「周る」の意味は「 ひと回りすること 」、「回る/廻る」の意味は「場所などをめぐること、遠回りすること」など幅広くあります。この記事では「周る」と「回る/廻る」の意味や違い、使い方、類語、対義語、英語表現、例文について解説します。
「ちょっと外まわりに行ってきます」という場合、「周り」でしょうか「回り」でしょうか、はたまた「廻り」?これら3つの違いを正しく理解して使い分けることは難しいですね。例文を参考に理解していきましょう。
「周る」と「回る」と「廻る」の意味の違い
一口で「まわる」といっても、いろいろな字が思い浮かびます。「周」や「回」、「廻」もありますね。字が違えば意味も違うかというと、一筋縄にはいきません。なかなかに奥の深い「まわる」の世界を案内しましょう。
「周る」はひと回りすること
「周る」は、何かの周りをひと回りすることを意味します。実は「周」の字は、正しくは「まわり」という読み方しかありません。もともと周囲を示す言葉だったので、動詞化してもひと回りしかしないわけです。
参照:Weblio辞書「周る」
「回る」の意味は広い
「回る」は、回転することを表す言葉です。何かを中心に回転運動することを指す言葉で「タイヤが回る」のように使うわけです。ただし、この言葉は大変意味が多く、辞書によっては10を超える意味が示されています。主だったところを挙げておきます。
場所などをめぐる
順々に場所などを巡っていくことを「回る」といいます。「点検に回る」などの使い方がありますね。
遠回りする
目的地に直接向かわずに、別な場所を経由するときにも使います。「川沿いを回って帰る」や「タバコ屋に回っていく」のように最短コースでなく迂回したり寄り道したりするときに「回る」を使います。
順に移る
決められた順番で物事が移っていくことを表します。「掃除当番が回ってくる」のように何か物事が当然に移っていく様子を表します。
立場が変わる
それまでとは違う立場に変わることを言い表します。「反対派に回る」や「敵に回る」のような使い方で、何らかの理由で立場を変えたときに用いられます。
十分にいきわたる
何かの効力が隅々にまでいきわたったり、配慮がいき届いていたりする意味に使います。「酔いが回る」や「手が回る」のような表現になります。
「廻る」は「回る」と同じ意味
「廻る」は「回る」と同じ意味ですが、常用漢字ではないのでふつうは「回る」で表記されます。部首にえんにょうが付いている分、動いていく、巡る、のニュアンスが強くなります。「廻船」の熟語に用いられるのも、船を取り回している動きがよく表れるからでしょう。
「周る」の使い方と例文集
「まわる」は慣例的な読みで、常用外の読み方として挙げられているのは「めぐる」です。基本的には「回る」で表記する方が無難なわけですが、それでも「周る」ならではの使い方もあります。
「周る」の使い方
「周る」は、「回る」の意味の中でも「場所などをめぐる」の意味に近いものです。また何かの周囲をひと回りするような場合や、広い範囲を巡っていくような場合に「周る」と表記されることがあります。
「周る」を使った例文
・陸上トラックを3回周る。
・退職したら世界を周る旅に出るのが夢です。
周回するイメージや、広い範囲をぐるっと巡るときに「周る」と表記します。「東北周遊の旅」などでも「周」の字が用いられます。これも訓読みすれば「周って遊ぶ」わけです。
ためしに「東北回遊の旅」とすると、なんだか何周も回るようなせわしないイメージになりますね。
「回る」の使い方と例文集
「回る」は回転を意味し、円形に運動する様子を表します。この言葉に多くの意味があるのも、この円形に運動するイメージや、絶え間なく回る動きが意味を派生しやすかったからでしょう。
「回る」の使い方
円形に動き続ける場合や、大きく迂回する場合、働きなどがいきわたる場合などに「回る」は使われます。とにかく意味の多い言葉ですので、すべての意味を網羅するのは難しいですね。ただ「知恵が回る」や「目が回る」のような慣用句も多いので、うまく使えると表現が豊かになります。
「回る」の例文
主だった意味に沿って例文を挙げてみましょう。
・中華料理屋にある回るテーブルは便利だよね。
回転運動をする意味での文例です。中心をもって回転するものには何でも使えます。
・時間があるから予定外の取引先も回ってみよう。
遠回りをする意味です。必ずしもむだに迂回する意味ばかりではありません。
・次の昼食会の係は私に回ってきます。
何かが順に移ってくる意味の「回る」です。何度も回ってくるのでこの字が適切ですね。
・いつのまにか同僚が競合相手に回っていたよ。
立場が変わる意味での例文です。2つ以上の立場に分かれているときに、その間で入れ替わるような場合に用いられます。
・風邪薬がようやく回ってきたようです。
効果や手立てが十分にいきわたって働いている様子を表しています。「舌が回る」と言うと、口が達者な様子を表す慣用句ですね。
「周る」と「回る」を英語でいうと?
漢字の違いによる「周る」と「回る」ですから、それぞれに合致する英語はありません。ただニュアンスとして、広く巡っていく「周る」のような意味と、中心をもって回転する「回る」のような意味にあたる表現はあります。それぞれ紹介します。
「周る」はgo around
・We go driving around town.(私たちは町をめぐるドライブに行きます。)
aroundは何かの周囲を示す言葉ですので、go aroundで何かをひと回りする意味になります。英語の場合、この言葉は「回る」の意味である「いきわたっている」の意味にも用いるので、次のような使い方もします。
・There’s a story going around that he is a liar.(彼がうそつきだという噂が出回っています。)
・There are enough foods to go around.(みんなにいきわたるだけの食べものがあります。)
「回る」はgo round
・I will go round for orders.(注文聞きに回ってきます。)
・We’ll go round by Tokyo.(私たちは東京を回っていくつもりです。)
roundは円形の意味ですから、go roundで円を描いて動くことを意味します。この言葉は日本語の「回る」にかなり近い意味を持っていて、得意先回りや遠回りの意味などにも使われます。
「周る」と「回る」の類義語・言い換え表現
「回る」はとても意味の多い言葉なので、そのそれぞれに類似する言葉が存在します。また「周る」は逆に意味は限定的なので、類義語もほとんどありません。
共通してあげられる類義語は「巡る」でしょう。「巡る」は「周る」に対してはほぼ同義で、そのまま言い換えできる場合が多いです。「回る」に対しては、その意味が多岐にわたることからカバーしきれていないところが多いですね。「場所をめぐる」や「順に移っていく」の意味では言い換えができる場合がありますが、そのほかの意味では言い換えできないことが多いです。
ビジネスシーンでの「まわる」は?
「周る」は限定的な意味、「回る」は非常に多岐にわたる意味を持つことはわかっても、日常のビジネスシーンでの使い分けがわからなくては意味がないですね。「周る」を使うことはかなり限られているので、大体の場合は「回る」が用いられます。よくある言い回しの例を見てみましょう。
得意先を回る
営業所であったり、支店であったり、ビジネスシーンではいくつかの場所をひと回りする仕事は多いものです。「ひと回り」だから「周り」かとも考えられるのですが、この場合は「回る」を用います。
「周る」には特に目的地を定めずに動き回る「めぐる」意味が強いので、「得意先を回る」のようにはっきりとした複数の目的地を回ることには使いません。確かに「営業所めぐり」では物見遊山のように聞こえてしまいますね。
おすすめの店を回る
これも目的地が明確にあるわけですから「回る」がふさわしいことになります。ビジネスシーンで「回る」のは、大体の場合は目的地が明確ですから、「回る」を使っておけば間違いないと考えておきましょう。
建物の外側を周る
建物の外周をひと回りするような場合は「周る」が使えます。ただこれも「回る」で間違いかといわれれば、そうではありません。「周る」も使えるということであり、基本的には「回る」を用いておく方が無難でしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は 「周る」と「回る/廻る」の意味や違いについて解説しました。
「周る」が本来は「まわる」とは読まないと聞いて意外な人も多かったのではないでしょうか。基本的には「回る」を用いるようになっているわけですね。
しかし、こうした漢字の用法の違いを考えることは、思わぬメリットがあります。ふだん自分が話していることや言葉の用い方について、漢字を視点に見直す機会になることです。「回る」にもいろいろあるんだなあ、と感じていただけたなら、とてもよい機会になったといえるでしょう。
最後に「周る」のまとめです。
- 「周る」の意味は「 ひと回りすること 」、「回る/廻る」の意味は「場所などをめぐること、遠回りすること」など幅広くあります。
- 「廻る」は「回る」と同じ意味です。
- 英語では「周る」はgo around、「回る」はgo roundと表現します。
- 「周る」と「回る」に共通してあげられる類義語は「巡る」です。
- ビジネスでは「得意先を回る」「建物の外側を周る」のように使います。