「和をもって尊しとなす」の本当の意味とは?原文の全文、英語表現も紹介

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    「和をもって尊しとなす」は聖徳太子が、十七条憲法を制定する際に第一条に記載した言葉です。実は「和をもって尊しとなす」には続きの言葉があります。第一条全体の文章から考えられる「和をもって尊しとなす」の意味や語源、英語表現を紹介します。

    目次

    「和をもって尊しとなす」の意味とは?

    「和をもって尊しとなす」の意味とは?

    「和をもって尊しとなす」は、聖徳太子が十七条憲法の第一条の冒頭に置いた言葉です。もともとは漢文なので、「和を大切にしなさい」や「何事をやるにも、みんなが仲良くやりなさい」などとさまざまに現代語訳されています。しかし、この言葉で聖徳太子が表現したかった意味は、この言葉だけでは推し量れません。語源や十七条憲法が制定された時代背景などから、「和をもって尊しとなす」の本当の意味をお伝えします。

    「和をもって尊しとなす」の語源・由来

    「和をもって尊しとなす」の語源・由来

    「和をもって尊しとなす」の語源は中国の書物であり、原文は漢文です。『論語』と『礼記』の2つの書物に、「和をもって尊しとなす」の文言が記載されています。それぞれの書物でどう記載されているのか、見ていきましょう。

    「和をもって尊しとなす」の出典1『論語(ろんご)』

    「和をもって尊しとなす」の出典のひとつである『論語』は、孔子と弟子の問答集の体裁になっています。孔子だけでなく弟子の「有子(有若)」と「曾子」の言葉も収録されている、中国の儒教の根本文献です。『論語』には、有子の言葉としてこう記載されています。
    「禮之用和為貴」(礼は之和を用って貴しと為す。)

    「和をもって尊しとなす」の出典2『礼記(らいき)』

    「和をもって尊しとなす」のもうひとつの出典である『礼記』は、中国の儒教の経書である五経のひとつで、礼の倫理的意義を解説した古説を集めています。『礼記』には、こう記載されています。
    「禮之以和為貴」(礼は之これ和を以て貴しと為す。)

    「和をもって尊しとなす」の日本における出典3『日本書紀』

    「和をもって尊しとなす」の日本における出典『日本書紀』には、十七条憲法を聖徳太子が起草したことが書かれています。具体的には、推古天皇12年(604年)の4月3日の項の記載に、「皇太子親(みずか)ら肇(はじ)めて憲法十七条憲法を作りたもう」とあります。

    「和をもって尊しとなす」の記載がある十七条憲法と聖徳太子

    「和をもって尊しとなす」の記載がある十七条憲法と聖徳太子

    聖徳太子がつくった十七条憲法が記載されているのが、奈良時代の歴史書である『日本書紀』です。十七条憲法や十七条憲法を制定した聖徳太子、またその時代背景について紹介します。

    十七条憲法とは?

    十七条憲法とは、聖徳太子が推古12年につくった日本最古の「文字で記された法律」です。十七条憲法の条文は、日本古来の神道と外国から伝来した儒教・仏教の思想を融合してつくられています。また十七条憲法は、各地で豪族が勢力をもっていた時代に中央集権的官僚国家体制の確立を意図し、豪族や官人の態度・行為の規範を示した官人服務規定という意味合いのものです。この十七条憲法の第一条に、「以和為貴」の言葉があります。

    十七条憲法を制定した聖徳太子とは?

    十七条憲法を制定した聖徳太子とは、用明天皇の皇子で、「厩戸(うまやど)皇子」という名前でした。物部氏を倒して権力を握った蘇我馬子の姪であり自分の叔母である推古天皇の摂政となり、中央集権的官僚国家の基礎をつくったといわれています。また、遣隋使の派遣により大陸文化を日本に取り入れました。

    十七条憲法が制定された時代とは?

    十七条憲法が制定された時代は、蘇我氏と物部氏のふたつの有力豪族の権力争いのさなかでした。蘇我氏は、天皇家と婚姻関係を結び、外戚となって物部氏を一歩リードしていました。また、この頃百済によって日本に仏教が伝来し、蘇我氏は仏教導入派、物部氏は仏教反対派としての争いもあったのです。しかし蘇我氏が争いに勝ち、蘇我馬子の姪の推古天皇が即位して聖徳太子が摂政になりました。蘇我馬子を含めたこの三者を中心に、国内は徐々に平定されていきました。

    「和をもって尊しとなす」の本当の意味とは?

    「和をもって尊しとなす」の本当の意味とは?

    「和をもって尊しとなす」とセットになっている「無忤為宗」の言葉と第一条全体から、「和をもって尊しとなす」の本当の意味を見ていきましょう。

    「和をもって尊しとなす」が書かれている十七条憲法の第一条原文

    「和をもって尊しとなす」が書かれている十七条憲法の第一条の原文の漢文と読み下し文と現代文は、以下のとおりです。

    第一条
    ●原文
    一曰 以和為貴 無忤為宗 人皆有黨 亦少達者 是以或不順君父 乍違于隣里 然上和下睦 諧於論事 則事理自通 何事不成

    ●読み下し
    一(ひとつ)に曰(い)はく、和(やわらか)なるを以(もち)て貴(とうと)しとし、忤(さから)ふること無(な)きを宗(むね)とせよ。人(ひと)皆(みな)党(たむら)あれど、亦(また)達(さと)る者(ひと)少(すくな)し。是(ここ)を以て、或(あるい)は君(きみ)父(かぞ)に順(したが)はず、乍(また)隣里(さととなり)に違(たが)ふ。然(しか)れども、上(かみ)和(やわら)ぎ下(しも)睦(むつ)びて、事(こと)を論(あげつら)ふに諧(かな)ふときは、事理(こと)自(おの)づからに通(かよ)ひ、何事(なにごと)か成(な)らざらむ。

    ●訳文「和を大切にし人といさかいをせぬようにせよ。人にはそれぞれつきあいというものがあるが、この世に理想的な人格者というのは少ないものだ。それゆえ、とかく君主や父に従わなかったり、身近の人々と仲たがいを起こしたりする。しかし、上司と下僚がにこやかに仲むつまじく論じ合えれば、おのずから事は筋道にかない、どんな事でも成就するであろう。」

    「和をもって尊しとなす」には「さからうことなきを宗となす」という続きがある

    ビジネスパーソンの「座右の銘」には、「和をもって尊しとなす」の部分だけが取り上げられることが多いのです。しかし、「和をもって尊しとなす」の続きには、「さからうことなきを宗とせよ」の言葉があります。この続きの言葉を、相手と「和」そうとせず、常に自分中心で人に「さからおう」とする思いが渦巻いている人間への戒めとする説もあります。「和をもって尊しとなす」と「さからうことなきを宗となす」の2つの言葉は通常セットとみなされ、「和を大切にし人といさかいをせぬようにせよ。」と解釈されています。

    第一条の漢文全体から「和をもって尊しとなす」の本当の意味を考える

    蘇我氏が物部氏を倒した際14歳~15歳だった聖徳太子は、蘇我馬子に加勢したといわれています。その聖徳太子が「和を大切にし人といさかいをせぬようにせよ。」という一文を法律の最初に入れたのには、理由があります。聖徳太子の狙いは、この時代に模範とされていた中国の儒教の原理を持ち出して豪族たちを従わせることだったという説があるのです。第一条の後半には、「然上和下睦 諧於論事 則事理自通 何事不成」(上司と下僚がにこやかに仲むつまじく論じ合えれば、おのずから事は筋道にかない、どんな事でも成就するであろう。)の言葉があります。聖徳太子の思う「和」は「君臣の和」であり、上下関係をわきまえた上での「和」を価値あるものとして大切にしようというのが、「和をもって尊しとなす」の本当の意味なのでしょう。

    「和をもって尊しとなす」の類似語と英語表現

    「和をもって尊しとなす」の類似語と英語表現

    「和をもって尊しとなす」の類似語にあたるのが、武者小路実篤の言葉です。また、英語にも「和をもって尊しとなす」にあたる言葉があります。日本と英語圏の文化の違いが見えてくるので、見比べてみましょう。

    「和をもって尊しとなす」の類似語「仲良きことは美しき哉」

    「仲良き事は美しき哉(なかよきことはうつくしきや)」は、明治から昭和の時代に活躍した小説家・武者小路実篤が、色紙に書いた言葉です。この色紙は、戦後復興を目指す時代の日本の、一家に一枚あったのではないかといわれるほど人気でした。聖徳太子が十七条憲法を制定したのも、天皇家や豪族たちの戦のあとに平和を構築しようとした時代です。実篤が「和をもって尊しとなす」を念頭に置いていたかは定かではありませんが、戦争の後の平和を希求する気持ちには通じるものがあるのではないでしょうか。

    「仲よきことは美しき哉」の英語表現

    「仲よきことは美しき哉」の英語表現は、次のとおりです。
    How beautiful it is to have good friends.
    「beautiful」には美しいの意味のほかに、すばらしい、すてきな、 みごとなという意味もあります。この英語表現を直訳すると、よい友だちを持つことは美しいとなりますが、実篤も、美しいをすばらしいの意味で使っているのです。ですからこの英語表現の訳は、よい友だちを持つことはすばらしい、となります。

    「和をもって尊しとなす」の英語表現

    「和をもって尊しとなす」の英語表現

    「和をもって尊しとなす」の英語表現は、直訳すると「尊し」が「precious」(尊い、貴重)や「respect」(尊敬)になってしまいます。しかしここは、この言葉を儒教の古典から引用した聖徳太子の真意をくんで、違う言葉で表現しましょう。2種類の英語表現を見ていきます。

    「和をもって尊しとなす」の英語表現1

    「和をもって尊しとなす」の英語表現のひとつは、次のとおりです。
    Harmony is to be valued. (調和に価値をおくべきです。)
    「尊い」は、現代日本でもさまざまな意味に使われていますが、この英語表現では「価値」と表現しています。

    「和をもって尊しとなす」の英語表現2

    「和をもって尊しとなす」の英語表現のふたつ目は、次のとおりです。
    Harmony is the greatest of virtues. (調和は最大の美徳です。)
    この英語表現では、「尊い」を「美徳」と表現しています。聖徳太子の「和をもって尊しとなす」の出典となった『論語』や『礼記』における「為貴」の解釈を踏まえても、順当な表現でしょう。

    まとめ

    「和をもって尊しとなす」は、いつの時代のビジネスパーソンにも、座右の銘とするのにふさわしい言葉です。実際に、十七条憲法の「和」の言葉はその後の日本に大きな影響を与えました。国号として使われた「倭」や「大倭」が「大和」に繋がり、日本国を指して「和」という言葉が使用されていることには、十七条憲法の「和」が影響しているという説もあります。「和をもって尊しとなす」だけでなく、この言葉が含まれている聖徳太子の十七条憲法の第一条全体も、職場の人間関係を円滑にするための教訓とするとよいでしょう。

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