最近は仕事上の関係者などの訃報をメールで受け取ることも珍しくなくなりました。メールで受けた訃報に対して、メールで弔意を示してもいいのか悩むことも少なくありません。心を込めた弔意を示すメールの書き方や注意しなければならない点などを解説します。
「お悔やみメール」とは何?
誰かが亡くなった際に、遺族に対する言葉は本来直接会ってかけるべきものです。しかし、遠方であったり、時間が取れずになかなか先方を訪ねられなかったりすることもあります。さまざまな情報伝達手段が発達している現代において、迅速な方法であるメールを用いることは、必ずしも失礼にあたるものではないと考えられています。そうした哀悼の気持ちを伝えるメールを「お悔やみメール」と呼びます。
「お悔やみメール」は出してもいいの?
過去にはメールの訃報に対しても訪問したり、弔電などで返信したりするのが基本とされていましたが、現在ではそのまま返信をすることも問題はないと考えられています。ただし、メール以外の方法で訃報を受け取った場合は、よほど親しい間柄でない限りはメールでのお悔やみは避けた方がいいでしょう。
略式であることを踏まえて
「お悔やみメール」はあくまでも略式のものであり、可能なら直接会って弔意を伝えるのがベストであることは踏まえておきましょう。時間的な余裕などがあれば弔電を打つなど、従来のお悔やみの伝え方を検討するようにします。
相手を考えて
訃報がメールで届いたからといって、すべてメール返信でよいというわけではありません。取引先の担当者や親族など目上にかかわる訃報には、やはり従来の弔意の示し方を選ぶ方が相手の気持ちを害することがありません。「お悔やみメール」は親しい間柄でのものと考えておいた方がよいでしょう。
「お悔やみメール」のメリット
送る状況や相手を選ぶとはいえ、「お悔やみメール」には他の方法より優れた点もあります。まず何といってもその速さです。訃報を受けてすぐに弔意を述べられるのは大きなメリットですね。また受け取った側がいつでも都合のよいときに読めるのも優れた点です。さらに親しい間柄での方法だからこそ、ストレートなねぎらいの言葉をかけやすいというのも、素直な弔意を示す意味で有効ですね。
「お悔やみメール」の書き方
「お悔やみメール」もメールには違いありませんから、通常のメールのようにわかりやすい件名にすることや、簡潔な本文にすることなどに留意が必要です。訃報に接してのメールですから、いつも以上に慎重な気遣いをしたいものです。
件名
一目見て弔意を示すものであること、誰からなのかわかりやすいようにします。
・哀悼の意を表します。(〇〇より)
・【〇〇より】お悔やみ申し上げます。
相手方のメールへの返信だからといって「Re:件名」のような形で送ることは絶対に避けましょう。
本文
本文も簡潔さが重要です。急ぎのメールですので時候の挨拶などは省き、弔意を伝える言葉から書き始めます。また通常のメールよりは丁寧な言葉遣いに留意しましょう。
・お父様の訃報に接し、とても驚いています。
・お兄様の逝去の報をうかがい、さぞやお力落としのことと存じます。
「お悔やみメール」のマナー
「お悔やみメール」は、人の死に際してのメールですから、通常のメールとは異なる気遣いも必要になります。特に失礼のないような言葉遣いや、縁起を考えて禁忌とされる表現などに配慮しなければいけません。主だったマナーを挙げます。
言葉遣い
比較的親しい間柄での発信となるので、つい言葉遣いが乱れがちです。ちょっとした言葉でも、より丁寧な言い方になるように気を付けましょう。例えば「訃報を聞いて」ではなく「うかがって」と謙譲語を用いることもその一つです。また「旦那さん」や「夫」「お父さん」などふだん使いの言葉ではなく、「ご主人様」や「お父様」などと表現します。弔電などに用いられる「ご尊父様」「ご母堂様」などの表現も使用できるとよいでしょう。
忌み言葉
葬儀等では使ってはいけない忌み言葉というものがあります。縁起を考えての禁忌事項ですが、当然メールにおいてもこれらの言葉は避けるべきです。
・重ね言葉(いろいろ、わざわざ、重ね重ね、など)は不幸の反復を連想させるので使わない。
・不幸を連想させる言葉(切れる、消す、離れる、など)は使わない。
こうした言葉を使わないように表現を吟味することで、より思いのこもった言葉が選べるようになるかもしれませんね。
文字種
通常のメールでも同じですが、文字化けの起こる可能性がある文字は使いません。
・〇囲いの数字やローマ数字など、環境依存の文字種。
・環境によって表示イメージに影響を受ける絵文字。
「お悔やみメール」を英語でいうと
グローバル化が進む中で、外国の方の訃報に接することも増えてきています。遠方にいるケースも多く、メールで訃報に接することもありますし、そうした際はやはりメールで弔意を示すことになるでしょう。英語であっても弔意を示す考え方は変わりませんので、定型的な表現も存在します。4つ紹介します。
accept our condolences.
condolencesは弔意という意味です。私たちの弔意を受け入れてください、という意味になります。より丁寧にするには文頭にPleaseを付したり、より深いという意味でdeeply condolencesと表現するのもよいでしょう。
I am deeply sorry for your loss.
sorryは謝罪の言葉と勘違いしている人もいますが、残念です、という意味です。わたしはあなたの不幸(lossは大切な人を失ったという意味)がとても残念です。という意味です。ここでもdeeplyがより深く心に思っている、という意味に使われています。
express our condolences.
expressは「表す」という意味です。私たちの弔意を表す、という意味になります。一般的にはI would like to ~(~したいと思う)に続けて表現し、心から哀悼の意を表します、という意味での定型表現となります。
appreciate your sympathies.
appreciateは、感謝する、sympathiesは、共感、という意味です。あなたの哀悼の意に感謝する、という意味になり、「お悔やみメール」に対するお礼の返信に用いられます。appreciateに代えてThank you for ~やI am greatful for ~などの感謝の表現もよく用いられます。
状況別「お悔やみメール」の使い方と例文
「お悔やみメール」は正式の弔意を示すものとはいえません。略式ながらも、すぐに届けられ、遺族に寄り添うものであるというよさを活かしたものにしたいですね。状況別にいくつか文例を示します。
仕事上の関係者に
本文 〇〇物産株式会社 営業部 〇〇 〇〇様
このたびはお身内にご不幸があったと伺い、本当に驚いております。
ご尊父様のご冥福を心よりお祈り申し上げます。~
~ 本来であればお目にかかってお悔やみを申し上げるべきところではございますが、略儀ながらメールにて失礼いたします。
社外の方へのメールですので、略式の挨拶であることをお詫びするようにしましょう。
上司に
件名「〇〇より お悔やみを申し上げます」
本文 ご母堂様のご逝去に際し、心よりお悔やみを申し上げます。~
~ メールでお悔やみを申し上げる失礼を改めてお詫びいたします。何かお力になれることがありましたら何なりとお申し付けください。
上司の関係者の訃報にはできるだけ直接弔問することが望ましいですので、必ずお詫びや助力の申し出を添えましょう。
同僚に
件名「〇〇より お悔やみを申し上げます」
本文 お父上のご逝去を知り、とても驚いています。~
親しい同僚へのお悔やみメールです。相手の心情を思いやって、励ましやねぎらいの言葉を素直に盛り込むとよいでしょう。
友人に
件名「〇〇より お悔やみを申し上げます」
本文 お祖母様のご逝去に、さぞお力落としのことと存じます。~
親しい友人あてのお悔やみメールです。友人の無念の思いなどに寄り添った、親しいからこそかけてあげられる言葉を盛り込みたいものですね。
「お悔やみメール」の返信の仕方・例文
「お悔やみメール」を出す側としては、遺族の負担を考え、文末に「返信不要」と添えるようにしましょう。しかしもらった側としてはそうあったからといって返信をしないわけにはいきません。葬儀を終え余裕が出てから、簡略なもので構わないので返信をしておくようにしましょう。一般的な返信の文例を挙げておきます。
件名 「お気遣いに感謝いたします。(〇〇商事 〇〇より)」
本文 メールありがとうございました。おかげさまで滞りなく葬儀を済ませられました。お気遣いいただき誠にありがとうございました。~
まとめ
訃報に接したときは弔問したり、弔電を差し上げたりするのが本来の弔意の示し方です。「お悔やみメール」はあくまでも略式であり、その意味でも礼を失してはならないことを心に留めておきましょう。遺族の心に寄り添い、よけいな負担をかけずにすむ「お悔やみメール」を出せるように心がけたいものです。