どちらも「せいさん」と読む、「精算」と「清算」の違いがわかりますか?本記事ではビジネスシーンでよく使う「精算」の意味や使い方、紛らわしい同音異義語を例文とともに解説します。英語表現や「清算」との使い分けも確認してください。
「精算」と「清算」の意味の違いとは?
「精算」と「清算」、それぞれの意味を説明します。
「精算」の意味
「精算」の意味は、「金額などを細かく計算すること」です。とくに、「料金の過不足を計算しなおす」意味で「精算」を使います。漢字「精」は「精密」や「精通」など、「こまかい」あるいは「くわしい」を表します。
参照:Weblio辞書「精算」
「清算」の意味
「清算」には主に3つの意味があります。1つ目が「相互の貸借を計算して、結果を出すこと」。2つ目は「会社などの法人、その他の団体が解散したとき、後始末をつけるために財産関係の整理をすること」、3つ目が「いままでの関係、しがらみ、ものごとに始末をつけること」です。漢字「清」は「きよめる」、「整理する」または「始末する」意味で使われています。
参照:Weblio辞書「清算」
「精算」と「清算」の使い分け方
間違いやすい「精算」と「清算」の使い分け方を解説します。ビジネスにまつわる「精算書」と「清算書」の違いもわかりますよ。
「金銭関係とそれ以外」で使い分ける
料金や経費など、金銭関係を計算して結果を出すことが「精算」。金銭関係以外の事柄に決着をつけるのが「清算」です。「清算」でも借金や、会社の財産など金銭の計算はします。しかし、借金は「相互の貸借関係」、法人や団体の財産は「法人や団体の金銭にまつわる関係、問題」を解決するために「清算」されます。つまり、「清算」は金銭が関わっていても、関係解消や問題解決が目的である点が違います。買い物や食事をして、レジで代金を計算するのは「精算」です。単純に借金の残高や詳細を計算するのは「精算」、借金を支払って貸借関係を終了させるのは「清算」。金銭関係の場合、「せいさん」の目的を何にするかによって「精算」と「清算」を使い分けるのがポイントです。
「精算書」と「清算書」の使い分け
ビジネスシーンでは「精算書」と「清算書」が混同されがちです。「精算書」は、主に経費や売買金額などの使途、日割額、支払い先といった詳細が記載されています。「清算書」は、借金や売買代金が支払われたことを証明する書類です。実際には、1枚の「精算書」または「清算書」に金額の内訳と支払いを証明する旨が記載されている、兼用の場合が多々あります。意味と用途の違いを把握しておくことが大切です。
紛らわしい!「精算」の同音異義語
「精算」と「清算」は表記も意味も似ていて、紛らわしい言葉です。しかし、「せいさん」と読む言葉はまだあります。「せいさん」の同音異義語を紹介するので、チェックして誤用に注意してください。
「算」を使う「せいさん」
「成功する見通し、見込み」を表す言葉が、「成算(せいさん)」です。「ライバルチームに勝利する成算がある」などと使います。
まだまだある「せいさん」
「せいさん」の同音異義語は多く、生活に必要なものを作り出す意味の「生産」、むごたらしくひどい様子を表す「凄惨」などがあります。ディナーを意味する「正餐」、シアン化合物の「青酸」も「せいさん」。ビジネスシーンでは変換ミスに要注意です。
例文で「精算」と「清算」の違いを確認!
「精算」と「清算」を使った例文をそれぞれ挙げます。
「精算」の例文
「精算」を使った例文を挙げます。
- 立て替えていた交通費は、月末に精算して経理に支払いを依頼する。
- ビジネスホテルに長期滞在する場合は、1週間ごとに宿泊費を精算してほしいとのことです。
- 終電で寝過ごしてしまい、呆然としながら乗り越し運賃を精算した。
「清算」の例文
「清算」を使った例文を挙げます。
- 10年越しの借金をやっと清算し、気持ちが軽くなりました。
- 会社は解散したが、まだ清算のための残務がある。
- 好ましくない人間関係は清算して、過去と決別しなくてはならない。
「精算」と「清算」の類義語・言い換え表現
「精算」と「清算」の類語、言い換えられる言葉をそれぞれ紹介します。
「精算」の類語
「精算」の類語を挙げます。いずれも「金銭の計算をする」意味です。
「会計」
「会計(かいけい)」の意味は「商品やサービスの代金を支払うこと、勘定」、または「金銭の収支、財産の増減、損益の変動を記録および計算、整理して報告すること」です。「勘定」は、支払うだけでなく「お金や品物を数えて計算する」意味もあり、「精算」と共通しています。
「決算」
「決算(けっさん)」は、主に「収入と支出を総計算し、金銭勘定を締めくくること」を表します。ほかにも「企業が期末ごとに財政状況を明らかにする手続き」、または「国や自治体が年度末に予算と実績を対比して計算すること」も「決算」です。金銭の計算をする点は「精算」と共通しています。ただ、「精算」には締めくくるニュアンスはありません。期末や年度末でなくても、締めくくらなくても、金額などを細かく計算すれば「精算」に該当します。
「清算」の類義語
「清算」の類語を挙げます。いずれも「始末をつける」や「結果を出す」ニュアンスを含む言葉です。
「決済」
「決済(けっさい)」は、「金銭上の債権や債務を整理して始末すること」または「代金、商品や証券などの受け渡しをおこない、売買取引を終了すること」を表します。「始末する」や「終了する」といった、「清算」と共通のニュアンスを含む言葉です。最近では「電子決済」や「スマホ決済」のように、支払方法の意味でも使われます。
「かたを付ける」
「かたを付ける」は「方を付ける」とも表記します。意味は「始末をつける」あるいは「ものごとを処理する」です。ものごとの処理、始末をする意味合いが「清算」と共通しています。「かたを付ける」は、関係や問題の解決にとどまらず、勝負など幅広く使えるのが「清算」との違いです。
「決着」
「決着(けっちゃく)」の意味は、「ものごとの決まりがつき、終了すること」です。「決着がつく」や「議論が決着する」などと使います。「終了する」や「始末をつける」意味は「清算」と同じで、より幅広く使えます。「落着(らくちゃく)」とも言い換えられます。
「解決」
「解決(かいけつ)」は、「問題や事件を上手く処理し、片付けること」または「疑問を解きほぐし、納得がいくようにする」意味です。「処理する」と「片付ける」意味が「清算」と共通しています。「清算」には、「疑問を解きほぐす」意味は含まれません。
「精算」と「清算」の英語表現
「精算」と「清算」の英語表現を、それぞれ解説します。
「精算」の英語表現
「精算」の英訳は「adjustment」です。「adjustment」は「調節、調整」や「修正」、または「精算」を表す英単語です。「運賃の精算」は「adjust the fare」、「精算所」は「a fare adjustment office」といいます。「pay」を使うと、「運賃の精算」は「pay the difference on one’s ticket」。「精算書」の英訳は「a statement of accounts」です。
「清算」の英語表現
「清算」の英語表現も複数あります。借金など貸借関係に対しては「clear up」または「clear off」、さらに「balance」と「settle」も使います。「会社など法人や団体を解散して財産関係を整理する」場合は、「liquidation」。過去の関係などに決着を付ける意味では「bury」です。「清算書」は「a statement of liquidation」、「清算人」は「a liquidator」といいます。「pay off」も主に「借金を完済する」意味の「清算」として使われますが、「給料を払って解雇する」あるいは「恨みを晴らす」など、「清算」以外にも幅広く使う英語表現です。
まとめ
本記事では、「精算」と「清算」の違いを紹介しました。最大のポイントは、「精算は金銭関係、清算は金銭以外のことに当てはまる」です。ビジネスシーンでは、会社の倒産や解散以外で「清算」を使う機会はないかもしれません。主に使うのは「精算」ですが、「清算」の意味も押さえて使い分けてください。