転職したときや失業手当の手続きで「雇用保険番号」を聞かれて、何のことだかわからず困った経験がある人もいるようです。今回は、「雇用保険番号」の意味、いつ必要になるのか、番号がわからないときの対処法などについてわかりやすく解説します。
「雇用保険番号」の意味とは?
仕事上で何か必要が生じたときでないと、「雇用保険番号」は個人が把握していることは少ないでしょう。それどころか、雇用保険に加入しているのか、雇用保険についてもよく知らないという人もいるかもしれません。雇用保険は使わずに済めばそれに越したことはありませんが、いざというときは頼りになる保険です。ここでは、雇用保険番号の意味と、何のために必要な番号なのかを説明します。
雇用保険に加入するときに付与される番号
雇用保険番号は、雇用保険に加入すると自動的に個人に付与される番号です。番号の内訳は、4桁、6桁、1桁がそれぞれハイフンでつながれた11桁の数字です。雇用保険は自分で加入手続きをした記憶がなくても、会社で自動的に加入していることがほとんどです。給与明細に雇用保険との記載があれば、雇用保険の加入者であり、給与から雇用保険料が天引きされて会社が保険料を支払っているのです。
「雇用保険番号」が変わることはない
雇用保険は個人が加入手続きをするのではなく、会社が手続きをしています。初めて雇用保険に加入したときに付与された雇用保険番号は、以降、会社を転職しても、その都度雇用保険番号が変わることはありません。また、雇用保険番号は1人につき1つの番号が割り当てられています。たとえば、副業や兼業で2つ以上の会社に所属している場合でも、メインの会社1社に絞って雇用保険に加入することになります。すでに雇用保険加入者でありながら、同時にほかの会社で雇用保険の加入はできません。
必要になるのは失業したときや転職したとき
会社に勤めている限り、休業やケガなどがなく普段通り働いていれば、通常は自分の雇用保険番号を意識することはないでしょう。普通に勤めていれば、雇用保険番号が必要になることがそもそもありません。雇用保険番号が必要になるのは、会社を辞めるか会社が倒産して失業したとき、または、新しい会社が見つかって転職するときです。失業したときはハローワークで失業保険の給付手続きの際に、転職したときは新しい会社で雇用保険番号の届出の際に必要になります。
雇用保険は労働者を守るための強制保険制度
そもそも雇用保険が何かがわからない人もいるでしょう。雇用保険は、国で決められた強制保険制度で、労働者を雇用している事業者すべてに強制的に適用されます。労働者が安心して働くために、雇用に関しての支援や給付など総合的な機能を有しています。たとえば、育児や介護、失業などで働けないときの手当や給付金の支給、再就職するための資格取得にかかる教育訓練給付金の支給など、労働者の生活や再就職を手厚くサポートしてくれるのが雇用保険です。
「雇用保険番号」は誰でも持っているの?
雇用保険番号は雇用保険に加入する人なら誰でも持っています。ただし、雇用保険に加入するにはある一定の条件があります。その条件に該当しない人は、会社に雇用される労働者であっても労働保険に加入できません。当然、雇用保険制度のサポートも受けられないのです。次に、雇用保険に加入するための条件について解説します。
一定の条件が当てはまる人は加入義務がある
雇用保険の加入条件が当てはまれば、正社員だけでなく、パートタイマーやアルバイトなどの雇用形態にかかわらず、雇用保険の被保険者になれます。雇用主は、正社員や契約社員、アルバイトなどの雇用契約の種類を区別することなく、雇用保険の加入資格がある従業員に対して雇用保険の加入手続きを行う必要があるのです。
31日以上継続雇用の見込みがあること
雇用保険の加入条件は2つあります。1つ目は、31日以上継続して勤務することが見込まれることです。つまり、単発や1カ月未満の短期の雇用では雇用保険に加入できません。入社時に労働期間の定めがない場合も雇用保険に加入できます。また、当初は31日よりも短期の契約であっても、途中から31日以上の契約延長が見込まれるような場合は、その時点から雇用保険の加入条件を満たすことになります。
週の労働時間が20時間以上あること
雇用保険の加入条件の2つ目は、1週間あたりの労働時間の合計が20時間以上あることです。勤務日数や時間帯は関係ありません。つまり、1週間のうち3日勤務でも6日勤務でも、勤務時間が短い日や長い日が混在していても構いません。要は、平均して1週間あたり20時間以上勤務していれば、雇用保険の加入条件を満たすことになります。
「雇用保険番号」の有効期限
上記で説明した2つの条件を満たした人だけが雇用保険の加入者になれます。雇用保険に加入した人は雇用保険の被保険者となります。そこで初めて雇用保険番号が割り当てられるのです。
雇用保険番号は生涯通して変わることはありません。そのため、雇用保険番号には有効期限はなく、一生同じ番号を使うものと思う人も多いでしょう。しかし、雇用保険に加入しない期間が7年以上になると、雇用保険番号は抹消され無効になってしまいます。そのときは、新しい雇用先の会社が雇用保険被保険者資格取得届を提出し、新しい雇用保険番号が割り振られることになります。
雇用保険に加入するメリットは?
雇用保険は労働者を守るための手厚い制度です。保険料率も、個人負担は0.003や0.004と健康保険や厚生年金保険と比べるとかなり低く抑えられています。いざというときの補償も充実しているので、加入するメリットは大きいといえるでしょう。以下に、主なメリットを紹介します。
さまざまな給付が受けられる
雇用保険の最大のメリットは、失業、会社の倒産、病気、育児や介護で働けないときに手当や給付金が受け取れることです。働けず収入がなくなったきでも、とりあえずの生活費が捻出できます。今まで受け取っていた給与の満額というわけにはいきませんが、状況に応じて給与の5~8割程度が補償されるのは安心感があります。正社員だけでなく、パートタイマーやアルバイトでも、条件さえ満たせば失業手当を受け取れるのは大きなメリットといえます。
再就職支援が受けられる
失業中の再就職への支援もさまざまな形で提供されています。さまざまな技能を身に着けて就職するための公共の職業訓練を格安で受講できます。さらに、受講手当や交通費、寄宿手当なども支給されます。また、失業保険が受け取れる期間内に再就職が決まれば、失業手当の受給期間の残りの日数に応じた再就職手当が受け取れます。
高齢者の賃金低下時の給付が受けられる
60歳定年制を採用する企業は多く、60歳を超えても定年を延長して働けますが、賃金は今までと異なり減額されることがほとんどです。定年再雇用後の賃金は、格差が大きいところでは定年間際の賃金の50%程度という例もあるようです。この場合、それまでの生活の維持が難しくなります。そのため、高年齢雇用継続給付として、雇用保険から賃金の低下分を補うための給付が65歳まで受けられます。
「雇用保険番号」がわからないときは?
雇用保険は自分で加入手続きをしたわけではないので、雇用保険番号がわからないのも無理はありません。もし雇用保険番号が必要になったときは、どうしたらよいのか説明します。
雇用保険被保険者証に記載されている
雇用保険番号は、雇用保険被保険者証に記載されています。あちこちよく探してみても、雇用保険被保険者証が見つからなかった人もいるでしょう。このような場合は、会社が預かって保管している場合がほとんどです。
ただし、離職した場合は、退職するときに会社から雇用保険被保険者証を返却されているはずです。雇用保険被保険者証は、年金手帳などとは異なり、名刺大よりもやや大きい2つ折りの紙製のものです。もしくは、中心で折らずに細長いままの状態で管理していることもあるかもしれません。その紙に「被保険者番号」として11桁の番号が記載されています。
退職時の離職票にも記載される
雇用保険被保険者証でなく、退職時に受け取った離職票にも雇用保険番号が書かれています。これは会社が発行するもので、間違いなく会社を退職したことを証明すると同時に、失業保険を受け取るための手続きに必要な書類です。離職票には、雇用保険番号のほかに、事業所番号として11桁の番号が記載されていますので、自分の雇用保険番号と間違えないように気をつけてください。
雇用保険被保険者証を紛失したときは再発行が可能
雇用保険被保険者証を会社で預からず、個人で管理する場合もあるでしょう。小さな紙製のため、あまり重要な書類と思わずに紛失してしまうケースもあるようです。その際は、退職するときや雇用保険番号を確認する際には必要になるため、紛失したまま放置しておいてはいけません。速やかに会社に再発行手続きをお願いしましょう。気まずければ、ハローワークでも再発行を受け付けています。手続きには身分証明書を持参してください。
「雇用保険番号」が複数あることがわかった場合は?
転職先で新たに雇用保険番号を取得するなどして、手違いで雇用保険番号が二重に発行されてしまうケースがあります。1人につき1つの番号であるはずが、2つの番号がある状態です。このように番号がダブってしまうと、過去の雇用期間の整合性が取れず、何らかの給付の際に不利になってしまうことがあります。そのため、2つの番号を統合するための手続きをして、正しいデータに書き換えてもらう必要があるのです。ハローワークの窓口で相談してデータの照会を行い、統合するための届出をしましょう。
「雇用保険番号」と間違えやすい番号には何がある?
雇用保険番号はそもそもなじみがないため、ほかの番号と勘違いをする人もいるようです。たとえば、マイナンバーと呼ばれる個人番号です。これは、12桁の数字で国民1人ずつに割り当てられたもので、雇用保険番号とは異なります。また、基礎年金番号や健康保険被保険者番号などと違います。特に間違えやすいのが、離職票に書かれた事業所番号でしょう。雇用保険番号と同じ形式の4桁、6桁、1桁のハイフンでつながれていますから、一見してどちらも同じように見えてしまいます。しかし、事業所番号は個人ではなく会社に割り当てられた番号ですので、間違えないように注意しましょう。
まとめ
雇用保険番号は労働者にとって、非常に重要なものです。少額の保険料でこれから長期間にわたって生活の安心が得られるのですから、雇用保険はよくできた制度といえます。雇用保険被保険者証や離職票を紛失したときは、いざというときに慌てないために、早めに再発行の手続きを行いましょう。