夫のことを指す「旦那」という表現は日常会話でもよく使われる言葉です。しかし、「旦那」という言葉には「夫」以外の意味もあることをご存知でしょうか?今回は「旦那」の正しい意味と「夫」や「主人」との違いについて説明します。
「旦那」の読み方と意味
まずは、「旦那」の読み方とその意味について確認していきましょう。
「旦那」の読み方
「旦那」は「だんな」と読みます。
「だんな」の漢字には「檀那」という書き方もありますが、こちらの「檀」は常用漢字ではありません。一般的には常用漢字である「旦」を用いて「旦那」と書かれます。
「旦那」の意味
「旦那」は実は夫という意味以外でも使われる言葉です。「旦那」の意味は主に以下のように用いられます。
(1)[仏]1. 布施。2.仏家が財物を施与する信者を呼ぶ。施主。檀越(ダンオツ)。檀家。
(2)家人召使が主人を呼ぶ
(3)妻が夫を呼ぶ。また、妾や囲い者の主人
(4)商人・芸人などが得意客を呼ぶ
(5)目上の男性を呼ぶ
参照:Weblio辞書「旦那」
「旦那」の語源と由来
前述にて「旦那」には夫以外の意味があることを紹介しましたが、元々は夫という意味以外での利用が主流の言葉でした。
ここでは「旦那」の語源と夫という意味で用いられるようになった由来について紹介します。
語源はサンスクリット語の「dana(ダーナ)」
「旦那」という言葉は元は現在の意味でも存在する「布施」という意味の仏教語です。語源はサンスクリット語の「布施・施し」という意味である「dana(ダーナ)」からきているとされています。
当初は「布施」そのものだけを指す「旦那」という意味でしたが、しだいに「布施をする人」を指す言葉として派生したことが現代の「旦那」の使い方の起源とされています。
「夫」という意味で用いられるようになった由来
「旦那」という言葉は次第に一般化し、仏教語としてではなく「金品を施す人」という意味で利用されるようになりました。この意味が現代では拡大解釈されるようになり、「自分の使える主人」という意味や妻が夫を指す場合に用いられるようになりました。
ですので現代でも、元々の意味である「布施」や「施主」という意味で「旦那」は用いられていますが、日常会話では主に「自分の使える人」や「金品を施してくれる人(お客様)」、そして「夫を指す言葉」として利用されるのが一般的となっています。
「旦那」の使い方・例文
「旦那」は現代でもさまざまな場面で利用されている言葉です。
一般的な夫を指す場面以外でも活用されているシーンがあることをぜひ覚えましょう。ここでは代表的な活用シーンについて例文を交えて紹介します。
自分の夫や他人の夫を指す場面で用いられる
最も日常的に耳にするのは、自分の夫や相手の夫を指す際に用いられる使われ方です。
この場合の「旦那」は夫のことをカジュアルに指す言葉です。ですので、自分の夫を指す場合は「旦那」そのままで利用することが一般的ですが、相手の夫を指す場合には「旦那様」や「旦那さん」など後ろに敬称をつけることが望ましいでしょう。また、自分の夫を指す場合は本人に呼びかける場面では用いられず、第三者に自分の夫の話をする際に使うことが一般的です。
- 旦那の異動が決まったので、来月引っ越すことになりました。
- 本日、旦那様はご在宅でしょうか?
使用人が雇用主という意味で用いる
お手伝いさんや使用人が雇用主にあたる人物に呼びかける際にも「旦那」という言葉は用いられます。
この使い方は、雇用主本人に呼びかける場合に用いる言葉となりますので、呼び捨てではなく「旦那様」のように後ろに敬称をつけることが一般的です。またこの呼称は雇用主が自分より年下の場合でも利用できる表現です。
- 旦那様、明日はお休みを頂戴してもよろしいでしょうか。
- 旦那様宛のお荷物が届きました。
商人が顧客に対して用いる
現代ではあまり耳にする機会が少なくなってきているものの、商人や芸人が自分の得意客に対して「旦那」と呼びかける際にも用いられる場合があります。
この使い方は得意客が男性の場合であることと、親しい間柄である場合に用いられる表現です。
旦那!今日はいい魚がたくさん入ってるよ!
類義語のそれぞれの意味と「旦那」との違い
妻が配偶者を指して使う意味の「旦那」には複数の類義語が存在します。類義語にはニュアンスの違いがありますので、その違いを意識して日常会話で使い分けられるとよいでしょう。
類義語1.「夫」
男性の配偶者を指す言葉として最も汎用性の高い言葉が「夫」です。
「夫」は公的書類での記載できる言葉です。日常的には、自分の配偶者を指す場合に主に使われます。相手の配偶者を指す場合には利用できないことも覚えておきましょう。
類義語2.「主人」
「主人」も「夫」同様に、男性の配偶者を指す言葉として用いられます。
「旦那」と比べて丁寧な印象がある表現のため、畏まった場面で利用するとよいでしょう。また、「主」という言葉を用いることで妻が夫を立てているニュアンスが含まれます。
「主人」は自分の配偶者を指す場合に加え、相手の配偶者を指す場合にも使えます。この場合は「ご主人」や「ご主人様」と前後に敬語表現を用いてより丁寧な言い回しにするとよいでしょう。
類義語3.「亭主」
「亭主」は男性の配偶者をカジュアルに表現した言葉です。
友人や知り合いと日常会話を行う際に用いられる表現で、「うちの亭主が」などという使い方をします。
その他の類義語
男性の配偶者を指す呼称は他にもありますが、日常的に使われる機会は少ないものがほとんどですので参考程度に把握しておきましょう。
・良人(りょうじん):男性の配偶者
・背の君(せのきみ):男性の配偶者、夫
・背子(せこ):主人
・うちの人:他人に自分の夫を指して言う呼称
「旦那」を使う際の注意点
「旦那」は夫を指す一般的な呼称ですが、使う場面や相手によっては下品な表現だと受け取られる場合があります。ここでは主に気をつけたい注意点について紹介します。
公の場では「夫」や「主人」を用いる
「旦那」という言葉は「夫」や「主人」に比べて響きが荒っぽいこともあり、「夫を雑に扱っている」などの印象を持たれる可能性もある言葉です。特に公の場やかしこまった場面で用いることは避け、汎用的に利用できる「夫」や丁寧な印象となる「主人」に言い換えて使うのが無難でしょう。
また、行政機関やその他の公的書類に記載する場合も「旦那」を用いることは不適切です。「夫」という呼称を用いることを意識しましょう。
他人の夫を指す場合は注意が必要
相手の夫を指す場面で「旦那」を使う場合も、受け取る女性によっては「主従関係を感じる」という理由から不快に思われる方もいます。「旦那」には「金品を施してくれる人」という意味も含まれることが理由として考えられます。
この場合、「ご主人」という言葉も主従関係を示唆するニュアンスがありますので適切ではありません。相手の配偶者の名前がわかる場合は「〇〇さん」と名前で呼ぶことが最も無難といえるでしょう。
「夫」という意味で利用する「旦那」の英語表現
英語で「旦那」と表現したい場合はどのような単語を用いるのが適切でしょうか。ここでは「夫」という意味で用いられる「旦那」の英語表現を紹介します。
基本的な英語表現は「husband」
「旦那」を指す英語表現は「husband」です。
この言葉は日常会話や公的書類など広い場面で利用できます。また自分の夫だけでなく相手の夫を指す場合にも使えますので、表現に迷った際はこの「husband」を利用するのが無難でしょう。
カジュアルな表現方法
よりカジュアルなニュアンスを含んで「旦那」と言いたい場合は、「hubby」を用いるとよいでしょう。
「hubby」は「husband」を省略した略語ですが、一般的に広く使われている言葉です。ただしあくまでも口語(話し言葉)ですので、文書として記載する場合は「husband」を用いましょう。
まとめ
「旦那」は現代では主に男性の配偶者を指す使い方が定着していますが、それ以外にもさまざまな意味があることを理解することが大切です。また、「旦那」と使うことで相手が不快感を覚える可能性がある場合は、別の言い換え表現を利用しましょう。