「天上天下唯我独尊」という言葉を聞いたことはあっても、実際にどんな意味なのか、そしてその続きの言葉が何なのか、知らない人もいるのではないでしょうか?由来や続きの言葉・例文・英語もわかりやすく解説します。
「天上天下唯我独尊」の読み方
「天上天下唯我独尊」の読み方は2通りあります。それぞれについて説明します。
「天上天下唯我独尊」の読み方1「てんじょうてんげ」
「天上天下唯我独尊」は、「天上天下」と「唯我独尊」が合成された言葉です。「天上天下」は一般的には、「てんじょうてんげ」と読みます。「唯我独尊」は「ゆいがどくそん」と読みます。「天上天下唯我独尊」の読み方の1つ目は、「てんじょうてんげゆいがどくそん」です。
「天上天下唯我独尊」の読み方2「てんじょうてんが」
「天上天下唯我独尊」の読み方の2つ目は、「てんじょうてんがゆいがどくそん」です。「天上天下」の「天下」は単体では、「てんか」と読みます。そのため、「天上」に付いて「天上天下」となった場合は、濁点がついて「てんじょうてんが」と読むことがあります。そのため、「天上天下唯我独尊」を「てんじょうてんがゆいがどくそん」と読んでも、間違いではありません。
「天上天下唯我独尊」の意味とは?
「天上天下唯我独尊」の意味は2つあります。それぞれについて説明します。
「天上天下唯我独尊」の意味1「この世に自分より尊い者はいない」
「天上天下唯我独尊」の意味の1つ目は、「この世に自分より尊い者はいない」です。「天上天下」の意味は、「天上の世界と地上の世界。天地の間」です。「天地の間で我ただ一人が優れている」ということで、「この世に自分より尊い者はいない」という意味になります。ただし、相手を見下していう言葉ではないので、注意しましょう。
「天上天下唯我独尊」の意味2「人間はあるがままで尊い」
「天上天下唯我独尊」を文字通りにとらえると、意味の1つ目である「この世に自分より尊い者はいない」になります。特に仏教において、この言葉を「天地の間でただ一人の、他の誰とも代わることのできない、かけがえのない者として、自分のままで尊い」と解釈する場合があります。この場合の「天上天下唯我独尊」の意味は、「人間はあるがままで尊い」です。一人一人の命は他の誰とも比べる必要などなく、ただ今あるがままで尊く素晴らしいのだということを伝えています。
「天上天下唯我独尊」の由来
「天上天下唯我独尊」の由来は、仏教の開祖である釈迦の誕生にあるといわれています。釈迦の誕生、釈迦の発した言葉の意味、そこから転じた現代的な意味について説明します。
釈迦の誕生
仏教の開祖である釈迦は、紀元前5世紀ごろに、古代インドの釈迦族の王子として誕生しました。35歳の時に悟りを開いて45年間布教に努めました。「天上天下唯我独尊」の由来は、釈迦の誕生時のエピソードに基づいています。釈迦の生涯を綴った仏伝によると、「天上天下唯我独尊」は、釈迦が誕生するとすぐに七歩歩き、右手で天を指し、左手で地を指して唱えた言葉であるとされています。「天上天下唯我独尊」は、釈迦の誕生を伝える仏典である『修行本起経』や、玄奘の旅行記である『大唐西域記』に書かれています。
釈迦の言葉の意味
釈迦は、どのような意味で「天上天下唯我独尊」、すなわち「この世に自分より尊い者はいない」と言ったのでしょうか。釈迦は、後に悟りを開いてブッダとなるために生まれてきたので自分は尊いのだと宣言したのです。あるいは、人々の心を満たして幸せに導くために生まれてきたのだから自分は尊いのだと宣言した、という説もあります。
釈迦から転じた現代的な意味
仏教の開祖である釈迦が言った言葉ですから、自分が最も尊いのだと宣言したとしても、決して偉そうにしているわけではありません。しかし、もともとの釈迦の言葉の意味から転じた、現代的な意味があります。「天上天下唯我独尊」の現代的な意味は、「この世の中で自分が一番すぐれているとうぬぼれること」「この世の中で自分だけがすぐれているのだという独りよがりな態度」です。うぬぼれている人や、独善的な人を否定的に表現する言葉です。元々の意味とはかなりかけ離れていますが、現代的な意味で使われることも多い言葉です。
「天上天下唯我独尊」の続き
「天上天下唯我独尊」には、その後に続く言葉があります。続きを知ることによって、「天上天下唯我独尊」にこめられた意味がよく理解できるようになります。原典によって異なる、2通りの続きについて説明します。
「天上天下唯我独尊」の原典
「天上天下唯我独尊」の原典によって、続きの言葉は異なります。「天上天下唯我独尊」は色々な書物やお経に登場しますが、代表的なものを二つ紹介します。一つは、『大唐西域記』です。7世紀の唐の僧侶である玄奘が、シルクロードを経てインドへ行った旅行記です。もう一つは、釈迦の誕生を伝える仏典である『修行本起経』です。それぞれに「天上天下唯我独尊」と書かれていますが、続く言葉が異なっています。
この世に生まれてきたのは最後の生である
『大唐西域記』における「天上天下唯我独尊」の続きは、「今茲而往生分已尽」(こんじにおうじょうぶんいじん)です。意味は、「この世に生まれてきたのは最後の生であり、二度と生まれ変わることはない」です。これは、後に悟りを開いてブッダとなる自分は、輪廻転生をもうしないのだ、それだけ尊いのだという宣言です。
人々を幸せにするために生まれた
『修行本起経』における「天上天下唯我独尊」の続きは、「三界皆苦吾当安此」(さんがいかいくごとうあんし)です。意味は、「輪廻転生を繰り返す人々の心を満たして幸せにするために生まれた」です。世の中の人々を救うため、すなわち利他のために自分は生まれてきたのだから尊いのだと言っています。
「天上天下唯我独尊」を英語でいうと?
「天上天下唯我独尊」釈迦の言葉ですが、英語でいうとどうなるでしょうか。「天上天下唯我独尊」を英語でいうと、「I alone am the world honored one. 」や「Holy am I alone throughout heaven and earth.」となります。英語では、「自分が一番尊い」というニュアンスではありません。「人間はあるがままで尊い」に意味が近く、「自分は世界中で唯一の存在である」という表現です。
「天上天下唯我独尊」の使い方と例文集
「天上天下唯我独尊」の使い方と例文を紹介します。
「天上天下唯我独尊」の使い方
「天上天下唯我独尊」の使い方には3通りあるので、注意が必要です。本来の意味である「この世に自分より尊い者はいない」は、釈迦の言った言葉として使うしかありません。釈迦の言葉として使わなければ、傲慢な人だと思われてしまいます。釈迦の言葉に解釈を加えた「人間はあるがままで尊い」は、より一般的な言葉として使えます。現代的な意味である「この世の中で自分が一番すぐれているとうぬぼれること」「この世の中で自分だけがすぐれているのだという独りよがりな態度」は、否定的な表現なので、注意して使いましょう。
「天上天下唯我独尊」の例文
「天上天下唯我独尊」の例文は、次のようになります。
- お釈迦様が天上天下唯我独尊と言ったのは、後に悟りを開く人物だからこそ言えた言葉である
- 天上天下唯我独尊なのだから、どんな人だって生きているだけで素晴らしい。
- 天上天下唯我独尊という感じで、あの人はいつも偉そうにしている。
まとめ
「天上天下唯我独尊」は、釈迦が誕生するとすぐに唱えた言葉であるといわれています。意味は、「この世に自分より尊い者はいない」や「人間はあるがままで尊い」です。そこから転じた現代的な意味は、「この世の中で自分が一番すぐれているとうぬぼれること」「この世の中で自分だけがすぐれているのだという独りよがりな態度」です。元々の意味とはかけ離れた否定的な表現なので、使うときには注意しましょう。