会社や行政などに対して正式に懇願するための書面として「嘆願書」を使用します。普段は目にすることの少ない「嘆願書」ですが、いざ書くことになったときに書き方が分からず困るケースがあります。この記事では「嘆願書」の意味や書き方を解説します。
「嘆願書」とは
「嘆願書」とは、問題点の改善や依頼内容を書き記した文書のことです。行政や官公庁に対して何かを求める際に使用したり、会社に対するセクハラやパワハラの告発文書として使用したりします。法的な拘束力がありませんので、要求が必ず通るとはいえませんが、正式な回答やトラブルの改善を要求するために作成します。
「嘆願書」を使うシーン
日常的に目にすることは少ないですが、「嘆願書」は行政の対応や会社でのトラブル、事件に巻き込まれたときなどに作成します。つまり、誰にでも「嘆願書」を書くきっかけが発生するのです。ここでは、「嘆願書」を使う代表的なシーンとともに、それぞれの場面における「嘆願書」の記載内容について解説します。
セクハラ・パワハラ
最近増えてきているのは、セクハラやパワハラによる「嘆願書」です。セクハラやパワハラの場合は、会社に対して「嘆願書」を提出しなければなりません。そのため、「嘆願書」の宛先は会社の社長とし、代表取締役社長または代表取締役と正式な役職名で記載しましょう。嘆願内容は以下の項目で記載します。
- いつ誰から受けているのかを記載
- 上司に報告したが改善されていないという現状を報告
- 具体的なセクハラ、パワハラ内容を記載
会社に対する「嘆願書」は、あくまでも起きている事実と困っている現状を訴えるための文書です。相手の異動や転勤を願うような記述はしないようにしましょう。
不当解雇
不当な解雇通知を受けた場合には、解雇の撤回を申し入れるために「嘆願書」を作成します。労働契約法において、雇い主は正当な理由がない限り従業員を解雇できません。解雇理由に納得がいかない場合には、以下の内容を記載します。
- 解雇理由を満たしておらず、不当解雇にあたること
- 解雇の撤回を要求すること
業務が回らなくなるなどの理由から、解雇通知を受けた本人ではなく周りの従業員が会社に対して「嘆願書」を作成するケースもあります。
刑事事件
刑事事件ではあらゆる方向から嘆願書が提出されます。代表的な「嘆願書」は、被害者が加害者に対して減刑を要求する際に作成されます。加害者が真摯な対応をして示談が成立していたり、きちんと反省していることが目に見えたりする際に「嘆願書」を提出することがあります。そのほかには以下のようなケースがあります。
- 加害者の職場関係者から、加害者がいないと業務に支障があるため寛大な処分を求める
- 被害者から加害者勤務先へ、加害者を許したので、会社内で寛大な処遇を求める
行政や司法
行政や司法の取り決めに対して、地域住民が不服と感じたときに行政に対して提出します。住民の思いをまとめた文書ですので、ある程度の署名を集める必要があります。以下のようなケースで「嘆願書」を使用します。
- 再開発による理不尽な立ち退き命令
- 利便性のみを追求した環境破壊
「嘆願書」の書き方・例文
「嘆願書」には決まった書式がありません。ただし公的機関に提出する正式な文書ですので、ある程度の書き方は抑えておく必要があります。いざ作成するときに慌てることがないよう、「嘆願書」の書き方を例文を交えて解説します。
タイトルは簡潔に
タイトルには、何に対する「嘆願書」であるかを記載します。長すぎるタイトルは意図が伝わりにくくなりますので、できるだけ明確かつ簡潔に記載します。
- 解雇撤回を求める嘆願書
- セクハラにおける被害と再発防止に関する嘆願書
日付を忘れずに記載
「嘆願書」には作成日を記載しましょう。日付を明記しないと、いつ作成して提出されたのかがわからず対応が遅れてしまうことがあります。「嘆願書」を提出したものの、相手の対応が遅れたり長期間回答がなかったりした際に再度問い合わせる証拠となります。
宛先と嘆願内容を記載
誰に向けた「嘆願書」であるかを記載し、嘆願内容を明記します。宛先は必ず正式名称で記載しましょう。
- 株式会社〇〇 代表取締役社長 〇〇殿
- 〇〇検察庁御中
嘆願内容はなぜ「嘆願書」を提出するにいたったのか、経緯や理由を記載します。
- 令和○年○月○日の解雇通知が、労働契約法で定められた解雇理由を満たしておりません。
- ○○に対する傷害事件において、示談が成立しております。
相手への要求を記載
相手に要求する内容をきちんと明記します。困っていることやどうしてもお願いしたいことにとどめ、過度な要求は避けましょう。なぜ困っているのか、どうしてお願いしているのかまで記載することで、「嘆願書」が通る可能性が高まります。
- 解雇権の濫用にあたることから無効であると考えます。よって、解雇通知の撤回を申し入れます。
- 加害者側から真摯な対応をいただいており、十分反省していることから寛大なご処置をお願い申し上げます。
自身の住所と氏名を記載
誰によって書かれた文書なのかを明記します。住所や氏名を記載し、氏名の後ろに捺印をしましょう。曖昧な記載では誠実さに欠けてしまい、「嘆願書」を受け付けてもらえない場合もあります。
「嘆願書」のテンプレート
ここでは「嘆願書」を作成する場面の中でもっとも身近であるパワハラに関する「嘆願書」のテンプレートを紹介します。
〇〇株式会社 代表取締役 〇〇殿
パワハラの被害ならびに中止に関する嘆願書
私〇〇は、〇〇部に所属する〇〇課長から、令和△年△月ごろより下記に記載するパワハラ行為を受けております。
このパワハラ行為におきましては、□□部長にすでに報告しておりますが未だ改善がみられません。
よって、直ちにパワハラ行為をやめさせるよう申し入れをいたします。
記
(パワハラ内容を記載)
令和△年△月△日
〇〇(自分の氏名)
「嘆願書」と請願書・上申書の違い
「嘆願書」とよく似た意味の文書として、「請願書」や「上申書」があります。相手に要望を伝えるという点では同じものですが、主張の強さや要望の相手が異なります。それぞれの違いについて解説します。
「請願書」は自身の権利を主張すること
「嘆願書」では切実な要望を伝えるのに対し、「請願書」では自分の権利を主張します。「請願」は誰でも主張できる権利であり、国民の基本的権利として憲法で定められています。住民が議会に対して希望条件を述べるために作成されるもので、「請願書」を提出するには紹介議員の記名と捺印が必要であることから、かんたんに出せるものではありません。
「上申書」は法的手続きを取らない申し立てのこと
「上申書」とは、法的手続きを取らずに申し立てを行う文書のことです。官公庁や警察に対して提出する「上申書」では、法律に基づかない意見をする際に使用します。たとえば、スピード違反で警察に検挙され罰則を与えられたとき、何らかの事情があり罰則軽減を申し立てる際に使用します。一般企業における「上申書」は、経営層などに対して意見や提案をする際に用いられます。「嘆願書」と同じく法的効力はなく、官公庁などに自分の意見や意思を伝える手段として用いられます。
「意見書」は自身の意見を述べるもの
「意見書」はある判断に対する自身の意見を記述した文書で、法的効力はありません。意見を記述する文書としてはもっとも姿勢が低いものです。
「嘆願書」の英語表現
「嘆願書」は英語でa written petitionと表現します。petitionは「嘆願」という意味があり、単語単体でも「嘆願書」という意味として通用します。
まとめ
「嘆願書」は、行政や官公庁に対する依頼内容を文書化したものとして使われます。場面によって「嘆願書」の目的は異なり、会社ではハラスメントの告発に使用され、事件や事故においては加害者の減刑を依頼するために作成されます。法的効力を持たない文書ですが、問題点をきちんと文書にして相手に提出することで問題が明確になり、改善につながることもあるのです。