な役割をもつ人物」を指すようになったと考えられます。「陰の立役者」というように、裏方で重要な役割を担った人を指す使われ方が多いことが特徴です。
このほかにもきっかけを作る「火付け役」や人々に働きかけながら主導する「旗振り役」なども、「アジテーター」と似た意味をもつ言葉として挙げられることが多い言葉です。
「アジテーター」と「リーダー」の違い
同じように大衆の中心となって人を動かす人を指す「アジテーター」と「リーダー」ですが、厳密にいえばその役割や人を動かすために取る手段は異なります。「アジテーター」は「人々を煽ることで感情をかき回して刺激を与え、行動を促す人」であり、「リーダー」は「自分が先頭に立って進むべき方向を見せることで、人を動かす人」です。どちらかといえば「アジテーター」よりも「リーダー」の方が優れた人としてポジティブな意味合いで表現されることが多いでしょう。
「アジテーター」の例文やビジネスシーン以外での使い方
「アジテーター」はビジネスシーンはもちろん、それ以外のシーンでも使われることがあります。例文とともに紹介します。
ビジネスシーンでの「アジテーター」の例文
ビジネスシーンでの「アジテーター」は「組織の人々の気持ちを煽って刺激を与え、行動を起こすように促す人」という使われ方をします。自らの主張を持って大衆の前で演説などで人々を動かそうとするのが「アジテーター」の特徴です。
- ビジネス界の歴史が大きく動いた裏にはアジテーターがいたのかもしれない
- アジテーターの言葉に左右されず自分の意思を持って行動しよう
例文のように、「アジテーター」はポジティブ・ネガティブ両方の意味で使われることがあります。
音楽では観客を煽るポジションを担う人のこと
「アジテーター」はビジネスシーン以外でも音楽シーンでも使われます。音楽での「アジテーター」とは、ライブやコンサートなどで動きや話術で観客を煽り、場を盛り上げる人を意味します。「アジテーター」が観客を煽り盛り上げることで、会場の一体感を高め、より熱量の高いライブやコンサートを作り出せます。「あのバンドにはアジテーターがいるからライブが盛り上がる」という使い方をします。
また、音楽シーンで使われる「アジテーター」と意味やニュアンスが似た言葉として「アジタート(agitato)」があります。「アジタート」はクラシック音楽の楽譜などによく書かれている音楽用語で、「激しく・興奮して」という意味をもちます。メロディに強弱や奥行きをもたせるための記号として使われています。
施工現場ではコンクリートミキサー車のこと
施工現場での「アジテーター」は「生コンクリートを撹拌する機械」つまり「コンクリートミキサー車」を意味します。「コンクリートミキサー車」は「アジテーター車」と呼ばれることもあります。生コンクリートは放置しておくと成分が分離してしまうため、「アジテーター」のミキサードラムと呼ばれる部分で撹拌し、生コンクリートをぐるぐるとかき混ぜながら工事現場まで運搬する必要があります。
「アジテーター」といわれる人とは
「アジテーター」とは具体的にどんな人を指すのか、著名人をもとに紹介していきます。
組織の「アジテーター」とはこんな人
「アジテーター」とは「大衆を扇動し行動を起こさせる人」という意味でした。では、ビジネスの組織における「アジテーター」とは具体的にどのような人を指すのでしょうか。
- 会議などで参加者を刺激し、議論を活性化させる人
- 不安や恐怖心を煽り、自分の思い通りに人を動かそうとする人
- 自分の主張や主義を演説し、人々の心をかきたてて行動を促すように仕向ける人
いずれも「人々の感情を揺さぶる」ことで「行動を促す」ような人を指しています。
具体的な著名人
具体的な著名人で「アジテーター」といわれている人は、アメリカのドナルド・トランプ大統領や俳人の五百木飄亭です。
トランプ大統領はまさに「自分の主義を強く持ち、人を感情的に揺さぶり心を煽る」演説で人々の行動を変化させることが特徴の政治家です。トランプ大統領の演説で多くの大衆が意見や考えを変化させており「行動を起こしている」ことが、トランプ大統領が「アジテーター」と呼ばれるゆえんなのでしょう。
五百木飄亭は明治~昭和時代の日本の俳人であり政治運動家です。「近代日本を陰で動かした国粋主義者(日本の伝統を守ろうとする主義の人)」として、言葉で大衆の感情を駆り立てて歴史を動かした「アジテーター」といわれています。
まとめ
「アジテーター」はなかなか聞きなれない言葉だと感じていた方も多かったのではないでしょうか。「アジテーター」の主な意味は「扇動者」と「撹拌機」の2種類です。どちらも人の心や物質を「かき混ぜる」といったニュアンスと理解しておくと覚えやすいでしょう。
「扇動者」の意味では「大衆を煽り行動をコントロールする人」や「音楽ライブなどで場を盛り上げる人」というようにポジティブ・ネガティブ両方の意味で使われる場合があるため、文脈を正しく解釈した読み取りが求められます。