渡すの敬語表現とは?ビジネス例文や使い方、類語・熟語・英語表現を解説

「渡す」の敬語表現とは?ビジネス例文や使い方、類語・熟語・英語表現を解説
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書類のやり取りや支払いの受け渡しなど、ビジネスシーンには無数の「渡す」場面があります。しかもその多くは社外の方やお客様など気を遣う方とのやりとりですね。正しい敬語穂湧現で、気持ちよくやり取りができるように解説します。

目次

「渡す」の意味とは?

「渡す」の意味とは?

「渡す」と言ったらどんな場面を思い浮かべますか?誰かに書類を届けている場面を思う人もいれば、川の上の橋を思い浮かべる人もいるでしょう。「渡す」は思ったよりも意味の広い言葉です。主だったところを3つ紹介します。

意味1:自分から相手へ移動させる

一つ目の意味は、自分から相手側へ何かを移動させることです。物を渡す場面もあるでしょうし、何かの権利を相手に譲る場面もありますね。あくまでも自分側から相手側への方向の場合に用いられ、双方向性のある表現ではありません。

意味2:川などを越える

二つ目の意味は、川など何らかのものの上を越えていくことを言います。この意味での使い方はいくつかあります。人や荷物などを川の向こう岸に運ぶことをいう場合がありますし、「橋を渡す」のように川などを越えて物をかける場合もあります。古くは馬で川を越えることも「渡す」と表現しました。

意味3:行き渡らせる意味の補助動詞

三つ目は、単独で用いられる意味ではありませんが、ほかの言葉とあわさって行き渡らせる意味を表します。「眼下を見渡す」や「ロープを張り渡す」のようにもちいて、すっかり見ることやロープを完全に張ることを表現します。

参照:Weblio辞書「渡す」

「渡す」の尊敬語

「渡す」の尊敬語

社外の方から資料などをいただいたときに、「先方から渡してもらいました」などと報告していないでしょうか?話題の中で目上の方の行為を述べる場合は、敬意を表して尊敬表現を使う必要があります。先述の例は丁寧語にしているだけなのでNGです。正しい尊敬語を身に付けましょう。

「お渡しになる」

例文
  • 社長がお客様にお渡しになった資料は、私が準備したものです。

「お渡しになる」は尊敬表現としては基本的なものです。動詞を連用形にすると名詞化できます。(「走る」が「走り」になるようにですね)これに尊敬の接頭辞「お」を付して尊敬語としたうえで助詞の「に」と動詞の「なる」を付けて改めて尊敬表現の動詞とできます。(「話す」を「お話しになる」とするのと同じです)特に誤解を招くこともなく、使いやすい尊敬表現です。

「渡される」

例文
  • 取引先の方が部長に渡された資料を拝見したいのですが。

「れる」や「られる」を助動詞として用いることで尊敬語にできます。これも多くの動詞で用いられる方法ですね。(「兼ねる」を「兼ねられる」とするのも同様です)ただこれは受動態や可能表現を作る語法と同じですので、誤解を招く恐れがあります。たとえば例文を「取引先の方から部長に渡された~」とすると、この「渡された」は受動態となって、敬語表現は失われてしまいます。使用の際は、誤解されないように注意する必要があります。

「お渡しください」

例文
  • 当方の見積もりとなりますので、〇〇部長にお渡しください。

「お渡し」は「渡す」を尊敬表現で名詞化したものですので、「ください」を付してそうして欲しいことを表す尊敬表現となります。ただこれは厳密には「渡す」ことそのものの尊敬表現ではなく、「渡してほしい」の尊敬表現です。「ください」を用いる敬語は、相手に指示しているニュアンスもあるので印象よく受け取られないこともあります。「お渡しいただきたく存じます」のように謙譲表現として用いる方が無難かもしれませんね。

「渡す」の謙譲語

「渡す」の謙譲語

「渡す」は本来、自分から相手に物を移動させる行為をいいます。ビジネスシーンでは自分の行為はへりくだって表現しますから、「渡す」の謙譲表現は一層重要です。こちらも3つ紹介します。

「お渡しする」

例文
  • 私が先方に出向いてお渡しします。

「お渡し」は尊敬表現の名詞化ですが、補助動詞の「する」を伴うと謙譲表現となります。これも多くの動詞で応用の利く表現です。(「聞く」を「お聞きする」といえますね)非常にかんたんに謙譲表現にできますので、いろいろなシーンで使いやすい言い方です。

「お渡しいたします」

例文
  • お渡しいたしました資料は、本日お持ちですか?

補助動詞「する」を謙譲表現としたのが「いたす」ですから、丁寧さの増した謙譲表現となります。社外の方など、気を遣う相手でも使える表現です。

「お渡し申し上げる」

例文
  • 明日そちらへ参上して見積もりをお渡し申し上げます。

「申し上げる」は「する」ことを表す謙譲表現の補助動詞ですから、これも「渡す」意味の謙譲表現です。「申し上げる」はかなりへりくだった表現ですので、この言い方はよほどあらたまった場でも使用可能です。ちなみに補助動詞は原則ひらがな表記ですが、「申し上げる」は例外的に漢字表記します。

「渡す」の間違った敬語表現

「渡す」の間違った敬語表現

敬語表現はどうしても持って回ったような言い方になります。ともすると回りくどい方が丁寧なのではないかと誤解する人もいるようです。こねくり回したような表現は結果的に謝った敬語表現になることが多いです。よくある間違いを2つ紹介します。

「お渡しさせていただく」

例文
  • 明日お渡しさせていただきます。

「お渡しする」はすでに謙譲語ですから、これに使役の助動詞「させる」を用いて「いただく」を付すのは謙譲表現を重ねているので二重敬語の誤用です。「させていただく」は許可を得る謙譲表現で、何となく相手を立てている印象があり使ってしまいがちですが、二重敬語になりやすい言い回しです。

「お渡しになられてください」

例文
  • よろしければ、御社の上司にもお渡しになられてください。

これも「お渡しください」の尊敬表現に「なられる」の尊敬表現を重ねているので二重敬語の誤用です。前述の通り「ください」は指示的で強いイメージがあるので使いにくいためにこのような誤用が起きると考えられます。

「渡す」の類義語・熟語

「渡す」の類義語・熟語

「渡す」ことはビジネスシーンではたびたび行われることです。同じことを同じ言い回しでしか表現できないのは言葉の力を疑われかねません。ほかの言葉で言い換えられるようにしておけるといいですね。4つ紹介します。

差し上げる

例文
  • 先方には何か手土産を差し上げてください。

「差し上げる」は何かを届けることを表す謙譲語です。「渡す」と違い、そもそもが謙譲語なのでそのまま目上にも使えます。日常的にも使いやすい表現ですので、よく用いられます。

譲る

例文
  • 先輩から頂いた万年筆だけど、昇進祝いにあなたに譲りますよ。

「譲る」は、相手に何かを渡すことを表現しています。謙譲語の「譲」の字を使ってはいますが、この言葉自体が謙譲語ではありません。ニュアンスとして自分が一歩下がった感じはしますが、目上に使うときは「お譲りいたします」のように正しく謙譲表現を用いましょう。

提出

例文
  • 報告書を提出いたします。

文書などを「渡す」場合にはこの言葉を使えます。この言葉自体に敬語の意味はありませんので、尊敬語とするなら「ご提出になる」、謙譲語とするなら「提出いたします」と表現します。

郵送

例文
  • ご郵送いただいた資料を、確かに拝受いたしました。

郵便によって「渡す」場合に用いる言葉です。この言葉も敬語ではありませんので、正しく敬語表現にして使用する必要があります。

「渡す」の英語表現

「渡す」の英語表現

「渡す」ことを表す英語表現は、丁寧さによって使い分けられます。2つ紹介します。

hand

例文
  • I’ll hand you over my job.(君に私の担当の仕事を渡すつもりです。)

handで、手渡す、の意味を表しますが、hand overでより丁寧な表現となります。hand ~ overで、~に引き渡す、の意味を表します。

give

例文
  • Please give me the glass.(コップを渡してください。)

より軽い表現として用いられるのがgiveです。日常的にちょっと物を手渡すような場合によく用いられます。このほかpassも使用頻度の高い表現です。

まとめ

一日中なにも「渡す」ことなく過ごせる日はないですね。ちょっとメモ帳を取ってあげることから、事業承継に至るまで、ビジネスシーンは大小さまざまな「渡す」ことから成り立っています。そんな無数の「渡す」行為をきちんと表現し分けるのは案外至難の業かもしれません。大切なのは、確実に「渡す」ことであって、そのための道具として言葉を使いこなせるようにしなければなりません。そのために必要なのは日々の研鑽と、相手への心遣いにほかなりませんね。

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