会話の流れでよく使われる「たわいもない」、意味を正しく理解していない人も多いのではないでしょうか。「たわいもない」の本来の意味と、正しい使い方を例文を交えて解説します。「たあいもない」との使い分けについても説明するので、参考にしてください。
「たわいもない」の意味とは?
「たわいもない」は、思慮分別を意味する「たわい」に、「ない」が付いた言葉です。「たわいもない」を正しく使うには、「たわい」の意味をちゃんと理解しておく必要があります。「たわい」の詳しい意味と、「たわいもない」がどういう状態を表すのか、解説するので参考にしてください。
「たわい」は思慮分別を意味する
「たわい」は思慮分別を意味する言葉で、以下のような状態を表します。
- しっかりしている、正気がある
- しっかりとした考え、思慮分別がある
- 手応え、張り合い
下に否定の言葉を合わせて、それがないという意味で使うので、「たわい」のみで使うケースはないといってよいでしょう。
「たわいもない」は思慮分別がない・取るに足らないこと
先ほど説明したとおり、「たわい」は思慮分別を意味する言葉なので、「たわいもない」は思慮分別がない状態です。かんたんに言うと「たわい」の逆の状態を表しており、具体的には以下のような意味になります。
- しっかりしていない、思慮分別がない
- さして重要ではない、話題にするほどの価値がない
- 手応えがない、張り合いがない
- 寝入ったりして正体がない
「たわい」自体が複数の意味を持つ言葉なので、「たわいもない」も文脈によって意味が変わります。どの意味で「たわいもない」を使っているか、ニュアンスで判断するようにしましょう。
「たわいもない」の語源・由来
「たわいもない」の語源は、「も」が入らない「たわいない」だとされています。似た言葉で、「たあいもない」と「他愛もない」がありますが、こちらも正しくは「たあいない」です。「たわいもない」でも間違いではありませんが、本来は「たわいない」が正しいと表現と、覚えておきましょう。
「たわいない」と「たあいない」は、共に江戸時代から使われており、正しい日本語として認識されています。どちらが先に生まれた言葉かは不明ですが、辞書では「たわいない」が本項目とされている場合がほとんどです。
「たわいもない」の類義語・言い換え
「たわいもない」の類義語・言い換えは、以下になります。
- 取るに足らない
- 些細な
- 瑣末な、些末な
意味合いは全て同じですが、表現に多少の差があるため、シーンによって使い分けるとよいでしょう。それぞれ、詳しく解説します。
「取るに足らない」が一般的
「たわいもない」の類義語として最も一般的なのは、「取るに足らない」です。「取るに足らない」は、以下のような意味を持っています。
- 取り上げるほどの価値がない
- つまらない
- どうでもよい
「たわいもない」自体、取るに足らないの意味を持ち合わせているので、「たわいもない」と同じ意味で使用できます。
「些細な」だと直接的な表現になる
「些細な」も、僅かなさま・取るに足らないことを意味しているので、「たわいもない」と同じ意味で使えます。
しかし、遠回しに取り上げる価値がないと伝えている「たわいもない」に対し、「些細な」は直接的な表現です。直接的な表現を避けたい場合は、「たわいもない」を使うのをおすすめします。
「瑣末な」「些末な」も同じ意味で使える
「瑣末な・些末な(さまつな)」も、たいして重要ではない・僅かなさまを意味するので、「たわいもない」と同じ意味で使えます。「些末な」は、少々馴染みの薄い言葉かもしれませんが、やや改まった場で使うには適している言葉です。
日常的に使うのは「たわいもない」、直接的な表現をするときは「些細な」、改まった場では「些末な」と使い分けるのがよいでしょう。
「たわいもない」と「たあいもない」の違い
「たわいもない」とよく似ている「たあいもない」、意味に違いがあるのか気になる人も多いでしょう。漢字で「他愛もない」と表記する場合もありますが、それぞれに違いはあるのか解説します。
どちらも同じ意味で使う
「たわいもない」と「たあいもない」は同じ意味なので、基本的にはどちらを使っても問題ありません。しかし、「たわいもない」のほうが一般的なため、特に理由が無ければ「たわいもない」を使うのをおすすめします。辞書でも「たあいもない」は参考項目扱いになっているため、「たわいもない」が一般的といえるでしょう。
漢字の「他愛もない」も同じ
漢字の「他愛もない」も、「たわいもない・たあいもない」と同じ意味の言葉です。「たわいない」と同様、「他愛もない」も本来は「他愛ない」と表現します。
「他愛」とは「たわい」の当て字で、漢字自体に特別な意味はありません。あまり頻繁に使われる漢字ではないので、迷ったときは平仮名で「たわいない」と表現するのが無難でしょう。
「たわいもない」の英語表現
「たわいもない」を、英語で表現する場合の単語を解説します。「たわいもない」自体をそのまま英語にした単語はないので、状況に応じて単語を使い分けましょう。
sillily、foolishly、idly
「たわいもない」を英語で表現する場合、sillily・foolishly・idlyがふさわしいでしょう。どの言葉も、どうでもよいような馬鹿げたこと・取るに足らない・意味がないという意味合いを持っています。
一般的には、「馬鹿げた」や「愚かな」などの意味を持つ、sillilyを使う場合が多いです。sillilyは、以下のように組み合わせて使います。
- sillily thing(たわいもないこと)
- talk sillily with ○○(~とたわいもない話をする)
「たわいもない」を人に対して使う場合は、foolishlyでもよいかもしれません。foolishlyは、バカバカしい・無邪気などの意味で使える言葉です。ただし、foolishlyは事柄や行動に対して使うのは一般的ではないため、人に対してのみ使うと覚えておきましょう。
「たわいもない」話を英語でいうと
「たわいもない話」を英語にすると、以下のようになります。
- tale of a tub
- idle talk
- sillily talk
- tale told by an idiot
idle talkは、雑談・無駄話の意味を持っているので、「たわいもない話」として使うには特に適しているでしょう。
「たわいもない話」にsillilyを用いる場合は、以下のように表現できます。
We talked about silly things.(わたしたちはたわいもない話をした。)
「たわいもない」の使い方・例文
「たわいもない」の、具体的な使い方と例文を紹介します。「取るに足らない・正体がない・手応えがない」の、それぞれの意味で解説するので、参考にしてください。
「取るに足らない」の意味で使う場合
「たわいもない」を、「取るに足らない」の意味で使う場合の例文は、以下になります。
- 彼となら、たわいもない会話でも楽しめる。
- たわいもない日常が何より幸せだと気づいた。
この場合の「たわいもない」は、「とりとめもない」や「特に重要ではない」という意味合いになります。「たわいもない」の表現の中で一番よく使われるのが、「取るに足らない」の意味での使い方ではないでしょうか。
「寝入ったりして正体がない」の意味で使う場合
「寝入ったりして正体がない」の意味で、「たわいもない」を使う場合は、以下のようになります。
- あんなにたわいもなく酔うとは思わなかった。
- 仕事の締め切りが迫っているのに、たわいもなく寝てしまっていた。
この場合の「正体がない」とは、精神・体が正常な状態ではないことを表します。意識が曖昧になるほど飲んでしまい酔いつぶれた、疲労困憊して意識を失ったなどの場合に使いましょう。
「張り合いや手応えがない」の意味で使う場合
「張り合いや手応えがない」という意味で、「たわいもない」を使う場合は、以下のようになります。
- 1年間ずっと特訓してきたのに、たわいもなく負けてしまった。
- こんなたわいもない戦いになるとは思わなかった。
この場合の「たわいもない」は、あっけなく負けたときや、やりがいを感じられなかったときに使うのが適切です。勝負事のときに使う場合が多いでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回はたわいもないについて解説しました。
最後に「たわいもない」のまとめです。
- 「たわいもない」は、思慮分別を意味する「たわい」に、「ない」が付いた言葉です。
- 「たわい」自体が複数の意味を持つ言葉なので、「たわいもない」も文脈によって意味が変わります。
- 「たわいもない」の語源は、「も」が入らない「たわいない」だとされています。
- 「たわいもない」の類義語は「取るに足らない」「些細な」「瑣末な」「些末な」です。
- 「たわいもない」と「たあいもない」は同じ意味なので、基本的にはどちらを使っても問題ありません。しかし、「たわいもない」のほうが一般的なため、特に理由が無ければ「たわいもない」を使うのをおすすめします。
- 「たわいもない」を英語で表現する場合、sillily・foolishly・idlyがふさわしいでしょう。どの言葉も、どうでもよいような馬鹿げたこと・取るに足らない・意味がないという意味合いを持っています。