ビジネスシーンでも使用する機会が多く、複数の意味を持つ「心遣い」という言葉を正しく理解していますか?本記事では類義語から英語表現まで幅広く、さらに使用する際の注意点や例文までわかりやすく解説します。
「心遣い」の意味とは?
「心遣い」は「こころづかい」と読みます。「相手の気持ちを思いやる」意味と「お金」という意味を持ち合わせています。それぞれの意味を詳しく解説していきます。
相手の気持ちを思いやる意味
「心遣い」には、「相手のことを思いやって気を配ること、配慮や心配り」という意味があります。「心遣い」=「心を遣わせる」です。自分の心や気持ちなどを相手に向けること、つまり、相手のことを心から思いやって言葉をかけたり、行動したりすることを意味します。「相手の心に寄り添って相手のために行動をすること」が主軸になります。
お金という意味
気配りや配慮の意味とは別に「お金」という意味があります。「お金」という言葉をストレートに使うことをためらう場面や、「お祝いのお金」などを表現したりする際に使います。お金に限らず、お祝いの席での贈答品(物)の意味でも使われるのが一般的です。「お金や物」を「心」に置き換えた奥ゆかしさを感じる意味になります。「お金や物」と受け取る時にも、渡す時にも使える言葉です。
「心遣い」の類義語・言い換え表現と違い
「心遣い」には多くの類義語が存在します。下記6種類の異なる表現について掘り下げて解説していきます。
「気遣い」
「気遣い」は「きづかい」と読みます。「気遣い」には「あれこれと気を遣うことや心配り」「おそれや懸念」という意味があります。「心遣い」と「気遣い」は、どちらも相手を思いやる言葉かけや行動が主軸です。非常に似ているので混同しやすい言葉ですが、「心遣い」は「思いやりや配慮」、「気遣い」は「心配や懸念」の意味合いが強いです。
「お心遣い」は「心を寄り添って思いやりを示すこと」
「お気遣い」は「心配して気をつかうこと」
「心尽くし」
「心尽くし」は、「こころづくし」と読みます。「相手のために、真心を込めてすること」「好意をもってできる限りのことをすること」「考えて込んで気をもむこと」という意味があります。つまり、相手に満足して喜んでもらうために、最大限に心を込めて行う行為のことです。例えば「心尽くしのおもてなし」は、相手に喜んで充実した時間を過ごしてほしいと思い、できる限り心のこもったサービスを提供することです。
「心配り」
「心配り」は「こころくばり」と読みます。相手に対して「何かと気を遣うこと」「温かい心遣い」という意味。つまり、「相手のことを思いやって考えてあれやこれやと気を配ることや配慮」を意味します。相手があまり気にしていないようなことや「こうだったら嬉しいな」と思う小さなことまで慮って、他愛のないことまで温かい心遣いをするというニュアンスがあります。
「ご厚情」
「ご厚情」は「ごこうじょう」と読みます。「厚情」とは、「深く思いやりのある心」「厚い情け」という意味があります。「ご厚情」とは「厚情」の尊敬語なので、目上の人に使える言葉です。同等や目下の人には使わない言葉なので注意しましょう。主に感謝を述べるときに使用する言葉ですが、フォーマルな場面のスピーチや手紙などで使います。例えば「ご厚情に感謝いたします」という表現では、相手の親切な気持ちや行動に深く感謝する気持ちを示します。
「ご配慮」
「ご配慮」は「ごはいりょ」と読みます。「配」=くばる、「慮」=おもんばかるの意味を持ち、「配慮」は相手を熟慮して心を配る。つまり、「気遣いのこもった心配り」「思いやりを持った気遣い」という意味があります。「ご配慮」とは「配慮」の敬語表現です。「ご厚情」と同じように目上の人に使う言葉で、相手の心遣いなどに感謝と敬意を伝える時に使います。また、「ご配慮願います」などと目上の人に気をつけてもらいたいことを伝える時にも使います。そのほか、自分が気を配る、注意することを目上の相手に伝える時に「気をつけます、注意します」を「配慮します」と言い換えて使われることも多いです。
「ご深慮」
「ご深慮」とは「ごしんりょ」と読みます。「深慮」とは、「深く考えをめぐらせること」「深い考え」「深い思慮」を意味します。「ご深慮」とは「深慮」の敬語表現です。「ご厚情」「ご配慮」と同様に目上の人に使う言葉で、相手の考えや思慮に敬意を表現する際に使います。前記の「ご配慮」も敬意を伝える言葉ですが、「ご配慮」は「心遣い」に重点を置き、「ご深慮」は「考え」に重点をおいている点が異なります。
「心遣い」の敬語表現
敬語を表現する接頭語には「お」「ご」があります。「お」は和語で訓読みの言葉に付けられ、「ご」は漢語で音読みの言葉に付けられます。
「心遣い」は和語であり訓読みの言葉です。接頭語の「お」をつけて「お心遣い」とすれば尊敬語になり、相手への敬意を表現する言葉になります。
目上の人や上司に使う場合や、ビジネスシーンで使う際の注意点を紹介します。
目上の人や上司に使う
「お心遣い」は尊敬語なので、自分より目上の相手に使います。目上の相手がしてくれた配慮や心配りなどに対して感謝の気持ちを伝えるとき、「お心遣いありがとうございます」などと使われることが多いです。好感が持てる言葉なので、使い方を身に付けておくとよいでしょう。
「お心遣い」はビジネスシーン上で社内、社外問わず、改まった場所での「あいさつ」や「文章」「お礼状」「ビジネスメール」でもよく用いられます。ビジネスコミュニケーションで使いやすい優秀な言葉ですが、注意すべき点があります。次ではその注意点に触れていきましょう。
正式なビジネス文書では使わない
ビジネス文書には、「社内文書」「社外文書」があります。発信した文書は全て会社の信頼に関わる正式なものとして認識されます。それぞれどんな文書があるのか例を列挙してみましょう。
「社内文書」
・稟議書
・報告書
・届出書 など
「社外文書」
1.取引文書
・契約書
・見積書
・発注書
・請求書 など
2.社交・礼儀文書
・礼状
・挨拶状 など
例にあげた文書のうち「取引文書」で求められることは、正確で簡潔であることです。その場合、感情を表現する「お心遣い」という表現を使用するのはふさわしくありません。ただし、「社交・礼文書」では気持ちを表現する場合もあるので、発信する文書によって使い分けましょう。
「心遣い」の英語表現
相手の思いやりに感謝する「心遣い」を英語ではどのように表現したら伝わるでしょうか。例文をあげて紹介します。
・Considerate「思いやりがあって」「思いやりのある」
Thank you for your considerate. (お心遣いありがとうございます。)
日本語の相手の感情や気持ちを汲み取っているというニュアンスです。
・Concern「気遣い」「心配する」「配慮」
Thank you for your concern.(お心遣いありがとうございます。)
あなたの配慮や心配してくれる気持ちやに対して感謝しているというニュアンスです。
・Thoughtfulness「思慮深さ」「思いやり」
Thank you for your thoughtfulness.(お心遣いありがとうございます。)
あなたの満ち溢れた「思いやり」に感謝しているというニュアンスです。
ビジネスシーンでは「Thank you」よりも「appreciate(~に感謝する)」を使うことが多いので、上記例題の「Thank you」を「appreciate」に置き換えてみましょう。
「心遣い」を文章で使うときの注意点と例文
「心遣い」を文章で使うときの注意点と、実際の例文を紹介します。
「心遣い」を使うときの注意点
「心遣い」はもともと口語や挨拶状で使われる言葉で、自分より目上の方からの配慮や特別な支援をいただいたときに感謝を伝える場面で使用します。その際は「心遣い」より丁寧に接頭語の「お」をつけて「お心遣い」として使うのがよいでしょう。
「心遣い」を使った例文
シチュエーションに沿って「心遣い」を使った例文を紹介します。
- (ご祝儀をいただいたお礼を伝えるとき)このたびはお心遣いいただきありがとうございました。
- (いつもサポート、フォローしてくれる上司に感謝を述べるとき)いつもお心遣いありがとうございます。
- (取引先の方から配慮をしてくれたお礼を伝えるとき)〇〇様のお心遣いに大変恐縮しております。
- (配慮・気遣いに対して丁寧なお礼を伝えたいとき)温かいお心遣い誠にありがとうございます。
感謝気持ちを丁寧に伝える場面で使ってみましょう。
まとめ
「心遣い」には2つの意味があり、それらは全く違った内容です。しかし、どちらも「配慮」や「思いやり」を意味しています。配慮や思いやりを受け取った時に「お心遣いいただきありがとうございます」とスムーズに表現できると、相手からスマートで丁寧な印象をいだいてもらえるでしょう。ぜひ覚えておきたい言葉のひとつですね。