「身も蓋もない話」などと使われる慣用句「身も蓋もない」を解説します。意味や使い方だけでなく、「元も子もない」との違いや類語まで詳しく紹介。どんな場面に適した慣用句なのかがわかります。例文を参考にすれば、正しく「身も蓋もない」を使えますよ。
「身も蓋もない」の読み方と意味
慣用句「身も蓋もない」の読み方と意味を解説します。「蓋」の読み方、「身も蓋もない」の意味とニュアンスをチェックしてください。
「身も蓋もない」は何と読む？
「身も蓋もない」は「みもふたもない」と読みます。「身」は訓読みで「み」。「からだ」や「じぶん」、「なかみ」といった意味の漢字です。音読みでは「しん」と読みます。「蓋」は訓読みで「ふた」。「鍋などのふた」のほか「物をおおう」や「かぶせる」の意味です。音読みでは「がい」と読み、「けだし」という意味の「蓋然性（がいぜんせい）」などの言葉があります。
「身も蓋もない」の意味
「身も蓋もない」の意味は、「ものごとを露骨に表現しすぎて、味わいや情緒のかけらも感じられない」です。
意味は「あけすけ」や「率直すぎる」
「身も蓋もない」の意味には、表現が素っ気ないだけでなく「言い方に含みも風情もない」や「表現がストレートすぎて潤いがない」といったニュアンスがあります。露骨で包み隠しがない、あけすけすぎる場合に使います。「率直な言い方」というよりも「率直すぎる言い方」の意味が強い表現です。
ややネガティブな意味を含む表現
ものごとを包み隠さずハッキリ言うのは美点にも思えますが、「身も蓋もない」には「ハッキリ言いすぎたせいで風情がない。台無し」と否定的な意味が込められています。そのため「身も蓋もない」は「率直な言い方がよい」よりも、「そんな言い方をしては台無しだ」というネガティブなニュアンスで使う表現です。
「身も蓋もない」の語源・由来
慣用句「身も蓋もない」は、蓋つきの容器が語源です。箱などの容器は物を覆う「蓋」の部分と物を入れる部分に分けられます。この容器のものを入れる部分を「身」と呼びます。そのため「身も蓋もない」とは「容器の蓋もなければ身の部分も何もない」、つまり「覆う部分がなくてすべてさらけ出している」や「何もかもがなくて始まらない」という状態がもとになった表現です。
「身も蓋もない」の使い方・例文
例文を挙げて「身も蓋もない」の使い方を解説します。例文1は「露骨すぎるもの言い」のニュアンスが強い使い方、例文2は「そんなことを言ってしまっては台無しだ」のニュアンスが強い使い方です。
「身も蓋もない」を使った例文1
- 彼女にプロポーズをしたら「結婚なんて紙上の契約だよね。何の意味があるの？」と、身も蓋もない返事をされた。
- 「年収が高い家庭の子どもほど学歴が高い」とは、あまりに身も蓋もない話だ。
- 身も蓋もない言い方だが、彼には「挑戦するだけ無駄だと思う」とハッキリ伝えるしかないだろう。
どの例文も、「もっと他に言い方があるだろう」や「オブラートに包んで話せばいいのに」というニュアンスが含まれています。
「身も蓋もない」を使った例文2
- 新しい企画を提案したのに「目新しいことをしたって、結局は定番に落ち着くだけだよ」と、上司は身も蓋もない言い方だった。
- 君が身も蓋もないことを言うから、その後の議論が進まないんだ。
- これ以上の損失を出さないためには会社そのものをたたむしかないが、それでは身も蓋もない。
どの例文も、「相手の気持ちや提案を無下にする」または「そんなことを言ってしまっては議論すらはじまらない」といったニュアンスが含まれています。
どんな発言や状況が「身も蓋もない」といわれるのか
悪意がなく、相手のためを思って言った正論でも「ストレートすぎて傷つけてしまう」または「やる気などをくじいてしまう」発言は「身も蓋もない」となります。たとえば転職の相談をしてきた友人に「このご時世に転職なんて無謀すぎる」や「その職種はまったく向いていないと思う。努力しても無駄」などと答えるのは、「身も蓋もない」言い方です。「どう転職を成功させるか」を建設的にアドバイスするのではなく、転職そのものを否定するような発言は「身も蓋もない」と受け取られかねません。「身も蓋もない」にはネガティブな印象があります。職場や友人関係で「身も蓋もない」と言われないよう気を付けたいですね。
うっかりに注意！「身も蓋もない」と間違いやすい「元も子もない」
慣用句「元も子もない」は、「身も蓋もない」と間違えやすい言葉です。「元も子もない」の意味や使い方など、「身も蓋もない」との違いを説明します。
「元も子もない」との違い
「元も子もない」は「もともこもない」と読み、「失敗してすべて失う」や「何もかもダメになってしまう」の意味です。「元」は「元金」、「子」は「利子」。「利子を得てもうけるどころか、元金すら失ってしまった」という状況がもとになっています。ただ失ったりダメになったりするのではなく、「欲張りすぎて」や「よかれと思った行動が裏目に出て」といったニュアンスを含む表現です。たとえば「連日徹夜で勉強に励んでも、体調を崩して受験できなくなっては元も子もない」のように使います。「露骨すぎる言い方で含みも何もない」の「身も蓋もない」とは、意味も使い方も異なります。どちらも「～も～もない」という言葉で紛らわしいですが、誤用には要注意です。
「取り付く島もない」にも注意
慣用句「取り付く島もない」も「身も蓋もない」と間違いやすい言葉です。「みもふたもない」と読み、「頼りになるものがない」や「相手に素っ気なくあしらわれる」といった意味で使われます。「取り付く島もない」は航海に由来した言葉で、荒れた海を漂う船を着岸できる島がない状態を表しています。たとえば「取引先に納期の延長をお願いしたが、取り付く島もなく断られた」のように使い、ただ断られるのではなく「素っ気なく」または「冷たく」あしらわれたというニュアンスです。その点で「露骨な」や「あけすけに」の意味で使う「身も蓋もない」とは異なります。
「身も蓋もない」の類義語・言い換え
「身も蓋もない」の類義語と言い換えられる表現を紹介します。どれも「あけすけな」や「率直すぎる」などの意味が「身も蓋もない」と共通しています。
「味も素っ気もない」
「味も素っ気もない」は「あじもそっけもない」と読み、「趣がなく無味乾燥な様子」や「温かみがない様子」を表す慣用句です。「シンプルといえば聞こえはいいが、必要最低限の家具しか置いていない味も素っ気もない部屋だ」のように使います。「身も蓋もない」は言い方や発言の内容について使う表現ですが、「味も素っ気もない」は物や雰囲気に対しても使う点に注意。「味も素っ気もない」のほうが、「身も蓋もない」より幅広い対象に使える表現です。
「にべもない」
慣用句「にべもない」の意味は、「愛想がなく素っ気ない」です。「にべ（鰾膠）」は魚名、または魚の浮袋から作る粘着力の強い「にかわ」のこと。「愛想やお世辞」の意味もあります。「彼に頼みごとをしたが、にべもなく断られた」のように使います。発言と態度の両方に使える表現です。
「歯に衣着せぬ」
「歯に衣着せぬ」は「はにきぬきせぬ」と読み、「あけすけにものを言う」や「思ったままを率直に言う」の意味があります。「歯に衣着せぬ評論が彼女の真骨頂だ」のような使い方です。「身も蓋もない」と同じく発言に対して使います。「身も蓋もない」にネガティブなニュアンスを含むの対し、「歯に衣着せぬ」はポジティブなニュアンスもある表現です。
その他の「身も蓋もない」と似た表現
「遠慮会釈もない」や「あからさま」、「あけっぴろげ」も「身も蓋もない」と似た意味の言葉です。露骨で相手への配慮に欠けるニュアンスを含みます。率直な物言いを表す「忌憚のない」も「身も蓋もない」と似た表現ですが、ポジティブな意味合いで使われる場合がほとんどです。
「身も蓋もない」の英語表現
英語に「身も蓋もない」の直訳はありませんが、「率直すぎる」や「無遠慮」という表現はあります。「too outspoken」は「露骨すぎる」や「あからさますぎる」の意味。ネガティブなニュアンスで使われる場合が多い点も「身も蓋もない」と同じです。「率直すぎる」の意味では「too direct」や「too frank」、または「too harsh」も使えます。「身も蓋もない」の「台無しだ」のニュアンスを表現する場合は、「何も得られない」や「どこにも行けない」という意味の「won’t get anywhere」が適した表現です。
まとめ
「身も蓋もない」は「露骨すぎる」や「あからさま」の意味に加え、「それを言ってしまっては台無しだ」というニュアンスを含む慣用句です。ネガティブな意味合いがある点に気を付けて使ってください。もちろん「身も蓋もない」発言をしないようにも要注意ですね。
