衣食足りて礼節を知るの意味とは?由来や使い方、類語・対義語・英語を例文解説

「衣食足りて礼節を知る」の意味とは?由来や使い方、類語・対義語・英語を例文解説
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人のふるまいやマナーについて述べたことわざ、「衣食足りて礼節を知る」を紹介します。どんな場面で使うのか、由来や類語と対義語などを徹底解説。使い方は例文で確認できます。「衣食足りて礼節を知る」をボキャブラリーの1つに加えてください。

目次

「衣食足りて礼節を知る」の読み方と四字熟語

「衣食足りて礼節を知る」の読み方と四字熟語

「衣食足りて礼節を知る」は「いしょくたりてれいせつをしる」と読みます。四字熟語で「衣食礼節(いしょくれいせつ)」ともいい、意味は同じです。

「衣食足りて礼節を知る」の意味とは?

「衣食足りて礼節を知る」の意味とは?

「人は物質的に不自由しなくなってこそ、礼節をわきまえた行動をとれる」が「衣食足りて礼節を知る」の意味です。次に「衣食」と「礼節」それぞれの意味を確認します。

参照:Weblio辞書「衣食足りて礼節を知る」

「衣食」は「暮らし」を表す

「衣食」は文字どおり「衣服と食事、着ることと食べること」のほか、「暮らしを立てること」の意味があります。「衣食足りて礼節を知る」の衣食は、後者の「暮らしを立てる」です。ふつう「暮らし」を指すのは「衣食住」と、「住(住む)」も含みます。しかし「衣食」だけでも「暮らしを立てる」意味なので、「住」が含まれていなくても問題はありません。つまり「衣食足りて礼節を知る」の意味「人は物質的に不自由しなくなってこそ、礼節をわきまえた行動をとれる」の「物質」とは、暮らしに必要な衣食住、お金などを指します。

「礼節」は「マナー」や「思いやり」を表す

「礼節」は「礼儀と節度」の意味です。「礼儀」を平たくいうと「社会生活に必要な秩序やマナー」です。単に礼儀作法だけでなく、常識や道徳なども含んでいます。「節度」は「度をすぎない」や「ほどほどに」の意味です。相手のことを思いやり、度をすぎないよう配慮することも「礼節」になります。

「衣食足りて礼節を知る」の由来と出典

「衣食足りて礼節を知る」の由来と出典

「衣食足りて礼節を知る」の由来と出典を紹介します。

出典

中国春秋時代の思想家・管仲(かんちゅう)の言葉をまとめた書物『管子(かんし)』に、「衣食足りて礼節を知る」のもとになった一節があります。

由来

『管子』に「倉廩(そうりん)実(み)つれば即ち礼節を知り、衣食足りれば即ち栄辱(えいじょく)を知る」の一節があり、これが「衣食足りて礼節を知る」の由来です。意味は「米を貯める倉庫がいっぱいになってはじめて礼節をわきまえ、衣食が足りてはじめて栄誉や名誉について思い至るようになる」。これが故事成語となり、のちに「衣食足りて礼節を知る」となりました。管仲は「人々の道徳意識を高め、国を豊かにするためには、まず政治が人々を飢えさせないようにしなければだめだ」と述べたそうです。

「衣食足りて礼節を知る」の使い方と例文

「衣食足りて礼節を知る」の使い方と例文

「衣食足りて礼節を知る」がどのようなニュアンスで使われるのかを紹介し、例文を挙げます

「衣食足りて礼節を知る」に込められたニュアンス

「暮らしに余裕があってこそ礼節が保てる」が、「衣食足りて礼節を知る」の基本的な意味です。ここには「暮らしに余裕がなければ、礼節どころではない」または、「礼節より生きていくことのほうが第一」のニュアンスがあります。さらに「礼節を守り、人間らしく生きるためにも衣食は大事」ともいえます。もう1つ、暮らしに困っていない人や豊かな人に対して「衣食が満ち足りているのだから、礼節を心がけられるはずだ」と戒めるニュアンスです。

例文

「衣食足りて礼節を知る」を使った例文を挙げます。

使い方・例文
  • 彼は見違えるように礼儀正しく、立派な大人になった。やはり衣食足りて礼節を知るということだろうか。
  • 衣食足りて礼節を知るというが、彼女は豊かな暮らしをしているのにまったく人を思いやれない。
  • もっと社会に貢献したいと思っているものの、自分の暮らしだけで手一杯だ。衣食足りて礼節を知るにはほど遠いな。

「衣食足りて礼節を知る」の類義語・言い換え表現

「衣食足りて礼節を知る」の類義語・言い換え表現

「衣食足りて礼節を知る」の類語、似た意味のことわざを紹介します。

「衣食足りて栄辱を知る」

「衣食足りて栄辱を知る」は「いしょくたりてえいじょくをしる」と読みます。「衣食足りて礼節を知る」のもとになった一文「倉廩実つれば即ち礼節を知り、衣食足りれば即ち栄辱を知る」が、そのままことわざとなりました。「栄辱」は「栄誉と恥辱」。つまり「衣食が満ち足りてこそ、人ははじめて栄誉と恥辱について思い至るようになる」意味です。

「倉廩実ちて礼節を知る」

「倉廩実ちて礼節を知る」は、「そうりんみちてれいせつをしる」と読みます。「衣食足りて礼節を知る」のもとになった一文「倉廩実つれば即ち礼節を知り、衣食足りれば即ち栄辱を知る」から、前半部分がそのままことわざになりました。「倉廩」は「米など穀物を蓄えておく蔵」、「実ちる」は「満たす、いっぱいになる」を表します。「倉廩実ちて礼節を知る」は、「暮らしに不自由しなくなってこそ、礼節をわきまえるようになる」の意味です。「実ちる」ではなく「満ちる」を使い、「倉廩満ちて礼節を知る」とも表記します。

「憂いも辛いも食うての上」

「憂いも辛いも食うての上」は「うれいもつらいもくうてのうえ」と読みます。意味は「悲しみや辛さは、暮らしが成り立っているからこそいえることである。暮らしに困っていれば、そんな不満さえいえない」です。「礼節」とは違いますが、「暮らしが成り立ってこそ精神的なものに言及できる」ニュアンスが「衣食足りて礼節を知る」と共通しています。

「恒産なくして恒心なし」

「恒産なくして恒心なし」は「こうさんなくしてこうしんなし」と読み、「暮らしが安定していなければ、安定した道徳心を保てない」意味です。出典は中国戦国時代の儒学者・孟子(もうし)の問答や逸話を記した書物『孟子』。「恒産なきものは恒心なし」、または「常の産なき時は常の心なし(つねのさんなきときはつねのこころなし)」ともいいます。「恒産」は暮らしの安定、つまり財産や定職を指します。「恒心」は「安定した道徳心」の意味です。

「衣食足りて礼節を知る」の対義語

「衣食足りて礼節を知る」の対義語

「衣食足りて礼節を知る」と反対の意味をもつことわざを紹介します。

「人はパンのみにて生くる者に非ず」

「人はパンのみにて生くる者に非ず」は、「ひとはぱんのみにていくるものにあらず」と読みます。意味は「人は物質的なものだけで生きているわけではない」。「物質的に満たされなければ精神的なことにまで考えが及ばない」とする「衣食足りて礼節を知る」とは、反対です。「人はパンのみにて生くる者に非ず」の出典は、『新約聖書』の「マタイ伝第4章」です。聖書では「人は物質的なものだけでなく、精神的なよりどころが必要だ」と説いています。

「武士は食わねど高楊枝」

「武士は食わねど高楊枝」は「ぶしはくわねどたかようじ」と読みます。意味は「たとえ物質的には満たされていなくても矜持を保ち、清貧をよしとすること」です。武士はたとえ貧しくて食事ができなくても食後のように楊枝を使い、気位を高く保つものだと戒めています。貧しくても恥ずべきことはしないという点で、「衣食足りて礼節を知る」とは反対です。

「衣食足りて礼節を知る」は「貧すれば鈍す」の類義語?対義語?

「衣食足りて礼節を知る」は「貧すれば鈍す」の類義語?対義語?

「衣食足りて礼節を知る」と混同されがちなことわざが、「貧すれば鈍す(ひんすればどんす)」です。この2つのことわざは類語なのでしょうか、それとも対義語なのでしょうか。「貧すれば鈍す」の意味は、「もともとは優れた能力をもつ人でも、貧しくなるとその能力までもが失われてしまう」です。だれにでも当てはまることわざではなく、本来なら賢かった人、有能な人に対してだけ使います。「衣食足りて礼節を知る」と共通しているのは、物質的な豊かさと精神の充実が関連している点です。異なるのは有能な人にしか当てはまらない点と、「満たされる」のでなはく「鈍る、失う」について述べている点です。これらから「衣食足りて礼節を知る」と「貧すれば鈍す」は、類義語ではあるもののニュアンスの違いが大きいといえます。意味の違いを押さえたうえで使い分けてください。

「衣食足りて礼節を知る」の英語表現

「衣食足りて礼節を知る」の英語表現

「衣食足りて礼節を知る」を英語で表現すると「well fed, well bred(よい食事はよい人を育てる)」です。暮らしではなく食についての表現ですが、意味は「衣食足りて礼節を知る」と共通しています。また、より直接的な表現だと「Money makes a man.(お金が人をつくる。)」です。物質的な面を強調した英語表現といえます。

まとめ

「衣食足りて礼節を知る」は、「暮らしが安定してこそ、マナーなど精神面に思いが至る」意味のことわざです。「物質的に安定しているなら、礼節も心掛けられるはずだ」などのニュアンスも考慮して、「衣食足りて礼節を知る」を使ってください

「衣食足りて礼節を知る」の意味とは?由来や使い方、類語・対義語・英語を例文解説

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