「我が社の経営における問題は…」と述べている途中で「その場合、課題は何だ?」と問われて、「え?問題と課題って同じじゃないの?」とやってしまったらビジネスパーソン失格です。混同されがちなこの2つの言葉、違いも使い方も詳しく解説します。
「課題」の意味とは?
学生だったころ「課題」に悩まされた方は多いのではないでしょうか?そう言えば、そんなとき「問題」で悩んだ、と言うことはありませんね。なんとなくではなく、はっきりとした使い分けができるようにしたいですね。
解決すべき問題
「課題」とは、解決すべき「問題」を指します。対処を要し、そのことを任されているような「問題」のことを言うわけです。「課題」と言う場合は、その内容よりも対処や解決などの行動に重点があると言えます。
参照:Weblio辞書「課題」
「問題」の意味とは?
「課題」が「問題」の中に含まれるものだと分かりました。では「問題」とはどんなことを意味するのでしょうか?一般的に「問題」には、必ずしも解決を必要とする意味が含まれていない点が違います。主に3つの意味があります。
意味1 解答を求める問い
1つ目の意味は、解答を求める問いを表します。試験の問題や数学の問題などのように使う場合ですね。
意味2 困った事柄
2つ目は、困った事柄や厄介な出来事を指す意味です。「予算面が問題だね」のように使う場合や「経済格差を伴う南北問題」のように用いる場合の意味です。
意味3 話題になっていること
3つ目に、世間で話題になっていることを表す意味があります。「これが問題の会社か」のように、世間の耳目を集めている対象を形容するときに用いられます。
参照:Weblio辞書「問題」
「宿題」との違い
「宿題」も解決を迫られる意味では「課題」とよく似ています。「宿題」には、未解決のまま持ち越されている課題の意味があります。過去から引き継がれているものなら「宿題とされている」わけですし、現状解決できないがいずれそれが迫られるものは「宿題となる」わけです。
参照:Weblio辞書「宿題」
ビジネスにおける「課題」と「問題」
「課題」と「問題」の意味的な違いはそのままビジネスシーンでも通用するのでしょうか?ビジネス上の言葉としてこの二つの言葉を使う場合は、明確な使い分けがあります。確認しておきましょう。
「課題」はやるべきこと
「課題」は目標を達成するために行う具体的なアクションを指します。たとえば、新規顧客の開拓を目標として、ノベルティによって消費者の購買欲を刺激することが「課題」となるわけです。
「問題」は目標とすること
「問題」は、組織が持つ目標に対して現状に生じているギャップを指します。その意味で「問題」は、目標を達成するために克服すべき事項そのものです。たとえば、新規顧客の開拓が目標とすれば、来店者のリピーター率が90%を超えていることは「問題」となるわけです。
「課題」と「問題」の使い方と例文集
「課題」と「問題」は、会社全体の経営計画に関するものから、日々の業務のマニュアルまで、大小多岐にわたるものがあります。具体的な使い方を見ていきましょう。
「課題」と「問題」の使い方
「課題」は、具体的な行動目標ですから、~をする、~に取り組む、と表現されるものです。一般的には数値などで具体的な到達目標を示すことが多いですね。「問題」は、目標と現状とのギャップをとらえるものですから、~ができていない、~に至っていない、のように不足していることを示すような表現になります。「課題」は「問題」を解決するために立てられるものですから、その順序性と関連性がきちんと整合していることが重要です。
「課題」の例文
- 出店予定地の選定を20日までに完了します。
- 顧客へのアフターフォローのフロー図を作成する必要がある。
「課題」は具体的に何をするかが明示されていることが必要です。店舗の出店計画が遅れている「問題」があれば1つ目の例文のような「課題」になるでしょう。顧客へのフォローが抜けたり重複したりする「問題」があるなら、2つ目の例文のような「課題」が考えられます。一つの「問題」に対して「課題」は一つとは限りません、複数のアクションが必要な場合もあるからです。
「問題」の例文
- 目標とする今月末の一斉新規開店に対して、計画通りに進捗していないのは問題だ。
- 問題は、顧客へのフォローが確実に行われていないことです。
「問題」は、目標そのものではなく、現状とのギャップを指します。できていないことを確実に押さえる必要があるわけで、業務を担当する立場からは現実を直視する必要のある気の重い作業かもしれません。
「課題」と「問題」の書き方
「課題」や「問題」と言うと、何か経営戦略のような大仰なものをイメージしがちです。しかし、実際には自分の日々の業務の見直しなど、自己啓発にも役立つ考え方です。その流れを解説します。
「問題」を把握する
まず目標と現状とのギャップである「問題」を把握します。目標から見た現状についてさまざまな視点でとらえてみましょう。プロジェクトなどの場合は、チームのメンバーでのブレーンストーミングなどもおすすめです。また第三者の意見なども集められると客観性が増します。現状がとらえられれば、自ずから「問題」は洗い出されてくるはずです。
「課題」を検討する
「問題」が洗い出されたら、その原因を多角的にとらえていきます。この「問題」の原因をつぶしていくアクションが「課題」に直結していきます。一つの問題に対して、いくつもの原因が考えられるはずですから、「課題」は一つとは限りません。一度に多くの取り組みをすることは困難ですから、優先順位も考えておくといいでしょう。
対策を行う
次に洗い出された「課題」を解決する取り組みを実行します。具体的なアクションが明確であるほど取り組みやすくなりますから、実行前に「課題」の内容はしっかりと練り上げておく方が効率的です。また業務として行う場合は、費用対効率も重要な視点です。できるだけ低いコストで、より効果が期待できるアクションから取り組むような「課題」の分析も大切ですね。
結果を検証する
「課題」が設定され、具体的にアクションをすると、何となく終わったような気になってしまいます。しかし「問題」の解決、ひいては目標達成がゴールであるとすれば、まだ道半ばと心得るべきです。「課題」が解決されているかどうか、結果の検証はスモールステップで行っていく必要があります。また、その際には評価の指標が明確であることが理想的です。業績に直結するような課題の場合、KPI(Key Performance Indicator=重要目標達成指標)のように定量化された目標が設定されていることが望ましいですね。
新しい対策を行う
「課題」が達成されていない場合には、「課題」の見直しが必要です。新たな対策を講じていくことで、最終的なゴールが見えてきます。目標達成はこうした取り組みの繰り返し、いわゆるPDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルによって成し遂げられるのです。
「課題」と「問題」を英語でいうと?
「課題」と「問題」」を厳密に分けることは難しいですが、そうした意味合いを表す英語表現があります。必要なときに使えるように覚えておきましょう。
issue
- We remain apart on several issues.(いくつかの課題で意見は分かれました。)
issueは、「課題」や「問題」などを含む議論の論点を表す表現です。issue自体は、動詞として「発行する」の意味になるなど多義的な単語ですので、使い方には注意が必要ですね。
assignment
- Our company’s assignment is to expand the sales area.(我が社の課題は販売地域の拡大です。)
assignmentはassign(割り当てる)の名詞化で、「割り当て」や「課された仕事」の意味を表します。ビジネスシーンで「課題」と表現するときによく用いられます。乗り越えるべき仕事、の意味でchallengeも用いられることがあります。
problem
- What are the problems we’re facing?(我々が直面する問題は何か?)
日本語の「問題」に近いニュアンスではproblemがよく用いられます。解決の困難なものを指す場合が多く、試験問題でproblemは「難問」を意味します。
まとめ
ビジネスパーソンとしては、そのときどきの「問題」を把握し、「課題」を明確にして取り組むことが求められます。しかし、自己啓発的に「課題」をもつよりは、営業ノルマや至上命令として「課題」が与えられる方が多いのも現実です。そんな中にあっても、与えられた「課題」をポジティブにとらえるためには、「目標」分析やPDCAサイクルの考え方で仕事を見直すことは重要なスキルです。常に経営者の視点で自己の業務を俯瞰することは、やりがいのあるビジネスライフを過ごすためにも大切にしたいですね。