普段の買い物やビジネスでのやり取りの中でも必ず発生する消費税。ですが、その消費税の表記がシーンによってバラバラなことに疑問に思ったことはありませんか。今回はそんな疑問にお答えいたします、是非参考にしてみてください。
消費税にはさまざまな表記がある
消費にかかる税金とは、一般的に消費税やたばこ税、酒税などのような出ていくお金にかかる税金のことを指します。
しかし、この消費税。店舗によって表記が異なります。何故、表示に違いがあるのでしょうか。
「税別」と「税抜」の違いとは
店舗によって「税別」であったり「税抜」であったりと、バラバラな表示がされているこの言葉。結論からいうと、「税別」も「税抜」も同じ意味です。 どちらも表示された価格に税金が含まれておらず、別に追加されることを意味している言葉になります。 簡潔に表すと、以下のような意味です。
- 「税込」→価格に消費税が含まれている金額
- 「税抜」=「税別」→価格に消費税が含まれていない金額
「内税」「外税」は「税込」「税抜」と違う?
消費税の中には、「内税」「外税」といった表示がされているものもあります。こちらも基本的に「税込」「税抜」と意味は一緒です。また、「内税」は「総額表示」とも言います。 以上を踏まえてこのように表せます。
- 「税込」=「内税」=「総額表示」
- 「税抜」=「税別」=「外税」
「税込」表示か「税抜」表示か、どちらを使うかは会社によってルールが異なります。
「税込」「税抜」を英語で表すと
近年、日本では年々訪日外国人が増加の傾向にあります。それに伴い、多くの小売店では外国人にもわかるように消費税を表示する必要が出てきています。 では、外国人に消費税のことを伝えるにはどのような言葉がいいのでしょうか。
「税込」の英語表記
英語で税金は「tax」です。「税込」を英語で伝える場合、以下のような表示となります。 これらの言葉であれば、「税込」であることを外国人にも伝えられます。
- including tax
- with tax
- tax included price
「税抜」の英語表記
一方、「税抜」を英語で伝える場合は、以下のような表示となります。
- excluding tax
- without tax
- Tax not included
- Exclusive of tax
- tax excluded price
これらの言葉を使い分けて、「税込」「税抜」を伝えるようにしましょう。 又、海外に行った時もこれらの表示を見て金額をチェックするようができます。
「税込」「税抜」の計算方法
商品を購入する際、価格が「税抜」のみ表示されており「税込」の価格がわからないときや、税込価格から本体価格だけを知りたいときがありますよね。そんなときには以下の計算式を用いましょう。
「税込」の計算方法
税込価格を知りたいときは以下の計算式で求められます。
- 消費税率8%の場合:税込価格=税抜価格× 1.08
- 消費税率10%の場合:税込価格=税抜価格× 1.1
「税抜」の計算方法
税込価格から本体価格を知りたいときは、以下の計算式で求められます。
- 消費税率8%の場合:本体価格=税込み価格÷ 1.08
- 消費税率10%の場合:本体価格=税込み価格÷ 1.1
「税込」「税抜」の表記のルール
消費税の表示の仕方は、現在「税込」でも「税抜」でもどちらでも問題ありません。とはいえ、表示の仕方については、消費者が混乱しないようにわかりやすく表示することが法律で定められています。では、具体的に何が良くて何が悪いのでしょうか。
表記のOKな例
商品やサービスを宣伝する上で一番大切なことは、消費者に正確な金額を伝えられているかということです。以下がその例です。
- 消費者がわかるように掲示物(ポップなど)で税抜価格であることを強調しつつ、税込1100円の商品を1000円と表示すること。
- セールやバーゲンの際に、掲示物やポスターなどで5000円(税抜)であることを表示すること。
- 100円均一ショップなどで、商品が110円(税込)であることを表示すること。
一方で、必ず総額表示(税込価格を記載)しなければならないものもあります。財務省では、総額表示の義務対象として次のものを例示しています。
- 値札、商品陳列棚、店内表示商品、カタログ等への価格表示
- 商品のパッケージなどに印字または貼付した価格表示
- 新聞折り込み広告、ダイレクトメール等による配布するチラシ
- 新聞雑誌、テレビ、インターネット、ホームページ、電子メールなどの媒体を利用した広告
- ポスターなど
表記のNGな例
一方で、表記がNGな例として、消費者に正しい情報が伝わらないような表記は法律に違反する恐れがあります。
- 税込価格の文字が小さすぎて読めない
- メニュー表では500円と表示し、会計時のレジ横では500円(税抜)と表示していること
- 掲示物(ポップなど)に豚肉100グラム当たり82円(税込)を表示し、商品ラベルには300グラム270円と印字すること
このような誤解を招く表現は、禁止されています。
消費税の歴史
現在では世間で一般的なものとして認識されている消費税ですが、意外にも作られてからそこまで年月の経っていない制度です。では、今に至るまでにどのような経緯があったのか簡単に説明していきましょう。
導入時期
消費税が初めて導入されたのは、1989年(平成元年)4月1日。消費税は3%でした。現在から見るとたった3%と思えますが、当時としては新たに税金がかかるということもあって、社会的な大きな議論が展開されました。その後、1997年(平成9年)4月1日に5%、2014年(平成26年)4月1日に8%、2019年(令和元年)10月1日に標準税率10%、軽減税率8%と段階的に引き上げられています。
何故消費税を導入しなければならなかったのか
消費税を導入した理由としては、主に3つの理由があります。
- 税制全体の見直し
- 個別間接税の欠陥性
- 高齢化社会への対策
それでは一つずつ解説していきましょう。
税制全体の見直し
戦後の税収の大半は、主に所得税が中心となっていました。しかし、経済や社会構造のあり方が時代とともに変化し、一人当たりの給与水準も上がってくるにつれ、税制の見直しをしなければならない時期にきていました。
税制全体のバランスを取るという主旨のもと新たに導入を検討されたのが、消費税です。
個別間接税の欠陥性
個別間接税の欠陥性とは、物品税の基準の曖昧さのことです。実は、消費税が導入される前から、それの前身とも呼べる物品税というものがありました。かんたんにいうと、贅沢品や嗜好品とみなされているものを買った場合に発生する税金のことです。
この物品税ですが、戦後劇的な経済復興を遂げ一人ひとりの生活水準が上がったことにより、多くの人が贅沢品や嗜好品と定められているものを購入できるようになりました。物品税という税制そのものが時代にマッチしなくなり、それに伴い物品税の基準も曖昧になってきていたことも問題だったのです。毛皮製品には物品税が発生するのに、毛織物には物品税が発生せず、ゴルフ用品には物品税が発生する一方、スキーやテニス用品には物品税が発生しませんでした。
このように、贅沢品や嗜好品という概念や価値観が変化してきてしまったこと、そして物品税の基準が曖昧になってきたことが、消費税の導入のきっかけの一つとなったのです。
高齢化社会への対策
平成以前より、今後来たるべき高齢化社会への対策をどうしたらいいかという議論はずっとなされてきました。将来的に福祉や医療における財源不足が起こることは指摘されており、そしてそれは所得税だけでは補えないことも研究で明らかとなっていました。早いうちに手を打たないと20歳から64歳の税負担が重くなってしまうという懸念から、その対策として消費税の導入に踏み切ったのです。以上の理由から、消費税は1989年に導入されることとなりました。
今後の「税込」「税抜」表示について
今でこそ消費税の表記の仕方は統一されてはいませんが、実は2004年(平成16年)に、内税の義務化と呼ばれる総額表示(税込価格)を義務化しているのです。それなのに何故、現在では「税込」でも「税抜」でもどちらでも問題ないのでしょうか。それは、2014年に消費税率を8%に引き上げた際に内税の義務化を緩和していることに端を発しています。
消費税率を引き上げたことで、消費者の買い控えが起こり景気が冷え込むのではないかと懸念した政府により、「税抜」表示をしてもよいとすることで商品の値上がり感を和らげようという意図があったのです。つまりこのことから、「税込」「税抜」どちらでも構わないのは、消費者都合というよりは、事業者都合に鑑みての施策であるといえます。
今後法改正で表記が統一される
内税の義務化の緩和がされているこの現状も、2021年4月からは法改正により全て税込のみの表記に再び統一されます。理由としては、消費税率が上がったことによる抵抗感や買い控えがなくなるであろうという消費者心理を見越してのものです。
とはいえ、チラシやポスターなどで価格がわかりやすくなるので、消費者としては便利になるのではないでしょうか。
まとめ
消費税の歴史を紐解くと、実にその時代の世相を反映していることがわかってきます。現在私たちが生活しているこの社会の成り立ちを知る上で、税金のことについて深く知ることは大切なことなのかもしれません。