「自責の念」という言葉を耳にしたことがありますか?実は現代病といわれる「うつ病」にも関係します。ここでは「自責の念」の意味や使い方に加え、「うつ病」にならないための心の守り方また「ビジネスにおける自責思考の活かし方」について徹底解説します。
「自責の念」の意味とは
「自責の念」の意味について解説します。 自責の念を抱いている心理状態とはどういったものなのかさっそく見ていきましょう。「自責の念」とは、「自分で自分の過ちを咎めること」または「後悔し自分を責める気持ち」を表します。自責の念に苛まれている時の心理状況は、ある出来事に対してその原因が自分にあると判断して、主観的に見て自分の存在価値が下がっている状態です。 この傾向が強すぎると、己の精神衛生を過剰に乱す原因となります。現代病のうつ病との関係が深いため、「自責の念」との付き合い方は注意が必要になります。
「自責の念」を抱きやすい人の考え方の癖
「自責の念」を抱きやすい人の特徴を紹介します。もし自分の中にも似たような傾向があると感じたら注意が必要です。まず自覚することが大切なので、ひとつずつその特徴をチェックしていきましょう。
罪悪感が強い
自責の念を抱きやすい人の特徴として「罪悪感が強すぎる」傾向があります。このような人はある過失に対して、「その原因が全て自分にある」と考えてしまう思考の癖を持っています。客観的に考えてみると、全ての原因が特定の個人に集中するという状況は少ないです。全ての物事はいろいろな要因が複合的に絡み合って1つ結果を生んでいます。 つまり何か悪いことが起きたとしても、それが「全て自分のせいだ」と思うのは極端な思考だといえます。
自己否定を前提にして考えを巡らせている
「自己否定が全ての思考の前提となっている場合」も「自責の念」を抱きやすい人の特徴のひとつです。「自分はだめなやつだ。」「どうせ私なんて」といった自己評価が根底にあると、周囲から言われたことも全てネガティブに捉えてしまいます。例えば、上司からのアドバイスを怒られているように感じたり、恋人から褒められてもお世辞を言っていると捉えたりしてしまいます。他の人がどういうつもりで言葉をかけているかに関係なく、全てにおいて自分をおとしめる方向に理解してしまうのです。
無意識に自分を守っている
自責の念を抱き、自己否定をすることで「無意識に自分は守っている」可能性もあります。自分で自分を傷つけることで、他者からの攻撃を阻もうとする心理が働いているのです。実際のところそれによって必要以上に自分が傷ついてしまうので、他の人から攻撃される前に自分自身で気持ちを滅入らせてしまうことも少なくありません。
「自責の念」から自分を守るための行動3選
自責の念を抱えてしまう傾向がある人にとって、一番の敵となるのは自分自身です。 自分で自分を追い詰めないようにするために、私たちができることを3つ紹介します。できることから取り組んでみるとよいでしょう。
課題を分離する
自責の念に苛まれている人にとって、課題を分離することが何よりも大切です。 アドラー心理学で有名となった「課題の分離」という考え方ですが、自責の念が強い人や罪悪感が強い人にとても有効な考え方です。「課題の分離」とは、自分の課題と他者の課題を明確にすることです。自責の念が強すぎる人の特徴として、自分の力でどうにもならないところにまで罪悪感をもつ傾向があります。
自分が影響を与えられる範囲外のところは仕方がないと割り切り、自分の力でどうにかできる所に意識を集中させましょう。また、自分を責めるのではなく「同じような事が起きたら、次はこうやって対応しよう」というように、改善策を練り直すことに意識を向けるとポジティブな考え方ができます。
良かったことに焦点を当てる
「自責の念」が強い人の特徴として、ネガティブな事にだけにフォーカスを当てる傾向があります。人間普通に生きていれば、嬉しいことも嫌なことも身に降りかかってくるものです。そういった中で嫌な事にだけ意識を集中させていれば、精神的な苦痛を感じるのは火を見るより明らかです。このような傾向があると自覚した方は、 嬉しかったことについても振り返ってみましょう。ネガティブなことばかりにフォーカスしていると、幸せな日常が身近にあることを見落としてしまうものです。
「今、ここ」を意識する
自責の念に苛まれているときは、過去に焦点があたっています。過去にあった出来事に対する心の反応が、そのまま今の心の在り方に影響を与えてしまっているのです。そういった心の反応を断ち切るために、「今、ここ」に意識を集中させることが大切なのです。「今この瞬間に何か心地よさを感じることは?」また、「どうすれば心地のよい環境になる?」と自問自答して みましょう。このように自分の気持ちを切り替えて解放してあげる訓練が必要になります。
ビジネスにおける「自責的思考」の活かし方
「自責の念」も使い方によっては自分を高める手段になります。ここでは「自責的思考」を活かし、ビジネスにおいて自分のスキルを高める考え方について紹介します。行きすぎはよくありませんが、自分を批判的な目で顧みることは自己成長に大いに役に立ちます。
自己成長を促す分析を行う
仕事をする上で思い通りに進まなかったり失敗したりすることも必ず出てきます。その際に、うまくいかなかった原因を分析していくと「自分には非はない。」という結論に至ることも少なくありません。確かにそういった結論を下すことは現実的によくあることです。しかし、それで分析をやめてしまうと、次に同じことが起きても、また同様に自分に非がないと思いながらも失敗に巻き込まれてしまいます。
つまりここで大切なのは、もう一つ深いフェイズに遡って、「自分がどういう行動を取るべきだったのか」を省みる必要があります。自己否定的な思考に走ってはいけませんが、原因自分論で考えることはビジネスにおいて非常に大切なスキルです。
現状より高いポジションで自分の行動を分析する
現状より高いポジションで自分の仕事ぶりを評価するのも大切な考え方です。「仕事を割り振っている上司は、どういったことを求めてこの仕事を自分に任せたのか。」また「さらに上の上司は、どういったビジョンのもとにこの仕事を進めているのか。」このようなことを分析しながら仕事を進めていくと、今取り組んでいるプロジェクトの本質が見えてきます。
そうすることで作業者マインドから脱却し、全体最適を前提に仕事に取り組めるようになります。以上のことを身につけると、力を入れるべきところとそうでないところにメリハリをつけられるようになるため、仕事のパフォーマンスもうんと上がるでしょう。
過度に自責しすぎない
「自責的思考」が大切とはいえ、自己否定に繋がるような考え方はかえって自分のパフォーマンスを下げることになるので注意が必要です。「自分を責める」と書いて「自責」と読みますが、ビジネス上大切な「自責的思考」は「全て自分が悪い」と背負いこむことではありません。
試行錯誤の中で次に同じような状況が起きたとき、「今回よりも高いパフォーマンスを出すためにはどうしたらよいか」 といったことに意識を向け続けることこそが、ビジネス上大切な自責的思考です。あくまでも自己肯定感は高く保ち続けるようにしましょう。
自責の念に苛まれると、うつ病の可能性も
自責の念が強すぎるとうつ病に罹患するリスクが高くなります。自分を向上させるための「自責的思考」は非常に大切ですが、心の病にかかってしまっては元も子もありません。現代社会においてうつ病患者数が多いことを顧みても、日本の労働環境があまり良くない可能性があります。自分の仕事ぶりを顧みることは非常に大切ですが、今所属している職場が自分を成長させるために適しているのかといった観察力も、現代人に必要なスキルといえるでしょう。
「自責の念」の使い方・例文集
「自責の念」の使い方や例文を紹介します。ある程度定型表現が決まっているため、使い方がわかりやすい言葉になります。
「自責の念」の使い方
「自責の念」という言葉の使い方はある程度限られています。「自責の念に苛まれる」「自責の念を抱く」「自責の念に駆られる」といったように、特定の動詞とセットで用いられます。言葉の意味からもわかるようにネガティブな意味の言葉で、自分の心境を表現するときに使います。
「自責の念」の例文
「自責の念」という言葉を用いた例文をいくつか紹介します。
- なぜあの時助けてやれなかったのかと、自責の念に苛まれる。
- 自責の念を抱き続けるだけでは、問題は解決しないことに気がついた。
- あの時のことを思い出し、自責の念に駆られる日々が続いた。
「自責の念」の類義語・言い換え表現
「自責の念」とは、「自らの行いを後悔したり、それに劣等感をおぼえたりすること」を指します。そういった意味の類語としてあげられるのは、「良心の呵責」や「やましい気持ち」です。「良心の呵責」は罪悪感が入り交じった複雑な感情の動きを表します。また、「やましい気持ち」は「良心がとがめている状態」や「後ろめたい気持ち」を表します。実際に罪があるかどうかにかかわらず、自分の価値観と自分の行動にギャップがあったとき抱えてしまう負の感情であるといえます。
「自責の念」の英語表現
「自責の念」の英語表現として「penitence」や「repentance」が挙げられます。また、「自責の念に苛まれる」という表現では罪という意味の「guilt」を用いて、「I was racked by feelings of guilt.」というように表現します。「rack」には「悩ます」や「苦しめる」といった意味もあるので押さえておきましょう。
まとめ
「自責の念」とは、「後悔し、自分を責める気持ち」を表しています。この考え方も上手に書けばビジネス上役に立ちますが、行きすぎてしまうとうつ病などの精神病を患う可能性があります。自己肯定感は高く保ち、「自責的思考」を上手に使いこなしていきましょう。