同じ「あらわれる」と読む、「現れる」と「表れる」の違いを知っていますか?本記事ではそれぞれの意味と使い方を解説します。ほかにもある「あらわれる」と読む言葉や英語表現も紹介。微妙な違いを把握して、適切に「あらわれる」を使えるようになりますよ。
「現れる」と「表れる」の意味
「現れる」と「表れる」の意味を、それぞれ説明します。混同されがちな2つの「あらわれる」の意味、相違点を確認してください。
「現れる」の意味
「現れる」は、「いままでなかった、見えなかったものが見えるようになる」や「姿を見せる」、または「隠れていたものが際立って見えるようになり、知れわたる」意味です。
基本的に「形のあるもの、実体のあるものが物理的に見えるようになること」を「現れる」といいますが、「知れわたる」意味の場合は例外もあります。漢字「現」の意味は「あらわす」や「隠れていたものが見えるようになる」、または「目の当たりの」。漢字「現」を使った「現れる」意味の熟語には「具現(ぐげん)」や「顕現(けんげん)」、または「出現(しゅつげん)」や「発現(はつげん)」などがあります。
「表れる」の意味
「表れる」は、「考えや感情、思想など隠れていた内面的なものが外に出る」や「見えなかった内面的なものが示される」意味です。「思想や癖など形がなく、抽象的なものが外から見てわかるようになること」を、「表れる」といいます。
見えるようになるものが「形のあるものか否か」が、「現れる」と「表れる」の相違点です。漢字「表」の意味は「おもて、うわべ」や「ものごとの外側にあらわれた部分」、または「あらわす」です。漢字「表」を使った「表れる」意味の熟語には「表情(ひょうじょう)」や「公表」、または「発表」などがあります。
「現れる」と「表れる」の使い分け
原則として「現れる」は形のある物理的なもの、「表れる」は形のない内面的で抽象的なものに対して使います。どんなものが「現れる」」または「表れる」なのか、具体例を示して説明します。
「現れる」を使う場合
「姿が見えるようになる」の「現れる」は、人、物、太陽など天体や自然といった目で見て形がわかるものに対して使います。いなかった人が目の前に姿を見せる、建物が見える、雲の切れ間から太陽が見える場合などです。
「隠れていたものが際立って見えるようになり、知れわたる」場合の「現れる」には、才能や真価が当てはまります。「知られていなかったものが広く知られるようになった」意味です。
「表れる」を使う場合
「内面的なもの、外からは見えなかったものが表にでる」の「表れる」は、機嫌など感情、景気や世論、結果、実績、兆候など抽象的なものに、幅広く使います。たとえば喜びが顔つきに出る、政権への不満が世論に反映される、努力が実を結ぶ場合などです。
どちらでも使える場合
「現れる」」でも「表れる」でも使える場合もあります。たとえば、「効果があらわれる」です。
「それまで見えなかった効果というもの、事柄が生じて目で確認できるようになった」と考えれば、「現れる」。
「効果という形のないものが、外から見てわかるかたちで出てきた」とすれば「表れる」です。
同じく「症状」も「現れる」と「表れる」のどちらでも間違いではありません。ただし、ニュアンスとして慢性的な病気については「表れる」です。
一時的な風邪で咳をした場合は「風邪の症状が現れる」といいます。慢性的に喘息を患っていて、咳をした場合は「喘息の症状が表れる」です。「ふだんは外側から見えないが、体のなかにある喘息が咳によって外側から見える状態になる」ため、「表れる」が適しています。
「現れる」と「表れる」を使った例文
「現れる」または「表れる」を使った例文を挙げます。
「現れる」の例文
「現れる」を使った例文を挙げます。
- 角を曲がると、眼前に巨大なモニュメントが現れた。
- 運転中、突然道路に犬が現れたので、慌ててブレーキを踏んだ。
- 虫に刺されてしまい、皮膚に湿疹が現れた。
- サスペンス映画の終盤、ついに犯人が正体を現した。
- 非常時に、首相の真価が世に現れた。
「表れる」の例文
「表れる」を使った例文を挙げます。
- 今度の新曲には、アーティストの心情がよく表れている。
- 部長の顔には疲労が色濃く表れていて、とても心配になった。
- 彼女が怒り心頭であることは、言葉の端々と態度に表れていた。
- 景気回復の兆候は、失業率に表れている。
- 彼の努力は、実績に十分表れています。
「あらわれる」の同音異義語
「現れる」と「表れる」以外にも、「あらわれる」と同音の言葉があります。「あらわれる」と読む言葉を紹介します。
「顕れる」
「顕れる」は「隠れていたものごとが明らかになる」や「だれの目からも見てもはっきりわかるようになる」、または「隠していたことが公になる」意味です。
才能や実力など、目に見えないものが明白になる場合に使います。「隠したことが公になる」意味では、よくない秘密や悪事といったネガティブなニュアンスがあります。漢字「顕」の意味は「あきらか」や「はっきりする」、または「名高い」。「顕」を使った、「顕れる」意味の熟語は「顕在(けんざい)」や「顕著(けんちょ)」、「顕彰(けんしょう)」などがあります。
「露れる」
「露れる」は、ただ「あらわれる」意味だけでなく「さらけ出す」や「むき出しになる」、あるいは「隠しきれずに出てしまう」といったニュアンスを含みます。
怒りや悔しさ、批判などネガティブな感情がむき出しになってしまう場合に「露れる」がよく使われます。悪事や大っぴらにできない過去といった、隠しておきたいことに対しても「露れる」です。
さらに地下の土壌や地層、素肌や裸など、ふだんは何かに覆われていて見えないはずのものも「露れる」といいます。漢字「露」は「おおいがない」、または「さらけ出す」や「あらわになる」意味です。「露」を使った「露れる」意味の熟語には、「露出」や「暴露」などがあります。
「現れる」「表れる」の類義語・言い換え表現
「現れる」または「表れる」と言い換えられる言葉を挙げます。意味によっては言い換えられない場合もあるので、どんなニュアンスの「あらわれる」かが判断のポイントです。
「出る」
「出る」は「現れる」とも「表れる」とも言い換えられます。たとえば「この森にはクマが現れる」は、「この森にはクマが出る」です。「上司への尊敬は、彼の言動にも表れていた」は、「上司への尊敬は、彼の言動にも出ていた」といえます。
「登場」
「登場」は、「現れる」と言い換えられます。「舞台の袖から、人気俳優が現れた」の言い換えは、「舞台の袖から、人気俳優が登場した」です。「姿を見せる」意味の「現れる」は、「登場」を使えます。
「現れる」「表れる」の対義語
「現れる」または「表れる」の対義語を紹介します。
「隠れる」
「隠れる」は、「人目を避け、見えないようにする」または「他人の目につかないようにする」意味です。「物陰に隠れる」や「太陽が雲に隠れる」などといいます。「喜びを隠す」など感情に対しても使います。「現れる」と「表れる」両方の対義語です。
「潜む」
「潜む(ひそむ)」の意味は「ひそかに隠れる」や「人目につかないようにする」、または「内部に隠れて外側からはわからない状態にある」です。たとえば「犯人が潜む」や「発現の裏には悪意が潜んでいる」などといいます。人やもの、感情や事実などに対して使う言葉です。「現れる」と「表れる」それぞれの対義語だといえます。
「現れる」と「表れる」の英語表現
「現れる」と「表れる」の英語表現を解説します。
「appear」
「appear」は「現れる」意味、とくに「突然現れる」ニュアンスの英語表現です。「He appeared.」で「彼が現れた」。書き言葉としてよく使われる英語表現です。
「show up」
「人や動物が姿を見せる、現れる」は、「show up」です。話し言葉のなかで多く使われます。「She showed at the party.」で、「彼女がパーティに現れた」です。「登場」のニュアンスを含みます。
「come out」
「come out」は、「徐々に姿を見せる」意味です。「appear」は「突然」、「come out」は「徐々に」のニュアンスがあります。人や動物、太陽などの「現れる」だけでなく、心理や感情などの「表れる」でも使います。
「emerge」
「emerge」は「出現する」や「表に出る」意味の英語表現で、「現れる」にも「表れる」にも使います。真実やものごとが次第に表面化して明らかになるニュアンスを含みます。
まとめ
「現れる」と「表れる」の使い分けは、「形があるか否か」で判断するのが原則です。ただし例外もあるため要注意。効果や症状など、両方使える場合も合わせて確認してください。