「折衝」とは、「交渉」や「渉外」の意味と何が違うのでしょうか。ビジネスや政治・外交においてはどのように使われるのでしょうか。この記事では「折衝」の使い方や例文を英語での言いまわしとともに解説しています。
「折衝」の意味と読み方は?
「折衝」を深く理解するために、まずは意味と読み方を解説します。すでに認識している場合でも、改めておさらいしましょう。
「折衝」の意味とは?
「折衝」とは、「利害関係が合わない相手との問題を解決するための、駆け引き」「お互いが納得して折り合いをつけること」を意味します。また、「駆け引きすること」。
「折衝」の読み方は?
次に、「折衝」の読み方を見ていきましょう。
「折衝」を漢字別に解説します。
「折」は音読みで「セツ/セッ/シャク」訓読みで「おり/お(る)/お(れる)/くじ(ける)/さだ(める)」と読みます。
「衝」は音読みで「ショウ」訓読みで「つ(く)」と読みます。
それぞれの漢字の音読みを組み合わせ、「折衝」は「せっしょう」と読みます。
「折衝」の由来・語源
「折衝」の由来・語源を深掘りします。
「折衝」の由来は、中国の春秋時代の「斉」において、三代もの君主に仕えて宰相へと昇進した政治家「晏嬰(あんえい)」がまとめた書物に記載があるとされています。
「折衝」の漢字別の意味を見ていきましょう。
「折」は「おる・おれる・おりまげる・おりたたむ/くじける・くじく・勢いをそがれる・勢いを断ち弱らせる/さだめる・さばく・判断する/死ぬ・若死にする」の意味があります。
「衝」は「大通り/道/交通の中心となるところ/要所/つく・つきあたる・ぶつかる/動かす・動く/向かう/戦車・軍艦」を意味します。
「敵がこちらの要所を衝いてくる、その矛先の勢いを断ち弱らせる・折り曲げる・勢いをそぐことで攻撃から防衛したこと」が「折衝」の語源、といわれています。このように、それぞれの漢字の意味からも語源や由来を推測できます。
ちなみに「折衝」が現在同様の意味で使われるようになったのは、明治時代以降のことです。
「折衝」の類義語・言い換え・関連語
「折衝」の類義語・言い換え・関連語は「交渉」と「談判」です。
・「交渉」は「こうしょう」と読み、一般的に広く使われている言葉。「交渉」も「折衝」と同じく「妥協点を求めるための話し合い」の意味で使われます。
・「談判」は「だんぱん」と読み、こちらも一般的に広く使われている言葉。直接交渉することを「直談判」といいます。ここでのポイントは、「もめごとのなどについての決着させる話し合い」。「もめごと」という点がほかの言葉「折衝」や「交渉」にはないニュアンスです。
「折衝」と「交渉」と「渉外」の違い
「折衝」と「交渉」と「渉外」の違いについて解説します。3つの言葉の違いがわかりやすいよう、改めて言葉の解説をします。
・「折衝」とは、「利害関係が合わない相手との問題を解決するための、駆け引き」また「お互いが納得して折り合いをつけること」を意味します。「折衝」の相手は国家間、会社と労働組合間など公的機関同志におけるものであり、個人間や個人対団体には通常用いられません。
・「交渉」とは、「折衝」と同じく「妥協点を求めるための話し合い」の意味で使われます。「交渉」の相手は個人間、個人対団体、団体間、国家間など、あらゆる相手との話し合いに使える言葉です。
・「渉外」については、まず漢字から紐解いていきましょう。
「渉」は音読みで「ショウ」訓読みで「かか(わる)/わた(る)」と読み、「かかわる/関係する/あずかる/わたる/各方面で広く見聞する」意味があります。
「外」は音読みで「ガイ/ゲ」訓読みで「そと/はず(す)・はず(れる)/ほか/と」と読み、「そと/よそ/うわべ/外見/自国に対しての他国/中央に対しての地方」の意味があります。
これらをふまえ「渉外」は「しょうがい」と読み、「外部とかかわること」から「外部との連絡・交渉すること」を意味します。「交渉」といえども「外部・外国との交渉」がポイントで、「折衝」や「交渉」にはないニュアンスです。
「折衝」を英語でいうと?
「折衝」を英語でいうと「Negotiation」で「ネゴシエーション」と読みます。「Negotiation(ネゴシエーション)」は日本語で「ネゴ」と略し、「折衝」の同義語として使われています。
- ネゴしておいて!(折衝しておいて!)
- ネゴる(折衝する)
- 料金のネゴ(料金交渉・料金折衝)
また「Negotiation(ネゴシエーション)」以外に「Parley(パーリー)」がありますが、「折衝」よりも「談判する」ニュアンスが強く、ケンカ腰に交渉するイメージです。ちなみに「Parley」は日本語・カタカナ語化はされていません。
「折衝」の使い方と例文集
それでは実際に「折衝」を使ってみましょう。「折衝」の使い方と例文を紹介します。
「折衝」の使い方と使用上の注意点
「折衝」は「利害関係が合わない相手との問題を解決するための、駆け引き」また「お互いが納得して折り合いをつけること」を意味します。「折衝」の相手は国家間、会社と労働組合間など公的機関同志におけるものであり、個人間や個人対団体には通常用いられません。使う相手や状況に注意しましょう。
折衝能力を高める
「折衝」を使った言葉・関連語で「折衝力・折衝能力」の言葉があります。「折衝力・折衝能力」とは、「折衝力がある」「折衝能力が高い」と表現され、「折衝」がうまい人のことをいいます。「折衝力がある」「折衝能力が高い」人は、説明上手な特徴があります。相手に自分たちの状況や要望を明確そして的確に伝えられる能力があることにより、スムーズに妥協点を見出せる(折衝する)のです。また相手の立場に立って物事を考えられるタイプであることも、折衝力がある人の特徴です。
顧客折衝
「折衝」を使った言葉・関連語で「顧客折衝」の言葉があります。「顧客折衝」とは先述の「折衝力・折衝能力」と同義語で、「顧客折衝能力がある」「顧客折衝能力が高い」と表現します。
折衝役
「折衝」を使った言葉・関連語で「折衝役」の言葉があります。「折衝役」とは、「外部とのやりとりを行う担当者」のことです。「折衝役」には「窓口役」や「交渉役」などの類義語があります。
折衝経験
「折衝」を使った言葉・関連語で「折衝経験」の言葉があります。「折衝経験」とは読んで字のごとく「折衝の経験値」。これまでの社会人経験としての経歴の中で、どれだけの折衝を経験してきたか、です。「折衝経験」は求人案内における募集要項の条件にあげられることがあり、「折衝経験が豊富な人材を募集します」のように使われます。
折衝業務
「折衝」を使った言葉・関連語で「折衝業務」の言葉があります。「折衝業務」とは読んで字のごとく「折衝を仕事として行う」こと。折衝業務経験を得られる職種はというと、営業職やカスタマーサービス、接客業などがあげられます。営業職や接客業は、顧客やお客様のニーズを引き出してよく知り理解した上で成り立つ職種。顧客折衝能力が問われる職種です。
「折衝」の例文集
「折衝」を使った例文をみていきましょう。
ビジネスシーンにおける「折衝」の例文
- 顧客折衝が成功したのは、お客様の立場にたってニーズを深く汲み取ったからである。
- A社との折衝がスムーズにすすまない。
- 業界各社と折衝した結果をお知らせします。
- 折衝力が高い人は、話がうまく相手の立場を熟考する人だ。
- 折衝力を高めるには、能力だけでなく経験も必要だ。
政治・外交における「折衝」の例文
- 東京都はオリンピックの開催について、IOCと折衝中である。
- 日米首脳会談において、首相がアメリカ大統領に折衝した。
- 日中・日露間の領土問題の折衝は、大変な困難を極めている。
まとめ
「折衝」の類義語は、相手が個人なのか団体なのかによっての違いがあります。違いを見極めて、的確に使えるようにしましょう。「折衝」の英語は「ネゴシエーション」カタカナ語で「ネゴ」。よく使われる表現ですが、中にはカタカナ語を嫌う人もいますので、使う場合には気をつけましょう。