「ストイックな人」をイメージすると、厳しいトレーニングを自身に課しているスポーツ選手などが思い浮かぶ方は多いのではないでしょうか。ここでは「ストイック」それ自体の言葉の意味と、日本語と英語それぞれの意味の違いを解説します。
「ストイック」の意味とは?
近年、日常的に使われるようになった「ストイック」という言葉について、日本ではどのような意味で用いられている言葉なのでしょうか。また、英語の「stoic」と日本語の「ストイック」は意味が若干違うこともおさえておきたいポイントです。ここでは日本語と英語それぞれの「ストイック」の意味について紹介します。
日本語の意味
「ストイック」は「自分を律し禁欲的に行動すること」という意味で日本では使われます。
具体的には「快楽的な欲望に負けず目標達成に向けてひたむきであること」を表すニュアンスがあり、自分に厳しく接している様子を表す言葉です。自己管理ができている人などに使われることが多く、日本ではポジティブな表現として用いられます。
英語の意味
英語で表現する場合は「stoic」と表記され、「感情を表に出さず、不快なことがあっても不満を言わない様子」という意味で使われます。
日本語と違い、英語の場合はネガティブなニュアンスで用いられることが多い言葉です。
「ストイック」の由来・語源と本来の意味
日本語と英語で意味が微妙に異なる「ストイック」ですが、もとを辿ると同じギリシャ時代の哲学が語源です。
ここでは「ストイック」の語源と本来の意味について詳しく見ていきましょう。
語源はギリシャ時代の哲学「ストア派」が由来
「ストイック」という言葉は古代ギリシャの「ストア哲学」から生まれた言葉です。
ストア哲学とは、紀元前3世紀頃にキティオンのゼノンが作った哲学で、ヘレニズム哲学の学派のひとつとされています。ストア哲学は禁欲主義を軸とした考え方を持っており、自身の欲求や欲望を抑え、概念や固定観念にとらわれなければ真の幸福を得られる、という思想を持った哲学です。
「ストイック」の本来の意味
「ストイック」は「ストア学派のような」という意味で本来使われており、「苦痛・歓喜・強欲・歓楽に関心のない人」に対して使われる言葉でした。
現代のように「自分に厳しい人」という意味で用いられるようになったのは1500年代後半からといわれています。
「ストイック」の使い方と例文
「ストイック」は現代では自分を律した生活や習慣を継続している人や態度に使われます。
例えば体重管理のために毎日欠かさずトレーニングをしている人などに対して用いられ、ダイエットのために1日だけトレーニングをした場合などには使われません。
具体的な使い方は以下の例文を参考にしましょう。
- オリンピックに出場しているトップアスリートは、ストイックにトレーニングに励んでいる。
- この会社で出世したいなら、もっとストイックにならないとだめだ。
- ダイエットは無理な食事制限をするよりも、運動をストイックにしたほうが効果がある。
「ストイック」の類義語・言い換え表現
「ストイック」はそのままでも意味が通じることがほとんどですが、ご年配の方などは「ストイック」という言葉の意味が浸透していない場合もありますので、類義語や言い換え表現も知っておくと便利でしょう。
ここでは「ストイック」を昔からある日本語表現で言い換えた場合の言葉をいくつか紹介します。
「克己的」
「克己的」の意味は「自分の欲望に打ち勝つさま、自分を抑制しようとするさま」です。
「ストイック」も「欲望を抑え、自分に厳しくする様子」を意味する言葉ですので、同義語として使用できる言葉です。
また、読み方は「こっきてき」と読みます。「克」は「かつ」とも読まれますのでしばしば「かっきてき」と読まれていますが、「かっき」と読むのは間違いですので注意しましょう。
「一生懸命」
「一生懸命」の意味は「全力を挙げて物事に取り組むさま、命懸けで物事をするさま」です。
「ストイック」の意味にある、「目標達成にひたむきであること」というニュアンスに似た表現として言い換えが可能です。ただし、「一生懸命」には「禁欲的であること」というニュアンスは含まれないことを加味して用いるとよいでしょう。
「無欲」
「無欲」の意味は「欲がないこと、物事に執着しないさま」です。
「ストイック」の意味のうち「禁欲的」というニュアンスを強く表現したい場合に言い換え表現として用いるとよいでしょう。ただし「無欲」には「何に対しても欲がない」という意味合いでも用いられる言葉ですので、「ストイック」のようにひとつの目標に貪欲に取り組むようなニュアンスが削がれてしまう点は注意が必要です。
「ストイック」の対義語・反対語
「ストイック」は「禁欲的に物事に取り組むこと」という意味で用いられる言葉ですので、対義語は欲があることを表現する言葉が当てはまります。
ここでは日本語の「ストイック」における対義語と、哲学用語として用いられる場合の対義語をそれぞれ紹介します。
日本語の意味「ストイック」に対する反対語
「自制すること」という意味の「ストイック」に対する言葉は、「貪欲」や「強欲」などがあげられます。
「貪欲」と「強欲」はいずれも「非常によく深いこと、欲深い様子」という意味です。また、「欲張り」も対義語にあたりますので、「ストイック」と反対の意味としてこれらの言葉を用いるとよいでしょう。
哲学用語の反対語は「エピキュリアン」
「ストイック」は哲学用語では「禁欲主義的な」という意味で用いられます。これの反対となる言葉が「快楽主義的」という意味の「エピキュリアン」です。
「エピキュリアン」はエピクロス主義という哲学に基づいた言葉です。エピクロス主義とは、自由に快楽を得ることが幸福につながることを思想としている哲学で、「エピキュリアン」の代表的なものでは美食家があげられます。
日本語の「ストイック」に近い意味の英語表現
日本語の「自己に厳しい」という意味を英語で表現したい場合、「stoic」では意味が変わってしまいますので、別の表現を用いる必要があります。では英語で日本語と同じ意味の「ストイック=自分に厳しい」と伝えたい場合はどのような表現が適切なのでしょうか?
「strict with oneself」
「厳しい」という表現は「strict」という単語で表現できます。「strict with〜」で「〜に厳しい」という表現となり、「with」の後ろに厳しくしている対象を表記することで「ストイック」と同じニュアンスを表現できます。
例えば、「自分に厳しい(自分にストイック)」という意味の場合は「strict with myself」という表記となります。
「hard on oneself 」
「hard on oneself」も、物事に対して厳しく接することを表す英語表現です。
「hard on〜」で「〜に対して厳しく接する」という意味ですので、自分にストイックである場合は「hard on myself」で意味が通じます。
「be disciplined」
「discipline」は「鍛錬する」や「鍛える」という意味の単語ですが、「be disciplined 」と過去分詞の形にすることで「律して行動する」という意味の英語表現になります。
自分を律している、という表現をしたい場合は「I‘m disciplined.」です。
英語で用いられる「stoic」の例文
英語の「stoic」の使い方についても例文を用いてかんたんに説明します。英語の「stoic」は「嫌なことがあっても表情に出さない」という意味ですので、主に悪い状況で用いられます。
- He is always stoic as he speaks of his parents.(彼は両親の話をするとき、いつも無表情だ。)
- I knew you were painful, despite your stoic attitude.(あなたが態度に出さなくとも、辛いことは知っていた。)
「ストイックな人」の特徴とは
「ストイック」の意味をここまで紹介してきましたが、実際にどのような人が「ストイックな人」なのでしょうか?一般的に「ストイックな人」といわれる人の特徴について考えていきましょう。
「ストイックな人」の傾向
「ストイックな人」の傾向をかんたんに説明すると、「自分に厳しい基準を課して継続している人」といえます。自分で決めた目標に向かって努力を惜しまない人や、外部からの誘惑に流されず目標を達成するまで努力を続ける人が一般的に「ストイックな人」といわれています。
「ストイックな人」の傾向として、「内向的」という点も覚えておくとよいでしょう。この「内向的」とは、目標設定や意思決定において外部の人の意見を優先するのではなく、自分の納得感を優先して意思決定するという傾向があると理解しましょう。
「ストイックな人」に見られる特徴
「ストイックな人」に見られる特徴は、「完璧主義」といわれる人が多いです。その理由は、何かを途中で止めることなく最後までやり切る姿勢が「完璧主義者」に似たところがあるからでしょう。
他に、自分で決めたルールに則って生活している面もストイックな方の特徴です。しばしば「こだわりが強い人」というニュアンスでも受け取られることがあるでしょう。
まとめ
「ストイック」はあらゆる欲望を制し、目標の達成に向けて努力し続ける態度を表す言葉です。英語の「stoic」は意味が異なることも含め、日常会話で使いこなせるようになりましょう。