「飽和状態」という言葉は「市場が飽和状態」や「病院が飽和状態」などの表現で、日常よく耳にする言葉です。この「飽和状態」とはどのような状態なのか正確に理解できていますか?今回はビジネスシーンでもよく使われる「飽和状態」の意味を説明します。
飽和状態の読み方と意味
「飽和状態」は「ほうわじょうたい」と読みます。意味は「最大限であること、最大限度に達しておりそれ以上の余裕がない様子」です。
「飽和」とは「それ以上の余裕がないこと」や「最大限度に達していること」を表す言葉です。「飽和状態」はそれに「外面からでもそれがわかるようす」という意味の「状態」を付与した言葉です。
ビジネスシーンと化学分野それぞれの意味
「飽和状態」は日常会話でも用いられることがある表現ですが、ビジネスシーンや化学分野で使うと意味が変わる言葉でもあります。ここではそれぞれの分野で用いられた場合の意味について紹介します。
ビジネスシーンにおける意味
ビジネスシーンでは主に人材や職業などの求人に関するシーンと、施設や市場などに対して用いられます。ニュースなど日常的に耳にする「飽和状態」は主にこちらの意味合いで使われている場面が多いでしょう。
職業や人材に対して用いられる場合
職業や人材が「飽和状態」と表現される場合は、求人に対して求職者数が多く「希望者を全て採用できない状態」もしくは「ある職種が人員過多で新しい採用ができない状態」を指します。
例えば、「景気が後退すると公務員への就職希望者が急増し、特に地方公務員は飽和状態になる」などと使われます。この場合、「景気が悪くなると公務員への就職希望者が殺到することで、地方公務員は全員を採用しきれないほどの状態になる」という意味です。
市場や施設に対して用いられる場合
ビジネス市場や施設に対して「飽和状態」が用いられる場合は、「新規参入の余地がない状態」を表しています。
ビジネス市場で言うと「YouTuber市場」などが例に挙げられます。YouTuber市場は非常に多くの人が参入しており、今から新しく始めても人気を得られるYouTuberは一握りです。このような状態は「新規参入の余地がない=飽和状態」と表現できます。
また、近年では「感染者の受け入れが増加し、〇〇病院は飽和状態です」などと耳にすることがありますが、これは「新しい患者を受け入れる余地がない状態」であることを表しています。
化学分野における意味
化学の分野で「飽和状態」とは、物質の状態を表す言葉として用いられます。ビジネスシーンで使われる意味とは大きく異なりますので、化学分野での意味も併せて覚えておくとよいでしょう。
物質がこれ以上溶けない状態
化学分野で「飽和状態」とは、「物質が溶解度に達しており、これ以上は溶けない状態」を表す言葉です。
溶解度とは「一定の水量に対して溶かせる物質の量」を表す指標です。溶解度は水の温度や物質の種類によって変わるものです。「飽和状態」とは溶解度まで物質が溶けたことを意味して使われます。
空気が限界まで水蒸気を含んでいる状態
化学分野ではもうひとつ「飽和状態」の意味が存在し、「空気が限界まで水蒸気を含んでいる状態」も指します。
1㎥あたりの空気に対し含まれる水蒸気の最大値を「飽和水蒸気量」と呼び、この飽和水蒸気量に達している状態のことを「飽和状態」と表します。
「飽和状態」のビジネスシーンにおける使い方と例文
「飽和状態」の使い方をここでは紹介します。「飽和状態」は「飽和状態である」や「飽和状態になる」など後に続く言葉ですでに余裕がないのか、余裕がなくなりそうなのかのニュアンスが変わります。詳しく見ていきましょう。
物事を新しく入れる余地がない場合に用いられる
ビジネスシーンで「飽和状態」を使う場合は物事を新しく取り入れる余地がないシーンで使えます。
すでに余裕がない場合は「飽和状態である」や「飽和状態だ」と表現するのがよいでしょう。今まさに余裕がなくなった、限度に達した場合は「飽和状態に達した」という表現が使えます。このように、後ろにつける言葉で現状をうまく表現しましょう。
「飽和状態」のビジネスシーンにおける例文
具体的な例文をいくつか紹介します。状況を思い浮かべながら自身が使う際の参考にしてみましょう。
- 長期休みになるとテーマパークはどこも飽和状態になる。
- このエリアはマンションが多く建設された結果、人口が飽和状態になった。
- 日本市場はもう飽和状態だから、新興国への事業拡大を目指した方がいい。
- アパレル業界は人気業界なので、市場は常に飽和状態だ。
- インフルエンサー市場はもうすぐ飽和状態に達するだろう。
「飽和状態」の類義語と言い換え表現
「飽和状態」には同じ意味を持つ同義語と、似た意味合いを持つ類義語がそれぞれ存在します。ここでは同義語・類義語の中から代表的な用語を紹介します。
言い換え表現は「満杯」
「飽和状態」の同義語は「満杯」です。「満杯は一定の器や規定に対していっぱいであるさま、これ以上入る余地がない様子」を表す言葉ですので、「飽和状態」と同じ意味を持つ言葉です。
例えば、「必要なものが多すぎて、旅行バッグはもう飽和状態だ」を「必要なものが多すぎて、旅行バッグはもう満杯だ」と言い換えても意味は同じです。「満杯」の方が日常会話でよく使われる言葉なので、飽和状態よりもカジュアルな言い回しになります。ビジネスシーンではどちらの言い回しが適切かで使い分けるとよいでしょう。
類義語は「ダブつく」や「限度を超える」
「飽和状態」の類義語は「ダブつく」や「限度を超える」です。
「タブつく」は「物やお金が余っている状態」を指す言葉です。「飽和状態」は「入る余地がないほどいっぱい」という意味ですが、「ダブつく」はすでにいっぱいな状態を超えて溢れている・余っていることを指す言葉ですのでニュアンスが少し違うことを理解しましょう。
「限度を超える」もダブつくと同様に「ある基準や限界を超えること」ですので、「飽和状態」を超えた状態を表す言葉です。「これ以上になると限度を超える」などという表現にすると、「飽和状態」と同じ意味合いで使えます。
「飽和状態」の対義語
「飽和状態」と反対の意味で使える言葉は「不足」です。「飽和状態」は「これ以上入る余地のないほどいっぱいな状態」ですので言い換えると「足りている状態」といえます。一方「不足」は「足りていないこと」を意味する言葉ですので、対義語として使われます。
「飽和状態」に否定語の「不」を加えた「不飽和状態」という言葉も対義語として存在します。これは化学分野で使われる「飽和していない状態」を指す言葉ですので、あわせて覚えておくとよいでしょう。
「飽和状態」の英語表現
「飽和状態」を英語で表現したい場合、主に2つの言葉が使われます。ここでは日常会話で「飽和している」と訳される英単語と、ビジネス市場で「飽和状態」の意味で用いられる英語表現をそれぞれ説明します。
直訳英語は「saturation」
日常会話で「飽和状態」を使う場合、英語では「saturation」を用います。「saturation」は「飽和状態」という意味の形容詞です。また「saturated condition」も同じく「飽和状態」を表す表現です。こちらは直訳すると「飽和された状態」という受動表現になります。
The IT market of this country is already in saturated condition.(この国のIT市場はすでに飽和状態だ。)
市場を表す場合は「red ocean」も用いられる
ビジネス市場では「飽和状態」を表現する際に「red ocean」と言います。日本語でも「レッドオーシャン」という言葉はビジネス用語として用いられており、この言葉は「新規参入余地がない市場」という意味で使われます。
「レッドオーシャン」は日本でも頻繁にビジネスシーンで使われる言葉ですので、ぜひ覚えたい言葉です。また「レッドオーシャン」の対義語として「新規参入余地がある(ビジネスチャンスがある)市場」のことを「ブルーオーシャン」と呼ぶことがありますので併せて覚えておくとよいでしょう。
まとめ
「飽和状態」は「新しく入る余地のない状態」を表す言葉です。市場や人材などのビジネスシーンをはじめとして、化学分野などでも広く用いられる言葉ですので、それぞれの分野での意味を理解し、日常会話で使えるようになりましょう。