投資をやっている方なら「リスクヘッジ」という言葉を一度は聞いたことあるのではないでしょうか?しかし「リスクヘッジ」は投資の世界に限った言葉ではありません。ビジネスの世界でも重要な「リスクヘッジ」について詳しく解説します。
「リスクヘッジ」とは
「リスクヘッジ(risk hedge)」は、金融に携わっている方や投資をしている方なら馴染みのある言葉ではないでしょうか。
投資をしていなくても「ヘッジファンド」という言葉なら一度は耳にしたことがあるでしょう。
では、「リスクヘッジ」とは一体何を意味しているのでしょうか!?
「リスクヘッジ」の意味
そもそも「リスクヘッジ」の「ヘッジ(hedge)」の意味は、「生け垣」や「垣根」さらには「障壁」です。
そして金融や投資の世界を中心に、損失や危険に対する「防止策」や「回避」という意味で使われます。
つまり、「リスクヘッジ」とは「危険回避」をすること、あるいは「危険防止策」を意味します。
元々は金融・投資の世界の言葉
最も「リスクヘッジ」という言葉が使われている金融・投資の世界では、単に「ヘッジ」ということもあります。
金融・投資の世界においては、お金を失う損失のリスクはつきものです。
「リスク回避」と言っても、リスクのある対象に近づかないであったり、損失のリスクがある対象をとにかく避け、安全策のみを選ぶことではありません。
損失のリスクがあるものに対して対策をすることで、損失を無くしたり減らしたりすることを意味します。
金融・投資における「リスクヘッジ」の手法
金融・投資の世界で「損失回避」を意味するのが「リスクヘッジ」です。
では実際の金融・投資の現場で行われる「リスクヘッジ」の手法にはどのようなものがあるのか、詳しく解説します!
分散投資
イギリスの投資の格言に「Don’t put all your eggs in one basket(一つのかごに全ての卵を盛るな)」があります。
投資対象をかごに、投資資金を卵を喩えた言葉です。
全ての卵を盛ったかごを落としてしまうと、全ての卵が割れてしまう、つまり一つの投資対象(企業)にだけ投資をすると、もしもその企業が倒産でもしたら全てを失ってしまいます。
それを避けるためには、卵を複数のかごに分けて盛ること、つまり「分散投資」の必要性を説いているのです。
「分散投資」はリスクを完全に回避することはできませんが、一つの企業にだけ投資をするよりはリスクを軽減できます。
ロスカット(損切り)
「ロスカット」とは、損失が一定レベルに達した時に、それ損失の拡大を防ぐために手仕舞い(決済)して損失を確定することです。
「損切り」や「ストップロス」とも言い、自動的に決済を行う設定をしておく場合や、業者によって強制的に行われる場合もあります。
損失を確定するので一見「リスク回避」には見えませんが、さらに損失が膨らんでしまう最悪の事態を回避するのが「ロスカット」です。
「ロスカット」は和製英語で、英語でいう場合は「Loss Cutting」になります。
デリバティブ(金融派生商品)取引
「デリバティブ(金融派生商品)」には、先物取引、オプション取引、スワップ取引があります。
先物取引では、江戸時代の大坂堂島米市場で享保15年(1730年)から始まった「帳合米商い(ちょうあいまいあきない)」が、世界における先物取引所の先駆けとして知られています。
当時も、米の価格変動のリスクヘッジの場として、重要な役割を果たしていました。
この先物取引を使ったリスクヘッジ手法の一つが、現物を購入すると同時に先物市場で同じだけ売り注文を出す方法です。
購入した現物が例えば海外から船て運んで来なければならないトウモロコシだと、買ってから手元に来るまでの間にもしも価格が暴落すると大きな損失を被ります。
先物で売り注文を出しておくと、価格が暴落した場合に先物でその損失をカバーできるわけです。
この手法は保険をかけるようなことから「掛けつなぎ」や「保険つなぎ」よも呼ばれます。
ヘッジファンドとは
投資の世界での「ヘッジ」という言葉で思い浮かぶのは「ヘッジファンド」ではないでしょうか。
1949年にアメリカで生まれた「ヘッジファンド」は、元々はデリバティブ(金融派生商品)を駆使した分散投資により、リスクをコントロールして投資家の資金を守るファンドのことでした。
今ではハイリスク・ハイリターンの代名詞のような「ヘッジファンド」ですが、株式市場が上昇する局面だけでなく、下降局面でも利益を狙う「絶対収益」で人気となりました。
ただしこの「絶対収益」は、必ず収益を得られる(絶対儲けられる)という意味ではありません。
「リスクヘッジ」の使い方・例文
「リスクヘッジ」は、金融・投資の世界や、ビジネスシーンでどのように使われるのでしょうか?
基本は「リスクヘッジをする」
基本は「リスクヘッジ」が「危険防止策」の意味で、「リスクヘッジをする」「リスクヘッジを行う」でその防止策を打つという使い方をします。
「リスクヘッジをする」の代わりに「リスクヘッジを図る」や「リスクヘッジを講じる」という言い方もできます。
ただし金融・投資の世界では「ヘッジする」だけでも、損失リスクを回避するという意味で通ります。
特定のリスクを指す場合は「~(の)リスクをヘッジする」との言い方になります。
「為替変動リスクをヘッジする」や「天候のリスクをヘッジする」などです。
「リスクヘッジのために」
「予想されるリスクに対応するために~」という意味で「リスクヘッジのために」との言い回しも使われます。
例えば「リスクヘッジのため、保険の加入をおすすめします」などです。
「リスクヘッジ」は、金融・投資の世界に限らずビジネス一般でも使われる機会が増えていますから、もしも相手が使っていても驚かないようにしましょう。
英語での使われ方は?
「リスクヘッジ」は英語で「risk hedge」ですが、日本語のようにそのままで使うばかりではありません。
「リスク防止策」という意味で使うのは「hedge against the risk」です。
「リスクヘッジをする」なら「hedge the risk」、「外国為替変動リスクをヘッジする」なら「hedging foreign currency exchange rate risk」などになります。
「リスクヘッジ」の類義語・言い換え
「リスクヘッジ」の類義語は、起こりうる損失に対して、その一部もしくは全部をカバーすることですから「保険をかける」があたります。
先物市場を利用した「保険つなぎ」がまさにその一例です。
「危機に備える」や「万が一に備える」も同様の意味の言葉として言い換えに使われます。
「リスクマネジメント」は「リスクヘッジ」よりもより広い意味の言葉で、「リスクヘッジ」を含むさまざまなリスクへの対応策や、それを検討することも含みます。
この2つの違いについては後述します。
「リスクヘッジ」の対義語・反対語
「リスクヘッジ」の対義語は、「危険を冒す」を意味する「リスクテイク」です。
英語でいうと「take a risk」や「take the risk」になります。
投資の世界で「リスクヘッジ」とは逆に、より「リスクテイク」をする手法に「レバレッジ(leverage)」があります。
「レバレッジ」とは元々は「てこ(lever)の原理」の意味です。小さな力で重いものを動かすように、手持ちのお金を証拠金としてそのお金の何倍もの取引を行うのが「レバレッジ取引」です。
レバレッジ取引はハイリスク・ハイリターンな投資手法ですが、デリバティブ(金融派生商品)取引ではよく行われ、「リスクヘッジ」の取引でも使われます。
「リスクヘッジ」と「リスクマネジメント」の違い
「リスクヘッジ」と似ていて、また混同しやすい言葉に「リスクマネージメント」があります。
「リスクヘッジ」と「リスクマネージメント」、2つの違いは?
「リスクマネジメント」は「危機管理」
「リスクマネージメント(risk management)」を直訳すると、「危機管理」です。
「リスクマネージメント」とは、組織的にリスクを管理(マネージメント)し、損害・損失などの回避または低減を図るプロセスのことです。
最初にリスクを特定し、そのリスクについて分析・評価し、リスクの発生頻度やそれによって被る損害・損失の対策を講じることです。
「リスクマネジメント」によって「リスクヘッジ」を行う
後半の「損失などの回避または低減を図るプロセス」とは、まさに「リスクヘッジ」のことであり、「リスクヘッジ」と「リスクマネージメント」は密接に繋がる関係です。
どのような「リスクヘッジ」を行うかは、分析・評価した上で適切な策を選択する必要があります。
それを組織的に行うのが「リスクマネージメント」です。
2006年5月1日から施行された新会社法では、株式会社には「業務の適正を確保するための体制」の整備が求められるようになりました。
これは「内部統制システム」と呼ばれ、この中には「損失の危険の管理に関する体制」、つまりリスクマネージメント体制も含まれています。
これによりリスクマネージメント体制を整備し、常に「リスクヘッジ」を講じることが求められています。
まとめ
「リスクヘッジ」は、主に金融・投資の世界で使われてきた言葉です。
しかし会社経営で内部統制システム・リスクマネージメントが求められるようになった現在では、金融・投資以外の経営・ビジネスの世界でもよく使われています。
企業のリスクヘッジ需要に応えるための保険商品や金融派生商品も多数生まれている中で、「リスクヘッジ」について正しく理解し、リスクへの対応をしっかり講じてください!