「憎まれっ子世に憚る」の正確な意味はご存知でしょうか?この世の中の理不尽さを嘆いた言葉でもあり、そのメッセージ性は強いです。今回は、この言葉の意味や類語、対義語、英語表現を紹介します。言葉の歴史と共に深掘りしていきましょう!
「憎まれっ子世に憚る」の意味とは?
「憎まれっ子世に憚る」の意味を解説します。江戸かるたでも有名なことわざであるため、その正確な意味をおさえておきましょう。
「人から憎まれるような子は、幅をきかし威勢を振るう」
「憎まれっ子世に憚る」の意味は「人から憎まれるような子は、幅を利かし威勢を振るう。」という意味になります。 受け取り方次第でプラスにもマイナスにもなることわざで、「わんぱくな子供の方が大人になって出世する。」という意味から、「嫌われている方が、悠々と生きている。」という意味で捉えられることもあります。 使い方にバリエーションがありますが、元々はネガティブな意味を持つことわざです。「この世の中は理不尽である。」そういったことを伝えたいときに使われるときもあります。
「憚る」の意味は「幅をきかす、増長する、威張る」
「憎まれっ子世に憚る」における「憚る」の意味は「幅をきかす。増長する。威張る。」という意味になります。実はこの意味は「阻む」や「はびこる」と混同された末に生まれた誤用とされており、もともとの意味は、「遠慮する。」や「いっぱいに広がる。はびこる。」という意味になります。ただ、誤用とはいえこのことわざはすでに江戸時代から存在していたこともあり、「憚る」の意味として「威張る。」といった意味は正式なものと捉えて問題ないでしょう。このように言葉は、時代とともに新しい意味を得るなどして変化していくのが面白いところです。
「憎まれっ子世に憚る」の読み方
「憎まれっ子世に憚る」は「にくまれっこよにはばかる」と読みます。「憚る」に馴染みのない方が多いのではないでしょうか。「憚」は音読みで「タン」と読み、訓読みでは「はばからし・はばからわし」などと読みます。 この「憚る」という言葉を使った別の言葉に、「過ちては改むるに憚ること勿れ」という論語の中の言葉があります。意味は、「過ちを犯したと気付いたら、自分のプライドや他人の目を気にせずに、ためらうことなく改めるべきである。」という意味です。ここで言う「憚る」は「遠慮せずに、躊躇せずに」という意味で使われています。この言葉はあまり聞き覚えがないかもしれませんが、「憚る」つながりで覚えておくとよいでしょう。
「憎まれっ子世に憚る」の類義語・言い換え
ここでは、「憎まれっ子世に憚る」と似た意味のことわざを紹介します。似た意味のことわざを同時に抑えていくことで、日本語の語彙が効率的に増えていきます。2つ紹介するので、積極的に覚えていきましょう。
「悪いやつほどよく眠る」
「憎まれっ子世に憚る」の似た意味のことわざに「悪い奴ほどよく眠る」というものがあります。このことわざには、「本当の悪人ほど、罪を免れて罰を受けずに過ごしがちだ。」という意味があります。元々は「捕まる心配がないからよく眠れる。」という意味から派生し、現在の意味となりました。
「渋柿の長持ち」
「渋柿の長持ち」も「憎まれっ子世に憚る」と似た意味のことわざです。渋柿は味が悪いため一人収穫されないことから、人の様子例えられ「他人から憎まれるような人の方が、長く自分の身を守れる。」と解釈されました。一方、渋柿の方が長生きできることから、「欠点が必ずしも不幸とは限らない」というポジティブな意味でも使われます。「憎まれっ子世に憚る」と同じ意味になるのは、前者の使われ方になります。
「憎まれっ子世に憚る」の対義語
次に「憎まれっ子世に憚る」の対義語を紹介します。 先ほどあげた類語と比較すると面白いかもしれません。
「正直者は馬鹿を見る」
「憎まれっ子世に憚る」の対義語として当てはまるのは「正直者は馬鹿を見る」という意味のあることわざです。「ずる賢い人の方が世渡り上手で、むしろ正直に生きている人の方が損をすることが多い。」という意味を持ちます。「憎まれっ子世に憚る」には、「この世の中は理不尽である。」ことを述べる時にも使われます。そういった状況を表現するときに、「正直者は馬鹿を見る」が対義語として適当でしょう。
「天網恢恢」
「天網恢々」も「憎まれっ子世に憚る」の対義語といえるでしょう。「天網恢々」は「天網恢々疎にして漏らさず」の略で、「天は決して悪人・悪事を見逃さない。」という意味になります。つまり、先ほど紹介した「悪い奴ほどよく眠る」の対義語であるともいえます。悪人・悪事を決して見逃さないような世の中になれば、「正直者が馬鹿を見る」ことはなくなるでしょう。
「こんなの理不尽!」憎まれっ子が世に憚る理由3選
毎日生きているだけで理不尽なことにたくさん気がつきますよね。その全てが「憎まれっ子世に憚る」に当てはまるとは限りませんが、 憎まれっ子が世にはばかってしまう理不尽に対する理由を3つ取り上げました。 自分自身や周囲の人と照らし合わせて見ていきましょう。
権力だけで周囲を押さえつけているから
憎まれっ子の特徴として「権力や威圧感で周囲を押さえつけている」という傾向があります。特に何かに長けているわけでもないのにもかかわらず、歳が上であることや職歴が長いことを武器に高圧的な態度をとってしまうタイプです。周囲も深く関わるのを避けていることが多いので、本当の意味で「幅を利か姿勢を振っている」わけではなさそうです。
憎まれっ子はずる賢いから
世渡りが上手でずる賢いタイプの憎まれっ子も存在します。このタイプは周囲に威圧的な態度をとるわけではありませんが、複雑な人間関係の中でも機敏に立ち振る舞って気がついたらいいところを全て持って行ってしまっている傾向があります。そういった態度から周囲から妬まれやすい状況を作ってしまいます。本人に悪気はなく直接的に人に害を与えているわけではないので、気がついたら「憎まれっ子」になっているというのが正しい解釈かもしれません。
正直に生きると損をすることが多いから
「正直者は馬鹿を見る」のように、真面目すぎることが要領の悪さに繋がることが多々あります。例えていうと、全てのことに力を入れる頑張り屋さんよりもポイントを絞って頑張るタイプの人の方がより高いパフォーマンスを発揮することなどが挙げられます。成果を出すために悪いことをする必要はありませんが、力を抜くべきところは抜くことが世渡り上手な人になるための近道かもしれません。
「憎まれっ子世に憚る」を英語でいうと?
「憎まれっ子世に憚る」の英語表現を見ていきましょう。「憎まれっ子」をどのように英語に訳すかがポイントになります。いろいろな表現があるため一つずつ触れていきましょう。
「The devil」を用いた表現
「The devil’s children have the devil’s luck.」で「悪魔の子は悪運が強い。」といった意味になります。「devil」と言うと「悪魔」というイメージが強いですが、「悪党」といった意味もあり、日本語で表現する「憎まれっ子」ととてもニュアンスが近いです。「The devil’s children have the devil’s luck.」の表現を要約して「憎まれっ子世に憚る」と意訳することもあります。
「Ill weeds」を用いた表現
「Ill weeds grow apace.」で「雑草はたちまち成長する。」という意味になります。「Ill weeds」が「雑草」、「grow」が「成長」、「apace」がたちまちという意味です。「憎まれっ子世に憚る」の「憎まれっ子」に対応する部分が「Ill weeds」です。 他にも、「apece」を用いずに、「Ill weeds grow fast.」と表現することもあります。
「憎まれっ子世に憚る」の使い方と例文集
「憎まれっ子世に憚る」の使い方と例文を紹介します。他人を否定するタイミングで使われる言葉でもあるため、使うタイミングや状況には注意が必要です。
「憎まれっ子世に憚る」の使い方
「憎まれっ子世に憚る」の主な使い方として、他人をそしるときに用いる場合と謙遜するときに用いる場合があります。このことわざ自体がネガティブの意味を持つことが多いため、 それを他人に向けるか自分に向けるかでその使い分けがなされます。他人に対して否定的な言葉として用いる場合は、他人が出世した時や権利を獲得した時にその世渡りの良さを皮肉って使われることがほとんどです。謙遜の意味で用いられる場合は、昇進や出世を褒められた際にへりくだるタイミングで使われる言葉です。
「憎まれっ子世に憚る」の例文
「憎まれっ子世に憚る」の例文はいつか紹介します。
- 彼がこんなに早く出世するなんて、憎まれっ子世に憚るだね。
- 僕が昇進できたのは、まさに憎まれっ子世に憚るだよ。
まとめ
「憎まれっ子世に憚る」の意味は、「人から憎まれるような子は、幅を利かし威勢を振るう。」というものでした。 この世の中の理不尽さを表現した言葉のようにも思えます。 類義語や対義語に触れることで、表現のバリエーションも広がります。関連するワードは一緒におさえるようにしましょう。