「怖い」と「恐い」はどちらも「こわい」と読みますが、漢字が違うことでどのように意味が変わってくるのか疑問に感じたことはありませんか?実は「怖い」と「恐い」は全く同じ意味です。同じく「こわい」と読む「強い」との違いも説明します。
「怖い」と「恐い」の意味と違い
「怖い」と「恐い」はどちらも「こわい」と読みますが、漢字によってどのように意味が変わってくるかよくわからない方もいるのではないでしょうか。実は「怖い」と「恐い」は意味は全く同じ言葉です。辞書などで調べた場合でも「怖い/恐い」と同列で意味が記載されていることがほとんどでしょう。その「怖い/恐い」の意味と漢字による微妙な違いについて深掘りをしていきましょう。
「怖い」と「恐い」の意味は同じ
「怖い」と「恐い」の意味は全く同じで、どちらも「近づくと危害を加えられそうで不安なこと。よくないことが起こりそうで、近づきたくないこと」という意味です。
例えば「夜道が怖い」は「夜の道はよくないことが起こりそうで不安な様子」という意味の言葉ですが、この表現を「夜道は恐い」と言い換えても同じ意味として通じます。
「怖」と「恐」の漢字の意味
「怖」と「恐」のそれぞれの漢字の意味を考えていきましょう。「怖」には「恐怖を感じる」や「よくないことが起こりそうで近づきたくない」という意味があります。「恐」にも「怖」と同様の意味がありますが、それに加えて「かしこまる」や「慎む」という意味があります。
他に「恐」を「かしこまる」という意味で用いられる言葉には「恐縮」や「恐れ多い」があります。「恐縮」は「身も縮まるほどに恐れ入ること」という意味で、「恐れ多い」は「大変にありがたいこと」という意味です。どちらも恐怖ではなく相手に対する敬意を示す場合に用いられます。
2つの違いは常用漢字かどうか
「怖い」と「恐い」はどちらも同じ意味の言葉ですが、それぞれの違いは常用漢字かどうかにあります。「怖い」は常用漢字として指定されており、「恐い」は常用漢字ではありません。
常用漢字とは、一般の社会生活で漢字を使用する目安とされている漢字を指し、「常用漢字表」というものが内閣から告示されているものです。現在は全部で2136文字ありますが、その中に「怖」の漢字も含まれていることになります。
「怖い」と「恐い」の使い方・注意点と例文
「怖い」と「恐い」には意味の違いはありませんが常用漢字かどうかなど微妙な違いはあり、その違いにより使い分けるシーンもあることを覚えておきましょう。
ここでは正しい使い分けの判断と「怖い」や「恐い」を用いた例文についても説明します。
公文書や出版物は「怖い」を用いる
公文書や新聞などの出版物に用いる場合は、常用漢字である「怖い」を用いることが適切とされています。常用漢字は義務教育で習う漢字のため、広く一般に読み書きができるとされているためです。
ビジネスシーンなどかしこまった場面で「怖い」と「恐い」の使い分けに迷った場合は、契約書などの公的な文書かどうかでまずは判断しましょう。公的文書ではない場合はどちらを用いても問題ありませんが、常用漢字である「怖い」を用いた方が無難である場面が多いです。
日常会話ではどちらを用いても問題ない
「怖い」と「恐い」は意味としての違いはありませんので、日常会話では使い分けにルールはありません。「怖い」は常用漢字ではあるものの、生活していく中で常用漢字以外は使ってはいけないなどの決まりは存在しませんので、自分が使いたい漢字を自由に用いるとよいでしょう。
主観表現か客観表現かで使い分ける説は間違い
「怖い」と「恐い」を使い分けるルールとして、主観的な恐怖の場合は「怖い」を用い、客観的にもわかる恐怖の場合は「恐い」を用いるという説がありますが、この解釈は正しくありません。「怖い」も「恐い」も単純に「何かに危害を与えられそうで不安」という意味ですので、主観かどうかで使い分けることは控えるべきでしょう。
一方で客観的に恐怖を伝えたい場合は、「恐ろしい」と表現するのが適切とされています。例えば「恐ろしい災害」と「恐い災害」で考えた場合、「恐ろしい災害」の方がより客観的に災害の怖さを評価する表現になります。また、「恐ろしい」には「程度が甚だしい」という意味もあることを覚えておくとよいでしょう。
「怖い」と「恐い」を使った例文
「怖い」と「恐い」を使った例文を紹介します。例文の中で「怖い」と表現されていても漢字は「恐い」に書き換えることが可能で、その逆も同じ意味であることを覚えておきましょう。
- 最近地震が多くて恐い
- 家の周りは街灯がなくて夜は怖い
- この辺りは幽霊が出る噂があり怖い
- 仕事のミスを上司に報告するのが恐い
- 免許を取ったばかりの人の運転は怖い
- あの人は何を考えているかわからなくて恐い
「強い(こわい)」の意味と違い
「怖い」や「恐い」と同じく「こわい」と読む漢字に「強い」があります。この「強い」は「つよい」とも読まれますが同時に「こわい」とも読み、この場合の「強い」は恐怖を感じるという意味とはまた違う意味合いで用いられる言葉です。ここでは「強い」のの意味と「怖い」や「恐い」との違いについて考えていきましょう。
「強い(こわい)」の意味は「強情」や「かたい」こと
「強い(こわい)」とは「頑固である様子」や「かたくて扱いにくい様子」という意味の言葉です。
この「強」の使い方には他に「強情(ごうじょう)」や「強硬(きょうこう)」などがあります。「強情」は「頑固なこと」という意味で、「強硬」は「自分の意見を強く押し通そうとする様子」という意味です。
「強い(こわい)」と「怖い/恐い」の違い
「強い(こわい)」は強情であることを表す表現のため、「怖い」や「恐い」のように「よくないことが起こりそうで不安」という意味では用いられません。
例えば「あの人は怖い性格だ」という場合は恐怖を感じていることを伝える表現になりますが、「あの人は強い性格だ」の場合は相手を頑固だと感じていることを表現することになり、意味が全く異なることがわかります。同じ「こわい」という読みでも伝えたい意味により漢字を使い分けることが大切でしょう。
「強い(こわい)」を使った例文
「強い」を用いた表現を例文で紹介します。
- この瓶の蓋が強くて開かない。
- うちの旦那は強くて人のアドバイスを全く聞かない。
- あまり強い態度だと誰も助けてくれなくなるよ。
「怖い」と「恐い」の類義語と対義語
「怖い」と「恐い」には類義語と対義語がどのようなものかを考えていきます。類義語には客観的な表現となる「恐ろしい」も含まれますが他にもさまざまな言い回しがありますので、覚えておくとよいでしょう。
「怖い」と「恐い」の類義語
「怖い」と「恐い」の類義語は以下の通りです。
- 恐怖
- 恐ろしい
- 怖れる
- 危惧
- 危ぶむ
「怖い」と「恐い」の対義語
「怖い」と「恐い」の正確な対義語は存在しないといわれています。あえて上げるとするならば、「優しい」や「安心」とされています。
「怖い」と「恐い」には「よくないことが起こりそうで不安」という意味と「近づくと危害を与えられそう」という意味がありますが、どちらも不安や身の危険を対象に対して感じている言葉です。よって不安の対義語である「安心」と相手に恐怖を感じない意味での「優しい」が対義語と考えられるケースが多いです。
「怖い」と「恐い」の英語表現
「怖い」と「恐い」は英語でさまざまな表現方法があります。最も一般的に用いられるのは「afraid」です。「afraid」は「こわい」という意味ですが、「恐怖で臆病になる」や「気が弱くなる」というニュアンスが含まれます。英語表現に迷った場合は「afraid」を用いると意味は通じるでしょう。
他に、「scared」と「horrified」も「こわい」という意味の英単語です。「scared」は「scare」の受動態から形成された形容詞で「怯える」というニュアンスが強調される表現です。「horrified」は「ゾッとする」というニュアンスが込められた単語です。いずれも「こわい」を表す英語表現ですので、伝えたいニュアンスにより使い分けるとよいでしょう。
まとめ
「怖い」と「恐い」はどちらも「よくないことが起こりそうで近づきたくないこと」や「近づくと危害を加えられそうで不安」という意味の言葉で、同じ意味として使えます。常用漢字は「怖い」ですので、ビジネスシーンなどでどちらを使うか迷った場合は「怖い」を用いるのが無難でしょう。