「貸与」という言葉を使ったことはありますか?「貸与」は日常生活やビジネスシーンで使われるため、意味と使い方を正確に把握することは大切です。今回は「貸与」の意味や使い方、類語・反対語・英語表現に加え「付与」や「譲渡」との違いも紹介します。
「貸与」の意味とは?
「貸与」の意味とは「金銭や物品を貸し与えること」を指します。この言葉の肝としては、相手に対して金銭や物品を与えただけではなく、「貸した」という点になります。つまり、いつか返却してもらうことを条件に相手に渡すという取引を表現しています。ビジネスなどにおいては書類上でよく用いられ、たとえば「制服貸与」とあった場合は制服を貸し与えるという意味になります。
「貸与」の読み方
「貸与」の読み方は「たいよ」になります。読み方に違和感を覚えるかもしれませんが「賃貸」は「ちんたい」と読むことを思い出せば、納得がいくでしょう。「貸」という漢字には 「かす」という意味合いがあるため、「貸与」で「貸し与える」という意味になります。
「貸与」の類義語・言い替え
「貸与」の類語や言い換え表現について紹介します。「貸与」と近い意味を持つ言葉は複数存在しますが、その中でも「供与」と「支給」の2つの言葉を紹介します。似た意味の言葉を知ることで、日本語の語彙力を増やしていきましょう。
「供与」
「供与」という言葉は「相手に対して利益をもたらすために、お金を与えたり技術を提供すること」などを表現する言葉です。「貸与」という言葉と大きく異なる点は、相手に見返りを求めていないところになります。 相手に利益をもたらすために何か自分が持っているものを相手に提供するという意味合いになります。渡すものは金や物に留まらず、情報や技術といったような形にならないものもその対象に含まれています。
「支給」
「支給」という言葉は「金銭物品などを給料や給付として渡すこと」を表します。わかりやすい例として、新しい職場で働く際の制服について取り上げましょう。「制服給付」と書かれていた場合は、基本的には返却不要になります。働くために必要な制服を会社側が準備して与えるというニュアンスを表します。一方「制服貸与」という表現の場合、何らかの理由で職場を離れることになったとき、その制服は会社へと返却することを求められます。 つまり、所有権がどちら側にあるのかという視点でこれらの言葉を使い分けましょう。ただ実際には「貸与」と「支給」の使い方の違いに関して意識せずに書かれていることも多いため、後々トラブルにならないようにどういった対応を取るべきなのかは先方に確認しておくようにしましょう。
「貸与」の対義語・反対語
「貸与」と反対の意味を持つ言葉を紹介します。ここで紹介する言葉は「借用」と「拝借」です。それぞれの言葉のニュアンスや使い方について詳しく見ていきましょう。
「借用」
「貸与」の反対語として「借用」という言葉が挙げられます。両方とも貸すというニュアンスを含む言葉であるため反対語のイメージはありませんが、「貸与」と「借用」は反対語になります。「借用」とは、物を貸してもらう側が物品の提供をお願いするニュアンスであるのに対し、「貸与」は物品の提供主の方が貸し出ししていることを提示するというニュアンスを持ちます。つまり、物を借りるほうからの働きかけなのか、物を貸す方からの働きかけなのかで使い分けがなされています。
「拝借」
「拝借」とは物を借りることをへりくだっていう言葉になります。拝は「おがむ」という意味があり、謙譲表現においては頻繁に用いられる漢字になります。例えば「背景」「拝読」「参拝」といったように「拝」は数多くの謙譲表現において用いられます。つまり「借りる」という言葉に「拝」をつけることで「借りる」を謙譲表現に変えるはたらきをします。 代表的な使われ方としては「お手を拝借」などがあります。セレモニーの最後に一本締めをする際に、枕詞的に使われる表現になります。
「貸与」と「付与」と「譲渡」の使い分け
ここでは、「貸与」と「付与」と「譲渡」の使い分けについて紹介します。3つの言葉は全て「他者に与える」というニュアンスを持つ言葉ですが、細かい部分に若干の違いがあります。その違いについて詳しく見ていきましょう。
「貸与」と「付与」の違い
「貸与」と「付与」の大きな違いは、物を与えた相手に対して返却を期待しているのかしていないのかという点になります。繰り返しになりますが「貸与」は、相手に物品や金品を貸し与えることになります。つまり返却されることが前提になっていることを指します。一方、「付与」は「返却」を前提としないやり取りのことを表します。最近ではキャッシュレス決済などにおいてポイントが還元されることがありますが、その際にも「ポイントが付与されました」という表現が使われています。このようなポイントはキャッシュレス業者にいつか返却するものではありません。つまり業者から私たちのアカウントへポイントが与えられたことを表しています。
「貸与」と「譲渡」の違い
「譲渡」という言葉も「貸与」とは意味合いが大きく異なります。「譲渡」は「権利や財産法的地位を他人に明け渡すこと」を指します。つまり「譲渡」という言葉も返却することが前提にされているのではなく、相手に与えるという意味がある言葉です。もう一つ大きく異なる点としては、相手に渡すものが権利や財産といったような抽象的なものである点です。「貸与」の場合は、物品が対象になっているのに対し、「譲渡」の場合は権利や法的地位といったような抽象的な物のやり取りを対象としています。
「貸」と「借」は何が違うのか?
ここでは、「貸」と「借」は何が違うのかについて考えていきます。どちらの漢字も日常生活やビジネスシーンにおいて非常によく使う言葉であるため、その意味の違いを把握しておきましょう。
「貸」と「借」の使い分け
「貸」と「借」にもニュアンスの違いが存在します。「貸与」と「借用」の違いにもあった通り、 物を提供する側が主体となっているのが「貸」で、物を提供してもらう側が主体となっているのが「借」になります。「貸す」「借りる」というように訓読みしてみるとその違いがよりわかりやすいでしょう。漢字そのものが持つ意味合いが熟語の成り立ちにも影響を与えるので、漢字の本質的な意味合いは非常に重要な要素になります。
「貸借」の意味は?
「貸借」は「たいしゃく」と読みます。簿記の試験範囲にも「貸借対照表」というものがあり、お金回りを扱う分野においては重要な語句になります。 意味合いとしてはそのままで「貸すことと借りること」という意味になります。日常生活で使うことは少ないかもしれませんが、ビジネスシーンにおいては耳にすることがあるかもしれません。
「貸与」を英語でいうと?
「貸与」の英語表現について紹介します。今回紹介する英語表現は、「lend」と「loan」です。
「lend」
「lend」で「貸与」の英語表現になります。「 I will lend you my fan.」で「扇子を貸します。」という表現になり、物品を貸しているというニュアンスにおいて「貸与」の英語表現になりえます。
「loan」
「loan」も「貸与」というニュアンスを表す言葉になります。例えば「a housing loan」は「住宅ローン」の英語表現です。
「貸与」の使い方と例文集
最後に「貸与」の使い方や例文について紹介します。使い方をきちんと把握しておくことは、日々のコミュニケーションの助けになります。使い方の注意点なども踏まえてしっかりおさえておきましょう。
「貸与」の使い方
「貸与」という言葉は「金品や物品を貸し与えること」という意味がありました。この言葉はビジネスシーンにおいてもよくを用いられます。基本的な使われ方としては「貸与する」や「貸与される」といったように、能動態や受動態の形で用いられます。また、「貸与品」という表現もあり、詳しくは例文にて紹介します。
「貸与」を使用するときの注意点
「貸与」と紛らわしい表現として「貸出」という言葉あります。 基本的な意味合いは「貸与」と同じになりますが、契約の厳密さにおいて若干の差異が出てきます。「貸与」の場合は返還が遅延してしまってもそれなりに理由があれば許されますが、「貸出」の場合は期限内の返還が絶対になっています。言葉の違いによって、契約の厳しさに若干の差異が出てくるため、言葉の意味をしっかり理解した上で行動を選択するようにしましょう。
「貸与」の例文
「貸与」という言葉を用いた例文を紹介します。
・貸与品の扱いには注意してください。
・入社初日に制服などの必要なものはすべて貸与された。
まとめ
「貸与」という言葉には「金銭や物品を貸し与えること」という意味がありました。近い意味の言葉には「付与」や「譲渡」また「貸出」などがあります。これらの言葉の意味を正確に理解した上で、正しく使い分けられるようになりましょう。