家屋やビルなど、建築物に使われる材料としてよく知られる「モルタル」と「コンクリート」、この2つは何が違うのでしょうか?材料や用途の違いから強度や寿命の違いまで、さらには古代から使われていた歴史まで詳しく解説します!
「モルタル」と「コンクリート」の原材料の違いは?
「モルタル」と「コンクリート」は、そもそも原材料から違うものなのでしょうか?
「モルタル」は結合材と水と細骨材で構成
「モルタル」は結合材と水と細骨材を練り混ぜたものです。
結合材として最もポピュラーなのはセメントで、一般に「モルタル」といえば「セメントモルタル」を指します。
セメント以外の結合材を使った「モルタル」には、熱硬化性樹脂(レジン)を使った「樹脂モルタル(レジンモルタル)」があります。
細骨材は全ての粒が10mm以下かつ、そのうち85%以上が5mm以下の骨材のことです。
細骨材として使われるのは主に砂で、セメントと砂の比率は、重量比で1:2から1:3の割合で混ぜて作られます。
「コンクリート」は結合材と水と細骨材と粗骨材で構成
「コンクリート」は結合材と水と細骨材と粗骨材を練り混ぜたものです。
「モルタル」との違いは、粗骨材の有無です。粗骨材とは、5mm以上の粒が全体の85%以上の骨材のことで、主に使われるのは砂利です。
一般的にセメントと砂と砂利の比率は、重量比で1:3:6の割合で混ぜて作られます。
「モルタル」同様に、セメントを使うのが一般的ですが、セメント以外で熱硬化性樹脂を使った「樹脂コンクリート(レジンコンクリートあるいはポリマーコンクリート)」もあります。
鍵となる材料の「セメント」とは?
一般的な「モルタル」と「コンクリート」に共通の材料で、化学反応で固くなる結合材の役割を果たすのが「セメント」です。
「セメント」は、広い意味では水を始めとする液剤により、水和や重合して硬化する粉体を指します。
一般に「セメント」といえば「ポルトランドセメント」のことを指し、ケイ酸三カルシウム、ケイ酸二カルシウム、カルシウムアルミネート、カルシウムアルミノフェライト、硫酸カルシウムからなります。
「ポルトランドセメント」以外でJISに登録されている「セメント」には、「混合セメント」と呼ばれる高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント、さらに廃棄物問題の解決を目指して開発された「エコセメント」があります。
「モルタル」と「コンクリート」の用途の違い
「モルタル」と「コンクリート」はそれぞれどのような用途で用いられている建築材料なのでしょうか?
「モルタル」は外壁や塀でよく使われる
「モルタル」は、レンガやブロックを積む際の接着剤や目地の充填剤や、外壁に塗る仕上材としてよく使われます。
特に、昭和の時代(1960年から1980年)に住宅の外壁素材としてよく使われていました。
モルタルの外壁が流行した背景には、昭和25年に施行された建築基準法で、防火仕様の外壁が求められたことが挙げられます。
しかし、ひび割れしやすく汚れが目立ちやすい欠点があり、現在は外壁タイルやサイディングが主流になっています。
タイルやレンガを貼る際の下地材としては今もよく利用されています。
「コンクリート」は土木・建築物に幅広く使用
「コンクリート」はよく知られている通り、ビルなどの建築物だけでなく、橋やトンネル、ダム・湾岸などの土木工事でも使われています。
「コンクリート」が使われる際には、強度を高めるために鉄筋を入れた枠型にコンクリートを流し込んで造る鉄筋コンクリート造(RC造)や、それに鉄骨が入った鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)がよく見られます。
現地で生コンクリートを流し込む現場打ち工法以外には、専用工場であらかじめコンクリート製品を製作し、現地に運んで組み立てる「プレキャストコンクリート工法」もあります。
「コンクリート」と「アスファルト」の違いは?
「コンクリート」と「アスファルト」は、共に道路や駐車場の舗装に用いられる材料です。
「アスファルト」は、本来骨材の接着剤となる瀝青材料を指し、「コンクリート」における「セメント」にあたります。
「アスファルト」を結合材として、骨材(砂や砂利、融解スラグなど)を混ぜた「アスファルト混合物」を使って舗装されます。
「アスファルト混合物」は「アスファルトコンクリート(アスコン)」と呼ばれ、これは広義の「コンクリート」です。
「モルタル」と「コンクリート」の強度の違い
「モルタル」と「コンクリート」、それぞれの強度は?どちらの強度が高いのでしょうか?
強度は材料によって変わる
「モルタル」と「コンクリート」の強度は、使うセメントの種類やセメントの量(比率)、骨材によって変わります。
一般に圧縮強度は「コンクリート」の方が高いですが、「モルタル」も材料次第で高強度にできます。
土木・建築分野で「コンクリート」が用いられるのは、「モルタル」よりも高い強度が得られる上に、価格も安いためです。
強度を高めた高強度コンクリート
「コンクリート」の材料のうち、セメントの量を増やして水の量を減らすなどした「高強度コンクリート」は、高層建築物などで利用されます。
「高強度コンクリート」は構造が緻密なため、火災時に水分の逃げ道がなく爆裂を起こしてしまう危険性があります。
それを避けるために、「モルタル」や鋼板巻きなどで耐火被覆を施す工法や、融点が比較的低いポリプロピレン樹脂粉末を少量混入して耐火性能を向上させる手法が取られます。
鉄筋コンクリートで強度を補って最強に
「コンクリート」は高い圧縮強度を持ちますが、引っ張り、曲げ、せん断の強度は高くありません。
「コンクリート」の中に鉄筋を配することで、これらの強度を高めているのが「鉄筋コンクリート」です。
使われる鉄筋には、引張力がかかった時に抜けないように、節(リブ)のある異形鉄筋が用いられます。
「モルタル」と「コンクリート」の見た目の違い
セメントを使う現在の一般的な「モルタル」と「コンクリート」は、色合いの違いはほとんどなく、見分けがつきにくいです。
違いは粗骨材(砂利)の有無による、表面の粗さです。
砂利がなくセメントで構成される「モルタル」は固まると表面がつるっとなり、「コンクリート」は荒くざらっとした表面になります。
このような見た目の違いから、「コンクリート」の粗さを隠すために、表面に「モルタル」を塗って仕上げる手法も使われます。
「モルタル」と「コンクリート」の寿命の違い
同じセメントを使った建築材料である「モルタル」と「コンクリート」、それぞれどれくらいの寿命があるのでしょうか?
現在の一般的な「モルタル」と「コンクリート」の寿命
使う材料や工法によって変わりますが、一般的な材料のモルタル外壁の寿命は、約30年といわれています。
「モルタル」は、自然乾燥や紫外線や雨風で表面が劣化するとひび割れを起こしやすい特性があります。
税務上の鉄筋コンクリート造の建造物の法定耐用年数は47年ですが、実際の耐用年数はもっと長いです。
正しく施工・メンテナンスされた鉄筋コンクリートは、100年から120年の寿命があるといわれています。
材料によって寿命は変わる
鉄筋コンクリートは、中性化や塩害で中の鉄筋に腐食が発生すると、寿命は短くなります。
1999年に起きた山陽新幹線の福岡トンネルコンクリート塊落下事故の原因の一つは、粗骨材に使った海砂利をよく洗っていなかったため発生した塩害といわれています。
塩害が発生した場合の補修には、ポリマーセメントモルタル系被覆材で表面をカバーする工法が取られる場合もあります。
その一方でセメントの比率を高め、200年持つ仕様の長寿命コンクリートも開発されています。
「モルタル」と「コンクリート」の歴史
「モルタル」と「コンクリート」は、古代から建築材料として使われてきました!
現在のセメントを使った「モルタル」や「コンクリート」ではありませんが、「ローマン・コンクリート」は2000年経っても残っています!
古代ローマの「ローマン・コンクリート」
「コンクリート」はローマ帝国の時代、有名なパンテオンやコロッセオなどの建築に使われています。
「ローマン・コンクリート」とも呼ばれる古代コンクリートは、石灰、火山灰、割石、水を使った、セメントを使って造る現在のコンクリートとは違うものです。
現在のコンクリートのような水和や重合反応ではなく、ジオポリマー反応で結合してケイ酸ポリマーを形成する「ジオポリマーコンクリート」にあたります。
堆積岩と生成機構が同じである「ジオポリマーコンクリート」の寿命は非常に長く、ローマ帝国の遺跡は2000年経った現在でも強度を保っています。
「漆喰」は「モルタル」の一種
水酸化カルシウム(消石灰)を主成分とする建築材料「漆喰(しっくい)」は、元々「石灰」だったものの当て字が定着した言葉です。
消石灰と砂を水を加えながら混ぜて練り上げた材料は、西洋でも古代から使われています。
日本における「漆喰」は、消石灰に骨材、すさ(麻)、海藻のりを混ぜたもので、寺社仏閣やお城、蔵など壁に塗る材料に使われてきました。
国宝・姫路城は、屋根瓦の継ぎ目に漆喰を施した「屋根目地漆喰」によって、「白鷺城」と呼ばれる白く美しい姿になっています。
防火性が高く、調湿機能にも優れる「漆喰」は、「モルタル」の一種になります。
まとめ
現在のセメントからなるものとは材料が違いますが、「モルタル」や「コンクリート」は古代より使われてきた建築材料です。
現代の一般的な「モルタル」と「コンクリート」は、粗骨材(砂利)を使っているか使っていないかの違いだけですが、その用途や強度・寿命は全く違うものです!
鉄筋コンクリートの補修にモルタルを塗るケースもあり、どちらも建築には欠かせない材料です。