「行間を読む」という表現を聞いたことはありますか?日本人特有の「察しの文化」に似つかわしい言葉ですが、その正確な意味まで理解するのは難しいです。今回は「行間を読む」の意味や使い方・類語や英語表現、「空気を読む」との違いについても紹介します。
「行間を読む」の意味とは?
ここでは「行間の読む」という言葉の意味について解説します。意味を正確に理解することで、正しく言葉が使えるようになります。
「隠れた意図を察して読み取ること」
「行間を読む」の意味は「隠れた意図を察して読み取ること」を指します。言葉に表れていない相手が考えていることや、物事の本質を表面的なやりとりだけで察し取ることを表しています。ビジネスシーンにおいても非常に重要なスキルであり、相手に合わせて性格や話し方の癖などを把握した上でどういった真意があるのかを読み取る必要があります。社会において考えていることや物事の本質を、立場上直接表現できないことは多々あります。そういった相手の事情も踏まえた上で、相手が本当に求めていることを読み取って行動する力はビジネスにおいて強みになります。ただ、邪推し誤った方向に仕事を進めないよう注意が必要です。
元々は「直接意図されていない筆者の意図を汲み取ること」
「行間を読む」の元々の意味は、「直接意図されていない筆者の意図をくみ取ること」を指しました。行間とは文と文の間のことを指し、文字化されていない領域のことを表します。つまり筆者が意図的に表現していない部分を、表現されていない文面から読み取ることを「行間を読む」と表現します。転じて、「表現されていない意図を汲み取る」という意味で、日常的なコミュニケーションにおいても「行間を読む」という表現が使われるようになりました。日本人独特の「察しの文化」が表れている言葉だといえます。
「行間を読む」の読み方
「行間を読む」は「ぎょうかんをよむ」と読みます。行間とは文と文の間で何も書かれていない領域を指し、「何も書かれていない部分を読む」のはよく考えると矛盾しています。つまり、ここでの「読む」とは「察する」という意味になります。表現されていることを頼りに、表現されていない部分を推察する様子を表す言葉です。
「行間を読む」の類義語・言い替え
「行間を読む」の類語や言い換え表現について紹介します。似たような表現がたくさんあるため、そのニュアンスの違いを理解するのは難しいです。そういったポイントも含めて詳しく見ていきましょう。
「深読みする」
「深読みする」とは「他人の言動や物事の事情などを必要以上に推察すること」を指します。この表現は、相手の言動やコミュニケーションの取り方を拡大解釈しすぎたために引き起こされる物事のとらえ方です。例えば、挨拶しても相手から挨拶が返ってこなかったとします。そういった際に深読みしてしまう人は、「何か嫌われるようなことをしてしまったのではないか」と思い悩んでしまう傾向があります。実際には挨拶が返ってこなかった理由は、聞こえていなかっただけ、寝起きで機嫌が悪かったなど取るに足らないことが多いものです。自分にとってネガティブな要因が思い浮かんでしまったとしても、その可能性にとらわれすぎることなく、ナチュラルな態度で人と接していくことが大切です。
「推察する」
「推察する」とは「他人の事情や心の中を推し量ること」を指します。このスキルはビジネスシーンにおいても非常に重要で、相手が求めていることを直接的な言葉にされなくても読み取る力が求められます。また「推察」という言葉は相手を思いやるという意味でも使われ、相手の気持ちになって推し量って察するというニュアンスが思いやるに近いところがあります。ただ「推察」も度が過ぎてしまうと、邪推になってしまったり深読みになってしまったりするため、推察する程度は調整する必要があります。
「忖度する」
「忖度する」は「そんたくする」と読み、意味は「相手の気持ちを察して配慮する」という意味になります。政治の世界でよく使われる「忖度」という言葉ですが、この言葉のポイントは「配慮する」という点にあります。 つまり、目上の人が求めていることを察して、指示を受けていなくとも上層部の思い通りの動きをすることを指します。「行間を読む」には「配慮」というニュアンスは含まれていないため、相手が求めていることを察するというレベルに留まります。政治の世界においても企業においても、大きなピラミッド型組織の中で「忖度」が悪い方向に作用すると組織の腐敗が進む原因になるため、たとえ目上の人であっても「おかしいことはおかしい」と表現できる勇気が必要です。
「行間を読む」ことが求められる場面
「行間を読む」ことが求められる場面について詳しく解説します。ビジネスシーンにおいては、相手の真の目的を理解するために行間を読むことが大切になります。
人間関係において「行間を読むこと」は大切なスキル
人間関係においては「行間を読む」ことが求められるポイントはたくさんあります。気の置けない友人や熟年夫婦などは行間を読まなくてもお互いのことを知り尽くしていますが、付き合い始めのカップルや、まだ関係の浅い友人などはお互いの気持ちを推し量る作業が求められます。これは俗にいう「気を使う」という状態になりますが、人間関係を構築していく上で避けては通れないステップになります。いずれ関係が深まってくると、相手がして欲しいことや嫌がることがわかるようになるため、気を使うことなく心地よい環境を築き合えるようになります。
仕事においては「真の目的」を理解するスキルになる
ビジネスシーンにおいては、言葉を言葉通りに受け取らないという高度なコミュニケーションも必要になります。発言者の価値観や立場に鑑みて、その仕事の本質はどこにあるのかを見極める力が非常に大切です。最初のうちはうまく読み取れないことが多くても、お互いの人間関係や個人の性格、仕事の重要度などを複合的に考えることで、真意を読み取れるようになります。上層部の仕事の進め方において違和感があるときは、仕事の流れにおいて歪んでいるポイントが必ず存在します。行間を読む力を身につけることで、自分の仕事に直接関係なくとも、問題が生じているポイントが把握できるため、自分の仕事の進め方も大局的に眺められるようになります。
「行間を読む」と「空気を読む」の違い
ここでは「行間を読む」と「空気を読む」の違いについて詳しく解説します。ニュアンスとしては近い部分がありますが、2つの言葉の相違点を詳しく見ていきましょう。
「空気を読む」は「雰囲気を読み取る」こと
「空気を読む」という言葉は雰囲気を読み取ることになります。「行間を読む」との違いは読み取る対象が「雰囲気」である点です。ここでいう雰囲気とは、相手の表情や態度、また発言回数など相手の感情を読み取れる判断材料のことを指します。一方、「行間を読む」とは雰囲気を読み取っているのではなく、相手の発言内容を判断材料にしています。この一点において2つの言葉は使い分けがされますのでしっかり押さえておきましょう。
どちらも言葉にならない気持ちを読む
「行間を読む」も「空気も読む」もいずれにしても言葉にならない気持ちを読み取っていることには変わりません。 ビジネスシーンにおいては行間を読む力もさることながら空気を読む力を求められます。敏感にアンテナを張りすぎていても疲れが溜まってしまいますが、タイミングを絞って適切な情報収集ができるようコミュニケーションの中で雰囲気や言葉を判断材料に相手の真意を読み取る力をつけましょう。
「行間を読む」を英語でいうと?
ここでは「行間を読む」の英語表現を紹介します。「read between the lines」で「行間を読む」という言葉の英語表現になり、「It is not always easy to read between the lines.」で「行間を読むことは必ずしも易しくない。」という意味の英文になります。
「行間を読む」の使い方と例文集
「行間を読む」の使い方と例文について解説します。他の言葉との使い分けを意識しながら、正しい日本語でコミュニケーションを取れるようにしましょう。
「行間を読む」の使い方
「行間を読む」は相手が発した言葉を判断材料に相手の真意を読み取る行為を表します。 ビジネスシーンや日常生活においても頻繁に使える言葉ではありませんが、一般常識レベルの表現になるため意味は把握しておきましょう。この言葉はニュートラルな意味合いの言葉になるので、自分に対しても他者に対しても使うことが可能です。
「行間を読む」を使用するときの注意点
「行間を読む」という表現から、「行の間」というイメージが先行してしまいがちです。実際に書かれている文章に対して、書かれていない部分を推察するという意味合いに限定しているようですが、実際はそうではありません。普段の会話や話し言葉においても「行間を読む」という表現は適用できます。つまり、言葉にされている部分から言葉にされていない部分を推察するという行為を表しています。
「行間を読む」の例文
「行間を読む」を用いた例文を紹介します。
- チーム全体をして生きていくためには、行間を読む力も必要になる。
- 部長の発言には真意は濁されていたが、 行間を読むと、このプロジェクトが頓挫することになるのだろう。
まとめ
「行間を読む」には「隠れた意図を察して読みとること」という意味がありました。似た意味を持つ言葉もたくさんあり、それらとの使い分けが難しいところではありますが、きちんと意味を理解して正しい日本語を使いましょう。