ビジネスシーンでもよく使われる「その節は」という言葉。「その際は」や「その折は」など似た言葉もありますが、正しく使い分けができていますか?今回は、会話だけでなくメールや手紙、目上に対して使うときなどさまざまなシチュエーションでの正しい使い方を解説していきます。
「その節は」の意味とは?
「その節」は、「あのとき」「この前」という意味です。話し手と聞き手が共に関わった過去の事柄を指しています。「その節はどうも。」「その節はお世話になりました。」「その節はご迷惑をおかけしました」などと使われます。
「その節は」の読み方
「その節は」は、「そのせつは」と読みます。「節」を「ふし」と読んだり、「節」を「説」としないよう気をつけましょう。
「その節は」の類義語と違い
「その節は」の類義語はたくさんあります。時制に気をつけないと間違った使い方をしてしまうので、気をつけましょう。
未来に使う類語「その際は」
「その節は」の類義語に「その際(さい)は」があります。「その節は」が過去の事柄を指すのに対し、「その際は」は、未来の事柄を指している点に注意しましょう。話し手と聞き手が共通認識できる事柄を指している点では、「その節は」と同じです。ビジネスシーンでも、「明日、御社に訪問させていただきます。その際は、よろしくお願いします。」などと使います。
過去に使う類義語
「その節は」と同じく過去の事柄を指して使う言葉はたくさんあります。順番に見ていきましょう。
1.「以前は」
「以前(いぜん)は」は、「それより前は」という意味です。「その節は」と同じく過去を指して使う言葉ですが、「その節は」が、ある特定の過去の出来事を指しているのに対し、「以前は」は過去全般を指しているといった違いがあります。「以前は、ここに大きなショッピングモールが建っていた。」などど使います。
2.「先日は」
「先日は」は「その節は」と言い換えができます。今からそう遠くない過去の出来事を指して使われる言葉で、話し手と聞き手との間ですぐに何の話かわかることが前提で使われます。長くても1カ月前までの過去に対して使うのが一般的です。ビジネスシーンでは、「先日はお忙しい中、当社まで足をお運びいただきありがとうございました。」などと使います。
3.「先頃は」
「先頃(さきごろ)は」は、「先日」と同じ意味で使われます。数日前、数週間前を指して使う言葉です。
4.「先般は」
「先般(せんぱん)は」は、「その節は」と同じ意味で、言い換えができます。かなり硬い言葉なので、話し言葉で使われることはほとんどありません。ビジネスシーンでは、「先般のミーティングにおける決定事項をお知らせします。」などと、書面やメールの中で使われることがあります。「遠くない過去」を指す言葉ですが、「この頃、最近」などの間違った意味で使われているケースがあるので注意が必要です。
5.「この間は」
「この間は」も「その節は」と同じく過去の出来事を指して使われる言葉です。とても砕けた表現なので、日常会話には使いますがビジネスシーンには向きません。特に目上の人には使わないように注意しましょう。ビジネスシーンでは、「この間は」の代わりに、「その節は」や「先日は」を使って丁寧な印象を与えたいですね。
6.「この前は」
「この前は」も「その節は」と同じく、数日前から数週間前を表す言葉です。「この間は」と同じくフランクな言い回しになるので、ビジネスシーンには不向きです。
過去にも未来にも使える類義語
「その節は」が、過去の事柄を指して使う言葉なのに対し、過去にも未来にも使える言葉があります。順番に見ていきましょう。
1.「その時は」
「その時(とき)は」は、話の中ですでに出てきた事柄について指す言葉です。過去の事柄にも未来の事柄にも使えます。砕けた表現なので、ビジネスシーンには向きません。「来月、そちらに遊びに行きます。そのときはよろしくお願いいたします。」などと使います。
2.「その頃は」
「その頃は」も、「その時は」と同じく過去と未来両方の事柄に使えます。「頃」は、ピンポイントではなく、「期間」を指します。「その期間は」と、幅を持たせて使えるのが「その頃は」です。フランクな表現なのでビジネスシーンには向きません。「その頃はまだ誰も間違いに気が付いていなかった。」などと使います。
3.「その折は」
過去と未来、両方の事柄に使えて、なおかつビジネスシーンでも使いやすいのが「その折(おり)は」です。「その節は」が比較的近い過去に使われるのに対し、「その折は」は、遠い過去にも使えるといった違いがあります。「私がまだ新人だった折には、部長には大変お世話になりました。」「お近くにお寄りの折には、ぜひお立ち寄りください」などと使います。
「その節は」を使用するときの注意点
「その節は」を正しく使うための注意点を見ていきましょう。
1.未来には使えない
「その節は」は過去を表す表現なので、未来の事柄を指しては使えないので注意しましょう。未来の事柄について表したい場合は、「その際は」「その折は」などがあります。ビジネスシーンにも使える丁寧な表現なので覚えておきましょう。
2.過去のことを言うときは、その話題に触れてから使う
「その節は」は、「その」がついていることからわかるように、話し手と聞き手との間で共通認識できる事柄を指しています。しかし、長らく会っていなかった人との間では、「どの節」のことを話しているのか認識できないこともあります。そこで、一度過去の事柄に触れてから「その節は」を使うとスムーズです。「あのプロジェクトからもう〇〇年ですか。その節はお世話になりました。」などと使いましょう。
「その節は」の使い方と例文集
目上の人や謝罪の場などにおいてよく使われる「その節は」ですが、言い回しはいくつか決まっています。覚えておけば、相手に失礼なく、感謝の意や誠意が伝えられますよ。
「その節は」の定型文
「その節は」は文頭に使って、そのあとに感謝や謝罪の言葉を続けます。いくつか定型文があるので見ていきましょう。
- その節はありがとうございました。
- その節は大変お世話になり、ありがとうございました。
- その節は大変失礼いたしました。
- その節は、丁寧にご対応いただきありがとうございました。
- その節はご心配をおかけしました。
「その節は」の目上に対する使い方
「その節は」は主にビジネスシーンで、取引先や上司に対して使います。上記の定型文のあとに、丁寧語で言葉を続けましょう。具体的には、以下の例文に示しましたので参考にしてください。
「その節は」の例文
ビジネスシーンで使える「その節は」の例文をいくつか集めました。会話の中だけでなく、メールや手紙でも使えますので、ぜひ参考にしてください。
- その節はありがとうございました。おかげさまで業績は順調に回復しております。
- その節は誠にお世話になりました。新しい部署へ異動となりますが、今後ともよろしくお願いいたします。
- その節は丁寧にご対応いただきありがとうございました。
- その節は大変失礼いたしました。再度このようなことがないよう細心の注意を払っておりますので、ご安心くださいませ。
- その節はご無理を言って申し訳ありませんでした。急な対応にもかかわらず迅速に対応してくださって感謝しています。
まとめ
「その節は」は、「この前は」という意味で、過去の事柄を指して使います。「その節はお世話になりました。」や、「その節は大変失礼いたしました。」などと、感謝の意を表すときや、謝罪の場でもよく使われます。ビジネスシーンでは、目上の人や取引先に使えるので、定型文で覚えておくといいでしょう。