冷蔵庫は複数の保存場所に分かれており、「チルド」室のほか、冷蔵室や冷凍室、野菜室、パーシャル室などがあります。それらを用途に合わせて使いこなせているでしょうか?今回は、それぞれの部屋の設定温度や特徴、保存に適した食品をまとめてみました。
「チルド」の意味とは?
「チルド」とは、食品が凍り始める直前の温度帯のことです。つまり、「冷えているが、凍ってはいない状態」という意味です。
「チルド」の意味は「冷却した」
「チルド」とは「冷却した」という意味で、具体的な温度としては0℃前後を指します。
通常の冷蔵保存より低温の設定で、熟成や発酵のスピードを遅らせられる温度です。鮮度を長持ちさせることも可能であるため、生鮮食品、発酵食品や乳製品、練りものなどの保存に適しています。
「チルド」の語源は英語の「chilled」
「チルド」というカタカナ語は、英語の「chilled」が由来になった言葉です。「chilled」は動詞「chill」から生まれて形容詞になったもので、「~を冷やす」や「凍える」という意味です。
「chill」はいろいろな意味を保つ単語です。例えば、「chilly」はcoldほどではないものの肌寒いと感じるとき、病気などで寒気を感じて身体がブルブルするときに使います。また、ゾッとするなど恐怖を感じることを言い表したいときにも使う言葉です。また、家でリラックスしている状態や穏やかな音楽、落ち着いた雰囲気などを表現する際にも用いられます。
冷蔵庫内の各部屋は設定温度・用途が異なる
冷蔵庫内はいくつかの部屋に区分され、設定温度がそれぞれ異なり、それに応じて用途も違います。一般家庭にある普通の冷蔵庫は、0℃~10℃に設定されている冷蔵室、-18℃以下に設定されている冷凍室が標準装備されています。これは、食品の腐敗が進む原因のひとつである菌の繁殖が10℃以下で抑制され、-15℃以下で止まることから計算されたものです。
しかし、最近の冷蔵庫は多機能に進化し、「チルド室」や「パーシャル室」などの個室を設け、より細かく温度を設定、調節できる機種もあります。それぞれ適した温度での保存が可能になっているため、食品の鮮度を長持ちさせたいとき、菌の繁殖を抑えて食中毒を防ぎたいときは「チルド室」や「パーシャル室」を有効に活用するとよいでしょう。
「チルド室」は温度の目安が0~-1度前後
「チルド室」の温度の目安は、0℃~-1℃前後です。「チルド室」は冷蔵室よりも温度が低く、「冷凍室」や「パーシャル室」よりも高い温度に設定されています。
食品に含まれる水分は-1℃あたりで凍り始め、-5℃程度でほぼ凍結すると言われています。そのため食品が完全に凍る温度より-3℃度ほど高い「チルド室」では、鮮度が落ちやすいけれど中心部まで凍らせたくない食品の保存に適しています。また、低温であるほうが発酵を抑えられるため、発酵食品の保存にも最適です。
「パーシャル室」は温度の目安が-2~-3度前後
「パーシャル室」は温度の目安が-2℃~-3℃前後となっており、「チルド室」よりも低温である点が特徴です。保存された食品の状態は「半凍結・微凍結」であり、一部が凍っているイメージです。
肉や魚が凍り始めるのは約-3℃前後とされています。「パーシャル室」は食品の表面からすばやく微凍結の層をつくり酸化を抑えることで、肉も魚も美味しい状態で保存できます。おおよその目安ですが、肉類は約10日間、魚類は約7日間、新鮮に保存ができます。さらに、完全には凍りきっていない状態のため、そのまま「切る」「はがす」「すくう」「つまむ」ができます。そのため、解凍せずに調理したり食べたりできるというわけです。
「冷蔵室」は温度の目安が3~5度前後
「冷蔵室」の温度の目安は、3℃~5℃前後です。ただし、同じ冷蔵室内でも場所によって温度に違いがあります。科学的に冷気は下に溜まるため、上段に比べ下段のほうが1℃~2℃低温になることが多いです。また、冷気の吹き出し口あたりも温度が低い傾向にあります。
そのため、「冷蔵室」の保存では傷みやすい食品は吹き出し口側の奥のほうに、反対に冷え過ぎを避けたいものは上段手前側に置くとよいでしょう。そして、ドア付近はドアの開閉による温度変化が激しいため、長持ちする食材や短期間で使い切れるものを保存しておくと安心です。また、「冷蔵室」の中に食品を詰め込み過ぎると、冷却効率が下がるので注意しましょう。
「野菜室」は温度の目安が3~8度前後
「野菜室」は温度の目安が3℃~8℃前後です。「野菜室」とは、野菜類を適切な温度と湿度で保存できる部屋です。
野菜は低温障害を起こしやすいものや、乾燥しやすいものなどがあります。乾燥しやすい性質がある野菜は、新聞紙やジップロック、ビニール袋、ラップなどに包んで保存するとより長持ちさせられます。また、「野菜室」は深さのある冷蔵スペースになっていることが一般的であるため、開封後の調味料の保存にも向いています。
「冷凍室」は温度の目安:-18~-20度前後
「冷凍室」は通常、-18℃以下に設定されています。-18℃以下は、食品が腐る原因になる微生物の活動が不活化する温度といわれています。このため、冷凍された食品の流通において、国際的に推奨された保存温度帯でもあります。
冷蔵室と反対に、「冷凍室」は食材をたくさん詰め込むと冷却効率が高まります。最新の冷蔵庫ではホームフリージングが可能な急速冷凍機能付きの機種もあります。
「チルド室」を活用するメリット
食品が凍り始める直前の温度帯である「チルド」。冷蔵庫の「チルド室」は一般の冷蔵保存よりも熟成や発酵を遅らせる上、鮮度が長持ちするため、いろいろな食品の保存に適しています。
この機会に食品を長く保つコツを知って、冷蔵庫をこれまで以上に便利・快適に使いこなしてみてください。
「チルド室」に入れておいたほうがよい食材
「チルド室」の保存温度は約0℃~-1℃で、冷蔵室より低い温度に設定することで、食品が凍らないギリギリの温度をキープしています。
食品によっては凍ると食感や味を損ねてしまうものがありますが、そうした食品でも「チルド室」なら長い間、味や食感を変化させずに保存できます。また、「チルド室」は一般的な冷蔵保存よりも食品の発酵や熟成を遅らせるため、鮮度が長持ちすることも大きなメリットです。
ここから「チルド室」保管が適した食品について紹介しますので、ぜひ試してみてください。
発酵食品
納豆やみそ、ヨーグルト、チーズといった発酵食品は「チルド室」での保存が向いています。時間をかけて熟成させたいチーズや、酸っぱくなるのを遅らせたい漬物などの発酵食品も「チルド室」であればより長く保存できるでしょう。
賞味期限切れの食品の腐敗の進みを遅らせるという使い方もできます。また「チルド室」は、食品を保存する用途のほか、お菓子やパン作りの下地を一時的に保存したり、食品の解凍に役立てたりなど、料理におけるサポート役としても活用できます。
乳製品
「チルド室」に入れるのに適した食品には、乳製品もあります。 特に乳酸菌を豊富に含んでいるヨーグルトや、生クリームのように賞味期限が短い乳製品は、風味保持と保存の観点から「チルド室」に入れるのがベストです。
「チルド室」は避けた方がよい食品
「チルド室」での保存を避けた方がよい食品を紹介します。飲料や水分の多い食品は凍ってしまう可能性があるので、「チルド室」での保存は避けましょう。
ビール
「チルド室」を避けた方がよい食品は、ビールです。ビールは冷やしすぎてしまうと味のバランスがくずれます。特に凍ったビールは白っぽく濁ったり水っぽくなったり、さらには容器が破損する危険性もあります。また、ビールに含まれる成分が析出して沈殿することもあり、体への悪影響はありませんが、美味しく飲めません。
ビールの風味や品質を損ねるのを防ぐためには、「チルド室」「パーシャル室」「冷凍室」や冷蔵庫の吹き出し口付近での保管などは避けてください。
野菜
野菜や果実は水分が多く含まれているため、「チルド室」での保存には向きません。
ただしサラダを作る際、レタス等を氷水につけるかわりに「チルド室」で一時的に冷やしておくと、パリッとした味わいが楽しめます。水との接触がないのでビタミンCも逃げにくいという利点もあります。また、完熟したトマトを「チルド室」に入れると、熟すスピードを遅らせるので長持ちします。
まとめ
冷蔵庫は「チルド室」のほか、冷蔵・冷凍室、野菜室、パーシャル室など保存場所が複数に分かれています。冷蔵室よりも「チルド室」は長期の保存に向いている上、鮮度が落ちやすいが凍らせたくない食品の保存に適しています。冷蔵庫の「チルド室」を有効に活用して、鮮度を保って食品をおいしく保存しましょう。