「退廃的」という言葉、耳にすることはありますが、意味をあまり知らない人もいるのではないでしょうか。「退廃的」の意味は「道徳的に不健全なこと」です。そこで本記事では、「退廃的」の意味や使い方、読み方、類義語、対義語、英語表記を解説していきます。
「退廃的」の読み方
「退廃的」は「たいはいてき」と読みます。
「退廃的」の意味は?
「退廃的」の意味は、「道徳的にすたれて不健全なこと」です。
「退廃」には、以下のような意味があります。
- 衰えること
- 道徳的な気風がすたれて健全でなくなること
そこから精神的な意味合いが強くなり、道徳的でないことを表すようになりました。
「退廃的」の本来の漢字
「退廃」は、もとは「頽廃」と表記していました。「頽」は「くずれる」と読み、以下のような意味をもっています。
- こわれ落ちる
- 衰える
しかし、「頽」は常用漢字ではなかったため、代用として「退」が使われるようになりました。
「退廃的」の使い方
おもに精神面を表す「退廃的」ですが、人だけでなく芸術に対しても使用されます。「道徳的にすたれて不健全なこと」という意味をもつため、良くないイメージや暗い雰囲気を伝えたいときに使われることが多いです。しかし、「退廃的」が表現する独特な雰囲気や不気味さは、同時に美しさを感じさせることもあります。そのため、必ずしも悪い意味で使われるとは限りません。
「退廃的な人」
「退廃的な人」とは、「堕落した不道徳な生活を送っている人」のことを指します。たとえば暴飲暴食といった不摂生な生活を送っている人や、仕事をせずゲームばかりしている人。あるいは、お酒やギャンブルにはまっているような、だらしない人のことです。他にも、自分勝手でモラルのない人を表すこともあります。このように、真面目とはかけ離れている人に対して、良くない意味で使う言葉です。
「退廃的な時代」
「退廃的な時代」とは、「全盛期に比べ衰えている時代」のことです。たとえば昔は強かったのに戦いに勝てなくなった場合や、経済的に豊かだったのに困窮するようになってしまったなど、以前と比べて衰退しているときに使います。また、犯罪が横行したり、道徳心のない人が増えたりといった、「退廃的な人が多い時代」に対して使うこともあります。どちらにしても、他の時代と比べて劣っているときに使われる言葉です。
「退廃的な雰囲気」
「退廃的な雰囲気」とは、さびれてもの悲しい雰囲気を表現するときに使います。崩れかかっている廃墟や誰もいないシャッター街などは、なんともいえない寂しさを感じますよね。そのようなときに、「退廃的な雰囲気」と言い表すのです。
他にも、人に対して使うことがあります。たとえば「退廃的な雰囲気の女性」というと、「物悲しくミステリアスな女性」をイメージさせるでしょう。しかし、「退廃的」は不道徳という意味ももつため、「純粋でなく危なげな雰囲気」を表すときにも使えます。つまり、同じ「退廃的な雰囲気」という言葉でも、異なる様子を表現できてしまうのです。そのため、特に人に対して使われているときは、前後の文脈から正確な意味を判断する必要があります。
「退廃的な気分」
「退廃的な気分」とは、「すさんで荒れた気持ち」を表します。落ち込んでいる状態というより、「どうでもいい!」といった投げやりな気分に対して使われることが多いです。また、「自分さえよければ他はどうでもいい」など、道徳から外れた感情を表現するときにも使われます。
「退廃的なファッション」
「退廃的なファッション」とは、「ダークな雰囲気を感じさせるファッション」をいいます。具体的には、黒を基調とした服装や、チェーンを使った装飾などです。ゴスロリやモードといった系統が該当します。どこか危なげな雰囲気をまといますが、個性的でセンスあふれるファッションともいえます。
「退廃的な音楽」
「退廃的な音楽」とは、心の闇や言いようのない虚しさを表現した曲のことです。非道徳的な歌詞がつけられていたり、陰鬱なムードを感じさせたりするのが特徴です。まさに、「退廃的な気分」を表した音楽といえるでしょう。このように、芸術の世界観に対しても「退廃的」は使われます。
「退廃的な小説」
「退廃的な小説」とは、「文明の崩壊や人間の精神が壊れていくさまを題材にした小説」です。たとえば階級制度が崩落していく内容や、希望を感じられない状況を描いた作品をいいます。しかし、題材や世界観が退廃的なだけで、必ずしもバッドエンドとは限りません。
「退廃的」の例文
- 仕事を辞めて家にこもり毎日ゲームばかりする退廃的な生活を送っている。
- 自分だけがよければ良いという退廃的な考え方は改善したほうがいいだろう。
- 地元の商店街にはお客さんもお店も減り、以前とは打って変わって、退廃的な雰囲気を醸し出している。
「退廃的」の類義語・言い換え
「退廃的」の類義語は複数ありますが、その多くはマイナスイメージをもつ言葉です。では、具体的にどのような言葉があるのか見ていきましょう。
不真面目
「不真面目」の意味は「まじめでないこと」です。「退廃的な人」が真面目とは正反対な人を表現するので、類義語といえるでしょう。
不健全
「退廃的」の意味に「不健全なこと」が含まれているので、「不健全」も類義語です。不健全」の意味は、「心身がすこやかでないこと。精神や思想がおだやかでなく、ゆがんでいること」です。不摂生な人や道徳から外れているさまも「退廃的」を使うので、似た意味をもっていることがわかりますね。
不道徳
「不道徳」の意味は「道徳に反していること」です。「退廃的」は非道徳的な考えや行いに対しても使うので、同じような意味をもつ言葉ですね。
堕落
「堕落」の意味は「生活がくずれ、品行がいやしくなること。節操を失うこと」です。「退廃的な人」の説明と共通するため、類義語であることがわかります。
廃退
「廃退」の意味は「道義がすたれて衰えること」です。「道義」は「人のふみ行うべき正しい道」をいいます。つまり、「道義がすたれて衰える」とは、「非道徳的、モラルがない」状態を表すので、こちらも似た言葉といえるでしょう。
世紀末的
「世紀末」とは、「一つの世紀の終わり」や「19世紀末の西洋文化思潮」という意味があります。読み方は、「せいきまつ」です。
「退廃的」の対義語・反対語
- 真面目:うそやいいかげんなところがなく、誠実なこと
- 健全:すこやかで異常のないさま
- 道徳的:善悪をわきまえて正しい行為をなすさま
- 質実剛健:飾り気がなく、まじめで、強くてたくましいこと
- 石部金吉:非常に真面目で物堅い人。融通がきかない人。色事に惑わされない人
「退廃的」の対義語・反対語には、「真面目」や「健全」「道徳的」などがあります。これらに「不」をつけると、そのまま類義語になりますね。「退廃的」は「道徳的にすたれて不健全なこと」という意味があり、不真面目でモラルのない人を指すときに使います。そのため、この3つの言葉が反対の意味をもつことがわかるでしょう。
ほかには、「質実剛健」もあります。意味は「飾り気がなく、まじめで、強くてたくましいこと」です。危なげですさんだ様子にも使う「退廃的」と比べると、まったく異なるイメージですよね。
また、「石部金吉」も反対の意味をもつ言葉です。意味は「非常に真面目で物堅い人。融通がきかない人。色事に惑わされない人」。石と金という硬いものを並べて作られた言葉で、内面の固さを表します。「退廃的な人」とは正反対な様子を想像させるので、こちらも反対語といえますね。このように、「退廃的」の対義語・反対語は、真面目さや常識的であることを表す言葉が多くあります。
「退廃的」と間違いやすい言葉
「退廃的」と間違いやすい言葉に、「廃退的」があります。漢字や読み方が似ているため、混同されやすいのでしょう。先ほど紹介したように、「廃退」の意味は「道義がすたれて衰えること」であり、「退廃的」と類似しています。
しかし「廃退的」という言葉は実は存在しません。「退廃」と「廃退」が似ているので、同じように「的」をつけて使ってしまう人がいるのだろうと考えられます。つまり、「廃退的」は完全に間違った言葉なので注意してください。
「退廃的」を英語でいうと?
「退廃的」を英語でいうと「decadent」です。もとはフランス語ですが、英語でもそのまま使われています。
ちなみに日本では、「decadent」のカタカナ読みである「デカダン」も、「退廃的」という意味で使えます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は、「退廃的」の意味や使い方、読み方、漢字表記、類語、対義語、英語表現について解説しました。
最後に「退廃的」のまとめです。
- 「退廃的」は、「道徳にすたれて不健全なこと」という意味です。
- 「退廃的」の読み方は「たいはいてき」です。
- 「退廃的」の漢字表記は、もとは「頽廃」と表記していました。「頽」は「くずれる」と読み、「こわれ落ちる」「衰える」という意味を持っています。
- 「退廃的」の使い方の例には、「退廃的な人」「退廃的な時代」「退廃的な雰囲気」「退廃的な気分」「退廃的なファッション」「退廃的な音楽」「退廃的な小説」などがあります。
- 「退廃的」の類義語には、「不真面目」「不健全」「不道徳」「堕落」「廃退」「世紀末的」があります。
- 「退廃的」の対義語は、「真面目」「健全」「道徳的」「質実剛健」「石部金吉」などがあります。
- 「退廃的」を英語でいうと、「decadent」です。ちなみに日本ではカタカナ読みである「デカダン」も、「退廃的」という意味で使えます。