就職活動などする場合によく目にする「零細企業」という言葉がありますが、「零細企業」とは、どんな企業を指すのでしょうか?ここでは、「零細企業」の言葉の意味から企業の分類の仕方・業種やメリットまでをわかりやすく解説していきます。
「零細企業」の意味や定義とは?
就職活動や転職活動をする際に、よく目にする言葉で「零細企業」があります。使われる漢字から「零細企業」とは、会社の規模を表す言葉であることは想像がつくでしょう。しかし「零細企業」という言葉の意味を問われた場合に、正しい説明ができる人は少ないでしょう。
ここでは、「零細企業」について意味や定義をわかりやすく解説していきます。
意味1.小規模な企業を指す
「零細企業」という言葉には、複数の意味が存在します。1つは「会社の規模が小さい」という意味です。
「零細企業」とは、少ない資本金や設備で経営を行う、とても規模が小さい会社を指します。
意味2.中小企業との差別化
「零細企業」のもう1つの意味は、中小企業との区別です。
企業の中でも、それほど大きくない企業を総称して「中小企業」と表現しますが、その中でも特に規模が小さい企業を「零細企業」と呼びます。
「零細企業」としての定義はない
「零細企業」は、中小企業との差別化を図るための呼び方であると説明しましたが、「零細企業」となる明確な定義は存在していません。
「零細企業」とされる企業は、産業によっても条件が変わるため、「零細企業」単体での定義は示されていないのです。
「零細企業」の読み方
「零細企業」の読み方は、「れいさいきぎょう」です。
「零細」には、「極めて小さいまたは細かい」の意味があります。一般的に、数量・規模に対して使われる言葉です。
このことより、極めて小規模な企業・経営を指して「零細企業」と表現されます。
企業の分類の仕方
会社などの規模を示す言葉は「零細企業」のほかに、大企業・中小企業があります。
大企業や中小企業も「零細企業」のように、言葉の意味をきちんと理解し、説明できる人は多くないでしょう。
ここでは、大企業・中小企業について定義などを解説していきます。
大企業とは
大企業は、「零細企業」と同様に明確な判断基準は存在しません。
一般的に、下記の数値を目安に大企業と判断されるケースが多いです。
「製品製造業」:資本金が3億円以下または従業員数が900人以下である
「ホテル・旅館業」:資本金が5,000万円以下または従業員数が200人以下である
「ソフトウエア・情報処理サービス業」:資本金が3億円以下または従業員数が300人以下である
このように、大企業も業種によって条件が異なるため、単純に資本金や従業員数から判断できるものではありません。
ほかに下記の場合にも大企業と判断されるケースがあります。
・最終事業年度による「賃借対照表」に資本金として計上した金額が5億円以上である
・最終事業年度による「賃借対照表」に負債額として計上した金額の合計が200億円以上である
中小企業とは
中小企業は、「零細企業」とは異なり「中小企業基本法」によって定義が存在します。
中小企業の定義は、下記となります。
「サービス業」:資本金の金額または出資額の総額が5,000万円以下、もしくは従業員数が100人以下である
「小売業」:資本金の金額または出資額の総額が5,000万円以下、もしくは従業員数が50人以下である
「卸売業」:資本金の金額または出資額の総額が1億円以下、もしくは従業員数が100人以下である
「製造・建設・運輸・その他の業種」:資本金の金額または出資額の総額が3億円以下、もしくは従業員数が300人以下である
法人税の法律上の定義だと、資本金の金額が1億円以下の企業はすべて中小企業と判断されます。
「零細企業」に多い業種
「零細企業」の場合、小規模経営ならではの特性を活かして事業を展開できる業種が多いです。
「零細企業」に多い業種について紹介していきます。
製造業がダントツ
「零細企業」は、産業別にみると製造業が占める割合が大きいです。
業種は、出版や印刷など印刷業関連と金属製品や一般機械などの製品製造業関連などです。また、衣服や雑貨などの製造業を営む会社も「零細企業」には多い傾向があります。
上記で挙げた業種は、どの業種も昔ながらの職人が務める個人経営の会社の場合があります。
卸や小売業も多い
「零細企業」には、製造業のほか、不動産業や運輸通信業、卸・小売業も多いです。
不動産や卸・小売業も、製造業と同様に昔から生業としているケースが多い業種になります。
「零細企業」には、昔から長く続いている業種や従業員数・資本金の金額を気にせずに開業できる業種が多いといえるでしょう。
「零細企業」のメリット
「零細企業」であることにメリットはあるのでしょうか?
ここでは、「零細企業」だからこその強みについて解説します。
小回りがきく
「零細企業」の最大の特徴は、規模が小さいことです。しかも極めて小規模であることがメリットになります。
「零細企業」の会社であれば、需要単位が少なく小回りがきく小さな市場を狙った独自の形態での経営も行えます。
自宅など場所を限定せずにできる仕事の場合、家賃にかかるコストをカットできるので、その分を別のところの予算に回せます。
新しい形態への順応力
「零細企業」のメリットは、小規模であればあるほど大きくなります。従業員数が少ない会社であれば、情報の共有がしやすいため新しいことに取り組みやすいです。
会社の規模が大きければ、新しいことに取り組む場合に、従業員全体への周知など情報の伝達が容易ではなく、スタートが遅れます。特に業務形態の変更の場合などは、変更点の説明を部署ごとにするのか、全体に一度にできるのかなど、抱える問題が多くあります。
反対に規模が小さい「零細企業」の場合は、会社全体の大きな転換でさえ、取り組むまでの時間を最小限に抑えられるのです。
支援体制の整備
「零細企業」では、中小企業庁が行う「中小企業向け」のさまざまな支援を受けられます。
主な支援の内容は下記です。
・創業やベンチャー支援
・起業家の教育支援
・経営革新に向けた支援
・新連携に対する支援
・再生のための支援
・雇用や人材に対する支援
・海外展開への支援
・取引や官公需の支援
上記のほかにも多くの支援があり、さまざまことを相談できる窓口の利用も可能です。
「零細企業」の平均年収や退職金
「零細企業」のメリットについて解説しましたが、「零細企業」ではどれくらい給与がもらえるのでしょうか?
ここでは「零細企業」の平均年収や退職金に加えて社長の年収についても解説します。
社長の年収は企業次第
「零細企業」と呼ばれる会社の社長は、いくらくらいの年収なのでしょう。
「零細企業」は、会社により規模や形態に違いがあるため、一概に平均年収は「これくらいの金額です」といえません。
「零細企業」の場合、社長だけでなく、業務をこなす社員も兼ねているケースもあります。そのため、業績によってはマイナスとなる可能性もあるのです。
「零細企業」に務めた場合の平均年収
「零細企業」で働く場合の平均年収は、いくらくらいなのでしょうか?
従業員として働いた場合でも、務めている会社の規模や形態などにより平均年収は変わってきます。
目安としては、企業の規模が従業員数10人未満の場合で、平均年収400万円前後です。ただし、同様の規模でも業種によっては400万円を上回る場合も、下回る場合もあります。
退職金の相場はおよそ500万円~700万円
「零細企業」を退職するときに受け取れる退職金は、いくらくらいなのでしょうか?
退職金についても、平均年収と同じく企業によって変わります。働いている会社の経営状況が順調ならば、500万円~700万円程度の退職金は受け取れるでしょう。
ただし、「零細企業」の場合、会社の経営状況により退職金を支払えない場合がでてきます。退職金を支払うことで経営が傾く場合も考えられるため、もともと退職金を支払わないと決めている会社もあります。
「零細企業」に転職する際の注意点
「零細企業」に転職する場合は、社会保険と有給休暇に関して注意しましょう。
「零細企業」の場合、社会保険への加入の義務がない場合があります。会社の規模によって法的に定められた条件を満たさない場合は、社会保険への加入の義務がありません。
「零細企業」に転職を考える場合は、この条件を満たしている会社かどうか事前に確認が必要です。
ほかに、多くの「零細企業」の会社で、有給休暇の取得が難しい場合があります。
「零細企業」の性質上、従業員数が少ないため、自分だけが担当する業務があったり、複数の業務を1人で担当したりするケースも少なくありません。そのあたりの事情から有給休暇の取得ができない場合があります。
まとめ
「零細企業」と呼ばれる会社には、その特性を活かしたメリットもありますが、デメリットもないわけではありません。
「零細企業」について、性質や強み・弱みをしっかり把握したうえで、就職活動や転職活動に励みましょう。