「宵の明星」とはその名の通り、「宵」の時刻に見られる「明るい星」のことで「金星」」を指します。文学作品やテレビの天気予報などで耳にすることがあると思います。そこで、今回は「宵の明星」の意味と、似た意味である「明けの明星」との違い、語源・由来、読み方、英語表現について紹介します。
「宵の明星」とは?
「宵の明星」とはその名の通り、「宵」の時刻に見られる「明るい星」のことです。つまり、「日没後に見られる金星」を表しています。
「宵の明星」の読み方は「よいのみょうじょう」
「宵の明星」は「よいのみょうじょう」と読みます。「宵(よい)」とは「日が暮れて間もない頃」や「夜がまだそれほど更けていない頃」を表す言葉です。「宵のうち」や「宵闇(よいやみ)」などの言葉で使われています。季節によって異なりますが、18時~21時頃の日没後の時刻を指しており、その時間帯に輝く星を「宵の明星」といいます。
「宵の明星」の意味は「日没後に見られる金星」
日没後の「宵」の時間帯に輝く星と言えば「金星」のことを指します。日が暮れて間もない頃に空を見上げると、ひときわ輝く星が見られることがあります。これが「宵の明星」と呼ばれる「日没後に見られる金星」です。
「宵の明星」は「一番星」とも呼ばれる
「宵の明星」は「一番星」と呼ばれることもあります。童謡で耳にする「一番星」という表現ですが、「一番強く輝く星」や「日が暮れてから一番に見える星」などさまざまな定義があるため、特定の星を表す言葉ではありません。
しかし、金星は地球に最も近づく星であり、太陽や月に続いてはっきりと見ることが可能です。また、日没後にすぐ見えるため、どの星よりも早く見ることが可能です。そのため、「宵の明星」は「一番星」と呼ばれることが多いのです。
「宵の明星」の語源・由来
「宵の明星」と呼ばれる金星ですが、古代中国では「長庚(ちょうこう)」や「太白(たいはく)」と呼ばれていました。ここから五行説を経て「金星」という名に変わります。
五行説とは、万物は「木・火・土・金・水」の五種類の元素からできているという考え方です。「宵の明星」を表していた「太白」は、この五行説の「金」に当たる星とされたため信仰の対象となりました。
「金星」は真夜中には見られない
「金星」は非常に明るく、数ある星の中でも見えやすい星の1つです。しかし、「金星」を真夜中に見ることはできません。それは、「金星」が「内惑星」であり太陽の光にかき消されてしまうからです。
内惑星「金星」
「金星」は太陽系の惑星の中で、地球よりも太陽の近くに位置する「内惑星」です。地球から内惑星側を見ると、太陽光にかき消されてしまうので、その姿を確認することは難しいのです。太陽とは逆の方向を向いているとき、つまり地上で夜のときは太陽の光が遮られるため、外惑星である火星や木星が見られます。しかし、「金星」を見ようとすると必ず太陽の方向を見ることになるので、日中の明るさが邪魔をして「金星」を観察するのは難しいのです。
「最大離角」のときに最も見やすい
「金星」を見るためには太陽の位置する方向を確認する必要があります。しかし、太陽の裏に位置する場合や正面に位置する場合には見えません。「金星」が見えるのは、公転軌道上で太陽から大きく東か西にずれた場合のみなのです。つまり、地表に当たる太陽光が少ない明け方や日没後すぐの時間帯になります。
また、内惑星が太陽から最も西にずれた角度を「西方最大離角」、東に最もずれた角度を「東方最大離角」と呼びます。この角度に位置するとき、内惑星は地平線から最も高い位置に上ります。さらに、太陽からも最も離れるため内惑星は「最大離角」のときに最も見やすいといえます。
「宵の明星」と「明けの明星」の違い
太陽、月に続いて明るい金星は「明星」と呼ばれますが、公転軌道が太陽に近いため地球からは深夜に見えません。そこで、日没後に見える金星は「宵の明星」、明け方に見える金星は「明けの明星」と呼ばれます。ここでは「宵の明星」と「明けの明星」の違いについて確認します。
「明けの明星」は「明け方に見られる金星」
「宵の明星」が「日没後に見られる金星」だったのに対して、「明けの明星」は「明け方に見られる金星」です。明け方の白んできた空にひときわ輝く星があれば、それは「明けの明星」と呼ばれる「金星」です。同じ「金星」であるにもかかわらず、見える時間帯によって呼び名が変わるのです。
見える方向の違い
「宵の明星」と「明けの明星」には見える時間帯の他にも違いがあります。一つ目の違いは、「見える方向の違い」です。金星が見えるのは公転軌道上で太陽から大きく東か西にずれたときですが、「明けの明星」はこの西に大きくずれたときに見える金星です。太陽の西側を回り込んでくるため、「明けの明星」は太陽の日の出よりも早く東の空に昇ります。逆に「宵の明星」は大きく東にずれたときに見える金星です。太陽の東側を回り込んでくるため、「宵の明星」は太陽光が弱まった日没後すぐに西側の空に現れます。
見える季節の違い
二つ目の違いは「見える季節の違い」です。「宵の明星」と「明けの明星」は金星の公転軌道上で正反対の位置に見えます。つまり、同じ季節の明け方と日没後には金星を見えません。「宵の明星」が春から秋にかけて見られる場合は、「明けの明星」は冬から夏にかけて見られます。また、金星の公転周期は225日であり、地球の公転周期とは大きく異なります。したがって、年によって「宵の明星」と「明けの明星」が見える季節は変わるのです。
「宵の明星」は為替用語としても使われる
「宵の明星」は為替用語としても使われることがあります。株やFXの経験がある方は、耳にしたことがあるのではないでしょうか。同様に、「明けの明星」も為替用語として用いられ、どちらも相場の変動を示す言葉として使われます。
「宵の明星」は危険サイン
株やFXの世界では、「宵の明星」は暴落間近の危険サインです。陽線から十字を挟んで大きな陰線へと向かう組み合わせを表します。一気に急落してしまう可能性があり、「宵の明星」は下落トレンドを示唆しているのです。チャートに「宵の明星」が現れた際には、急激な下落に注意しましょう。
「明けの明星」は買い時
一方で「明けの明星」は上昇トレンドのサインである可能性があります。陰線が続いた後十字を挟み陽線へと転換する組み合わせが「明けの明星」と呼ばれます。下落から上昇へと向かうシグナルだと考えられており、買い時といえます。
「宵の明星」を英語で表すと
「宵の明星」にはさまざまな英語表現があります。日本語でも「金星」を「宵の明星」や「明けの明星」というように、英語にも複数の言い回しがあるのです。ここでは代表的な「宵の明星」の英語表現を紹介します。
「Hesper」や「the evening star」
英語で「宵の明星」は「Hesper」や「the evening star」と表されます。「Hesper」はギリシャ語やラテン語が由来の言葉です。「宵の明星」や単に「金星」という意味で使われることもあります。「宵」という時間帯を表す言葉をはっきりと表現するためには、「the evening star」という言い方が適しています。「evening」は夜や夕方を表す単語なので、「宵の明星」という意味がはっきり伝わります。しかし、少し堅苦しい表現になってしまうので注意が必要です。
金星を表す「venus」
他にも「金星」を表す「venus」という言葉も使われます。日本語でも「ヴィーナス」と呼ばれるため、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。ローマ神話における愛と美の女神とされ、「ミロのヴィーナス」は非常に有名な彫刻として知られています。この女神が司るのが金星とされているため、金星も「venus」と呼ばれるのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は「宵の明星」の意味や語源・由来、「宵の明星」と「明けの明星」の違い、英語表現について解説しました。
最後に「宵の明星」のまとめです。
- 「宵の明星」とはその名の通り、「宵」の時刻に見られる「明るい星」のことで、金星を指します。
- 「宵の明星」の読み方は「よいのみょうじょう」です。
- 「宵の明星」の語源・由来は、「宵の明星」を表していた「太白」は、この五行説の「金」に当たる星とされたため信仰の対象となりました。
- 「宵の明星」と「明けの明星」は似ていますが、日没後に見える金星を「宵の明星」と呼び、明け方に見える金星を「明けの明星」と呼びます。
- 「宵の明星」は為替用語としても、用いられどちらも相場の変動を示す言葉として使われます。
- 「宵の明星」を英語で表すと、「Hesper」や「the evening star」と表されます。